著者
池内 淳子
出版者
摂南大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2010

阪神・淡路大震災以降,災害医療への対策が整備され,昨今の地震災害時でも効果を発揮している.しかしこれらの地震災害は中山間地域で発生しており,都市部においても効果が発揮されるかを検証する事は難しい.そこで本研究では,阪神・淡路大震災の資料から「傷病者搬送状況」を抽出して人的被害想定とし,現在の阪神地域における災害拠点病院の「病院防災力」に対する机上シミュレーションを実施した.分析した「傷病者搬送状況」や「病院防災力」の情報は電子地図を用いて整理し,病院防災力については,すでに構築した病院防災力診断指標と国際評価指標とを比較した.
著者
古尾谷 知浩
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、日本古代史における文書行政のあり方を考える上で不可欠な出土文字資料である漆紙文書について、その史料学的性格について次の三つの観点から明らかにすることを目的とした。第一には、漆紙文書は、漆塗作業において用いられた反古紙であることから、漆工房関係遺物全体の中で位置づけること、第二には、漆紙文書と伴出した木簡などの文字資料との関連を明らかにすること、第三には正倉院文書など伝世文書の中に位置づけることである。以上三つの観点を中心に研究を進め、漆生産、流通、漆器生産のあり方と、それぞれの場における反古紙供給のあり方を解明していくこととする。上記の目的を達成するために、具体的作業として、平城京・長岡京などの都城遺跡、及び、多賀城跡・秋田城跡などの東北地方城柵遺跡を含む地方官衙遺跡、その他集落遺跡などから出土した漆紙文書の集成を行った。その成果を踏まえ、特に伴出木簡との関連に留意しながら分析を行った。その結果、都城遺跡についてみると、漆塗作業の場は、継続的に操業していた漆工房の場合、建設現場に関係する場合、天皇、皇族の宮もしくは貴族の邸宅における比較的小規模な漆塗作業の場合、寺院における漆塗作業の場合、という四つの類型に分けられることが判明した。また、地方遺跡についてみると、国府の造営における漆塗作業に際し、国府から払い下げられた反古文書が再利用される場合、国府付属工房に対し、国府から払い下げられた反古文書が再利用される場合、国府付属工房に対し、漆生産地に近い郡において、郡廃棄の反古文書が蓋紙として付され、容器、内容物とともにもたらされる場合、郡家関連の工房に対し、工房に直接関連する部署から反古紙がもたらされる場合、などの類型が抽出できた。このことは、即ち、それぞれの漆塗作業の場の性格により、供給される反古紙の性格が異なることを示しており、漆紙文書の最終保管主体、廃棄主体などをめぐる史料学的性格を明らかにすることができた。
著者
大門 高明
出版者
独立行政法人農業生物資源研究所
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本課題では、カイコの眠性決定座位であるmod,rt,Mのポジショナルクローニングを行うことで、カイコの眠性決定の分子機構の解明を試みた。カイコの眠性変異体modについては、その原因遺伝子の同定と機能解析が終了し、modの原因が幼若ホルモンの生合成の異常によるものであることを明らかにした。rtについては、約400kbまで絞り込んだが、有力な候補遺伝子の特定には至らなかった。Mについては、M候補遺伝子の詳細な発現解析を行い、M座がエクジソン生合成に関わる可能性を示唆する結果が得られた。このMの候補遺伝子は、生物のボディプランに関わる重要な遺伝子であるが、形態形成以外にも内分泌系への関与を通して生物の成長や発育タイミングを決定するという、これまで全く知られていなかった新規の役割を担う可能性が示唆された。
著者
金澤 章
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2003

本研究の研究代表者は、これまでの研究過程において、CaMV 35Sプロモーターの制御下で転写を行うトランスジーンに関して、DNAメチル化を伴うエピジェネティックな変化によって転写の不活性化が起きる現象を見出している。プロモーター配列のメチル化と転写不活性化の関連を詳細に解析する目的から、新規なウイルスベクターを用いて植物ゲノム中に存在する配列をトランスにメチル化し、転写段階でのジーンサイレンシング(TGS)を誘導する系の開発に成功した。この系では、CaMV 35Sプロモーター配列を組み込んだベクターを構成成分としてもつウイルスを、同じくCaMV 35Sプロモーター配列によって転写が制御されるGFP遺伝子をレポーターとしてゲノム中にもつNicotiana benthamiana植物体に接種することを行っている。このようなTGSと転写後のジーンサイレンシング(PTGS)による遺伝子の不活性化の効率の比較を行うために、同じ形質転換植物に対して、GFP遺伝子のコード領域を持つウイルスの接種を行った。その結果、接種後6日後には、TGS誘導ベクターとPTGS誘導ベクターの両者によりmRNA量の減少が誘導された。その後のmRNA蓄積量の減少はPTGS誘導ベクターを用いた場合により顕著であった。また、ウイルス感染の後代にはTGSは遺伝したが、PTGSは遺伝しなかった。したがって、ウイルス接種当代での強いサイレンシングを目的とする場合にはPTGSを誘導するベクターを、次世代への伝達を目的とする場合にはTGSを誘導するベクターをそれぞれ利用することが望ましいという結論を得た。この他、TGSを利用して有用な植物遺伝資源を創成するための標的配列を明らかにする目的から、ダイズの種子貯蔵タンパク質β-コングリシニンのαサブユニット遺伝子の上流域に関してレポーター遺伝子を用いた発現解析を行い、種子における転写制御に関与する配列を同定した。
著者
一之瀬 真志
出版者
明治大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2010

本研究では,1)ヒトの動的運動時における筋代謝受容器反射の特性を定量化する実験手法を確立した.また,2)筋代謝受容器刺激時には,動脈圧受容器反射による血管収縮反応が顕著に高まることを明らかにし,このような末梢反射の相互作用が運動時の循環調節に大きく貢献する可能性をみいだした.これらの研究成果は,運動時の循環調節メカニズムの解明を進め,運動の安全性や健康増進の効果を考える上で有意義な学問的基盤となると考えられる.
著者
森田 正彦
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2008

「外殻の形状情報と高精細でフォトリアリスティックなテクスチャ情報、および内部の構造情報を有した小型実物体の3次元コンピュータモデルを短時間に生成可能とする」ことが本研究の目的である。この目的を実現するために、X線CT装置と超広視野顕微鏡などの画像計測装置を利用した装置開発を行った。本研究成果を用いて作成したコンテンツは実際に多数のミュージアムで使用されており、本研究の有効性を示すことにも成功している。
著者
鈴木 秀士
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2008

絶縁体表面にも適用可能な非接触原子間力顕微鏡と放射光X線を組み合わせた新しいナノスケール元素分析・化学状態分析法、X線支援非接触原子間力顕微鏡(X-ray Aided Noncontact Atomic force microscopy, XANAM)の開発を行ってきた。これは探針-試料間の相互作用を試料原子の内殻電子励起が可能なX線で人為的に変化させることで、探針直下の元素種の同定や化学状態識別を可能とする手法であり、相互作用のX線による変化を詳細に調べ、また信号の高感度化、高空間分解能化に取り組み、探針によって元素種の識別が可能であることを示した。
著者
山口 智子
出版者
奈良女子大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2005

野菜には生活習慣病や老化を予防する機能性成分が多く含まれることが明らかになっている。近年、市場では色の異なる野菜や小型のものなど、見た目に珍しい野菜が出回わり、野菜を購入する際の選択肢が多様化している。そこで本研究では、野菜に含まれる機能性成分のうちラジカル捕捉活性とそれに寄与する成分について着目し、本年度は、野菜の品種、栽培条件、大きさ等に焦点をあて研究を行った。大きさの異なる野菜として、大ショウガと小ショウガの成分を比較したところ、アスコルビン酸量は相違ないものの、総ポリフェノール量やラジカル捕捉活性は大ショウガの方がやや高いという結果が得られた。次に、形状の異なる7品種のナスを用いて、塩もみ・浅漬け・揚げる・煮る・蒸す・焼くの各調理を行い、調理適性を明らかにするとともに、各調理法における美味しさに影響を与える食感について検討したところ、調理後のおいしさと食感、調理適性に品種間差があること、同品種内でもそのおいしさは調理法により差があることが示された。ラジカル捕捉活性は米ナスが最も高く、庄屋大長が最も低かった。栽培条件として、生育日数と機能性成分との関連性を調べたところ、ヤマトマナのラジカル捕捉活性は播種後11日目が最も高く、生育日数の増加に伴い低下し、26日目では11日目の約60%であった。総ポリフェノール量はラジカル捕捉活性と同様、生育日数の増加に伴い減少した。コマツナのラジカル捕捉活性と総ポリフェノール量もヤマトマナと同様の変動傾向を示した。さらに、LED照射によるカイワレダイコンの栽培を行い、LED照射の機能性成分への影響を検討したところ、LED照射試料では、太陽光に類似した波長を持つメタルハライドランプ照射に比べて各機能性成分は低値を示した。また、生物リズムが異なる変動を示すことが明らかとなった。
著者
小島 宏建
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2008

生体組織透過性の高い近赤外光を利用し、実験動物を生かしたまま生体内分子を画像化する方法、あるいはそれを発展させた診断法を確立すべく、社会的にも動脈硬化など各種病態との関連について関心の高い酸化ストレス、活性酸素種を主なターゲットとして必要な蛍光プローブ分子の設計と合成、そしてその応用を行い、生体中で活性酸素種の可視化に成功した。このことは今後の画像診断薬創製の有用な知見となる。
著者
一杉 正仁
出版者
獨協医科大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2005

平成17年度に行った動物実験結果および平成18年度に行った妊婦衝突試験用ダミーを用いたスレッド試験結果を総合的に解析した。その結果、妊婦が時速30km/h以下の追突事故に遭遇した際、腰部にかかる外力のみでは、胎児の予後に悪影響をおよぼすというエビデンスは得られなかった。さらに、追突事故に遭遇した前席乗員は、反動で腹部を車室内部に強打することがわかった。したがって、妊婦乗員のシートベルト着用効果を考えるうえでは、この腹部にかかる外力を低減させることが重要であると結論づけた。シートベルト着用で、追突時における腹部とステアリングとの二次衝突をある程度予防し、子宮内圧の変化を低減できることがわかった。しかし、負荷された加速度が大きいか、あるいは乗車位置がハンドルと近い場合に、シートベルトを着用してもある程度の外力が腹部へ作用することが明らかになった。そこで、さらなる積極的予防策として、緊急ベルト引き締め装置を追突事故時に作動させるシステムを考案した。その結果、比較的高速度の追突事故遭遇時には、子宮内圧をさらに低減させ、胎児保護に効果的であることが示唆された。また、低速度(約13km/h)の正面衝突事故をモデルしたスレッド試験を行ったところ、シートベルト着用時には、子宮内圧の上昇を35〜45%に軽減できることがわかった。したがって、シートベルトの着用は、追突および正面衝突時の妊婦子宮内圧上昇を抑制するうえで有効であった。妊婦のシートベルト着用について社会的議論がされているなか、われわれはシートベルト着用が胎児保護に有効である科学的根拠を明らかにした。本研究成果の一部は新聞、テレビ等でも紹介されたが、これら成果を積極的に公表し、一般の方に正しい知識を啓蒙している。
著者
川本 陽一
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2010

本研究はゲリラ豪雨と通称される都市部での短時間集中豪雨と都 市化の関連について検討を行った。東京首都圏の夏期のゲリラ豪雨については、東京湾・ 相模湾より吹き込む南からの海風と鹿島灘より吹き込む東風の収束域で多く発生する事が 報告されている。東京首都圏の都市化の進展が東京湾からの海風進入性状に与える影響を 検討する為、高層観測による海風の現状の把握と、シミュレーションを用いた海風の性状 に対する都市化の影響の評価を行った。
著者
今村 博臣
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2010

カスパーゼに耐性の蛍光 ATP バイオセンサーを開発し、アポトーシス細胞内の ATP レベルを経時的に追跡する手法を開発した。この手法を用い、カスパーゼ 3の活性化後に細胞内 ATP レベルが減少する事を明らかにし、ATP の減少に関与する分子を同定した。さらに、細胞内 ATP がアポトーシス細胞の細胞膜動態を制御していることを明らかにした。
著者
大内田 研宙
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、膵癌における癌幹細胞及びその周囲に存在して癌幹細胞を支持している細胞群であるニッチを同定し、その生物学的特徴を明らかにした。さらに、同定した癌幹細胞や癌幹細胞とニッチの相互作用を標的として、膵癌根治を目指した治療法を開発すすめた。その過程においてCD10陽性間質細胞が重要な役割を果たしていることを見いだし,その分子生物学的性質を明らかとするために、膵癌間質細胞である膵星細胞株を樹立し、ソーティングによりCD10陽性膵星細胞を分取し、膵癌細胞株2種と分取した陽性膵星細胞あるいは陰性膵星細胞を間接共培養した。その結果、CD10陽性膵星細胞株が陰性膵星細胞株より膵癌細胞株の浸潤能をより増強させ、癌間質相互作用に深くかかわっていることが明らかになった。
著者
植松 智
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2009

小腸CD103^+ DCがCD8αの発現により2つのサブセットに分かれる事を見いだした。CD103^+ CD8α^+ DCはTLR3, 7, 9を発現し、Th1応答や抗原特異的IgGを誘導した。CD103^+ CD8α-DCはTLR5, 9を発現し、抗原特異的IgGとIgA、Th1とTh17応答、そして強い細胞傷害性T細胞活性を誘導した。この様に2つのDCサブセットは、免疫の活性化において全くことなる機能を有していた。
著者
坂内 英夫
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2010

本研究は,文字列の圧縮表現が与えられたときに圧縮表現を展開せずに直接処理をする圧縮文字列処理のアプローチを,文字列パターン発見・文字列データ分類の分野に導入し,様々な関連問題に対して効率的なアルゴリズムを開発した.特に,文字列中の全 q-グラムの頻度問題に対しては,非圧縮の文字列から計算するよりも高速なアルゴリズムの開発に成功し,当該分野における圧縮文字列処理の有効性・実用可能性を初めて示した.
著者
研谷 紀夫
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、歴史的な人名典拠情報を、APIを使用してDigital Cultural Heritageに提供し、利用することの妥当性を実証することを目的とする研究である。研究期間において行った実証実験では、歴史的な人名などを中心とした、人名典拠情報を典拠情報サーバ(A)からAPIを用いて文化資源をデジタル化したDigital Cultural Heritage(以下DCH)(B)に提供する実証実験を行い、その有効性を検証した。また、(A)において、複数の人名を検索し、それぞれの共通点や人間関係を介したつながりを明らかにするような検索機能を設けた。この機能は、典拠の履歴情報の掲載された、所属組織や家、生没年などから共通のバックグラウンドを導き出すとともに、これらの共通情報をヒントに、血縁や師弟関係などについて示された人間関係のつながりを最短の経路で導き出す機能を持っている。これらの機能を活用することによって、これまで、多くの時間が必要だった、人間関係のネットワークを明らかにする支援ツールとしても役立つデータベースである。そして、サーバの(A)に格納した具体的な人名としては、戦前期の皇族・華族と写真師に関する人名典拠情報をその対象とした。また、(B)のDCHには絵葉書や、歴史的な写真を格納して、各写真を用いた戦前期の皇族・華族・政治家の写真イメージとそれを担った写真師を対象とする表象文化研究に活用し、その有効性を実証した。本研究では、上述のように、一か所に集約した典拠情報を、APIによりDCHに配信し、活用するモデルを示すとともに、具体的な実証実験を通して、DCHにおけるその活用方法とその有効性を示した。本研究の成果は、今後の日本における人名典拠情報の具体的な整備方法と活用方法のあり方を示す点に意義がある。