著者
牧 輝弥
出版者
金沢大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2010

黄砂とともに風送される微生物群(黄砂バイオエアロゾル)を、黄砂発生地(タクラマカン砂漠)および飛来地(珠洲、立山等)の高度1000m-3000mで採取した。分離培養法および遺伝学的分析手法を駆使して、黄砂バイオエアロゾルに優占する種を突き止め、優占種が飛来地に沈着するとともに、ヒト健康影響および生態系の動態に関わっている可能性を明からにした。ただし、優占種以外の微生物種(非優占種)には、数百種が含まれることが分かり、その生態学的および生理学的特徴は推測に留まる。
著者
有賀 健高
出版者
石川県立大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

福島県での生産量が多い農林水産物及び水の計10品目に関して、日本全国の約8700人の消費者を対象にアンケートを実施し、福島第一原子力発電所事故後の風評被害の実態について探った。アンケートデータを分析した結果、放射線に関する知識がなく、原発から遠方に住むため普段原発近辺の食品をあまり目にしない消費者ほど原発近辺の食品を買うのを避ける傾向があり、こういった消費者は風評に影響されやすい可能性が示唆された。一方、放射線の危険性についての知識があり、風評ではなく自分の判断に基づいて購買を回避している消費者の場合は、風評ではなく実害もあるという考えから購買を回避している面もあることが明らかとなった。
著者
若山 照彦
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2003

卵子及び精子の凍結保存には定期的な液体窒素の補充が不可欠であり、長期間安全に維持するためには膨大な経費が必要である。そこで我々は精子および卵子の簡便な室温(非凍結)保存法の開発を試みた。従来の凍結保存に使われている試薬(グリセロールなど)は非凍結保存では毒性を示し、保存後の精子から産子を作ることはできなかった。しかし我々は高濃度のNaClを保存液に加えると精子の保存性が促進されることを発見した。この「塩漬け」方法では、保存中の精子の先体部が破けるなどのダメージが生じ、すべての精子が保存直後に死滅してしまうが、顕微受精技術によってそれらの精子を卵子内へ注入することで室温では10日間、4℃では2ヶ月間保存しても高率に産子へ発育させることが可能になった(Thaun et al., 2005)。これは従来の記録(室温で3日、4℃で1週間)を大幅に塗り替えている。以前我々は精子の凍結乾燥法を開発したが、今回の方法は高価な凍結乾燥機を必要とせず、より簡便な方法である。一方我々はこの方法が卵子にも効果があるかどうか検討してみた。その結果室温で24時間保存した卵子から顕微受精によって産子を作出することに世界で始めて成功した(Wakayama et al., 2004)。これまで卵子の室温保存は数時間が限度とされていたことから、本方法は精子だけでなく卵子においても有効であることが示されている。これらの研究から生殖細胞の保存にはDNAにダメージがなければ、細胞の生き死には重要ではないことが明らかとなった。また我々は生殖細胞を持たない不妊マウスからでも、体細胞核移植技術などを利用して子孫を作出する方法も開発中である(Wakayama et al., 2005)。
著者
梶本 裕之
出版者
電気通信大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2009

本研究は情動を引き起こす触覚体験の単位要素の同定および情動を引き起こす触覚体験に必要な触覚ディスプレイの設計論構築を行った.応用事例として,音響スピーカを用いた触覚提示装置,鉛筆削りを模した触覚提示装置,笑い増幅器,音響コンテンツに合わせた耳触覚,歯磨き振動変調による心地よさ増幅,立毛による驚き感覚の増幅,擬似心拍の提示による親近感の増幅を行い,さらに触聴覚間の和音の存在を明らかにした
著者
林嵜 和彦
出版者
福岡教育大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、海外におけるコミュニティ・スクール(以下CS)の制度・実践・諸研究を国際比較の観点から分析し紹介した。分析対象は、英国の拡張学校・拡張サービス、スコットランドの統合CS、合衆国のフルサービスCS、チェコとボスニアのCS、韓国のCSである。日本のCSとはことなり、これらのCSはそのいずれにおいても貧困削減やコミュニティ開発をつうじた学力の底上げをその目的としており、本研究では英国と米国を中心に、保護者支援や子どもの生活支援などの多様なとりくみを事例研究としてあきらかにした。
著者
荒牧 英治
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2008

電子カルテが急速に普及しつつある現在,電子カルテ文章からの情報抽出技術が待ち望まれている.しかし,カルテ文章は自然言語で記述されるため,現状では扱いが困難である.本プロジェクトでは,カルテに特化した情報抽出システムの開発を目指す.また,同時に研究利用可能な模擬カルテデータの構築も行い,研究材料として利用可能にする.
著者
高田 礼人
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2004

これまでに、エボラウイルスなどの新興感染症は世界の限られた地域でしか認められていないが、昨今の急激な国際化による人の移動および動植物の輸出入に伴い、それらの疾病の原因病原体が他国に拡散する可能性が高まっている。さらに近年、エボラウイルスのような致死率の高い出血熱ウイルスがバイオテロリズムの手段として使用される危険性が高まっており、対策を講じる必要がある。しかし、ウイルス性出血熱に対する効果的な医療手段はほとんどなく、予防・治療法を開発する事が急務となってきた。これまでに申請者は、エボラウイルスZaire株の表面糖蛋白質(GP)分子はウイルスの感染性を中和する抗体および増強する抗体の両方の標的である事を証明した。そこで、エボラウイルスの病原性の強さと感染増強抗体との関わりを調べるために、病原性の非常に強いZaireウイルスと病原性の比較的弱いRestonウイルスの間で、感染増強抗体誘導能を比較した。ZaireウイルスとRestonウイルスGPに対するマウスの抗血清をそれぞれ作成し、血清中の感染増強活性および中和活性を調べたところ、中和活性には殆ど差が無かったのに対して、感染増強活性はZaireウイルスの血清の方が優位に高かった。これは、感染増強抗体が結合できる抗原決定基の種類と数が両ウイルスの間で異なることを示している。また、この感染増強活性は主に血清中のIgG2a抗体によるものであることが示唆された。以上の成績より、エボラウイルスのGP分子そのものの感染増強抗体誘導能がウイルスの病原性と関連があることが示唆された。(注)実際のエボラウイルスを用いた実験は、Heinz Feldmann博士の協力でカナダの国立研究施設Canadian Science Centre for Human and Animal Healthで行った。
著者
大久保 智哉
出版者
独立行政法人大学入試センター
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では,大学入試センター試験などの大規模試験において新しい試験運用方式を検討するために,タブレット端末と統計理論を利用したテスト・システムの実験的運用がおこなわれた.本研究の成果として,情報端末を用いることで広がる新たな出題形式について成果を得た.さらには,試験問題を作成し問題データベースを構築した上で,実際にタブレット端末を用いて試験実施がおこなわれた.タブレット端末を試験用に管理するためのシステムについても検討が重ねられ,大規模試験における情報端末の効率的運用のために多くの知見が得られた.
著者
松岡 良樹
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究の目的は、銀河系外からやって来て可視光波長帯で観測される全ての光の総和である「可視光銀河系外背景放射」(Cosmic Optical Background; COB) の世界初検出である。当該年度にはまず、本研究期間中の平成23年度に達成した「惑星探査機パイオニア10/11号のデータによるCOB検出」についてさらに検討と議論を進め、国際学会、欧米学術誌などにおいて精力的に成果の発表を行った。また、銀河間空間に浮かぶ暗黒星雲の巨大版とも言うべき「暗黒銀河」HI 1225+01を対象とし、ニュージーランドのMOA-II 1.8m望遠鏡を用いて観測したデータの解析を行った。その結果、残念ながらこの暗黒銀河によるCOB遮蔽効果の検出には至らなかった。その原因と改善の方策を探るため、HI 1225+01の性質を詳細に探るフォローアップ研究を行った。MOA-IIで観測した可視光Rバンド画像の他に、Sloan Digital Sky Surveyの可視光5バンド、UKIRT Infrared Deep Sky Survey の近赤外線4バンド、Spitzer IRACおよびMIPSの赤外線7バンドの測光データをアーカイブから取得し、銀河モデルが予測するスペクトルモデルとの比較を行ったところ、HI 1225+01は非常に若くかつ熱いダスト成分を持つ銀河であり、blue compact dwarf galaxyと呼ばれる種族に良く似た性質を持つことが解明された。COB遮蔽が検出されなかったのは、おそらく可視光で十分な減光を起こすだけのダストがこの銀河に不足していたためと考えられる。この結果について欧米学術誌上で発表を行った。さらにCOBに寄与する個々の天体構成について調査を進めるべく、岡山観測所188cm望遠鏡の近赤外線撮像分光装置ISLEを用いて観測キャンペーンを行い、多数の活動銀河核のスペクトルを取得した。解析作業には予想外の時間がかかり、このデータについては現在も鋭意解析を行っているところである。
著者
小田 寛貴
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2008

平安・鎌倉期の古写本は完本としてはほとんど現存しないが,掛軸などに利用されたため断簡としては大量に伝来している.これが古筆切である.しかし,後世に制作された偽物・写しも多く混在するため,その高い史料的価値も潜在的なものでしかない.本研究では,こうした古筆切に放射性炭素年代測定法を適用し,史料的な価値を判定するとともに,平安・鎌倉期古写本の少なさゆえに従来は困難であった研究を行ったものである.
著者
渡部 森哉
出版者
南山大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

南米アンデス地域において後800-1000年頃にワリ帝国が台頭した。本研究はワリ帝国の北端に位置する行政センターであるエル・パラシオ遺跡を事例として、アンデスの都市構造の共通性と、エル・パラシオの特殊性を詳らかにすることを目的として遂行した。同遺跡において第3次発掘調査を実施し、発掘データの綿密な分析を行った。ワリ帝国の行政センターは内部が細分される直行構造のタイプと、不規則に建築物が集合するタイプがあり、前者は多くの人々が恒常的に生活する場ではないのに対し、後者は相対的に多くの人々が生活し、墓や水路などの施設が伴う。エル・パラシオは後者に含まれることが判明した。
著者
VANGOETHEM ELLEN
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

風水における景観上での四神の表現方法に関する比較研究である。最古記録では、四神に対応する地形的な特徴は不明瞭なままである。後に、二つの共存する風習が、風水の中で、発達してきたようである。一つでは、自然地形の存在が強調され、四神は山などの地形として表現された。もう一つでは、それぞれの四神について、異なる自然的・人為的な地形的特徴の存在が必要とされていた。本研究では、後者の風習に注目した。文書資料の調査に基づいて、四神相応の思想の起源と発展をさかのぼり、異なる記録に関する基礎分析を行った。そして、「四神相応が宮都の位置の決定過程において利用されていた」という一般的な認識に対し、異議を唱えた。
著者
田村 雅紀
出版者
工学院大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究は,建築ストックが,地震災害等により大量に発生した災害廃棄物を迅速かつ適正に処理可能とする方法・システムを具体的に提示した。続いて、震災廃棄物起源材料を分類し、再び建築材料に利活用した際の環境影響を評価した上で、実際に震災廃棄物起源材料を混和した各種建材を製造・性能評価を行なった。なお、研究開始直後に、東日本大震災が発生したため、実災害時に生じる課題を反映しながら研究を遂行した。
著者
長尾 大輔 玉井 久司 喜多 英敏 田中 一宏 岡崎 文保 斎藤 幸恵
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2008

非球形粒子として雪だるま型あるいはダンベル型の異方性複合粒子を 合成した。本複合粒子は、粒子を形作る有機ポリマーと、そのポリマー内部に埋め込まれた球無機成分に外場応答性を与えれば、外場に応答する異方性複合粒子も合成できる。このような特徴を有する異形複合粒子に対して磁場、電場等の外場を適切に 印加すると、異方性粒子が向きを揃えた状態で集積することを顕微鏡観察により実証した。
著者
恒次 祐子
出版者
独立行政法人森林総合研究所
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2003

これまでに実験室実験において,生理応答の個人差をパーソナリティで説明することを試み,不安傾向,タイプA型傾向と味覚・嗅覚刺激時の脳血液動態との間に関連がある可能性を見出した。今年度は実験をフィールドに拡大し,実際に生活の場で自然環境と触れる際の生理応答の個人差について唾液中コルチゾールならびに分泌型免疫グロブリンA (s-IgA)を用いて検討した。森林浴実験を国内10箇所で実施した。被験者は毎回異なる男性大学生12名とし,午前中に森林中にて15分間の歩行を行い,午後には同じく森林中にて15分間の座観(椅子に座って景観を眺める)を行った。コルチゾール,s-IgA分析用の唾液は,朝,歩行前後,座観前後,夕方の1日6回行った。また対照として各地で「都市部」実験地を設定し,同じスケジュールで測定を行った。結果として,コルチゾール濃度にはどこの実験地においても明確な日内変動が認められ,主観申告との対応も良く出ていた。一方IgA濃度については主観申告との対応があまり見られず,値の個人差も大きかった。これについて文献的調査を行ったところ,ソーシャルサポート(日常生活で自分をサポートしてくれる人の数等に関する主観申告),タイプA型傾向などによってs-IgA濃度のベースラインが異なるという報告や,ストレスの種類によって視床下部-下垂体-副腎皮質系または視床下部-交感神経系のどちらが刺激されるかが異なり,それにより免疫応答の方向が決定されるという報告があることが分かった。s-IgAについては今後さらに文献的調査を実施し,刺激受容から分泌までの時間や,濃度の上昇・低下の持つ意味を整理する予定である。
著者
渡辺 健太郎
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

化合物半導体からなる太陽電池は高効率が期待できる反面、高コストであることが課題であった。この問題に対して、結晶成長時にGaAs基板上に疑似格子整合するInGaAs/GaAsP体重量子井戸層を介して太陽電池を形成し、この多重量子井戸が選択的に赤外線を吸収する性質を利用して、波長1064nmのレーザー光照射によるドライプロセスによって太陽電池層と基板を剥離する赤外線レーザーリフトオフ(IR-LLO)技術を提案し、基礎研究を行った結果、数mmサイズの小規模ながら剥離工程が確認された。
著者
吉田 早悠里
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は、エチオピア南西部カファ地方の民族学的研究の第一人者であるF.J.ビーバーが残した資料群を学術研究に利用するための基盤を整えることを目的とし、F.J.ビーバーの人物詳細の解明と、資料群の整理、デジタル化、目録作成を実施し、複数の場所に分散しているF.J.ビーバー資料群の全貌解明に取り組んだ。特に、資料の内容と詳細が明らかになっていなかったヒーツィンク区博物館所蔵資料と、K.ビーバー個人蔵資料の資料整理を行い、それらを学術研究に活用するための素地を整えた。これにより、F.J.ビーバーの資料群を後世に継承し、広く世の中に資するものとして活用していくための基盤を形成した。
著者
江畑 冬生
出版者
新潟大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究課題ではユーラシア大陸の東西に広がるチュルク諸語のうち北東語群に分類される諸言語を研究対象として,形態音韻プロセスや文法形式の生産性・義務性にも着目しながら,共時的な文法構造の記述と相互分岐と相互接触による歴史的変遷の解明を試みた.その中でも主としてサハ語・トゥバ語・ハカス語という3つの未解明言語に焦点をあて,現地調査とコーパス調査の両方を活用しながら,形態音韻規則・文法形式の義務性・形態法上の特徴・ボイス接辞の用法・証拠性関連接辞の用法・膠着性の度合い・格接辞の用法などに関する記述的・対照言語学的研究において新たな成果を得た.
著者
福 康二郎
出版者
関西大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

過酸化水素(H2O2)を利用した環境調和型物質変換反応系の実現を目指し、『光触媒的なH2O2製造』と『H2O2を利用した有機合成反応』について、低環境負荷な触媒反応(プロセス)を実現するための設計指針を得ることを目的とした。主には次の項目を検討することで、上記反応系の発展に貢献し得る触媒設計指針が得られた。『(1)Pd-BiVO4光触媒を利用した酸素からのH2O2製造』、『(2)アルカリ土類金属酸化物で修飾したBiVO4光アノード上での水からのH2O2製造』、『(3)無機アニオンを固定化した層状複水酸化物触媒によるスルフィド酸化反応』、『(4)BiVO4熱-光触媒を利用したオレフィン酸化反応』
著者
内藤 直子
出版者
(財)大阪市文化財協会
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2006

刀装具蒐集に関する基礎情報として、光村氏が心血を注ぎ完成した『鏨廼花』のデータベース化を行うと共に、作成に当たっての収集情報を書き留めたメモ集を報告書に再録した。加えて、これまで注目されていなかった幸野楳嶺門下の画家との交流及び収集作品の特定を行うための基礎資料を収集し、報告書中にまとめた。今回の研究では、彼のパトロン活動が特に活発であった時期を明治30年代後半期に特定できるのではないかという仮説を提起するに至るとともに、研究過程では新出資料の発見や、既出資料の新たな側面を見いだすに至った。