著者
今井 正司
出版者
名古屋学芸大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2015-04-01

注意制御とメタ認知(detached mindfulness:DM)がストレスに及ぼす影響について、小学生から大学生を対象に調査を行った。多母集団同時分析の結果、年齢が高いほど、注意制御や DMがストレス防御要因になることや、QOLの促進に寄与することが明らかとなり、特に、疲労症状において顕著な結果が示された。これらの結果をもとに、小学生と大学生を対象に、注意訓練課題を実施している際の前頭前野の活動性をNIRSによって測定し、疲労との関連性について検討した。その結果、小学生の疲労は前頭前野が過活動になりやすいことが要因であり、大学生の疲労は沈静化が促進されないことが要因であることが示唆された。
著者
中村 匡徳
出版者
名古屋工業大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、X線による可視化と数値流体計算により、実際の鳥呼吸器内の流れを調べ、その流体制御機構を解明することを目標として研究を行ってきた.研究成果として、鳥気管支の第一分岐部上流側において狭窄している部位があり、そこを吸入空気が通過することで慣性力が増加し、後気嚢に導かれることがわかった.これにより、主気管支から分枝する気管支には空気が入らず、流体の主方向が決定されることがわかった.また、気嚢の厚さが変化することで胸腔内圧の変化と気嚢の変形が同調せず,呼吸器内の流体制御がうまくいかなくなることも判明した.
著者
矢野 勝也
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2005

植物が野外で遭遇する環境は、実験室レベルの研究で採用されるような均一な環境条件とはほど遠く、むしろ不均一性を特徴としている。このような不均一な環境条件下における植物は、均一な環境条件では想像もできないような振る舞いを示すことがある。その一例が、乾燥地で植物が深い根を発達させて地下水を吸収する一方で、表層の乾いた土壌に根から水を放出する現象(hydraulic lift)である。本研究は、hydraulic lift現象における水の放出経路を解明し、放出能の種間差を評価することを目的とした。まず、植物根からの水放出経路を追跡するための方法論に取り組んだ。すなわち、植物根の導管にあらかじめ取り込ませたトレーサーから、水移動を把握することを試みた。一部の根からトレーサーとしてセシウムやルビジウムを取り込ませた根系を、高浸透圧条件のゲル上に展開することでhydraulic liftを引き起こさせた。蛍光X線解析装置を用いて、ゲルを含めた根系全体の2次元元素マッピング画像を得ることで、非破壊的にトレーサーの動きを捉えることができた。同様に、導管から色素を取り込ませることによっても、導管内の水移動を追跡できた。これらの結果から、根の形態によって水放出能に違いのあることが示唆された。上層・下層に分かれた栽培容器を用いて、深根性植物6種のhydraulic lift能を比較した。供試したいずれの植物種もhydraulic liftによって下層部から上層部へと水を供給したが、その供給能は種間差が大きかった。根量当たりの水放出能を調べると、供試した5種の植物間では有意差が認められず、主に根量の違いが水放出量を規定していたと考えられた。その一方で、供試した植物種の1つは根量当たりの水放出能が著しく高いことが明らかとなった。
著者
木須 伊織
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

MHC(主要組織適合遺伝子複合体)統御カニクイザルを用いて子宮同種移植モデルを作製し、血液型一致のMHCミスマッチ間および半ハプロ一致間における移植子宮の生着を比較した。カニクイザルにおける子宮においては拒絶反応をきたしやすく、抗原性が高いことが示された。また、半ハプロ一致間におけるカニクイザルペア間における子宮移植後に妊娠出産に世界で初めて成功した。日本産科婦人科学会、日本移植学会に子宮移植に関する見解を求める要望書を提出し、日本医学会で子宮移植に関する検討委員会が設立され、国内での臨床応用の可能性について議論が行われている。
著者
北 将樹
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2009

陸棲哺乳類由来の特異な麻痺性神経毒の研究を行った。ブラリナトガリネズミの顎下腺より分子量約5 kDaの神経毒をほぼ精製した。またカモノハシの毒液から,ヘプタペプチド (HDHPNPR) など11種の新物質を単離し,その生物活性を解明した.さらに爬虫類やトガリネズミの毒と同様,カモノハシ毒にもカリクレイン様プロテアーゼが含まれることを示した.これら神経毒の作用機序解明により,新たな鎮痛剤や血圧降下剤などへの展開が期待される.
著者
中村 修平
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

細胞内外の様々な要因で損傷を受けたリソソームは有害となることが知られているが、細胞がどのようにこれに対処するかは不明であった。我々は、オートファジー・リソソーム生合成のマスター転写因子であるTFEBの活性化が損傷リソソーム修復に必須の働きをすることを見出した。さらにこの活性化はオートファゴソームマーカーとして知られるLC3タンパク質のnon-canonicalな機能に依存していることを明らかにした。また、マウスを用いた動物実験からこのLC3によるTFEB活性化がリソソーム損傷を伴うシュウ酸カルシウム腎症の病態悪化を防いでいることが示唆された(中村ら 投稿中)。
著者
香取 秀俊
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2002

現在の時間標準であるセシウム原子のマイクロ波遷移を基準とした光周波数のコヒーレント計測技術が確立した結果,時計遷移周波数が5桁高く,より高い安定度が期待できる光領域の時間標準の実現や,それらの原子時計の時間揺らぎの評価が,現実的な意義をもつようになった。本研究は,従来の単一イオントラップ光周波数標準と中性原子光周波数標準の特長を同時に実現可能な「光格子時計」のアイディアを提案・実証することを目的とした。光格子中にトラップされた中性原子を用いる「光格子時計」手法では,単一イオントラップ光周波数標準の特徴である(1)ラム・ディッケ束縛によるドップラーシフトの除去,(2)原子間衝突の除去,を(3)光シフトを相殺した光格子にトラップした約100万個の中性原子によって実現する。これによって,イオントラップ周波数標準のもつ高い周波数確度を維持しつつ,およそ3桁の安定度向上を狙う。この提案の鍵を握る「光シフト相殺手法」の検証のため,ストロンチウム原子のフェルミ同位体^<87>Srの^1S_0-^3P_0禁制遷移(遷移周波数698nm、線幅1mHz)を用いた理論計算を行ない,1秒で10^<-18>の安定度・確度を達成可能なことを,明らかにした。「光格子時計」の実証のため,レーザー冷却を施した^<87>Srを1次元光格子に捕獲し,時計遷移励起光に対してラム・ディッケ束縛条件を満たした上で,これに対する分光実験を行った。この結果,光格子レーザー波長を813.5nmとすることで光シフトの相殺が可能となることを示し,このとき励起レーザー線幅で制限される(ドップラーフリーな)500Hzの時計遷移の観測に成功した。
著者
木村 淳 浅田 昭 伏見 岳志 松本 義徳 杉本 裕介 清水 秀人 阪本 真吾 鉄 多加志 Schottenhammer Angela Jago-on Sheldon Clyde B. Lacsina Ligaya Sheppard Bob McCann Ian
出版者
東海大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

2016-2018年の3ヶ年で、千葉県御宿町沖で1609年に沈没したスペイン船籍ガレオン船サン・フランシスコ号の船体遺存可能性の調査及び初期マニラ・アカプルコ交易船の船体・造船技術及び関連遺物把握の考古学研究を実施した。御宿町の岩和田沖合とされる同船の推定沈没範囲において、船体や関連遺物の遺存状況の検証を明らかにする水中考古学探査・潜水調査を行った。マルチナロービーム音響測深機による海底地形計測及び磁気探査、潜水調査によって、沈没可能性地点を浅海と沖合岩礁(真潮根)の二つに絞り込んだ。サン・フランシスコ号関連の文献精査、国外のマニラ・アカプルコ交易沈没船遺跡の比較研究を実施した。
著者
笹田 朋孝 Ch. アマルトゥブシン G. エレグゼン L. イシツェレン
出版者
愛媛大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

モンゴル国内で初めてとなる製鉄遺跡の発見に成功し、ホスティン・ボラグ遺跡の発掘調査を実施した。遺跡から出土した土器や木炭の放射性炭素年代(紀元前2世紀~紀元後1世紀)からこの遺跡は匈奴のものである。スラグの分析結果などからこの製鉄技術は同時代の中国とは大きく異なっており、南シベリアなどと類似していることから、草原を西から伝わってきた製鉄技術である。これまで匈奴は製鉄技術を持たないとされてきたが、おそくとも紀元前1世紀のモンゴル草原では、匈奴が遊牧国家として独自の製鉄技術を保有し、システマティックに鉄器を生産していたことが明らかになった。
著者
戸谷 友則
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

すばる望遠鏡の新観測装置FMOSを用いた大規模な高赤方偏移銀河サーベイと、それによる宇宙論、特にダークエネルギーの研究をおこなった。二年間にわたる観測を成功裏に終え、数千の銀河による赤方偏移1を越える宇宙の大規模構造を世界で初めて描き出した。サーベイの概要やカタログなどに関する論文はすでに受理済みあるいは投稿中である。また、主目的である赤方偏移空間の歪みの解析から重力理論の宇宙論的スケールでの検証を行った解析もほぼまとまり、現在論文を準備中である。
著者
高根 雄也
出版者
国立研究開発法人産業技術総合研究所
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

日本で最も暑い街として知られている多治見の高温に及ぼす風上側の地面状態の影響を調査した。多治見が高温の日には、西寄りの山越え気流が頻繁に卓越していることを予め確認後、この風が高温に寄与するメカニズムに関する仮説:風上地表面からの非断熱加熱を伴うフェーンを検証した。その結果、本仮説を実証する結果を得た。すなわち、風上側の地面状態が風下側の高温に大きな影響を及ぼしていることを確認した。また、気流が都市域を通過する時や、日射が大きくかつ土壌が乾燥している日に、風上地面状態の影響が特に大きくなることが分かった。以上の結果は、風上の土地利用の改変が今後風下都市の熱環境に影響を及ぼすことを示唆している。
著者
加藤 健太郎
出版者
帯広畜産大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

原虫感染における糖鎖の役割について、以下の研究成果を得た。質量解析を用いて、原虫の膜蛋白質に結合するレセプター因子を含む複数の宿主細胞因子を同定した。また、原虫の感染阻止に効果的な物質を作製するため、多糖類に硫酸化等の修飾を付加した物質を作製し、細胞培養系においてその原虫侵入阻害、増殖阻害の効果を解析した。さらに硫酸化等の化学修飾を付加した糖鎖について、原虫感染を阻害する糖鎖分子と実際に結合する原虫蛋白質の同定に成功した。また、同定した原虫分子が実際に宿主細胞に結合することが示された。これにより、原虫感染に関わる糖鎖レセプターの役割を解析することに成功した。
著者
佐伯 盛久
出版者
独立行政法人日本原子力研究開発機構
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2009

本研究では報告者が最近考案した「レーザー微粒子化による元素分離回収法」の、難分離性元素の1つである白金族元素群の相互分離への適用可能性について探った。その結果、紫外レーザーを白金族元素水溶液に照射した時、微粒子化効率の照射レーザー波長依存性は元素間で類似しているが、照射レーザー強度依存性は元素間で違いがあることを発見した。そして照射強度調節によりPd, Rh混合塩酸溶液において相互分離をすることに成功した。
著者
高橋 美野梨
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本プロジェクトの目的は、近年のグリーンランドにおける自治と気候変動との相関をめぐる政治的諸相を明らかにすることに向けられた。明らかになったのは、グリーンランドにおける自治のあり様が、各地域に見られる気候変動に対するさまざまな解釈に規定されているということであった。すなわち、気候変動をスナップ的に切り取ることで方向づけられる立場と、気候変動を長い時間軸の中で捉えることで方向づけられる立場との相関によって形作られているということであり、前者は西部・南部に比較的多く見られ、後者は北部・中西部に比較的多く見られる傾向が見出せた。
著者
津田 誠
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2005

正常動物の脊髄腔内ヘインターフェロンγ(IFNγ)を投与することで,脊髄ミクログリアの活性化および持続的なアロディニア(難治性疼痛様の痛み行動)が発現した.脊髄におけるIFN γ受容体(IFN γ R)の発現細胞をin situ hybridization法により検討したところ, IFN γ R mRNAはミクログリアに特異的に検出された.さらに,IFN γによるアロディニアは,ミクログリアの活性化を抑制するミノサイクリンによりほぼ完全に抑制された.したがって,IFN γはミクログリアに発現するIFN γ Rを刺激して,ミクログリアを活性化し,持続的なアロディニアを誘導することが示唆された.そこで,実際の難治性疼痛モデル(Chungモデル)におけるIFNγの役割を, IFN γ R欠損マウス(IFN γ R-KO)を用いて検討した.野生型マウスでは神経損傷後にアロディニアの発症およびミクログリア活性化が認められたが,IFNγR-KOでは両者とも著明に抑制されていた.以上の結果は,IFN γが難治性疼痛時におけるミクログリアの活性化因子として重要な役割を果たしている可能性を示唆している.P2×4受容体発現増加因子としてfibronectin(FN)を同定した.本年度は, FNによるP2×4発現増加分子メカニズムを明らかにすべく,Srcファミリーキナーゼ(SFK)に注目した.ミクログリア培養細胞において,Lynキナーゼが主なSFK分子であること,さらに脊髄における発現細胞もミクログリアに特異的であることを明らかにした.さらに,Chungモデルの脊髄では, Lynの発現がミクログリア特異的に増加した.Lynの役割を検討するため, Lyn欠損マウス(Lyn-KO)を用いた.野生型マウスでは神経損傷後にアロディニアの発症およびP2×4の発現増加が認められたがLyn-KOでは両者とも有意に抑制されていた.さらに,Lyn-KOミクログリア培養細胞では, FNによるP2×4発現増加が完全に抑制されていた.以上の結果から,Lynは難治性疼痛時のP2×4発現増加に必須な細胞内シグナル分子であることが示唆された.
著者
谷 明生 中川 智行 三井 亮司 NURETTIN Sahin
出版者
岡山大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

植物に多く共生するMethylobacterium属細菌の系統分類に関しては四株について新種提唱を行った。生育促進に関わる植物ホルモンについて分析し、サイトカイニンが最も重要であることを示唆する結果を得た。メタノール脱水素酵素(MDH)の補酵素が気孔を開く活性を持っており、その作用機構として活性酸素の除去にあることを見いだしている。MDHのホモログの中に希土類元素を要求するものを見いだし、機能解析を行った。イネをモデルとして本属細菌の種レベルでの同定を行い、イネの種子に含まれる本属細菌の種は、イネの遺伝型よりも栽培条件に影響されていることを示唆する結果を得た。
著者
城村 由和
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

ゲノムワイドな遺伝子発現抑制スクリーニングにより、老化細胞の生存・機能維持に関わる遺伝子群の単離に成功した。その中でも、グルタミンをグルタミン酸に変換する酵素であるグルタミナーゼ遺伝子に着目して詳細な解析を行った。その結果、グルタミナーゼの機能抑制は、老化細胞選択的に細胞死を誘導できることを見出した。また、そのメカニズムとして、細胞内pHホメオスタシスの制御が深く関与することも明らかになった。さらに、老齢マウスにグルタミナーゼ阻害剤を投与した結果、加齢に伴う腎障害が改善された。これらの結果は、グルタミン代謝酵素を標的とした薬剤が老化の予防や加齢性疾病の治療に有効であることを示唆している。
著者
村上 晋
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

近年米国で発見されたD型インフルエンザウイルスは、ウシ呼吸器病症候群(BRDC)の患畜から高頻度でウイルス遺伝子が検出されることから、BRDCの原因ウイルスの一つである可能性が示されている。これまでに私たちは日本にもD型ウイルスが侵淫していることを初めて明らかにした。本研究では、わが国のウシやブタなどの家畜おけるD型インフルエンザウイルス感染の実態を大規模に調査し、そのBRDCとの関連性や、日本に存在するD型インフルエンザウイルスの生物性状を明らかにすることを目的とする。本年度はまずリバースジェネティクス法の開発とその改良に取り組んだ。ウイルスRNAを発現するプラスミド7種とウイルスのポリメラーゼと核タンパク質を発現するプラスミド4種を293T 細胞あるいはHRT-18G細胞にトランスフェクションし、上清中に放出されるウイルス量を比較したところ、HRT-18G細胞の方が多かった。しかし、作製したウイルスの増殖性は、シークエンスは野生型と同一であるにもかかわらず、野生型よりも100倍程度が低かった。その原因を調べるために、ウイルス粒子内に取り込まれるRNA量を比較したところ、作製した組換えウイルスは野生型よりも少ない遺伝子分節があることがわかった。そこでトランスフェクションするプラスミドの割合を変更したところ、野生型と同様の増殖性を持つウイルスの作製に成功した。疫学調査の一環としてウイルス分離を試みた。山形県で呼吸器症状を示したウシの呼吸器スワブから、ウイルスが分離された。分離されたウイルスはこれまで報告のあるD型ウイルスとは遺伝的に異なるウイルスであることがわかった。今後その性状を解析する予定である。
著者
伊福 伸介
出版者
鳥取大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

申請者はカニ殻からキチン質のナノファイバーを製造することに成功している。本研究ではキチンナノファイバーの微細な形状(10ナノ)と優れた力学的強度、多彩な生体機能を活かし、ハイドロキシアパタイトと複合した骨再生のための足場材料を開発した。本材料は成形外科や歯科治療において優れた成形性・操作性を有する。また、炎症を誘発することなく骨や歯の欠損部において足場として安定に存在し再生する。治癒後は体内で消化される。そのような全くの新規の骨や歯の再生材料は、高齢化の進む現代社会において、人々の健康を増進していくだろう。
著者
林 眞理
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

転座や欠失など種々の染色体構造異常の中でも、染色体融合は最も危険な異常の一つである。染色体融合がどのように染色体の異常を引き起こすかについては、様々なモデルが提唱されている。しかし、どの程度の種類と数の染色体融合が、どの程度の時間を経てどのような異常を引き起こすのかについては、よく分かっていない。そこで本研究計画では、1つの姉妹染色体分体の融合を可視化できる細胞系を構築し、細胞の運命を継時的に解析することを目的とした。前年度までに姉妹染色体分体融合を可視化できる細胞システム(Sister chromatid Fusion Visualization system: FuVis)の構築に成功し、FuVisを用いたライブセルイメージング観察によって姉妹染色体分体融合の運命を追跡した。その結果、1つの姉妹染色体分体融合によって、微小核という染色体異常が生じていることが示唆された。しかしながら、CRISPR/Cas9による染色体の切断、DNA修復、mCitrineの発現の効果など、複数のパラメータの中で、本当に姉妹染色分体こそが、微小核の形成に影響を与えているのかを解析する必要があった。そこで本年度は、動画から得られたデータをさらに詳細に解析するため、京都大学白眉センターの加賀谷白眉との共同研究を開始した。これまでの解析から、階層ベイズモデルを構築し動画データをあてはめることによって、細胞の個性、染色体切断、姉妹染色分体融合、時間経過による蓄積効果など種々のパラメータの中から、姉妹染色体分体融合こそが微小核の形成に寄与していることを突き止めた。本研究成果はbioRxivにアップロードし、論文投稿段階にある。