著者
橋本 健二
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

骨盤運動や走法の違いが走行運動に与える影響を定量的に評価し,新しいスポーツコーチング学を創出すること目指し,人間の構造と運動を模擬可能な2足スプリント・ロボットの開発を目的とする.人間の走行運動解析を通して,骨盤運動が走行運動に寄与していることを見出した.そこで,腰部関節を持ち,膝関節と足関節には弾性要素を持つ2足ロボットWATHLETE-1を開発した.WATHLETE-1は全身で22自由度を持ち,身長1,500mm,体重62kgである.走行運動制御を開発することで,片脚での跳躍運動を実現した.またYaw方向の角運動量制御も開発し,下半身で発生する角運動量を上半身で補償することができた.
著者
櫻井 庸明
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

冷結晶化は“昇温に伴って融点以下で起こる結晶化”とされており、準安定相である過冷却非晶質固体を形成したのちに昇温時により安定な相である結晶相へと相転移する挙動である。熱の貯蔵という応用の側面からもこの冷結晶化は注目すべき現象であるが、高分子化合物と比較すると、低分子有機材料においては珍しい挙動であり、どのような分子設計を採用すれば冷結晶化を示す材料を実現できるかについての知見は未だに乏しい。今回、溶液中で自由回転するフェロセン骨格の有する回転自由度に注目し、結晶化を促すドデシル側鎖を有する発達共役分子ユニットであるオリゴチオフェンと連結したπ-Fc-π型の化合物を合成したところ、0.1 K/minまで低速で降温した際も非晶質固体を形成し、その後の昇温時に冷結晶化を起こすことが確認された。π-Fc-πは等方相から冷却されると、さまざまなコンフォメーションの分子が共存することにより過冷却非晶質固体を形成しやすく、その後に昇温することで。π-Fc-π分子の折り畳みが誘起され、ラメラ状に分子が自己集積し結晶化するという機構が推定される。回転のみという制限された自由度を有するフェロセンは、冷結晶化を起こし、熱貯蔵が可能な材料の開発に有用なモチーフであり、本系は、凝集相においてもフェロセンが回転自由度を有していることを熱制御して利用した希有な例である。この固相におけるFc部位の回転運動は、(Fc-π)n型の多関節高分子へと拡張することでフォルダマーの分子設計として有用であると予測したが、現在のところは、合成した高分子は結晶化に至らず、アモルファス相の形成のみが観察された。複数のFc部位の回転自由度に由来するエントロピーが凝集相構造を支配していることが推測される。一方で、溶液中においては当該高分子の折り畳みに伴うオリゴチオフェンユニット同士の積層が吸収スペクトル変化から示唆された。
著者
寺尾 京平
出版者
香川大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は、臓器を物理的に切断し、1細胞サイズまで微小分割することで、立体的な臓器を空間的に「3次元分解」する新たな解析技術の確立を目指す。シリコンナノ加工技術により実現した独自技術であるシングルセルの一括切断技術をベースに、脳・腎臓等の様々な臓器を細胞レベルまで空間的に分割することで、多様な組成をもった微小臓器断片を得る。本年度以下の3項目について実験技術の構築と検証を行った。(1)生体から摘出した臓器を物理的に分割する刃状構造体(ナノブレード)を有した空間分画デバイスの製作:マウス臓器スライスをターゲットとして貫通孔を有したナノブレードアレイの作製条件、及び構造解析により強度に関する検討を行った。結果として、シングルセルサイズの貫通孔を有した様々なブレードアレイデバイスを完成させるとともに市販容器との適合性を考慮したチップ形状を実現した。(2)臓器サンプルへの正確なアプローチと確実な切断を実現する切断・送り機構の構築:押圧時に空間分画デバイスを臓器に確実にコンタクトさせるため、ナノブレードを保持する機構について開発を行った。また、操作性向上のためアタッチメント式で交換が容易なブレードデバイス脱着機構を考案した。(3)モデル臓器であるマウス脳・腎臓スライスを利用した空間分画の原理実証とイメージングによる分画状態の検証:マウス脳スライスをサンプルとして、空間分画を行い、各区画への薬液吐出時に隣接区画にリークがないことを確認し、それぞれの区画が独立した溶液層として利用できることを示し、細胞ライセートの逐次回収を実現した。
著者
渡邊 洋
出版者
福井大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2005

路面雪氷正常予測モデルの改良について、数値計算また、補足的な室内実験により検討を進めた1 単一層路面雪氷状態モデルの課題抽出(1) 雪氷厚および質量含氷率の計算誤差が、雪氷厚の増大に伴って、雪氷厚20mmを境に急増する。(2) 単一層路面雪氷状態モデルの適用範囲は、雪氷厚20mm以下が望ましい。2 多層路面雪氷状態モデルへ改良し、適切な雪氷分割要素厚により、計算精度の向上に努めた。(1) 多層路面雪氷状態モデルの方が、先出の単一層路面雪氷状態モデルより高く、雪氷厚が20mm以下であれば、計算精度は無次元計算誤差0.06以下(雪氷厚の計算誤差1.2mm以内)となる。(2) 多層路面雪氷状態モデルでの雪氷分割要素厚は初期雪氷厚の2割程度で良い。3 路面薄雪氷層に入射するアルベドと透過率を考慮したモデル改良を行った(1) アルベドは、雪氷密度および質量含氷率で規定され、厚さ0.04m以下の薄雪氷層では融解に伴うアルベドの低下は著しい。(2) 透過率は、雪氷厚の増加とともに指数関数的に低下し、その低下率は湿潤、シャーベット、乾燥雪の順で大きくなる。(3) 透過率は、雪氷厚と水、氷および空気の体積割合で表現できる。4 雪氷層と路面との間の接触熱抵抗の考慮した改良を実施した(1) 雪密度が増加するにつれて、乾燥積雪路面の接触熱抵抗は指数関数的に減少する。(2) シャーベット路面の接触熱抵抗は、質量含氷率が0.6以下では湿潤路面の値(1.1×10-3m^2K/W)と変わらないが、0.6以上になると非線形的に増加する。(3) 雪氷状態に係らず、接触熱抵抗は体積含空率の増加に伴って指数関数的に増大する。今後は、凍結防止剤の散布に伴う雪氷性状の変化を取り入れたモデル改良が必要である。
著者
大坪 志子 森 康 森 未来
出版者
熊本大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2009

縄文時代後期後葉(太郎迫式期)に、九州に出現・盛行するクロム白雲母製の石製装身具は、後期末~晩期にかけて東日本に拡散する。悉皆調査の結果、中部地方が主要分布圏の東限とみられる。クロム白雲母製装身具の東進の背景は、韓半島からの初期農耕の受容と拡散に関連があると想定したが、太郎迫式期に近畿地方での加工が確認され、関東にも数例の類例があることが判明した。東進の背景は、太郎迫式期の土器の動態とより関連が強い可能性がある。
著者
及川 靖広 村松 未輝雄 鳥飼 雄亮 久世 大 黒澤 潤子
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、歯を介した骨伝導に着目し、新たなコミュニケーションエイドを提案した。骨の一部である歯を直接駆動することは特性の点からも、効率の点からも、その性能を向上させる上で非常に有効な手段となりうる。小型で様々な歯型に適合可能なマウスピース型歯骨伝導デバイスを開発し、明瞭性、聴き取りやすさを中心とした受聴特性を明らかにし、新たな音情報伝達経路として十分利用可能であることを示した。また、マウスピース型歯骨伝導デバイスを用いた音声情報取得に関する検討を行い、騒音下でも明瞭な音声の取得が可能であることを示した。さらに、デバイスの無線化等の改良を加え、装着、持ち運びが容易なシステムとした。
著者
秦 吉弥
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2015-04-01

平成29年度は,過去の大規模地震(1923年大正関東地震,1993年能登半島沖地震,1995年新潟県北部の地震,2016年熊本地震など)によって発生したダイナミック地すべりを対象に,臨時地震観測や常時微動計測などを実施し,得られた記録などに基づいて地震時の地すべり挙動を事後推定することに成功した.当該研究成果については,論文集や国内外の会議において発表を行った.1923年大正関東地震については,根府川,震生湖,地震峠の三つの地すべり地を対象に,臨時地震観測や常時微動計測などを実施し,得られた観測・計測記録などに基づき地盤震動特性を評価した.そして,地盤震動特性と特性化震源モデルの組合せにより,本震時に当該地すべり地に作用した地震動を推定した.その結果,三つの地すべり地に作用した地震動の特徴が大きく異なることなどを明らかにした.1993年能登半島沖地震および1995年新潟県北部の地震については,特に深刻な被害が発生した市街地(造成宅地など)を対象に常時微動計測などを実施し,既存の強震観測点で得られた地震動記録の援用の可能性などに関しても検討を行った.2016年熊本地震については,特に甚大な被害が造成宅地において発生した益城町,阿蘇市,宇土市,南阿蘇村を中心に,臨時地震観測や常時微動計測などを実施し,得られた観測・計測記録などに基づき地盤震動特性を評価した.特に,益城町では,常時微動計測を広域かつ高密度に実施するだけでなく,断続的・継続的にも実施することによって,地盤震動特性をより詳細に評価することを試みた.
著者
藤波 芳
出版者
独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター)
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

遺伝性網膜疾患は先進国において最も頻度の高い失明原因となっている。Stargardt病(STGD)、網膜色素変性症、黄斑ジストロフィ、錐体桿体ジストロフィをはじめ多くの疾患がABCA4異常に起因し、ABCA4関連網膜症の病態理解、治療導入が急務である。本研究の目的は、東京医療センター(NISO)、英国UCL、米国NIH、STGD国際共同プロジェクト(ProgSTAR)の連携の下、3大陸を跨いだ形でのABCA4関連網膜症国際コホート・共有データベースを作成する事である。さらに、変異構造解析を用いた遺伝子型・表現型関連解析、頻出変異の大陸間比較を行うことで、大陸・民族間の病態差異を理解した上での世界規模での治療導入の考案・個別化医療の実践を目指す。本研究は1)臨床診断・患者リクルート、2)遺伝子検索、3)国際データベース・コホート作成、4)変異インパクトスコア算出、5)遺伝子型・表現型関連解析、(6)コホート間変異頻度比較、(7)治療法考案、の七段階で遂行される。平成30年4月現在、NISOではABCA4関連網膜症155症例における臨床検査・診断、患者リクルートが終了し、現在までに20例について36のABCA4変異が同定されている。英国UCLからは190症例、米国NEI/NIH、ProgStar studiesからは193症例が登録され、計518例のABCA4関連網膜症がデータベースに登録された。現在までに同定された37の高頻度ミスセンス変異に対して、molecular modelingによるインパクトスコア算出が終了し、本スコアが遺伝子型・表現型相関解析に利用されている。公開データベースより得られた各民族正常者コホートにおけるABCA4変異頻度比較が可能となるインハウスデータブラウザの構築が完了しており、コホート・民族間変異頻度比較に活用されている。
著者
片岡 智哉
出版者
東京理科大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は,河川流況及び流域情報を考慮した河川におけるマイクロプラスチック(MP)の輸送モデルを開発するものである.初年度には,江戸川野田橋(河口から39km)において河川水中におけるMP濃度の横断分布及び鉛直分布計測を行った.なお,MP濃度は橋梁から簡易プランクトンネットを用いて採取したMPの数量と質量をネット開口部に取り付けた瀘水計による計測濾水量で除すことで算定する.MP濃度の横断分布及び鉛直分布観測は平常時を対象とし,横断分布観測を3回(2017/5/31, 7/26, 9/15)と鉛直分布観測を1回(2017/6/22)実施した.MP鉛直分布観測の結果,単位濾水量当たりのMP個数(以下,MP数密度)は,水深が深くなるにつれて指数関数的に減少していた.そこで,浮遊砂量の評価式の一つであるLane-Kalinskeの式に基づき,MP濃度の鉛直一次元拡散方程式でモデル化した.一方,MP数密度は,河川横断方向において両岸で高く,流芯付近で極小値をとるように分布し,水深平均流速と逆相関の関係にあった.流速が大きな流芯付近ではMPが鉛直混合するため,相対的に水表面におけるMP数密度が小さくなったと推察される.MP濃度の横断・鉛直分布によるMP輸送量評価への影響を調べるため,MP横断分布計測結果に基づき,3つのケース(表層1点,表層3点,鉛直平均)でMP輸送量を評価・比較した.表層1点及び3点のケースでは,MP数密度が水深方向に指数関数的に減少する鉛直分布を考慮できていないため,軒並み過大評価された.一方,鉛直平均のケースでは,横断方向における採取点の選択により誤差が生じることがあるが,MP輸送量の評価誤差が相対的に小さい.このことから,MP輸送量評価においてMP鉛直分布を考慮することが重要であることが示唆された.
著者
松波 勲
出版者
北九州市立大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2015-04-01

1、Hybrid M2TDAC技術の開発に向けたデータ計測と解析(ア)実験車両:車両バンバー部に77GHz帯ミリ波レーダと光学カメラ、高精度カメラ、ルーフにリファレンスとして使用するレーザライダーを積載した。さらに、GNSSのタイムスタンプ機能を用いて、各センサーの同期を取り、リアルタイムデータ計測を実現した。(イ)データ計測:実験車両前方に速度の異なる3台の目標車両を走行させデータ計測を実施した。本実験では、77GHz帯MIMOレーダを使用した。(ウ)解析結果:取得したデータをHybrid M2TDACにより解析した。ビームフォーマ法を用いてしきい値以上となる全ての信号を分離・識別する。次に固有値分解を基とするMUSIC法によりを用いて各目標車両から反射される信号を検出する。その結果、車両形状の推定に必要な複数点を検出することに成功した。2、2次元立体構造再構成法の開発に向けた原理実証実験(ア)座標情報の取得:座標情報の取得方法について説明する。 MIMOレーダで取得したデータに対して到来方向推定としてMUSIC法を用いた処理を行い、 直交座標系から極座標系へ変換し、 極座標系内で車線幅の大きさの範囲で、 車両からの反射を取得し、 所得座標を座標上にプロットした。(イ)水平角方向の推定:Khatri-Rao積拡張アレー処理により水平角方向の分解能を更に向上させた。(ウ)仰角方向の推定:2次元立体構造をレーダ画像として描画するためには、仰角方向の情報も必要である。ここで我々は受信信号の経路長差に着目した。今回の実験で得られたデータから側面と背面に補正した点と補正前のレーダから経路長差を求めた。 そこから補正前の経路長から補正後の経路長で差分をとり、その差分を高さと仮定して高さを推定した。以上、学術論文3編、国際会議1件、国内会議1件、書籍1編の成果をあげている。
著者
市川 貴之
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2009

リチウムを多量に吸蔵可能な合金に着目し,水素化・脱水素化反応を利用して,合金からのリチウム脱離及び合金へのリチウム挿入反応による新しい水素貯蔵材料のシステムを創製した。特に,リチウムイオン電池の負極材料として注目される,シリコン系合金において,水素吸蔵放出反応における熱力学特性と,二次電池反応における電気化学特性の相関性を明らかにした。また,シリコン系合金とのアナロジーから,ゲルマニウムへも同様の考察を適用し,新たな水素貯蔵材料系を確立した
著者
田中 眞奈子
出版者
昭和女子大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、X線と異なる特性を持つ中性子を用いて鉄鋼文化財を分析し、結果の総合的解析により材質や内部構造を解明すること、そして最終的には鉄鋼文化財の非破壊分析手法を確立することを目的としている。平成29年度も「研究実施計画」に沿って研究を進め、以下のように意義のある成果を得ることが出来た。(1)日本刀断片、火縄銃断片に加え、個人蔵の日本刀、火縄銃、自在置物、そして本研究の最終目標であった美術館所蔵の大変貴重な鉄鋼文化財である自在置物のSPring-8での高エネルギーX線CT測定に取り組んだ。L28B2およびBL20B2で実験を重ね、また実験条件(空間分解能、密度分解能など)の調整・改善に取り組み、日本刀のように30mm程度の厚さのある鉄文化財でも、鋼中の非金属介在物(サイズは30~60μm前後)の配列を非破壊でも明瞭に観察できるようになってきた。(2)パルス中性子透過法を用いてこれまで分析してきた試料(鉄鋼標準試料、たたら製鉄により製造され日本古来の折り返し鍛錬や鍛接などの加工を行った試料(日本刀制作過程再現試料)、和釘、火縄銃、日本刀断片など)について、ブラッグエッジ解析による詳細な解析を進めた。なかでも日本刀制作過程再現試料は、各パラメーター(格子面間隔、歪、結晶子サイズなど)毎に2Dマッピング像の作成に成功し、格子定数の変化を指標とした焼き入れ範囲の可視化など、日本刀の制作工程と結晶組織変化の関係性を非破壊で解明することが出来、大きな成果を得た。(3)試料ごとに、高エネルギーX線を用いた分析結果と、中性子を用いた分析結果の比較検証を行った。X線と中性子の相補利用により非破壊での日本刀や火縄銃、自在置物などの具体的な制作技法や材料特性が解明されてきた。(4)研究成果は、国際会議BUMAⅨなど5件の発表(うち2件が招待講演、2件が国際会議)を通して積極的に公表した。
著者
富田 賢吾
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は分子雲スケールから原始星・原始惑星系円盤スケールに至る星形成過程を多数の物理過程を含む現実的なマルチスケールシミュレーションで明らかにすることを目指している。数値シミュレーションには米国プリンストン大学と共同で開発している公開時期流体シミュレーションコードAthena++を利用している。今年度は主にコードの開発を行った。まずオーム散逸と双極性拡散という二つの非理想MHD効果をAthena++に実装した。星形成を起こす分子雲は高密度かつ低温のため電離度が低く、これらの非理想MHD効果が重要であることが知られている。コードのテストを兼ねて星間ガスの熱構造を行った。乱流状態にある星間ガスでは衝撃波による加熱と輻射による冷却で温度構造が決まるが。双極性拡散を考慮すると衝撃波の構造が変化するため熱構造に影響すると期待されるが、実際には輻射冷却の効果が強いため温度分布は大きくは変化しないことがわかった。また、自己重力のポアソン方程式を解くポアソンソルバの開発を行った。大規模並列計算機上で正確かつ効率よく計算を行うために手法の検討を行い、Full MultiGrid Cycleに基づくMultigrid法の実装を開始した。まだ実装途中であるが、来年度前半には開発を完了できると見込んでいる。更に星・円盤形成過程を調べるため分子雲の収縮から星周円盤が形成される過程の長時間シミュレーションを行った。星周円盤の形成と進化においては角運動量輸送が重要であるが、シミュレーションにより初期には磁場による角運動量輸送が支配的であるが、後期に進むにつれて円盤質量が増加するために重力不安定により渦状腕が形成され、これによる重力トルクが支配的となることが分かった。この結果を観測と比較し、最近ALMAによって発見された渦状腕を持つ天体Elias2-27の性質を整合的に説明できることを示した。
著者
水内 郁夫
出版者
東京農工大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の成果の概要は、(1)系の力学的エネルギの総量をできるだけ増加させ続けるようなアクチュエータ指令決定法(フィードバック励振制御)、(2)多リンク系の力学的エネルギの流れ(エネルギフロー)の解析、(3)時間反転積分法とそれに基づく制御指令列生成法、(4)弾性を有する人工筋の筋経路決定法、(5)コンプレッサ搭載型空気圧駆動全身型ロボットの開発、などである。当初実現性に確信を持てなかった課題に対し、コアとなる理論を生み出すことに成功し、さらにその理論の有効性をシミュレーションと実世界実験により確認することができた。
著者
中村 亮一
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究では,これまでの手術ナビゲーション・デバイス・ロボット研究の成果を踏まえ,胎児内視鏡下手術および等張液充填式腹腔鏡下手術(WaFLES)の確立を目指し,統合的ナビゲーション内視鏡外科システムの基盤形成を図る研究を実施した.具体的には①100ms以下の誘導情報更新速度を有する術中3次元リアルタイム超音波ナビゲーション,②腹腔内で大型化する把持鉗子・超音波陰影のない弾性リトラクタ等の水腔内臓器操作用高機能「変形駆動式」手術器具,③距離マップによる安全制御を導入したナビゲーション誘導下レーザ治療システムを通じた,統合的ナビゲーション内視鏡外科システムの基盤形成を図る研究を実施した.
著者
藤原 翔
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本年度は2015年に中学3年生とその母親を対象として行った調査の追跡調査を行った.ベースサンプルの分析結果から明らかになった課題,高校に進学していたら2年であること,2012年の高校生調査との比較が可能なことなどを踏まえて調査票を作成した(2017年4月開始,11月確定).そして,東京大学社会科学研究所研究倫理審査委員会の承認を受けた上で,2017年11月から2018年1月にかけて,郵送調査を行った.郵送調査の結果,2015年の調査で有効回答が得られた1,854世帯のうち,1,591世帯(85.8%)の回答を得た.ただし,母親のみ回収の世帯が92世帯,子のみ回収の世帯が3世帯あり,ペアで回収できた世帯は1,496世帯であった(80.7%).調査票には,子どもの情報については進学した高校の情報や高校卒業後にどのような学校に進学したいか(学校名・学部学科名)などの項目が追加された.データの納品後はこれらの情報のクリーニングとコーディング(職業,高校偏差値,高校学科,大学偏差値など)を行った.基礎的な分析として,中学時の進学を希望していた高校の偏差値・学科と教育期待・教育アスピレーションと実際に進学した高校の偏差値・学科と教育期待・教育アスピレーションの情報を用いた固定効果モデルによる分析を行った.その結果,普通科希望から専門学科への変化は,教育期待・教育アスピレーションを下げることが示唆された.この結果については,高校階層構造の影響をみるための因果分析として論文をまとめている.
著者
中山 浩太郎
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究課題では,最新の脳科学の知見を活かしてスケーラビリティの高いDeep Learning手法を開発し,柔軟な知識処理機構を実現することを目指している.本機構が目指す目標は,多様なタスク(アプリケーション)へ適用可能な汎用性の高い知識処理のモデルおよび,大規模なデータをリアルタイムに処理可能な並列処理に最適化された計算モデルの2点である.特に重要なのは,一般的な計算環境(PC等)でも実行可能な並列計算のためのモデルであり,GPU(OpenCL等)を利用した多コア環境で実行可能なモデルを構築する.さらに,本手法の有効性を実証するために,プロジェクトの前半ではスパムフィルタなどの比較的シンプルなタスクやデータに適用するが,プロジェクト後半では連想検索とオープンQAの二つのアプリケーションを期間内に構築することを目指して研究活動を推進してきた。以上の予定と活動に基づき、2016年度は予定どおり基礎研究に軸足を置きつつ、アプリケーションへの適用を試験的に進めてきた。特にスパース性の高いWebデータへの適用を積極的に進め、研究開発を推進してきた。さらに、当初の研究計画に基づき、研究成果の対外発信を強化してきた。論文誌で研究成果が掲載された他、情報処理学会論文誌を始めとする国内論文誌へ論文を投稿中である。また、Deep Learning系のトップカンファレンスにも積極的に論文を投稿中である。
著者
桑野 良一
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2007

光学活性リン化合物PhTRAPがキレート配位したルテニウム錯体を不斉触媒として、2,6-および2,7-二置換ナフタレンの触媒的不斉水素化を試みたところ、最高92%eeの光学活性テトラリンが得られた。この不斉触媒を用いてキノリンの不斉水素化を試みたところ、通常予想されるピリジン環ではなくベンゼン環が選択的に還元され、光学活性5,6,7,8-テトラヒドロキノリンが最高84%eeで得られた。
著者
原田 俊太
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

熱エネルギーと、電気エネルギーの相互変換を可能にする熱電変換材料は、エネルギー有効利用の観点から、注目を集めている。最近の研究で、量子井戸構造による電子の閉じ込めによって、飛躍的に熱電変換特性が向上する事が理論的に予測されている。本研究ではSiC結晶の積層欠陥形成を制御することにより、バルク半導体中に量子井戸構造を形成することを目的としている。窒素ドーピングによる結晶成長により、六方晶SiC結晶中に立方晶型の積層欠陥が導入された。立方晶SiCは六方晶SiCよりもバンドギャップが小さいため、形成した積層欠陥は量子井戸となり、バルク結晶中に量子井戸構造を形成することに成功した。
著者
村山 航
出版者
高知工科大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本年度は,昨年度作成したトリビアクイズ課題・マジックショー課題を用いて,機能的磁気共鳴画像法によって,知的好奇心の脳内基盤を調べることが目的であった。この実験では,トリビアクイズやマジックショー課題をスキャナ内で被験者(大学生)に提示し,クイズの答えやマジックのタネをどれくらい知りたいかを,意思決定課題を用いて調べた。この意思決定課題の反応を用いて,知的好奇心に関わる脳内部位を知ることが可能になる。この実験では,こうした知的好奇心を掻き立てる刺激だけでなく,食べ物の写真も提示し,外発的な報酬(動機づけ)に関わる脳部位も調べることで,この両者の脳内表象が重なっているかをしているかを調べることも可能になる。実験の結果,知的好奇心も外発的な報酬(食べ物)も,線条体という脳内の報酬系によって支えられていることが明らかになった。一方,意外なことに,知的好奇心特有,もしくは外発的な報酬に特有の脳部位は,現在までの分析では得られていない。このメインの結果は,現在論文を執筆中である。こうしたメインの脳イメージング実験に加え,いくつかの実験や文献レビューを行い,知的好奇心の心的メカニズムに関して,いくつもの系統的な検討を行った。たとえば,文献レビューの1つでは,知的好奇心が脳内の報酬系を活性化させることで,生活における適応的な自己制御を促進することを明らかにし,研究論文として出版された。また,別の行動実験では,こうした外的報酬と内発的報酬のダイナミクスに関して,人間は不十分な理解しかないため,自己制御的行動に不順が生じる可能性を示唆した。