著者
尾川 僚
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究課題では、長い期間をつうじた複数の経済主体の競争におけるインセンティブの問題について、ゲーム理論、オークション理論を用いて分析した。特に、競争の主催者側の視点に立って、競争参加者の努力をうまく引き出すような競争の仕組みがどのようなものになるか分析する枠組みを作り、望ましい設計のもつ性質を提示した。
著者
平井 広志
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

離散凸解析と離散距離空間の理論と応用に関して,本年度は以下のよう研究を行った1.6月と1月に韓国のPohang工科大学のJack Koolen教授を訪問し,Tight SpanやSplit分解法,正則多面体分割について有益なディスカッションを行った.特に2度目の訪問においては,私の研究すなわち,Tight SpanやSplit分解法の拡張や関連する話題のチュートリアル講演を行った.これにより,互いの研究のより良い理解が得られた.2.前年度に明らかになった4点条件を拡張した「木の上の部分木族間の距離の特徴付け」とTropical行列式との関連を調べた.特に「木の上のパス間の距離」が距離行列の「任意のサイズ4の主対角行列の行列式のTropical化が消える」ことによって特徴付けられることが分かった.これを踏まえて,関連するTropical幾何学に関する文献調査等を行った.また1月に開かれたRIMSの研究集会「計算可換代数と計算代数幾何」において,この結果の一部を講演した.3.私が提案した拡張スプリット分解法の系統学への応用に関して調査研究を行った.前年度の調査によって欠損のあるデータへの応用の可能性が見つかったのであるが,特に生物の形態学データからの系統樹構成問題において,絶滅した生物と現存する生物を混ぜて解析する場合にこのような問題が発生する.すなわち絶滅種は化石からデータを取るしかなく数多くの欠損データを含むのである.この問題を扱った論文をいくつか調査し,そこにあるデータに対し,実際に距離を構成して拡張スプリット分解を適用してみた.すると,いくつかのデータに対しては化石種が得られた系統樹内の部分木に対応させられた.これはこの手法の将来的有望性を物語るものと考えている.
著者
鈴木 善晴
出版者
法政大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究は,地球温暖化進行時の豪雨頻発化を念頭に,クラウド・シーディングを用いた人為的豪雨抑制手法の開発とその効果的な実施条件について検討を行うものである.メソ気象モデルを使用して雨域面積や時間降水量の変化などの複数の観点からシーディングによる降水システムへの影響の有無や大小を解析するとともに,シーディングに伴う氷晶数濃度や霰の増減などに着目して抑制効果のメカニズムを解析した.その結果,シーディングにより積算降水量のピーク領域の面積や時間最大降水量が効果的に抑制され得ることなどが確認され,また,風下側への降水粒子の移動・拡散がシーディングによる豪雨抑制の重要な要因であることなどが示された.
著者
浅沼 敬子
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

ゲルハルト・リヒターによる1960年代のフォト・ペインティング作品(写真を元にした絵画作品)については、リヒター本人の言もあって、多くの研究者がその政治的、歴史的意味を指摘することに慎重だった。しかしミステレク=プラッゲの基礎研究(1990/1992)以降、近年では、2007年のディートマー・エルガーやディートマー・リューベルの指摘に見られる通り、リヒターのフォト・ペインティング作品のさまざまな意味が指摘されている。本研究の第一の成果は、ミステレク=プラッゲにならって、ドイツの週刊誌「シュテルン」「クイック」「ブンテ」「レヴュ」「ノイエ」(「レヴュ」と「ノイエ」は1966年に統合された)の1962-66年を再調査し、さらに「シュピーゲル」誌の調査、前誌の1959年、1967年分等の調査を加えて、リヒターが切り抜いた約160枚のうち、約70枚の写真の出自を特定したことである。それによって、ミステレク=プラッゲやエルガーらが部分的に指摘した、リヒターのフォト・ペインティング作品の歴史的、さらにいえば「悲劇的」意味が、より説得力ある仕方で指摘されるに至った。本研究の第二の成果は、1960年代のゲルハルト・リヒターのフォト・ペインティング作品から、1988年の『1977年10月18日』を経て、ドイツ国会議事堂のために制作された1998年の『黒、赤、金』にまで通底する意味的一貫性を指摘したことである。『黒、赤、金』は、一見すれば抽象的作品だが(これは油彩ではなくガラス作品である)、よく知られているように、リヒターはこれを「ホロコースト」写真をもとにした、1960年代以来のフォト・ペインティング的作品として構想していた。従って、1960年代から1990年代まで、リヒターの試みの一貫性が指摘され得るのである。こうして、リヒターの画業を1960年代から再構成することによって、従来個別にしか指摘されてこなかったその政治的、歴史的意味を、一貫したものとして描き出したのが本研究の重要な成果である。
著者
田邉 洋一
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

鉄ニクタイド超伝導体のディラックコーンに特徴的な輸送現象の観測と不純物置換効果を明らかにすることを目的として、Ba(Fe_<1-x>TM_xA_s)_2(TM=Ru,Mn)において磁場中輸送特性の測定を行った。その結果、ディラックコーンの量子極限の出現に起因する線形な磁気抵抗効果を観測した。さらに、非磁性・磁性不純物に対してディラックコーンが安定であることを磁気抵抗効果から観測し、ポテンシャル散乱体による後方散乱が抑制されていることを確認した。さらに、磁性不純物とディラック電子の近藤効果に起因したバンド繰り込みと理解できる有効質量の増大を見出した。
著者
吉次 公介
出版者
沖縄国際大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

アメリカは、沖縄に米軍基地を長期的に維持するために、沖縄の施政権を日本に返還することを決めた。ニクソン・ドクトリンに伴って縮小されたアジア太平洋の軍事的プレゼンスの支柱として在沖米軍は不可欠なのであり、その在沖米軍基地を維持するために是非とも必要だったのが沖縄返還なのであった。デタントが進行し、ニクソン・ドクトリンによってアジア諸国から多くの米軍が撤退した。冷戦構造の変容や国際緊張の緩和はアジア諸国の米軍受け入れの負担を軽減していったといえる。しかし、沖縄が受けた緊張緩和の「配当」は限られたものとなり、沖縄の相対的負担が増していった。とりわけ、韓国と台湾は、在沖米軍基地機能の維持を強く望んでいたが、これは、沖縄返還が、アジア太平洋地域が沖縄への依存を深めるプロセスであったことを意味している。屋良ら琉球政府は、冷戦構造の変容と沖縄問題をリンクさせる視点がなかったわけではないが、主に「基地密度論」に代表される基地被害の軽減という観点から、在沖米軍基地を縮小することを求めた。他方、佐藤政権が、緊張緩和と在沖米軍基地の削減をリンクさせる発想を持っていたのかは定かではない。多極化、デタント、そしてニクソン・ドクトリンによってアジア太平洋地域から多くの米軍が撤退したにもかかわらず、在沖米軍の削減は限られたものとなり、アジア太平洋における米軍のプレゼンスを支えるうえでの沖縄の負担は相対的に増していった。沖縄返還とは、日本だけでなくアジア太平洋地域全体が、安全保障面で、即ち米軍の受け入れという点で、沖縄への依存を深めていくプロセスであったといえよう。
著者
鯉川 なつえ
出版者
順天堂大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

我が国の女性アスリートの活躍はめざましく、ついにアテネ五輪に出場する女性が史上初めて男性を上回った。しかし、女性アスリートは男性アスリートとは異なり、「月経」があるため試合におけるコンディショニングに特に配慮しなければならない。また、月経が周期的に起こる選手であっても、月経前から月経中はスポーツ外傷が多いという報告や、競技成績が悪いという報告もあり、せっかくのトレーニングが水の泡と消えてしまう可能性もあるだろう。しかし、諸外国の月経コントロールに関する調査報告は非常に少ない。そこで本研究は、早くからピルが認可され、手軽にピルを使用できるアメリカの女性陸上競技者と、日本の女性陸上競技者を対象に、月経異常の発症、月経による競技パフォーマンスの影響および月経コントロールの実態についてアンケート調査を実施し、諸外国の月経に関する現状を明らかにすることを目的とした。本研究は、日本の学生陸上競技者42名(20.0±1.3歳)およびアメリカの学生陸上競技者34名(19.4±1.4歳)計76名を対象とし、比較検討を行った。その結果、月経が停止した経験のある人は、アメリカに比べ日本のアスリートの方が有意(p<0.01)に多かった。また正常月経の者は、月経に伴う症状は日本とアメリカに差はないが、日本のアスリートは月経によるパフォーマンスの低下を有意(p<0.05)に感じていた。ピルの使用経験や知識はアメリカのアスリートの方が有意(p<0.05)に多かったが、競技活動に有効に利用されていない現状がうかがわれた。
著者
岸 亮平
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

一重項縮環共役開殻分子系の電子構造と(非)線形光学スペクトルの相関関係を解明するための計算・解析手法の開発と実在系への適用を行った。ab initio MO 法に基づく量子マスター方程式を用いて動的二次非線形応答の計算・解析法の開発に成功し、第二高調波発生スペクトルの置換基効果や波長分散に対する構造特性相関を明らかにした。一重項縮環共役開殻分子系の多参照摂動論による励起状態計算を実行し、線形、二光子吸収スペクトルの実験値と比較することで構造特性相関を明らかにした。開殻分子系の派生として、キノイダルオリゴチオフェンやなど局在化ジラジカル系についても構造特性相関を明らかにした。
著者
海住 英生
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究課題では、強磁性薄膜のエッジとエッジに有機分子を挟んだ強磁性薄膜/有機分子/強磁性薄膜量子十字素子を提案し、その表面・界面構造、電気伝導特性、並びに、磁気特性を調べることを目的とした。初めに、表面状態、磁化状態、及び、エッジ状態について詳細に調べた結果、Co/SiO_2が量子十字素子の電極材料として最も適していることがわかった。次に、本研究課題で構築した独自の成膜・研磨・エッチング技術を用いて、Co/有機分子/Co量子十字素子を作製し、その特性評価を行った。その結果、室温にて非常に興味深いスイッチング特性を見出すことに成功した。
著者
阿部 洋丈
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

ネットワークを介してデータ転送を行う場合のスループット予測技術を応用したシステムの実現、および、予測技術そのものの拡張を目指した研究を実施した。具体的には、予測技術に基づいた広域の相互バックアップシステムやグリッドコンピューティングメタスケジューラのプロトタイピング、TCP 輻輳制御における恒常性の分析、および、マルチパスTCP転送への予測技術の応用などに取り組んだ。
著者
半田 太郎
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

近年,超音速マイクロ噴流を工学的に応用する試みが数多くなされている.各種機器に超音速マイクロ噴流を効率良く適用するためにはこの噴流の詳細な構造を理解する必要がある.とくにマイクロ噴流のブレークダウン長さは,ブレークダウンが起こると噴流が急激に乱れて広がり始めるので,応用上この長さを知ることは極めて重要である.本研究ではレーザー蛍光・りん光法を用いて超音速マイクロ噴流のブレークダウン長さを計測した.その結果,ブレークダウン長さはレイノルズ数の増加とともに減少し,亜音速マイクロ噴流と似た実験結果が得られた.しかしながら,亜音速マイクロ噴流ではブレークダウン長さはレイノルズ数の逆数に比例するが,超音速マイクロ噴流ではそのような結果とはならなかった.この結果から,超音速マイクロ噴流にはレイノルズ数以外にもブレークダウン長さを支配するパラメータが存在することが明らかになった.
著者
原口 和也 佐々木 慶文
出版者
小樽商科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

ラテン方陣完成型パズルの基本問題である「部分ラテン方陣拡大問題」に対し、効率の良い局所探索法を開発した。マクマホン立方体パズルに関連して、未解決問題1つを含む3つの問題を解いた。本研究で取扱ってきたパズルを遊ぶことのできるサイト「LatinPuzzler」およびiOSアプリ「ふとうしきパズル」を開発し、公開した。
著者
長谷 純宏
出版者
独立行政法人日本原子力研究開発機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

植物の突然変異育種の効率化を図るため、変異の方向性制御に着目した。シロイヌナズナのアントシアニン生合成関連遺伝子の発現量は蔗糖溶液を与えることによって上昇した。イオンビーム照射による色素欠損変異体の獲得頻度は、蔗糖を与えなかった幼苗に比べて蔗糖を与えた幼苗で高かったことから、高発現する遺伝子が変異を起こしやすい可能性が示唆された。
著者
竹内 崇
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、現在おもに使用されているドーパミンーセロトニン受容体遮断薬の非定型抗精神病薬によっても十分に改善しない、陰性症状・認知機能低下などに対し、NMDA受容体グリシン結合部位アゴニストとして作用するD-サイクロセリンの臨床応用の可能性を検討することを目的としている。D-サイクロセリンはすでに本邦では抗結核薬として承認されており身体的安全性のデータの蓄積はあるが、脳内の薬物動態の解析についてはほとんど解析されていない。本年度は、陰性症状を主体とする統合失調症患者に対して、6週間のクロスオーバーによるD-サイクロセリンおよびplaceboを経口投与する二重盲検法の臨床試験を開始した。各種臨床評価尺度をもちいて、平成16、17年度に評価者間のばらつきを検討した評価尺度を使って症状改善度を評価すると同時に、最終評価後に統合失調症の難治性症状に対する有用性と有効血中濃度を検討するため、D-サイクロセリン血中濃度測定用の採血を行った。また、投与開始前に拡散テンソル画像を含むMRI検査を施行し、統合失調症患者の脳の形態およびMRIシグナルの特徴について、D-サイクロセリンの臨床効果を予測する指標としての可能性を調べている。現在のところ臨床試験を開始した統合失調症患者の症例数が少数であるため、陰性症状・認知機能低下に対するD-サイクロセリンの有用性に関して結論には至っていない。今後は症例数を重ねて解析を継続していく予定である。一方、動物実験において、内側前頭葉皮質における、内在性NMDA受容体コアゴニストのD-セリンの細胞外液中濃度に対するD-サイクロセリンの影響を調べた。さらに、この相互作用の分子機序を知るため、大脳皮質初代培養系細胞の準備を進めた。
著者
鈴木 江津子
出版者
上智大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

記憶の生理学的基礎と考えられている海馬長期増強は、生体内ではあまり見られない高頻度な電気刺激をシナプ部に与えることにより誘導されることが多く、内在性の誘導メカニズムは明確ではない。本研究では、内在性の長期増強誘導メカニズムとしてのアセチルコリン受容体およびカリウムイオンチャネルの可能性を検討することを目的とした。ラット海馬スライス標本を用い、内在性のアセチルコリン放出による海馬長期増強調節作用メカニズムについて検討した。海馬CA1への海馬内入力線維であるシャファー側枝に対し、高頻度刺激を与える30秒前に中隔からのアセチルコリン入力線維のあるCA1上昇層に対し電気刺激を行うことにより、高頻度刺激によるCA1長期増強の程度が有意に増加することが確認された。この長期増強の増大は、ムスカリン性アセチルコリン受容体(mAChR)阻害薬投与により阻害された。一方で、Kv7/M型カリウムイオンチャネル阻害薬を、mAChR阻害薬と同時投与することにより、上昇層刺激による高頻度刺激誘導性長期増強の増大が認められた。また、Kv7/M型カリウムイオンチャネル阻害下では、上昇層への先行刺激なしに、高頻度刺激のみでも長期増強の程度が増大した。カリウムイオンチャネルの不活性化は細胞膜の脱分極を引き起こすことから、膜電位依存性カルシウムイオンチャネル活性化により細胞内にカルシウムイオンが流入し、長期増強増大が生じている可能性を検討するため、T/R型カルシウムイオンチャネル阻害薬を投与したところ、上昇層刺激による高頻度刺激誘導性長期増強増大が阻害された。このことから、内在性アセチルコリン放出による長期増強増大には、mAChR活性化およびKv7/M型カリウムイオンチャネル不活性化とそれに伴う膜電位依存性カルシウムイオンチャネル活性化が関与していることが示された。
著者
峯田 史郎
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、大メコン圏(GMS)において、国家スケール主導の開発プログラムによって社会変化を強いられてきた生活者に注目し、彼ら自身が生活領域を確保する実態を検証することを目的とした。境界地域に暮らす生活者は、関係する各種行為体から、政治的、経済的、文化的影響を受けながらも、境界領域の権力構造を巧みに利用し、生存戦略を模索する過程を明らかにすることができた。
著者
藤川 智紀
出版者
独立行政法人農業工学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

国内の4カ所の農地(東京都,茨城県(以上,耕耘後裸地状態),青森県(牧草地およびデントコーン畑)を対象として,表層土壌の不均一性が土壌-大気間のガス移動に及ぼす影響を明らかにすることを目的に,地表面からのCO_2ガス発生量と土壌の理化学性を測定した.特に,未だ研究例の少ない表層土壌中のガス移動特性(ガス拡散係数,土中ガス濃度)とガス発生量の関係に注目した.ガス発生量の測定の結果,ガス発生量の変動係数(C.V.)は,4カ所で違いは見られず,0.16〜1.03であった.牧草地を除いては,時間の経過と共にC.V.は小さくなり,耕耘によってガス発生量の不均一性が大きくなり,その後均一になることが示唆された.土壌中のガスの拡散移動のしやすさを表すガス拡散係数の測定からは,土壌の気相率の不均一性よりもガズ拡散係数の不均一性が大きくなる傾向が見いだされ,気相の量だけでなく気相の構造(間隙構造)も,拡散係数の不均一性に影響を与えていることが明らかになった.また,ガス拡散係数と共に拡散移動の量を規定するガス濃度は深い層ほど大きく変動し,表層のガスの拡散移動量の不均一性は,より深い層でのガス濃度に大きく影響を受けることが分かった.このことから,ガス発生量の不均一性の解析の際に,表層だけでなく,より深い層のガス挙動の把握が重要であることが示唆された.各圃揚におけるガス発生量とガス拡散移動量の平均値の相関係数は0.75と高く,また特定の場合を除いて差も50%の間に収まり,表層土壌中のガス拡散移動が地表からのガス発生量に大きな影響を与えていることが確認できた.しかし,各測定点におけるガス発生量とガス拡散移動量の間には有意な関係は見いだせなかった.測定をおこなう範囲や方法の違いが影響している可能性も考えられるため,測定方法を改良し,更にデータを蓄積することが課題として残された。
著者
北神 慎司
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

ジェンダーバイアス(own-gender bias)とは,異性の顔よりも同性の顔のほうが認識しやすく,記憶しやすいという現象である.本研究では,ジェンダーバイアスの生起に,接触経験などの知覚的熟達要因,あるいは,同性他者への興味・関心などの社会的認知要因が関与しているかどうかを検討した.その結果,特に,再認記憶におけるジェンダーバイアスには,知覚的熟達要因ではなく,社会的認知要因が関与していることが示唆された.
著者
臼井 恵美子
出版者
一橋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

女性の就業促進、具体的には、①非労働力から労働力への移動の促進、②既に就業中の母親の場合は、彼女達の労働時間の延長や機会の拡大、などを推進するために、パートナーである男性の働き方を変えることが、どの程度影響があり効果的な政策であるかを分析した。その一環として、育児や家事分担に関して、父親がフレックスタイムの様な柔軟な働き方をする場合の変化について分析した。さらに、労働条件に対する選好が男性と女性とで異なることを考慮した均衡サーチモデルを構築し、そのモデルに基づいたシミュレーション分析により、男女の労働時間の違いによってもたらされる企業の生産性、及び、労働者の人的資本形成への影響を明らかにした。
著者
國仲 寛人
出版者
中央大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

人口は行政の基本データであり、各自治体の人口の変動は政治経済の状況等に起因する人口移動や人口増加によって決定される。本研究では、国勢調査データ等の解析により、日本の市町村単位の人口分布の特徴的な時間変化を明らかにした。特に、都市の人口分布に普遍的に見られると言われるZipfの法則が、日本の場合市町村合併の影響で破れる事を示し、人口移動モデルによるシミュレーションでも定性的な再現ができることを示した。