著者
中村 恵子
出版者
名古屋市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、虚弱高齢者の生活空間の拡充に向け人的・情報的ネットウークモデルを開発することを目的としており、2年目にあたる平成22年度は次の調査・検討とモデル作成にむけた準備を行った。1.調査の実施;「虚弱高齢者の生活空間とソーシャルネットワークの特性」の検討虚弱高齢者の生活空間の特性を明らかにするため、平成19年に初回調査を行ったA県郊外在住の虚弱高齢者61名を対象に3年後の追跡調査と横断調査を実施した(4月~8月)。追跡調査が可能であった高齢者は39名(男性7名、女性32名、平均年齢84.5±6.3歳)であり、調査不可能の高齢者22名の内訳は死亡8名、入院・入所3名、認知症4名、体調不良2名、転居1名、音信不通・調査拒否4名であった。結果、虚弱高齢者の生活空間は、life-space assessment (LSA)を調査したところ平均26点であり、活動範囲は自宅から平均半径631mであった。3年間で高齢者の生活機能(老研式活動能力指標)は平均8.0点から5.0点へと有意に低下しており、一週間における交流日数には変化がなかったが、外出日数は平均5.6日から4.6日へと有意に減少していた。またソーシャルサポートして連絡を取り合う親戚と近隣の人数も有意に低下していた。以上から、虚弱高齢者の生活空間は自宅を中心とした狭い範囲となっており、加齢に伴う生活機能の低下とともに外出日数やソーシャルサポートの縮小が示唆されたため、この特性を踏まえた支援や環境整備の検討が必要である。2.ネットワークモデル作成にむけた準備22年度はモデル地区のアセスメントを継続しており、モデル作成にむけた協力機関や協力者の体制を整えている段階である。
著者
秋山 英三
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本プロジェクトでは、様々なゲーム状況における戦略の進化を比較・検証し、特に、ゲーム構造と評判の効果の関係を分析した。分析は、進化ゲーム的手法とシミュレーションにより行い、また、シミュレーションでは、プレーヤーのモデルとして意思決定機構を有限状態オートマトンとして記述し、その進化の様子を分析した。その結果、囚人ジレンマがさらに拡張された状況の評判の効果に関する一連の発見があったほか、指導者ゲームの分析によるリーダーシップ論の進化的解釈の可能性が示され、また、確率過程によるモデル化により華厳ゲームの新たな進化的分析が行われるなど、研究の様々な発展可能性が示された。
著者
佐藤 元状
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究「英国ドキュメンタリー映画の伝統とブリティッシュ・ニュー・ウェーヴの総合的研究」は、イギリスのリアリズム映画の表象が、1930年代から1960年代にかけて、どのように変容してきたのかを時代ごとに総合的に検証し、20世紀のイギリス映画史を把握するための一つのパースペクティヴを提唱するものである。本研究の成果は、『ブリティッシュ・ニュー・ウェイヴの映像学--イギリス映画と社会的リアリズムの系譜学』(ミネルヴァ書房、2012年)に結実した。
著者
山田 実
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

複数課題下で障害物に注意を向けるという能力を強化することで、転倒予防に有用となるのかを検証した。対象は高齢者157名(84±6歳)であり、無作為に2群に割り付けた。各群でそれぞれ、複数課題条件下(MT群)と単一課題条件下(ST群)で24週間の障害物回避トレーニングを行った。複数課題下障害物接触回数では、有意な交互作用を認め、MT群でのみ接触回数の減少を認めた。さらに、MT群では有意に転倒発生が有意に少なかった。複数課題下での障害物回避トレーニングは転倒予防に有用である。
著者
松本 浩幸
出版者
独立行政法人海洋研究開発機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、沖合の深海底に設置された水圧式津波計からのリアルタイムデータを有効利用するため、観測データに基づく知見を整理した。水圧式津波計について、海底設置前に実施した室内実験ならびに現場観測による長期安定性評価の結果、室内実験で確認されたドリフトは、海底設置後も継続して観測されることが分かった。また2011年東北地方太平洋沖地震(M9.0)ならびに三陸沖で発生した地震(M6.9)による津波について、水圧式津波計データを近傍の海底地震計データと併せて精査した。水圧式津波計に含まれる擾乱を発生させる要因を分析し、震源近傍でも適切なフィルタを適用すれば津波を抽出できることを示した。
著者
有川 秀一
出版者
青山学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

これまでレーザ干渉計測を適用できなかったランダムな外乱振動下で,スペックル干渉法による面内2軸方向の変位分布測定方法を確立した.多数の画像から干渉可能な画像を選出することで,500mW以下のレーザでも測定可能な手法を確立し,3脚に設置可能な小型干渉計を構築した.さらにレーザの偏光を利用した分離方法および位相解析を適用可能にすることで面内2軸方向の変位分布・ひずみ成分を取得可能にした.そのためこれまでレーザ干渉測定が困難であった様々な現場でのスペックル干渉測定が可能になり,多くのひずみ測定実験や非破壊検査技術への応用が期待できる.
著者
佐々木 信幸
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

(1)30%酸素吸入による認知機能変化発症15日以内の脳梗塞・脳出血患者において30%酸素と室内気吸入時の記銘力を比較し,左病巣群で高濃度酸素による言語性記銘増強効果を認めた.増強効果が大きい群では両側脳血流が低下していた.(2)iPadによるATMT訓練とWiiによる全般認知訓練発症10日以内の脳梗塞、脳出血患者において2週間のiPadによるATMT訓練群、Wiiによる全般認知訓練群のTMT-AとMMSEの変化を調べた。対照群に比しiPad群ではTMT-AのみならずMMSEも有意に改善し、効果は限定的でなく般化する可能性が示唆された。
著者
浦久保 孝光
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

ロボットアームの特異姿勢は,従来のロボット運動制御においては避けられる傾向が強い.本研究では,ロボットアームによるある種の作業に対しては,特異姿勢を用いて作業を遂行することにより,必要な関節トルクを低減することが可能であることを明らかにした.作業遂行のための最適運動を数値最適化によって求め,この運動に見られる特異姿勢の動力学的性質を解析により明らかにした.さらに,得られた最適軌道により実際のロボットにおいても特異姿勢を用いた省トルク化が達成されることを実機実験により明らかにした.
著者
手島 貴範
出版者
国士舘大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、サッカー選手における持久的及び間欠的運動能力からみた体力的要素の発達過程について明らかにすることを目的とした。その結果、Yo-Yo intermittent recovery test (Level 1と2)は、12分間走との間に有意な相関関係が認められた。また、Yo-Yo intermittent recovery test (Level 1と2)は、それぞれ14歳から15歳の間の思春期中に著しく発達することを明らかにした。さらに、サイドに位置する選手において、Yo-Yo intermittent recovery testの結果が試合中の移動距離を反映することを明らかにした。
著者
松本 剛 春日 恵理子
出版者
信州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

ツキノワグマによる咬傷に対して、感染予防目的に使用べき抗菌薬の検討を行った。捕獲されたツキノワグマの口腔内常在菌を採取し、同定及び薬剤感受性試験を実施した。ツキノワグマの口腔内に常在する細菌は、イヌやネコなどの口腔内常在細菌に比べ、抗菌薬の効きにくい細菌が多く検出された。本研究によりツキノワグマによる外傷症例に対して使用する抗菌薬は、イヌやネコの外傷に対して使用する抗菌薬に比べ広域の抗菌薬を選択する必要が示唆された。
著者
中垣 恒太郎
出版者
常磐大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

Popular Culture Association(Texas/Southwest)にて昨年度末(2007年2月)に行った、研究発表と学会参会による研修成果を軸に一年間の研究活動を展開した。アメリカ合衆国での「リアリティTV/メディア・スタディーズ」に関する最新の研究動向を参照した経験に基づき、日本映像学会第33回全国大会にて、主に「アメリカ合衆国におけるリアリティTVの動向」「日米および世界におけるリアリティTVをめぐる状況の比較考察と展望」にまつわる研究発表、さらに文学・環境学会(ASLE)日韓合同シンポジウム(8月)にて「1960年代以降の日本における公害と怪獣の創造」にまつわる研究発表を行った。共にアメリカ・日本・アジアに及ぶ比較文化的観点から、メディアを中心に時代状況とドキュメンタリー表現の関係について考察した成果であり、本研究課題の最終年度をしめくくるにあたり、3年間の研究成果の一端を具体的なケース・スタディの形で示すことができた。若手研究での研究課題であることからも、研究企画を課題期間終了後も発展継承させていく必要性があるだろう。学会での発表原稿を加筆改稿した上で、主要な学術雑誌への投稿論文としてまとめる機会を持ちたい。ドキュメンタリー作品が虚構性に対して自覚的であることをますます強いられていく状況の中で、「作り物の世界」を現出させるためにドキュメンタリー製作を作中に組み込む「モキュメンタリー」表現のあり方について関心をより一層深めるに至った。近年のドキュメンタリー表現において大きな潮流となっている、「セルフ・カメラ」の手法によるアイデンティティ探求の試みについて、さらに焦点を絞った検討を続けていきたい。研究テーマをより限定した形で、次の研究段階に進む足がかりを築き上げることができたことが、本研究期間の最大の収穫である。
著者
戸田 由紀子
出版者
椙山女学園大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は、20世紀初頭の黒人女性文学における「母性」の表象に着目し、その前後の時代の黒人女性文学における「母性」の表象と比較分析することによって、アメリカ黒人女性文学における「母性」の戦略の在り方を、その歴史的変遷を通して明確にすることである。24年度はハーレム・ルネサンス期における黒人女性作家の作品に焦点を当て、黒人女性や母性がどのように表象されているかをジェシー・フォーセット、ネラ・ラーセン、ドロシー・ウェストの作品を中心に考察を行った。これらハーレム・ルネサンス期の黒人女性作家の小説に描かれる黒人女性の表象の考察を通して、従順愚鈍なマミー、放埒なイゼベル、悲劇のムラータといった19世紀末に黒人女性に課せられたさまざまな因習的ステレオタイプにも、それを払拭するために用いられた当時の理想的な黒人女性像にも当てはまらない、複雑な黒人女性像を提示できることを明らかにした。23年度に考察したように、19世紀末には、高潔で愛情溢れる「啓蒙された母親」が重要な役割を果たすのだとフランシス・ハーバーら活動家によって主張され、Women's Club Movementを始めとした社会運動/組織を通してこのような黒人母性のイデオロギーが普及していた。20世紀初頭のハーレム・ルネサンスは男性主流の運動であったことは周知の通りであるが、高潔で母性的な黒人女性像は引き続きハーレム期の黒人男性リーダーや芸術家によって作品や活動を通して推奨、普及されていた。しかしハーレム期の黒人女性作家は、ハーレム期に推進されていた「真の黒人母性像」の型にはまるのではなく、黒人女性の暮らしにさまざまな制限のあった20世紀初頭で、自己矛盾し続け、家庭の閉塞感に抵抗しつつもそこから抜け出すことができない複雑な黒人女性を描き出している点において評価できる。またそれは母性を前面に押し出すことで政治的戦略として用いた19世紀末や、1970年代以降の現代黒人女性文学とは異なっており、本研究ではその重要性を明らかにした。
著者
沖 真弥 目野 主税
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究ではマウス初期発生において極めて重要な役割を演じるNodalシグナルの直接的な標的遺伝子を同定し、エピブラストの多分化能維持機構、神経上皮への分化抑制、または原条形成に関わる遺伝子を特定した。またChIP-seqデータを簡易的に利活用できるためのソフトウェア(SraTailor)とデータベース(ChIP-Atlas)を作成し、ウェブを通じて公開した。
著者
下野 裕之
出版者
岩手大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

北日本のコメ生産は冷害が制約し続けており,その被害軽減には耐冷性を強化した品種の効率的な選抜が不可欠である.そのため,近年,育成された極めて高い耐冷性を持つ中間母本系統「東北PL3」が持つ耐冷性QTLを特定し,その機能解明を行うことを目的とした.「東北PL3」と「アキヒカリ」の組み換え近交系統(215系統,F8世代)についてQTL解析を行ったところ,第5,12染色体に有意なQTLが検出された.第12染色体のQTLは,低温ストレス下で葯長を維持しやすい形質を,第5染色体のQTLは,同一の葯長あたりの受精効率を維持する形質と関わることが示された.
著者
岡 瑞起
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

長い間人間の時間的振る舞いはランダムな過程(ポワソン過程)に従っていると思われていた.しかし,2005年にアルバート・バラバジを中心とする研究グループが、人間の行動は間欠的な振る舞い(バースト)がより顕著であると考え,そうしたバースト的な振る舞いの重要性を説いた.本研究は,ウェブ上のソーシャルメディアからの大量データを分析することで,バーストの詳細なメカニズムを明らかにすることを目的とした.分析の結果,バーストが起こるメカニズムを内因的バーストと外因的バーストに分類し,これら2つのバーストを分ける臨界的な揺らぎの閾値が出現することを明らかにした.
著者
山本 昌弘
出版者
島根大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

2型糖尿病は骨折の危険因子であり、骨密度では予測できない骨質低下による骨脆弱性が存在する。本研究により、骨質要素である骨代謝回転において、骨質がPTH分泌低下に基づく骨低骨形成、ならびに骨形成抑制因子スクレロスチン増加と関わりがあり、一方腹部動脈石灰化が骨質低下を介して椎体骨折リス上昇に関与すること明らかとなった。この結果により、骨質を劣化させる機序が骨脆弱性と血管石灰化に関与することが示唆された。
著者
岩瀬 将美
出版者
東京電機大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

科学技術の発展とともに様々なシステムの自動化が目指されているが、自動車、航空機、プラント操業などの現実社会で稼動するシステムに対して、完全に自動で起こりうる全ての事象に対応することは難しく、また状況に応じて高度な判断が要求される場合があるため、人間による手動制御が必要不可欠である。しかし、不安定なシステムの安定化・高効率化・高性能化には自動制御が欠かせない技術であり、数多くの実システムでは手動制御と自動制御が混在している。このような手動制御と自動制御が混在するシステムでは、それぞれの制御が相反する場合がある。手動制御と自動制御の折衝・協調・融合を考慮したSafe-Manual Control(以下、SMCと略す)の必要性・重要性を極めて強く示唆している。本申請研究では、高度SMC制御系の開発を目指し、理論的研究の発展とその応用に努めた。まず、操作者の操作能力の熟達程度に応じて、手動制御と自動制御の影響度合を自動的に変化させた、Human Adaptiveな要素を含んだSMC制御系の提案を行った。これを、操作者の筋電位を入力インターフェースとし、発生した筋電位によって機械を操作するシステムへ応用した。筋電位は随意に動かすことはできるがその微細な調整は非常に困難である。そこで、自動制御をそこに介在させ、特に、うまく筋電位を制御できない初心者に、系の安定性を保持しつつ、かつ操作に熟達させるという役割を同時にこなすSMC制御系を実現することができた。また、身近なシステムとして二輪車にSMC制御を適用し、二輪車に乗れない初心者にも安全かつ随意に制御できる自動二輪車システムの開発を行った。
著者
大矢 忍
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

1.高濃度MnドープGa_1-xMn_xAs(x=10%〜20%)におけるキュリー温度の成長温度依存性の測定:成長温度を高温化することによって、キュリー温度を172.5Kまで増大させられることを明らかにした。(III-V族強磁性半導体における最高値は、英国ノッティンガム大学グループの173K。本研究の値は世界第2位。)2.MnデルタドープAlGaAs/GaAsヘテロ構造におけるプレーナーホール効果を用いた面内磁気異方性定数の決定:プレーナーホール効果の詳細な測定を行い、磁壁のピンニングエネルギーを考慮したストーナーウォルファース単磁区理論を用いて、強い面内一軸異方性を有するMnデルタドープ層の面内磁気異方性定数を求めた。3.MnAs微粒子を含むGaAs障壁ヘテロ構造におけるバリスティック伝導の実証:MnAs/GaAs/GaAs:MnAs強磁性トンネル接合において、GaAsのMnAsに対する障壁高さがlmeVと大変低く、電子がバリステッィクにGaAs障壁をFNトンネルすることを明らかにした。FNトンネリングを用いた半導体への高効率スピン注入の可能性を示唆している。4.MnAs微粒子を含む磁気トンネル接合における磁気抵抗効果と静磁場による起電力の観測:MnAs/AlAs/GaAs:MnAs強磁性トンネル接合において、低温において静磁場による起電力を観測した。起電力は、数分〜数十分もの程度の非常に長い緩和時間を有していることが分かった。5.GaMnAsをべ一スとした量子ヘテロ構造におけるトンネル磁気抵抗効果の増大を目指した研究:GaMnAs量子井戸2重障壁ヘテロ構造において、上部障壁層にAlMnAsを用いることによって、GaMnAs量子井戸のキュリー温度を増大させて、TMRを増大させられることを示した。
著者
田島 誠
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究では、右手と左手で異なった運動振動数でタッピングした際の各手の運動振幅を検討することによって、複雑な両手協応運動のタイミング制御に対する運動振幅の役割を明らかにすることを目的とした。本実験には12名の被験者が参加し、彼らは単純な両手協応運動である1:1タッピングと2:1タッピング、3:1タッピングを遂行し、さらに複雑な両手協応運動である3:2ポリリズム・タッピングと5:3ポリリズム・タッピングを遂行した。また、これらの両手協応運動を遂行する際の右手と左手の運動振幅を測定、分析した。両手協応運動のタイミング制御に対して各手の運動振幅の大きさの関係から検討した結果、単純な両手協応運動の場合には運動振幅は短く、逆に複雑な両手協応運動の場合には運動振幅は長くなることが示された。これは複雑な両手協応運動の各手のタイミング制御を達成するために、空間的要素である運動振幅の長さを調整していることが示唆された。これに対し、各両手協応運動内での右手と左手の運動振幅を比較した結果、両手間に有意な差は示されなかった。複雑な両手協応運動には右手と左手の運動振動数間に非整数倍の差があるためにその達成が比較的困難であるが、本研究では右手と左手の運動振幅の比を運動振動数の比の,逆数倍にすることによって両手協応運動を達成しているという仮説を立てた。しかし、本実験の結果はこの仮説を支持しなかった。これは複雑な両手協応運動のタイミングを両手間で調節する際には、運動振幅によるタイミング制御ではなく、中枢のタイムキーパーによるタイミング制御が行なわれていることを示唆している。
著者
坂本 好昭
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

マウス背部の組織の肉眼的所見としては、創作成後14日目に隆起・発赤が強くなっていた。この変化は28日まで確認できたが、その後は徐々に軽快していく状態であった。同部の瘢痕を回収して免疫染色を行ったところ、通常の瘢痕と比較して、張力を負荷した肥厚性瘢痕モデル群においては優位にT細胞の発現を認めた。これはヒトに近いブタ瘢痕モデルにおいても同様の結果を得た。そこでT細胞の発現を抑制するスプラタストトシル酸塩の経口投与を行ってマウス背部に張力をかけて瘢痕の形成を試みたが、肥厚性瘢痕の形成は認めれらなった。