著者
松岡 是伸
出版者
名寄市立大学
雑誌
紀要 (ISSN:18817440)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.69-89, 2007-03
被引用文献数
1

本研究は日本の生活保護行政の「濫給防止」的制度運用が、生活保護制度にスティグマを付随させたことを明らかにする。そのために生活保護行政(主に監査)に着目し,その制度運用について戦後から1990年代までを議論の俎上にあげ,分析・検討・記述等を行った。
著者
日置 俊次
出版者
青山学院大学
雑誌
紀要 (ISSN:05181194)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.43-62, 2006
著者
大塚 美奈子
出版者
上田女子短期大学
雑誌
紀要 (ISSN:24368148)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.97-108, 2022-01-31

本研究では,23名の重度・中度知的障害児(者)が筆談援助法を通して語った「言いたいこと」における思考内容の共通点や対象児(者)自身の障害特性に関する内的捉えについて,計量テキスト分析を用い抽出語の結びつき及び文脈から検討した。共起ネットワーク分析から,【仲間の話を聞く】【自分のことを話す】【言葉を理解するお母さん】【知られていない本当の気持ち】【障害とともに人生を生きる意味】の5つのカテゴリー及びテーマが見出され,いずれのカテゴリーにおいても他の人への関心や思い(仲間意識)が語られている点,自身の障害を受け入れている点が共通して示された。
著者
山本 一生
出版者
上田女子短期大学
雑誌
紀要 (ISSN:21883114)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.41-57, 2018-01-31

本稿は華北占領地後の北京大学において日本留学経験者が「対日協力者」として果たした役割を考察した。日本が華北を占領すると、主だった国私立大学は蒋介石政権と共に「南遷」し、国立西南連合大学などを結成した。一方で残った北京大学や清華大学などを統合して、「国立北京大学」が「対日協力政権」である中華民国臨時政府唯一の総合大学として設置されることとなった。 当初「国立北京大学」の設立に批判的であった銭稲孫は、家族問題を理由に北京に留まり、その批判対象であった機関の長という「対日協力者」となった。「国立北京大学」文学院長、華北政務委員会教育総署督辦となった周作人も家族問題などを理由に北京に留まり、結果的に「対日協力者」となった。
著者
塩入 秀敏
出版者
上田女子短期大学
雑誌
紀要 (ISSN:09114238)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.A11-A20, 2003

山背王は長屋王の庶子である。長屋王の変に際して縁坐は免れたが、罪人の子としてその後の運命はあまり期待はできなかったはずである。ところが、ある時、突如として蔭位制度の規定以上の叙位にあずかり、最終的には従三位まで昇進して参議礼部卿として衆去している。皇位継承をめぐって政権抗争が渦巻き幾多の皇親貴族が失脚・没落していく中で、山背王は、長屋王怨霊さわぎの恩恵、橘奈良麻呂の変の密告、藤原弟貞への改名、藤原仲麻呂への接近などを経ながら、渦の中心とはつかず離れずの関係を保ちつつ、ほどほどのところで身を全うしたといえる。この山背王 (藤原弟貞)の生き方を、契機となったと思われるできごとや事件などとの関わりを通して見ながら考えてみることにより、一つ間違えばどうなるかわからない危険な状況にあった奈良時代皇親貴族の処世の一例として考察してみた。
著者
渡邉 タミ子 鈴木 奈緒 長嶋 純子
出版者
山梨医科大学
雑誌
紀要 (ISSN:09105069)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.47-53, 2001
被引用文献数
3

本研究は,父親の育児認識や協力状況を把握し,さらに父親との意志疎通と母親の育児への満足度との関連性を明らかにすることを目的とした。その研究方法は,自記式質問紙法で保育園に通っている0~4歳児までの両親230組を対象にして実施した。その結果は,有効回収率が230組中140組(60.9%)で,以下のように要約される。1.父親の協力に対する母親の育児満足は,1日の対話時間が長い程,有意に高い傾向にあった。2.父親の育児協力の中で毎日行う行為は,「入浴の世話」40%,「遊び相手」36%,「啼泣時」19%の順で高かった。「時々する」行為の割合は,全項目共60~70%の割合であった。3.父親の育児観は,「夫婦主体」が全体の70%で,「妻が主体,夫は補助」の30%を大きく上回った。また,役割分担では,「自然に決まった」が全体の30%で,「話し合う」が9%とかなり少なかった。
著者
古牧 徳生 Tokuo HURUMAKI
出版者
名寄市立大学
雑誌
紀要 (ISSN:18817440)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.19-51, 2015-03-31

古代ギリシアに発祥した哲学は「真に在るところのものは何か」を探求していくうちに,人間の認識能力の限界に行き当たり,懐疑論に陥った。この懐疑論を克服するために多くの哲学者たちは次第に神の恩寵を約束するキリスト教に改宗していったことを思想史の流れから見てみたい。
著者
金山 弘昌
出版者
日本橋学館大学
雑誌
紀要 (ISSN:13480154)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.53-73, 2004-03-30

1664年,G.L.ベルニーニは,ルイ14世の冬の宮殿,パリのルーヴル宮東翼建設のための最初の計画案を提案した。同案はいくつか特殊な面を示すが,それらは「比類するものふたつとなし」をモットーとする「太陽王」のために前例のない王宮を設計せんとする,ベルニーニの意図を反映したものに他ならない。同案のもっとも特異な要素のひとつが,中央部のいわゆる「ドームなしドラム」である。論者は,このモティーフの着想源と象徴的意味内容について新たな仮説を提示したい。「ドームなしドラム」については,すでに幾つかの仮説が提示されている。その着想源について,同モティーフの名付け親でもあるR.W.バージャーは,フランスの建築家にして版画家,アントワーヌ・ル・ポートルによる架空の館を描いた版画の影響を示唆している。当時のフランスの「建築総監」であったJ.B.コルベールは,このモティーフを「王冠」と解釈した。一方今日の幾人かの研究者たちは,集中式平面の聖堂との関連を主張し,このモティーフが君主の絶対で聖なる権力の象徴であるとみなしている。この点につき論者は新たな着想源として,スペイン王の皇子誕生を祝ってフィレンツェで上演された祝祭劇『イペルメストラ』(1658)のためにフェルディナンド・タッカが設計した舞台装置を描いたシルヴィオ・デリ・アッリの版画を提案したい。この舞台装置には「ドームなしドラム」状の円形建築が含まれ,それが「太陽の宮殿]を表すとされているのである。この円形建築は,形式においてルーヴル第1計画案と強い類似性を示すのみならず,その意味内容においてもまた「太陽王」の宮殿に大変ふさわしい。さらに「ドームなしドラム」をもち,「太陽の宮殿」を表現した一連の建築図面やイメージが存在する。例えばアポロンとしてのルイ14世を描いたヨーゼフ・ヴェルナーの素描や,マッティア・デ・ロッシによる同国王の記念碑の計画案などである。「太陽王」の宮廷周辺において,「太陽の宮殿」を「ドームなしドラム」で表現するというひとつの図像伝統が存在したことは否定しがたいのである。当然ながら,なぜ「ドームなしドラム」と「太陽」が結びついたのかという疑問が生ずる。バージャーが有名なクロード・ペローによるルーヴル宮の列柱廊の典拠とみなすオウィディウスの『変身物語』には,「ドームなしドラム」についての言及はない。同様に古代建築の復元図にも先例は見当たらない。現段階では,この結びつきがいくつかの建築書の記述に基づくと論者は考える。事実ウィトルウィウスは,「雷神ユピテルや天空神,太陽神や月神のためには,白日の下に露天式の殿堂が建てられる」と記している。一方アルベルティとパッラーディオは,太陽神の神殿が円形平面でなければならないと述べる。これらの建築的規則を総合するならば,太陽に捧げられた円形平面の露天式神殿を想像することは容易いのである。
著者
結城 佳子 鈴木 敦子 太田 知子 小林 美子 坂田 三允
出版者
名寄市立大学
雑誌
紀要 (ISSN:18817440)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.23-29, 2009-03

本研究では、家庭での養護者による虐待に着目して近年の我が国における高齢者虐待に関する研究の動向を明らかにし、高齢者虐待に関する今後の研究課題について検討した。分析対象とした研究のうち、事例を対象に質的分析を行った研究では具体的な支援や介入の方法が提言されると同時に、対象者との契約にもとづいたサービスを提供する在宅医療・福祉専門職の支援および研究の限界も明らかにされていた。高齢者虐待に関する研究の今後の課題は、1.地域住民の高齢者虐待に対する意識の高揚化および普及啓発2.保健師・精神保健福祉・心理臨床職による支援および介入3.地域支援システムやネットワーク構築の実践、さらにこれらの理論化であることが示唆された。
著者
西木 政統
出版者
日本橋学館大学
雑誌
紀要 (ISSN:13480154)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.94-81, 2014-03-01

比叡山延暦寺一乗止観院(根本中堂)に最澄自刻と伝わる薬師如来像は、天台宗の中心的尊像として信仰を集め、数多くの模像が造られた点で、日本の薬師造像史上、特異な存在である。その模像は「天台系薬師如来」と呼称されているが、室生寺金堂に伝来する像もその一例とされる。本稿は、史料上の言及を整理することで原像の像容を確認しつつ、本像が改めて天台系薬師と認められること、制作年代が九世紀末から一〇世紀初頭頃に求められることを指摘した。そのうえで、伝来についても再検討を行い、複数の薬師如来像が祀られていた根本中堂の尊像構成を反映し、もともと室生寺金堂に奉納された可能性を提示するに及んだ。以上、本稿はあくまで一作例の再検討にとどまるが、天台系薬師に対する信仰が普及する一様相の解明を企図したものである。
著者
荻原 和夫
出版者
上田女子短期大学
雑誌
紀要 (ISSN:09114238)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.149-156, 1990-03-31

若い女性のアルコール飲料に対する感受性(耐性)並びに嗜好傾向などについて調査し,次のような結果を得た。(1)アルコール飲料を好きと答えた者の比率は16%であり,嫌いと答えた者が12.5%であり,あとの72%は飲める程度との回答であった。(2)アルコール飲料を飲める体質であると自認している者の比率は約73%,飲めない体質と答えた者は約24%であった。(3)アルコール飲料を飲んだとき赤くなる体質の者は55%程である。そして飲める体質の人でも赤くなる者が48.8%おり,アルコール好きの者で赤くなく体質は37%であった。(4)アルコール飲料を飲んだとき起こす症状として多くみられることは陽気になる56%,体があつくなる35%,眠くなる34%などであった。(5)アルコール飲料に対する耐性や好みは遺伝的な面もあるが,その他の要因も複雑に関与している。
著者
柴原 宜幸
出版者
日本橋学館大学
雑誌
紀要 (ISSN:13480154)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.89-102, 2011-03-01

そこで本研究では、大学入学直後の学生の答案が、半年間の授業(ディシプリンにおける指導)を通じて、ライティングにおいて、どのような変化をみせるのかを考えていく。その観点としては、学生が、授業内容の理解をどれだけ自分の言葉として表現できるようになるのか、さらには、異なる文脈で話された内容や、個人的な経験や一般的な言質との関わりでの知識とどのように再体制化するのか、である。またその際、教員からのフィードパックがどのような効果をもたらすのかについても考察し、今後のライティング教育を考えていく1つのヒントとしたい。
著者
長谷川 昇
出版者
東海学園大学
雑誌
紀要 (ISSN:02858428)
巻号頁・発行日
pp.77-102, 1965-04-20

In the 1st year of Meiji (1868), at the juncture of the Boshin War, which was fought between the Imperial Court and the Tokugawa Shogunate, a militia corps, known as Somo-Tai, was organized in great haste by the Owari Clan's command and was made to participate in the war. The present writer has tried to elucidate the character of this corps by restoring to the original state the process of organizing it, its war services, and the general movement of its personnel subsequent to the demobilization, in accordance with the new data discovered by himself. This is also an attempt to clarify the relation between the Jiyu-Minken Undo (an antigovernment movement during the second decade of Meiji) and chivalrous-spirited gamblers from the viewpoint of the Somo-Tai.