著者
飛龍 志津子
出版者
同志社大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は,コウモリもつ高度に発達した超音波センシングの実態解明を目的とし,室内及び野外においてコウモリの音響行動を計測した.まず室内での障害物回避や標的捕獲中のエコーロケーション行動から,①超音波のビーム幅を状況に応じてアクティブに変化,②ビーム幅の狭いコウモリは視野を補償するためより頻繁に放射方向のシフトを行う,③重要な障害物の方向にパルスを放射する,などがわかった.野生コウモリの採餌飛行では,①コウモリが直近の獲物だけでなく,その次の獲物も視野に捉えていること,また②flight attentionも先を予測する方向に向けられていること,などを見出した.
著者
渡辺 佑基
出版者
国立極地研究所
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2009

北極海の生態系の頂点に立つニシオンデンザメとホッキョクグマという二種の捕食動物から詳細な行動データを得ることができた。ニシオンデンザメは遊泳速度や尾びれの動きがとても遅く、体の大きさの違いを考慮して比較すると、今まで調べられた魚類の中で最低レベルであることがわかった。北極海の冷たい水温により、本種の遊泳能力は大きく制限されていることが示唆された。ホッキョクグマは少なくとも4月の問は明確な日周性をもたず、一日の約半分の時間を活動的に動き回って過ごし、残りの半分の時間を休んで過ごすことがわかった。
著者
実山 豊
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2010

ダイズの湿害は農業上重要な障害だが、その発生メカニズムには不明な点が多い。本研究では、水耕栽培法により過湿土壌の一様態「低酸素」を人工的に再現し、経験的に圃場耐湿性が既知な多種ダイズ品種を1ヶ月間栽培、その反応性を詳細に調査した。その結果、低酸素反応性と圃場耐湿性とに密接な関係性を検出し、湿害発生の主な理由の1つが低酸素であることを確認した。更に圃場耐湿性が弱い品種の中には、低酸素環境によって葉面積や細根の減少、根における吸水能力の減衰などの特徴的な反応を見出した。
著者
木下 俊則
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2002

本課題ではモデル植物シロイヌナズナを用いて青色光による気孔開口に変異の見られる変異体のスクリーニングを行い、その原因遺伝子の同定することを目的として研究を進めてきた。スクリーニングには様々なタイプの変異体を単離するため、T-DNA挿入株、アクチベーションタグ挿入株とEMS処理株を用いた。これまで、12,280個体のT-DNA挿入株、6,258個体のアクチベーションタグ挿入株と12,288個体のEMS処理株の1次スクリーニングを完了し、当初の目標数にほぼ到達することが出来た。さらに、2次スクリーニングを進め、T-DNA挿入株において5株とEMS処理株において24株の変異体を単離した。アクチベーションタグ挿入株においては、変異体を得ることができなかった。EMS処理株においては2次スクリーニングを継続中である。T-DNA挿入株より得られた変異体については、TAIL-PCRによる遺伝子の挿入箇所の同定を行い、5株中2株について、ゲノム中でのT-DNAの挿入箇所を同定した。現在、原因遺伝子の機能解析を行っている。EMS処理株の変異体については、現在、2次スクリーニングで得られた変異体(約30株)について順次コロンビア品種との戻し交配とランズバーグ品種との掛け合わせを進めている。また、同時にこれら変異体における実際の気孔開閉反応についても解析を進めている。特に、STE27と名付けた変異体において興味深い結果を得ている。STE27は、青色光による気孔開口はほとんど見られないが、青色光受容体フォトトロピンや細胞膜H^+-ATPaseは正常に発現し、機能していることを確認した。この結果は、STE27の原因遺伝子が受容体からH^+-ATPase活性化に至る情報伝達に関わる未知の因子である可能性を示しており、その原因遺伝子がどのような蛋白質をコードしたものであるか早急に明らかにしたい。
著者
柳田 健之
出版者
九州工業大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

ガーネット、セスキオキサイド、複合ペロブスカイト型ガーネット透明セラミックスシンチレータを開発した。それら中で特に、自身の修士論文時に開発した物質を改良した、Ce 添加 Gd3(Al,Ga)5O12 が最も特性が良かった。発光量は約 70000 ph/MeV であり、蛍光減衰時定数も約 100 ns、662 keV におけるエネルギー分解能も約 10% であった。異相を一部存在させることにより、ホストから発光中心へのエネルギー輸送効率が向上が観測され、今後のシンチレータ研究に対し、新たな指針を得た。
著者
中村 聡史
出版者
明治大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究プロジェクトでは,情報検索におけるユーザの検索意図やコンテキスト,プロファイルといった情報を,視線の動きによって推定したり,興味を持てるような観点語を質問応答サービスから取得して提示する手法などを実現した.また,本手法によって,検索結果をダイナミックに再ランキング,再サーチする手法を実現し,ユーザの情報検索行動を手助けする手法を実現した.さらに,マルチメディアコンテンツに対する対話的な検索も実現した.
著者
北野 政明
出版者
東京工業大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2011-11-18

チタン酸ナノチューブの合成条件の制御および異種元素ドーピングによる高機能な固体酸触媒の合成を行い、炭素-炭素結合形成反応への応用を試みた。合成条件を制御することで、チューブやロッド構造に変化し、ナノチューブ構造を有するときのみ触媒表面にルイス酸点とブレンステッド酸点が多く形成されることが明らかとなった。また、チタン酸ナノチューブの骨格にNb5+やTa5+をドープすると触媒活性が最大で10倍程度まで向上することが明らかとなった。
著者
松尾 光一
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

放射光真空紫外円二色性法により,蛋白質の精密な溶液構造情報の獲得を可能にすると共に,この手法を生体膜と結合した蛋白質の精密構造解析に応用した。またアルツハイマー病などの原因蛋白質であるアミロイド線維の円二色性スペクトルを,最先端の計算科学を用いて帰属し,アミロイド線維の形成や毒性に重要な分子間構造を明確にした。円二色性研究の国内外の専門家14名を招聘し円二色性国際ワークショップ(広島,2014年3月4日)を開催し,円二色性法による蛋白質構造解析の有効性を広く発信した。
著者
高橋 阿貴
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

攻撃行動に関わる神経伝達物質として、セロトニンは他のどの神経伝達物質よりも着目されている。一方で、実際に攻撃行動を示している最中に、セロトニン神経系がどのような制御を受けているかは明らかになっていない。本研究では光遺伝学的手法を用いて、背側縫線核セロトニン神経系の興奮、抑制が攻撃行動をどのように変化させるかを直接的に検証することを目指した。また、薬理学的手法を用いて背側縫線核がどのような入力を受けたときに攻撃行動が過剰になるかを解析し、グルタミン酸入力が攻撃行動の程度を決定することが明らかとなった。加えて、順遺伝学的手法を用いて、過剰な攻撃行動に関わる遺伝子座の1つを15番染色体上に同定した。
著者
加藤 誠
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

平成29年度の研究計画ではWebにおける意見の誘出を主な課題としていた.特に,あるユーザの行動や特定の事象への反応から,そのユーザが持っている意見を推定することを課題としていた.平成29年度は下記の3テーマについて研究成果を得た:1.ソーシャルメディアからの意見誘出: ソーシャルメディア上において,特定の属性(e.g. 学生や高齢者等)を持ち,ある話題に関して意見を発信しているユーザから意見を誘出する方法について研究を行った.ソーシャルメディアにおいて,ある話題に関する意見は発信者の属性と合わせて記述されることは少なく,単純な文字列マッチングによる検索では先述の問題設定に沿うような結果を得ることは困難であった.そこで我々はソーシャルメディアかが構成するグラフへ適合フィードバックを伝播させることによって,特定の属性を持つユーザを効果的に発見する方法を提案した.2. レビューからの意見誘出: レビューからある商品に関する意見を抽出することで,商品を任意の性能順に並び替える方法について研究を行った.我々は相対的な評価(e.g. カメラAはカメラBより夜景が綺麗に撮れる)が絶対的な評価(e.g. カメラAは夜景が綺麗に撮れる)より正確に意見を誘出できる情報であると仮定し,これに基づいて商品を並び替える方法を提案した.実験の結果,相対的な評価による順位付けは絶対的な評価による順位付けよりも正確であることを示した.3. 質問投稿サイトの検索ユーザからの意見誘出: 質問投稿サイトの検索において,複数のランキングを混合することによって,どのランキングが検索ユーザに好まれるかを効率的に推定する方法を提案した.特に,ヤフー知恵袋において3ヶ月間の評価実験を実施し,どの程度のフィードバックを得れば統計的有意にランキング間の差を得られるかを明らかにした.
著者
竹内 大介
出版者
東京工業大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究ではジイミンパラジウム錯体によるオレフィン類の異性化重合を利用し、官能基の密度、分布が完全に制御された高分子の合成と、その機能の探索を目指して研究を行った。ジイミンパラジウム錯体により非共役ジエンやトリエン、アルキルシクロペンテンやアルケニルシクロヘキサンなどの異性化重合が選択的に進行し、立体構造の制御された五員環や六員環を含む高分子が得られることを見いだした。モノマーのアルキル基の長さを変えることにより、高分子中の環構造の密度や分布を完全に制御することも可能である。トリエンの重合では官能基が一定間隔で交互にならんだ高分子が得られた。1,3-トランス五員環を含む高分子は液晶性を示した。
著者
長谷川 雅也
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、宇宙背景放射(CMB)偏光成分の精密測定を通して原始重力波の痕跡をとらえる事を念頭に、現在世界最高レベルの感度を誇るPOLARBEAR-1実験による重力レンズ起源CMB偏光の精密探索と、POLARBEAR-1の性能を6倍に向上させた新しい検出器システム「POLARBEAR-2」の開発を目的に行った。POLARBEAR-1では、世界で初となるCMB偏光データのみを用いた重力レンズ起源の偏光Bモードの観測に成功した。またPOLARBEAR-2の開発では、世界最大級の焦点面検出器アレイの実現のために課題であった、光学系の構築と焦点面周辺の熱負荷の制御に成功し、開発をほぼ完了させている。
著者
岩谷 素顕
出版者
名城大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2009

本研究課題では、(1)紫~赤色LED作製技術(2) Moth-eye構造という光制御技術(3)レーザ剥離(4) Ag-Pd-Cu(APC)合金高反射率電極(5)透明電極(6)多層膜反射鏡(7)超高正孔濃度p型GaInN等の基盤技術を確立した。また、これらの技術を適用することによって新しいデバイスの実現を進めた。
著者
越山 顕一朗
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2011-11-18

超音波作用下で細胞膜に働く張力の周期的な変化を再現する分子動力学シミュレーションコードを開発し,チャンネルタンパク質,コレステロール,イオンを含む脂質膜分子モデルに応用した.これより,張力変動下での, 脂質膜での孔構造の形成,チャネルタンパク質の不感受性,イオンの孔構造透過パターンの変化,コレステロール・リン脂質膜の相変化を明らかにした.さらにin vitro超音波ニューロモジュレーション(NM)実験装置を開発し,装置における音場制御がNMが生じるより正確な超音波条件を見積もる上で重要であることを指摘した.
著者
松浦 健二
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2009

本研究では日米のヤマトシロアリ属8種およびイエシロアリから見つかったAthelia属の菌核菌に加え、西表島において高等シロアリのタカサゴシロアリの巣内から全く別系統のTrechispora属の菌核菌を発見し、菌核菌によるシロアリの卵擬態は少なくとも独立に2回進化したことを明らかにした。また、シロアリの卵保護行動に関わるフェロモンの分析から、卵の揮発物質が女王フェロモンと共通の物質であり、卵保護において重要な機能を果たすとともに、二次女王分化抑制の役割を果たしていることが明らかになった。
著者
山本 晃生
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,人肌触感の再現提示を念頭に,様々な触感要素の提示技術を研究した.人肌の再現には,肌表面のぺたぺたとした粘着感,あるいは,汗ばんだ際の濡れ感,といった触感の再現が重要であると考え,こうした触感の発生要因を検討し再現提示手法を提案した.また,皮膚に触れた際には,柔らかい感触の中に骨などのゴツゴツとした感触が感じられる.このような異物感を伴う柔らかさ感の提示を行うための手法を提案した.
著者
柴田 憲治
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

単一の自己組織化量子ドットを用いた単一電子トランジスタ、単一光子発生器などの量子情報処理デバイスは、1つの電子や光子に情報機能を持たせるため、超低消費電力エレクトロニクスの有望な技術と言われている。本研究では、(1)10 nm級InAs(インジウム砒素)量子ドットの位置・形状制御を実現することによって、単一量子ドット機能デバイス作製の歩留まりの飛躍的な改善を達成した。更に、(2)精密に制御された自己組織化InAs量子ドット構造の単一電子・スピン状態の解明を行った上で、(3)それらの物性を応用した超伝導トランジスタや、単一スピン操作素子、THz光エレクトロニクス素子などの例証実験を行った。
著者
河井 克之
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2009

沙漠化の主要因の一つである塩害は,不適切な灌漑などの人為的要因と長期の乾湿繰り返しといった自然要因によって起こるため,地盤に及ぼす複雑な外的要因を考慮した対策が必要となる.本研究では,地盤の変形,地下水流れ,物質移動を同時に表現できるシミュレータの開発を行った.また,解析精度の向上を図るため,ライシメーターを用いた地盤からの蒸発量計測も行い,塩害抑制地盤の提案も行っている.
著者
山田 努
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2002

本研究計画の最終年度に当たる平成16年度には,石垣島およびニューカレドニアで行っていたシャコガイ飼育実験を終え,水槽内のシャコガイを採取した.石垣島での飼育実験は,平成14年夏から平成16年夏までの約2年間,ニューカレドニアでは,平成15年春から平成16年冬までの約1年半行った.ニューカレドニアのシャコガイ(シャゴウ2個体,シラナミ3個体,ヒレジャコ2個体)は,CITESに従がって日本に輸入し(CITES PERMIT No.:2004-NC-7329および7330),これらのシャコガイ殻について,成長線解析や同位体比分析を行った.パラオでの飼育実験は,パラオがCITESに加盟しておらず,シャコガイ殻の輸入ができないため断念した.代わりに,マレーシアで飼育実験を行う計画を立てたが,相手機関の協力が得られず実施できなかった.また,平成16年夏には,沖縄県与那国島で化石シャコガイ殻を採取した.石垣島吉原で飼育・採取した2個体のシャゴウの成長線解析・同位体比分析を行った.まず,全体の傾向をみるために,サンプル約10個毎に同位体比分析を行った.その結果,(1)日輪幅の変化の主な規制要因が日射量変化であること,(2)日輪幅変化に見られる負のスパイクが大雨や台風に襲来を反映している可能性が高いこと,(3)殻の炭素同位体比の変化は,水温・日射量・日輪幅と負の相関を示すが,共生藻の光合成活動やシャコガイ類の代謝活動などの生理学的過程が複雑に関与していること,(4)殻の酸素同位体比の変化は,水温変化と極めて強い負の相関を持ち,また,殻はほぼ酸素同位体平衡下で形成されること,が明らかになった.残りの同位体比分析を進めたところ,上記の成果をさらに支持する結果を得た.
著者
齊藤 伸
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2005

数10μm〜サブμmにパターン化された磁性材料では試料内各場所での磁気特性がその性能を左右することから、パターン試料内部の磁区構造観察に対する需要が高まっている。そこで本課題ではこれまでに確立した白色光の高倍率磁区構造観察技術を発展・応用し、ピコ秒オーダーの磁化過程を一括して観察できる高倍率高時間分解能縦カー効果顕微鏡を実現することにある。2年目に当たる平成18年度はレーザ光を光源として用いることにより(高時間分解能観察)、磁化ベクトル方向の検出が可能な磁区観察顕微鏡を作製することを目標として研究を行った。磁化方向の特定のためには、対物レンズ入射瞳の直交方向の辺縁部に微小スポットの入射光を落斜させて、各軸方向の磁化ベクトル成分に比例したコントラストを付すことが有効である。各落斜光軸からのプローブ光の入射タイミングをズラしながら試料を照明し、照明のタイミングと同期をとってCCDカメラのシャッタを切ることにより(時分割法)、磁界掃引時の磁化ベクトル履歴動画像の撮影に成功した。さらに得られたベクトル履歴動画像に対して、色合いの割付、局所領域の輝度ヒステリシスループ(磁界引加方向、直交方向)の抽出も可能であることを確認した。尚、本研究の成果は、2006年10月16日に同学会の広報部による技術情報サービス第28号が学会員向けに配信された。28.01 カー効果を利用した局所的磁化ベクトル測定の試み(抜粋)学術講演会にて、東北大学斉藤らのグループから薄膜試料の局所における磁化ベクトルを定量的に計測できるカー効果顕微鏡が提案された。新しい計測方法へ発展するものと期待される。http://www.wdc-jp.com/msj/information/061016/061016_01.html