著者
野村 慎一郎
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は,環境条件による相分離を利用した新規リポソームDDS(薬剤送達システム)の開発である.研究代表者はリポソーム内で無細胞タンパク質合成を行わせることにより,目的のタンパク質のみを発現させたリポソームが構築可能であることを示してきている.最近,細胞間で相互の物質輸送を担う膜タンパク質・コネキシンをリポソーム膜に発現・提示しうるとの実験結果を得た.この結果を利用し,細胞へのDDSへの利用可能性を求めた.サイズおよび組成の異なるリポソーム環境で膜タンパク質を組み込み,培養細胞に水溶性蛍光色素を非破壊的に輸送することに成功した.またペプチド薬剤をモデルとして細胞内に輸送し,細胞内の遺伝子発現の制御が可能であること,異なるタイプのコネキシンの発現により標的選択性が得られることを示した.
著者
小松 誠和
出版者
久留米大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究は花粉症のアレルゲンに対する生体の免疫応答を解析し、病態の予後予測可能な診断系を確立するとともに、ペプチドによる減感作療法への応用可能性について検討することを目的とした。平成18年度より引き続きSBP, Cry j1およびCry j2に対するIgG, IgE,IgM,IgAについて患者を追加しその血液を用いて抗体を検討した。その結果、患者の症状の度合いに伴って抗体比のパターンが得られることが確認された。同様にCry j1およびCry j2に由来する少なくとも84種類のペプチドを用いた抗体測定において、5種類のペプチドについて健常者(非花粉症患者)と花粉症患者との間に統計学的有意差を認めた。花粉症患者及び健常者(非花粉症患者)より末梢血を採血し、そのPBMCを分離し上記ペプチドの存在下で一定期間培養を行い、その培地中に産生されるサイトカインについて検討したが、変化は認められなかった。また、抗原+アジュバントにより一定期間ラットを免疫したが抗原特異的IgE抗体の産生を認めず、ペプチド投与における変化は陰性を示した。上記結果より、SBP,Cry j1およびCry j2、並びに健常者(非花粉症患者)を花粉症患者に抗体価の統計学的有意差を認めたペプチドに対する抗体を末梢血より測定することにより、花粉症の予後予測可能な診断系が確立できた。ペプチドによる減感作療法の可能性については、選択したペプチドでは低いと考えられた。
著者
矢野 宏光
出版者
聖カタリナ大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2002

我が国の運動心理学領域における先行研究においては、軽度の強度強度で行う身体運動が不安や抑うつの軽減に有効であり、その結果自尊感情は向上するという報告はあるものの、高強度での身体運動による抑うつ低減効果についてはほとんど述べられていない。むろん、高強度スポーツの参加者に適合した尺度の開発についての研究もほとんどなされていない。著者は、ウルトラマラソン(以下UM)という、1日で100キロもの長距離を走りきる過酷な競技に参加する中高年を研究対象として、UM完走が精神的健康度にどのように影響を与えているかについて研究を継続してきた。その結果、UMへの挑戦という大きな達成課題を設定し、それに挑戦することで自尊感情が高まり、抑うつ傾向は軽減される。そして、それによって精神的健康度の向上に結びつくという傾向が認められている。そこで、平成16年度においては、1)研究対象者について継続的に質的・量的両方にわたりデータ収集を行い、高強度スポーツ参加者の特徴をより詳細に分析・検討する。2)著者が現在作成している高強度スポーツ参加者用に適合した自尊感情測定尺度の精度を向上させ、より適合度の高い尺度にしていくことを本研究の目的として今年度の調査を実施した。その結果、以下の事項が知見として得られた。1)中高年UM参加者の自尊感情がレースを通してどのように変化するかという点に関しては、UMのレース結果(完走あるいはリタイア)に直接的に関与しているのではなく、レース後に現在の自己をどのように評価しているかによって、自尊感情の増減が決定されることが明らかになった。また、評価はレース後のみを対象としてはおらず、レースに挑むまでに個人がどのようなプロセスを踏んで、どのように準備したかによっても自尊感情の増減が異なることが判明した。2)UMへの挑戦によって変化した自尊感情は、どれだけ継続・保持するのかという課題に関しては、その個人がおかれている社会環境によって大きく異なっている。すなわち、どれだけストレスの強い職場であるか、家族との良好な関係が営まれているかなどによって、継続・保持の期間は異なってくると考えられる。だが、少なくとも社会環境が悪化した場合においては、中高年のUM参加が自尊感情の再現に大きく貢献していることが質的分析から明確となった。
著者
根岸 隆之
出版者
青山学院大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究では内分泌撹乱化学物質のヒトにおけるリスク評価、特に神経発達影響のリスク評価について有用な情報を提供するためにカニクイザルを用いた神経発達影響評価系の確立を試みた。まず、カニクイザルの神経発達を分子生物学的に評価した結果、生後直後から60日にかけて急激に発達することを明らかにした。また、この時期に甲状腺ホルモンを欠乏させると抑制性神経伝達システムの発達が妨げられることを明らかにした。加えて影響評価に適したカニクイザル胎仔由来神経系細胞の培養法を確立した。
著者
白水 始
出版者
中京大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2006

講義は今日でも様々な教育機関で使われるが,その内容保持や理解に関する研究は少ない.本研究では,(1)初学者の講義理解の実態解明,(2)支援方法の開発と評価,(3)他機関への転用実験,(4)わかりやすい講義の原則同定を行った.結果,(1)講義内容は1年後には5%弱しか再生されないが,(2)内容を学習者が説明しあう協調学習活動や(3)講義を振り返るビデオシステム,(4)よく構造化された講義という総合的な支援で飛躍的に学習の質が向上した.
著者
高橋 篤史
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2008

ミラー対称性と呼ばれる代数学と幾何学の役割を入れ替える対称性のアイデアにより,特異点に対して代数学・表現論・幾何学に付随した3種類の三角圏が定義される.これらの三角圏の性質に着目することにより,「アーノルドの奇妙な双対性」と呼ばれる特異点の双対性が,尖点付きリーマン面と群作用付きカスプ特異点の間に存在するミラー対称性として自然に説明され,無限個の特異点に一般化されることを示した.
著者
川島 寛之
出版者
新潟大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2010

骨軟部肉腫に対するテロメラーゼ特異的制限増殖型アデノウイルスによるウイルス療法の効果と殺細胞メカニズムの解明を目指した。細胞株を用いた実験では、アデノウイルスレセプターやテロメラーゼ逆転写酵素の発現量に比例し、容量・時間依存性にウイルス増殖が起きると同時に、オートファジー、アポトーシスの両機序を介して殺細胞効果を発揮することがわかった。さらに、マウス骨肉腫モデルでは、本ウイルス療法により骨肉腫の増大が著明に抑制されることがわかった。
著者
猪上 淳 A. CURRY
出版者
独立行政法人海洋研究開発機構
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2006

急速に変化する北極圏を機動的かつ安価に観測するためのシステムとして自律型無人小型飛行機(UAV)を導入した。観測・データ解析の結果、(1)衛星観測による夏季海氷密接度は海氷の表面融解の影響を受けて7%過小評価していること、(2)陸面の植生分布等の差異によって表面温度の変動が3度〜7度も幅がありその影響が大気境界層内にも及ぶこと、(3)海面水温の空間分布の変化に伴い大気境界層が変質することなど、大気・海氷・海洋・陸域の各分野においてUAVが有効な観測システムであることが示された。
著者
石川 可奈子
出版者
滋賀県琵琶湖環境科学研究センター
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2007

琵琶湖の植物プランクトン133株を単離培養し、真核生物は18S、原核生物は16S rRNA遺伝子を増幅するためのユニバーサルプライマーを用いてPCRを行い、クローニングの後、塩基配列の全長解析を行った。琵琶湖で主に出現しやすいプランクトン塩基配列のアライメントにより、ターゲットとする18種を特異的に検出するためのプライマーの設計、また、それらを用いた定量的PCR(リアルタイムPCR)を用いた検出を試みたところ、顕微鏡観察で確認された種の検出ができた。また、藍藻類全体をターゲットとしたPCR-DGGE(変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法)を用いて野外湖水の群集構造解析行ったところ、これまで報告のないピコプランクトン種のバンドが多数検出され、今後、分子分類を用いることにより長期のモニタリングだけでなく、プランクトン群集の多様性がより客観性の高い分析手法で明らかになると示唆された。
著者
安田 静
出版者
日本大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2002

本研究課題遂行のため,昨年度(H15年)は夏と冬の2回,科学研究費補助金によって調査研究のための出張を行い,主にフランス国立図書館付属パリ・オペラ座図書館で現物調査を行うことができた.この調査をもとに,本年度(H16年)はまず,2004年5月にロシア(サンクトペテルブルグ市)で開催された国際演劇学会で発表を行うことができた.学会のテーマは「演劇世界における演出家(ディレクター)」というもので,本研究課題と極めて密接な関わりを持つ.そこで,パリ・オペラ座バレエ団の舞踊監督(ディレクター)を務めた振付家ルドルフ・ヌレエフの代表的振付作品『白鳥の湖』をとりあげ,演出家としての彼の仕事について分析を行った.演劇の研究者主体のこの学会では,舞踊作品において,演出家による「演出」と演者の「演技」の部分とはどのように境界を見定めることができるのか,などの質疑が出された.舞踊を見慣れた者にとって,両者の区別は自明のことなのだが,活発な質疑応答を通じて,演劇とは異なり(一般的には)書かれたテクストを持たない舞踊特有の問題点を明らかにできた.2004年7月には,ブラジル(リオ・デ・ジャネイロ市)で開催された国際美学会でも発表を行うことができた.この学会では,オペラ座バレエ団にも数多くの振付作品を残しているウィリアム・フォーサイスについてとりあげ,作品のアイデンティティと保存・継承の問題について考察を行った.以上の通り本年度は,科学研究費補助金の過年度調査研究旅行で得られた知見を活用して,2つの大規模国際学会で発表を行うことができた.なお,前者の発表については,舞踊における演出の諸問題の特異性に注目して論文にまとめ,研究紀要に発表した.
著者
山田 邦夫
出版者
中部大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、花弁肥大成長の仕組みを明らかにし、つぼみからの花弁の成長つまり開花現象を解明することにある。さらにそのメカニズムを制御し、切り花などのつぼみから開花に至る過程を人為的にコントロールすることを目標としている。バラ切り花の開花にはエクスパンシンやXTHが重要であることが、遺伝子やタンパク質の発現量変動を調べることで明らかとなった。また、XTH活性に対する阻害剤であるXG9という糖の効果について、比較的高濃度のXG9を切り花に処理すると花弁の成長を促進し、低濃度で処理すると逆に開花を阻害することが分かった。さらに、バラ切り花がつぼみから開花する際、一日のうちでも明期が始まった数時間しか花弁の成長が起こらず、それ以外の時間帯はほとんど成長していないことが明らかとなった。
著者
吉永 美香
出版者
名城大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2007

住宅建物の陸屋根上に水膜を形成し,夏期における最上階居室の暑熱環境を緩和させる手法について効果の検討を行った。H19年度に光透過型ルーフポンド(RP)試験体を用いた実測による熱収支分析を,H20年度に愛知県に実在するRC造集合住宅の最上階にある居室を対象に実験的検証を行った。いずれも高い屋根表面温度抑制効果が確認された。さらにRC造戸建住宅の屋根全体にRPを設置した場合の冷房熱負荷削減効果を計算により検証した。以上より,RPが効果的に冷房時熱環境を改善するとともに,冷房設備使用に伴うエネルギー消費量を抑制することが明らかとなった。
著者
平野 恭弘
出版者
独立行政法人森林総合研究所
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2006

土壌酸性化の樹木への影響を、根の生理指標を用いて評価する方法を確立するために、樹木への影響要因であるアルミニウムが、根の生理指標の一つカロース(多糖類の一種)蓄積量に与える影響を調べた。スギでは、他の樹種と異なった根端のアルミニウム蓄積特性により、過剰アルミニウム環境下で根端にカロースが蓄積されにくいことが明らかとなった。スギ根のカロース蓄積量は土壌酸性化に対する根の指標として有効でない可能性が示唆された。
著者
水原 啓暁
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2009

エピソード記憶に代表される海馬記憶を実現するための動的な皮質間ネットワークが創発するメカニズムを解明することを目的として,脳波とfMRIの同時計測を実施した.海馬記憶に関連する課題として風景写真を観察中の脳波とfMRIの同時計測にもとづき,海馬記憶に関連する皮質ネットワークを同定し,前頭からのシータ波の発生タイミングにおいて,前頭前野内側面,前頭眼野,高次視覚領野および海馬傍回場所領域の反応が発生することを示した.また,神経の振動子ダイナミクスの協調により認知処理に必要な皮質ネットワークが動的に形成されていることを示すために, fMRIの空間分解能で特定した皮質位置での脳波時系列データを再構築する技術を開発した.
著者
宮本 英昭
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2008

小惑星イトカワの岩塊上にある高輝度の点に着目し、岩塊が10~100万年という極めて若い年代を示すことを示した。これは岩塊が幾度となく小惑星表面において流動化したとする研究代表者らの説と調和的である。さらに、3次元の複雑形状の粒子の分布を計算する数値シミュレーションコードを開発し、イトカワの高解像度画像における岩屑は幾何学的に飽和していることを示した。また、岩塊粒子の移動に関する理論的な研究を進め、特に静電気力による微粒子の浮遊効果が重要な意味を持つ事をあきらかにした。そして土星の衛星アトラスでは、その表面更新に主要な役割をはたしていることを示し、この現象が、実は微小重力下においては極めて重要な地質プロセスの一つであることを明らかにした。
著者
牧平 清超
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2006

RANKL添加に依存して破骨細胞へと分化するRAW264.7細胞を用いて、TRAFfamilyを中心としたシグナル伝達に関して詳細な検討を行った結果、TRAF1が破骨細胞の分化を負に調節する分子であることが明らかとなった。次に、様々な阻害剤をRAW264.7細胞に添加しTRAF1をマーカーとして骨吸収阻害物質を探究した。Na+/K+ATPase阻害剤であるouabainとvanadateが破骨細胞同士の融合を抑制することを初めて見いだした。
著者
森 俊哉
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2004

本研究課題では、火山からのガス放出量の短周期時間変動を測定するため、火山噴煙中の二酸化硫黄カラム量の2次元分布を測定できるような装置を新たに開発し、短周期変動について知見を得ることが目的である。CCDカメラに二酸化硫黄の紫外吸収帯のある波長域の紫外バンドパスフィルタを取り付けて観測することで、二酸化硫黄カラム量の2次元分布を可視化する方法を開発した。これにより、これまで難しかった、秒スケールでの二酸化硫黄放出量の測定が可能となった。平成18年度の前半は、これまでの観測装置をさらに改良し、2台のCCDカメラに上記のバンドパスフィルターと二酸化硫黄吸収がない波長域のバンドパスフィルターをそれぞれ装着した。同時に撮像した2つのCCDカメラでの画像を合成することで、約2秒間隔で二酸化硫黄噴煙の分布の画像を撮影できるようになった。桜島火山の観測では、この新しい装置を用いて火山ガス放出率の秒スケールでの変動の様子を明らかにした。そして、二酸化硫黄放出率が数分の周期で平均値に対して±80%程度変動していることが明らかにすることができた他、この周期が約8.3分と3.9分であることが分った。9月末から10月始にかけて、イタリアのエトナとストロンボリの2火山で観測を行った。特にストロンボリ火山での観測では、小爆発に伴う二酸化硫黄放出率の変動の様子も二酸化硫黄分布映像でとらえることができた。噴煙中の二酸化硫黄を可視化する測定手法をまとめた論文をGeophysical Research letters誌に発表した(次頁の研究成果参照)とともに、10月には熊本県で開催された日本火山学会で桜島での成果を発表した。また、12月には米国サンフランシスコで開催されたAGUの秋季大会でこれまでの成果の発表を行った。
著者
戸谷 剛
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2004

平成16年度は親油性表面での、平成17年度は疎油性表面での、液滴の飛散と捕集を分ける閾値について調べた。作動流体には、液滴ラジエータでの使用が考えられているシリコンオイル(信越化学工業株式会社KF96-50cSt)を用いた。シリコンオイルと親油性を持つ表面はアルミ面をもちいることで、疎油性を持つ表面はアルミ面に撥油剤(信越化学工業株式会杜KP-801)を塗布することで実現した。宇宙空間(微小重力,真空環境)での液滴の捕集と飛散を模擬するために、液滴の衝突は真空チャンバー内で行い、航空機(ダイヤモンドエアサービス株式会社MU-300)を用いて微小重力実験を行った。その結果、以下の知見を得た。1.通常重力下での液滴の飛散と捕集を分ける閾値(K=We×Oh^<-0.4>)は、親油性表面で○○○、疎油性表面で○○○であることが分かった。2.宇宙空間と通常重力下での液滴の捕集と飛散の結果を比較したところ、微小重力下と地上重力下での結果に違いがないことが分かった。3.宇宙空間での液滴の飛散と捕集を分ける閾値は、微小重力実験の回数が少ないことから、はっきり特定することはできなかったが,1,2の結果より、通常重力下での閾値の値と違いがないことを推測することができた。4.親油性表面と疎油性表面で液滴の捕集と飛散を分ける閾値に大きな違いがないことから、液滴回収器の表面は親油性でも疎油性でも良いことが分かった。5.1.の結果は従来の報告よりも大きい値であり、使用した作動流体の粘性、表面張力の違いが原因と推測される。6.液滴の捕集と飛散を分ける閾値は、液膜厚さには依存しないことが分かった。従来の報告よりも液滴速度が高速(○○〜○○m/s)であるため,液滴の持つ運動量により,液滴の衝突部の流体が排除され,液膜厚さがほぼ一定であったためであると推測された。
著者
萩島 理
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2008

空調発停行為を含む居住者の生活行為のタイムスケジュールの多様性を考慮し住戸の電力,熱,水等のユーティリティデマンドを高時間分解能で予測する枠組みTotal UtilityDemand Prediction System(TUD-PS)の構築を行った。また、集合住宅を対象としたTUD-PSによる数値計算により冷暖房負荷の確率特性についての検討を行い、平均値で基準化した全熱負荷の確率密度分布が住戸条件や家族構成の違いによらず概ね普遍的な傾向を示し, LDKにおける暖冷房の基準化全熱負荷の確率密度がアーラン分布で近似できることを明らかにした。
著者
掛谷 英紀
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2003

昨年度までに、多視点高解像度立体ディスプレイの基本は完成したが、今年度は、画質の向上、視野角の拡大、輻輳調節矛盾の解消による目の疲労の低減の3点について、改善を試みた。まず、画質の向上については、昨年度までのシステムで使っていたフライアイレンズを使わないシステムの構築を試みた。この場合、頭を動かしたとき、画像が不連続に切り替わるような違和感が生じていたが、それを取り除くためのレンズ光学系を設計した。この設計で、不連続感が低減されるとともに、視野角の拡大も同時に解決された。ただし、このレンズ光学系だけで、完全に不連続感が取り除かれるわけではない。この不連続感を取り除く方法として、多層にわたる弱拡散を行う方法を試み、一定の効果を上げた。この方法は、同時に輻輳調節矛盾による目の疲労を緩和する効果も確認された。輻輳調節矛盾の解決方法としては、昨年度まで行っていたシリンダーレンズと高周波縞状パターンの組み合わせ方法について、より詳細な解析を行い、その理論はほぼ完成された。ただし、この方法は上述の多視点方式に組み合わせることは難しい。そこで、多視点方式に組み合わせが可能な方法として、多視点立体ディスプレイとボリュームエッジを組み合わせる方法を昨年度提案したが、今年度はその実装を行った。アグティブなエッジ提示方法としてはモノクロ液晶パネルを多層に重ねる方法を試み、一定の成果をあげた。また、より廉価な方法として、メッシュテクスチャを多層にばらまく方法を新たに提案し、レフラクトメータを使った目の測定実験で、この方法でも輻輳調節矛盾の解消が期待できることが確かめらた。この3年間の研究成果により、提案する多視点立体ディスプレイは商品化できるレベルのシステムを達成したということができよう。