著者
山本 倫也
出版者
岡山県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

対面コミュニケーションでは,単に言葉によるバーバル情報だけでなく,音声に対するうなずきや身振り・手振りなど言葉によらないノンバーバル情報が相互に同調して,対話者同士が互いに引き込み合うことでコミュニケーションしている。本研究では,この身体リズムの引き込み原理を小型パートナーロボットに導入することで,ロボットとかかわりあいながら学ぶ学習システムの開発した。まず,昨年度提案した音声駆動型うなずきロボットを介した協調学習のコンセプトに基づき,引き続き,PC制御による駆動機構の設計・製作と,駆動ソフトウェアの開発・評価を行った。ここでは,カメラとプロジェクタを搭載したプロトタイプロボットを開発し,評価実験を行った結果,ロボットを介した映像中継におけるうなずき反応提示の効果を示し,この成果を国際会議で発表した。また,ロボットを介した情報提示を円滑にするために,情報提示インタラクションにおける動作と発声のタイミング制御の有効性を明らかにした。ここでは,動作と発声を同時に生成するのではなく,適度に発声を遅延させることで「好き」「丁寧」など好ましいインタラクション効果をもたらすことを明らかにして,原著論文にまとめた。さらに,ロボットを介して教師から生徒に教えるために,顔パーツをモニタ前面に表示し,頭部に入り込んだような「面の皮」表示による教示インタフェースの開発・評価を進め,有効性を明らかにした。とくに,CGキャラクタによるプロトタイプではあるが,招待展示やイベント等でデモンストレーションを行い,体験できる形でシステムの有効性を示すことができた。
著者
福山 由美
出版者
豊橋創造大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

今回の研究目的は、これまでHIV/AIDS患者から実施されていなかった(1)ケアシステム評価を可能とする質問紙調査票の開発、また(2)現在機能しているケアシステムが、受診中断予防に寄与しているかを検討した。(1)は、既に開発されているPACICの日本語版開発を行った。その結果、内的整合性が得られ、原版者のホームページ上に日本語版として掲載された。(2)は、PACIC項目を含んだ患者アンケートと診療録調査を実施した。その結果、調査協力医療機関の支援内容は充実しており、受診中断者は7.5%であった。しかし、医師が患者に必要な支援を判断する現行の体制では、HIV患者の増加とともにこれまでの充実した支援に破綻をきたすことが考えられた。今後も質の高い医療を継続するためには、これまで外来で導入されていなかったディジーズマネージメントを取り入れていく必要性があることが示唆された。
著者
長田 裕也
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

ポリキノキサリンの不斉らせん誘起・不斉増幅の詳細について明らかにし、触媒的不斉合成へと展開するため、側鎖にアルコキシ基を有するポリキノキサリンを開発し、その主鎖の不斉らせん制御に成功した。また、末端へのキラル小分子修飾によるらせん不斉誘起についても検討し、キラル小分子による主鎖全体のらせん不斉誘起を達成した。さらに、側鎖にピレニル基を有するポリキノキサリンを合成することで、高効率らせん不斉誘起が可能な溶媒を、簡便かつ迅速にスクリーニングすることが可能となった。
著者
湯田 拓史
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、大正-昭和初期における日本の高等商業学校設置場所の都市の発展状況と高等商業学校生の進路特性を検証することで、高等商業教育機関と設置場所である都市との関係性を考察した。結果として、各都市での高等商業学校への「進学経路」は、甲種商業学校の都市社会での位置づけと関連していた。旧制中学校と比べて甲種商業学校が設置しやすく地域社会の支持も受けやすかったことから、商業系高等教育機関の発展はローカルな社会過程によって達成されたのである。
著者
ワグナー トーステン
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は、光アドレス電極(light-addressable electrodes)とlight-addressable potentiometricsensor(LAPS)を融合した新たな測定系を構築する事である。両測定系は光源の移動や形状により関心領域を定義可能であり、本研究は、両者をひとつの測定系として融合させた初めての試みとなった。測定系の構築において、digital light processing(DLP)を照射領域可変の光源として使用し、マイクロ測定チャンバ内において、光アドレス電極によって局所的に生成したpH変化を、LAPSによって検出することに成功した。本研究によって、光アドレス電極とLAPSを融合した新規測定系の有用性と可能性を示すことができ、さらに両測定系のより深い知見を得ることもできた。
著者
和田 小依里
出版者
京都府立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

近年、炎症性腸疾患患者数が増加しており、食生活の変化がその要因の一つとも言われている。発酵食品の摂食量は減少しているが、一方で発酵食品中の因子が腸炎改善作用を有する可能性を示唆するエピソードが存在する。我々はデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発大腸炎モデルマウスを用いて、発酵食品の一つである日本酒中のいくつかのペプチドが、数 mg/kg/日以下の微量の経口投与で大腸炎抑制作用を示すことを見出した。
著者
吉野 剛弘
出版者
東京電機大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

正規の学校の中に存在しながら受験準備教育機関として機能した旧制中学校の補習科について歴史的研究を行った。補習科をめぐる政策動向を検討するとともに、各地域の補習科を類型化した上で6府県の事例の実態を検討した。その結果、政策的には大正期以降は補習科を含めて準備教育に消極的な面が見られた。一方、各地域においては準備教育に邁進することへの疑問を抱きつつも、生徒のニーズに応えるべく、準備教育に勤しまざるを得なかった状況が明らかになった。
著者
カチョーンルンルアン パナート 木村 景一 BABU Suryadevara V. 鈴木 恵友
出版者
九州工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

ポリシング加工現象を解析するため,被ポリシング面(被加工領域)にエバネッセント光(近接場光)を発生させ,被加工領域に侵入するナノ微粒子の挙動観察を行なった.独自に開発したポリシング機に搭載できるポリシング現象可視化装置により,ポリシングの現象を再現し,SiO2基板で粒径15~100nm(4H-SiC基板では粒径50nmのシリカ)の粒子の挙動を動的に毎秒100フレームで観察することに成功した.

1 0 0 0 OA 聴覚記憶認証

著者
薗田 光太郎
出版者
長崎大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

認証者が,ユーザに対し,予め設定された音Xを含む音群を聴取させ,Xについて回答させ,照合されれば認証を通過する「聴覚記憶認証」方式を検討した.検討の結果は2つにまとめられる.(1)個人または特定のグループだけが探索することなく即座に反応できるような刺激音として,被認証者への呼びかけ音声と,被認証者本人による自声聴取音声との二種類を試みた.被認証者への呼びかけ音声は発声される単語(苗字+さん)の違いの統制が困難であり現実的ではなかった.自声聴取音は元来発声者本人のみが聴取できるものであり,自ずから本人以外とで親密度が異なると考えられる.実際に本人は自身の自声聴取音声が,外部マイクロホンで採られた音声よりも親密度が高く,他人による評価では低い傾向があった.ただし個人差があり,本人と他人とで評価される親密度に大きな差のない場合もあった.(2)自声聴取音声の取り込みと再提示の方法について検討した.自声聴取音声は,外気を経由して鼓膜を敲く経路に加え,外字や中耳を経由せず頭蓋内を通って内耳にはたらく経路とが合成される.そこで,自成長主音声を外部マイクロホン及び肉伝導マイクロホンの2チャンネルの合成音で作成した.また自成長主音声を提示する場合は,通常のヘッドフォン提示より,骨伝導ヘッドフォンで提示した場合がより自声聴取音声の忠実な再現ができていたようだった.ただしこれにも個人差があった.
著者
志賀 勉
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、居住収縮が進む戸建て住宅地における住宅・宅地ストックの社会的管理のあり方を検討するための基礎として、空宅地の用途転換と飛び地利用の実態を調査し、その特性を分析することを目的としている。本研究では、郊外戸建て住宅地と斜面住宅地を対象に行った調査結果をもとに、空宅地の用途転換の傾向と菜園利用における飛び地利用の特性について分析を行い、以下を明らかにした。1.空宅地の用途転換について:空宅地の用途転換では、空宅地の規模や立地条件等の物的属性が新たな用途を制約する。特に駐車場や農園への用途転換にはこの制約が大きく、戸建て住宅地の平均的な画地規模では用途転換のメリットが小さい。これに比べて、菜園は空宅地の物的属性の制約が小さく、小さな画地の用途転換にも向いている。2.菜園利用における飛び地利用の特性について:空宅地の菜園利用は、利用者数と土地所有の関係から利用型が分けられ、また、利用者の自宅から菜園までの経路距離と利用面積との関連が認められた。さらに、自宅庭の使い方と空宅地菜園の使い方は相互に関連しており、空宅地が自宅庭の延長として利用者に認識されていることが理解された。3.戸建て住宅地管理のあり方について:居住収縮の進む戸建て住宅地の全体的な管理を行うためには、地区住民のニーズや空宅地の属性等の詳細な情報を把握した上で、住宅・宅地ストックの管理方策を検討する必要がある。本研究で分析した飛び地利用は、点在する空宅地の管理方策として、所有者の管理負担を軽減し、かつ地区住民のニーズにマッチした有効な手段のひとつと考えられる。
著者
和田 友香
出版者
国立成育医療センター(研究所)
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

INSL3の多型であるAla24Ala (72G>A)とSF-1 (Steroidogenic factor-1)の多型であるGly146Alaは停留精巣に劣性効果をもたらしていることが判明した。
著者
扇原 淳
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

カザフスタン共和国アラル海周辺地域における学校保健プログラム開発のための第一歩として,学校保健プログラムの中心である学校健康教育の現状について把握するために,学校健康教育に関する教科の開発の動向とその課題を明らかにすることを目的とした.現行の学校健康教育教科 Валеология Программа (Алматы, 2005),新しく開発された学校健康教育教科Здоровье и жизненные навыки(2007),同国における学習指導要領にあたるГосударственный общеобязательный стандарт среднего общего образования Республики Казахстан(Алматы, 2002)等の分析に加え,教育科学省及び保健省関係者にインタビューを行った.結果としては以下の5点が明らかになった.1)カザフスタン共和国における初等中等教育は現在11年制であるが,12年制に移行する準備が行われていた.2)同国では,「Валеолoгия(健康科学)」という学校健康教育教科が1998年に設立された.3)この教科の成立に主導的な役割を果たしたのが,National Center for Problems of Healthy Lifestyle Developmentであり,当時所長であったAdilhanov Almuhamed氏であった.4)Валеолoгия(健康科学)の教員はスポーツ大学,医科大学,教育大学で養成されている.5)多数の教科に散在する学校健康教育に関連する内容を統合する形で「Здоровье и жизненные навыки(健康とライフスキル)」が2005年に開発された.同国のが学校保健プログラム開発および学校健康教育の課題として,必要な教育内容の範囲(Scope)と,各年齢段階でどのように学ばせていくかの配列(Sequence)を明確にする作業が不可欠であることが明らかとなった.
著者
熊谷 龍一
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では,テストの公平性を担保するアプローチの一つとして,DIF(differential itemfunctioning:特異項目機能)分析を利用した方法について検討を進めた。従来のDIF分析に対して,対象集団数や順序付き多値型項目への対応といった理論的拡張が進められ,分析を実行するためのコンピュータプログラムの開発,公開を行った。さらに,性格検査やうつ評価尺度といった心理尺度,英語教育や日本語教育の現場で広く利用されているcan do statement尺度への適用例を示し,その方法の妥当性を示すことができた。
著者
阪東 一毅
出版者
静岡大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー結晶(TPCO結晶)におけるダビドフ励起子の基礎光学遷移について調べた。下枝ダビドフ励起子はTPCO分子のチオフェン環の数に依存して光学遷移が許容になる場合と禁止になる場合がある。一方、より高エネルギー側に存在する上枝ダビドフ励起子はac面内方向に極めて大きな振動子強度を持つ。TPCO分子は結晶内でH会合体のようにほぼ平行に配向するため、上枝ダビドフ励起子は下枝ダビドフ励起子に比較し、大きな吸収強度を持つ原因となる。これらの光学遷移選択則はそれぞれの結晶における分子の遷移双極子モーメントの配列様式によって決まってくる。
著者
青木 康晴
出版者
成城大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、(1)利益情報の有用性、(2)会計上の保守主義、(3)配当政策という3つの観点から、支配株主の機会主義的行動について検証した。研究(1)では、支配株主の存在は総じて利益情報の有用性を高めるものの、最大株主がアウトサイダーの場合、その持株比率が一定水準を超えると利益情報の有用性が低下することが示唆された。研究(2)では、最大株主持株比率が高い企業ほど保守的でない会計利益を報告し、役員派遣と相対的規模がそれに影響を与えているという証拠が提示された。研究(3)では、最大株主がインサイダーかアウトサイダーかによって、配当の水準、および最大株主持株比率と配当の関係が異なることが示唆された。
著者
松永 康佑
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、仮想身体表現のための計測システムの構築を目指している。従来の計測システムは運動解析と形状計測を別々に行うものであり、同時に記録できるシステムが求められた。また、多点運動解析では、計測点が増加するに従い、編集時間増加の問題があった。これらの問題解決のため、本研究では田の字型紙マーカを用いた、計測システムの構築を行った。この計測システムの有効性は確認できたが、計測精度や認識速度の点において問題が残った。
著者
三宅 洋平 臼井 英之
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

3次元電磁モデル大規模プラズマ粒子シミュレーションにより、太陽近傍プラズマ環境中における科学衛星プラズマ相互作用を定量的に解明した。特に①強太陽放射による大量の光電子放出にもかかわらず、空間電荷制限電流の効果により衛星は負に帯電する、②太陽風プラズマ中の対流電場に起因する光電子の非対称分布が衛星搭載電場プローブ位置に数100 mV/mの強い人工電場を発生させる、③衛星からの光電子放出電流により最大数nT程度の局所磁場変動が起こりうる、などの結果により、これまで人類が経験したことのない極限環境における衛星プラズマ相互作用の実態を明らかにし、将来衛星計画の設計に適用可能な知見を得ることに成功した。
著者
和田 賢治
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

フランク・ナイト(1921)によって提唱され、エプスタイン・ワン(1994)によって精緻化されたナイトの不確実性について、離散状態および連続状態の二つのモデル化を行い、ナイトの不確実性の定量分析を行った。離散状態モテルは簡素だが、ナイトの不確実性に対して自然な解釈を与えられる。連続状態モデルでは、ナイトの不確実性に対する解釈がそれほど自然ではないが、モデル自体は精緻である。よって両モデルは補完的関係にある。離散状態モデルでは、メラ・プレスコット(1985)によって定式化されたマルコフ過程モデルを用いてナイトの不確実性を定量化した。またこの定式化を用いて日本とアメリカの株および国債の収益率に対して、ナイトの不確実性が存在すれば、リスクプレミアムパズルおよびリスクフリーレートパズルは解決できる事を示した。この論文は、Wada (2005), "The Knightian Uncertainty and the Risk Premium and the Risk Free Rate Puzzles in Japan and the U.S."として2005年8月にEconomic Lettersに投稿中である。連続時間モデルでは、エプスタイン・ワン(1994)によって定式化された動的一般均衡モデルに対して、ルー円バーガー(1969)で証明されハンセン・ジャガナサン(1997)によってファイナンスに応用されたデュアルメソッドを用いて、ナイトの不確実性を定量化した。この論文は、Wada (2006), "A New Measure for the Knightian Uncertainty and the Risk Premium Puzzle in Japan and the U.S."としてJournal of Banking and Financeに2006年3月に投槁中である。
著者
王 雪萍
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究は中国政府の外交部档案館档案資料などの一次資料と中国政府の対日業務担当者への聞き取り調査を通じて、学術的に中国の対日外交の展開方式を分析し、また建国直後に形成された外交業務方式が現在の日中関係への影響についても分析した。1952年に中国の対日業務統括者として廖承志が指名された。周恩来との信頼関係を背景に、中共中央と政府機関の各部門が連携したタスクフォース的な性質を有する対日業務グループが形成された。本研究は廖承志を中心とした対日業務方式を明らかにし、今日への影響も分析した。
著者
朴 唯新
出版者
県立広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

近年、情報家電産業を中心として企業経営をビジネス・エコシステムという観点が広がっている。その理由として情報家電産業のような技術革新が頻繁に起きる業界では、中核企業が自社内で技術開発・生産するのでなく、協力企業と連携しながら、部品などの開発・生産を外注に任せた方が合理的であるからである。しかし、中核企業は協力企業と緊密に部品間の調整や摺り合わせを行うために、協力企業との信頼に基づく協力関係を構築する必要がある。本研究では近年、イノベーション論で注目されているビジネスエコシステムの概念を取り入れ、情報家電企業と協力企業の資本・取引ネットワークを明らかにし、その特徴と歴史的変遷を比較検討した。