著者
笠原 慧
出版者
独立行政法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

人工衛星による粒子の直接観測は、宇宙における粒子加速機構の解明に不可欠である。本課題ではこれまで技術的に困難であった中間エネルギーイオン観測実現に向け、キーテクノロジーのひとつである質量分析器の開発を行った。数値シミュレーションを行って構造を決定し,それに基づいて製作した分析の性能を,実験室で確かめる事ができた.
著者
石坂 友司
出版者
奈良女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究は、1998年の開催から10年を経過した長野オリンピックの開催地域が、大会によって得られた遺産をどのように活用し、意義づけているのかを評価するとともに、各開催地域がどのような変容を経験しているのかについて、それぞれの取り組みから明らかにすることを目的とした。多額の投資にもかかわらず、現在でもポジティブな影響が見られるのは一部の地域にとどまり、多くの地域では借金や競技施設の後利用に課題を抱える結果が浮き彫りとなった。一方で、カーリングに代表されるように、遺産を積極的に運用し、スポーツを文化として育むことを目指す地域の取り組みもみられ、そのことを実証的に明らかにした。
著者
金田 一弘
出版者
大阪歯科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

虚血プレコンディショニングではNOSの刺激作用を有するブラディキニンB2受容体の関与が明らかとなっている.エタノールプレコンディショニングにおいてブラディキニンB2受容体の関与は報告されていない.エタノールの心筋保護効果にブラディキニンの関与をブラディキニンB2受容体の阻害薬であるHOE-140を用いて,エタノールプレコンディショニング効果が消失するか否か,またNOの産生量を測定した.
著者
中村 元樹 森田 明理 杉浦 真弓 山口 裕史 西田 絵美 加藤 裕史 古橋 卓也 鳥居 寛 Fukunaga-Kalabis Mizuho 水野 俊彦
出版者
名古屋市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

4箇所の胎児皮膚(頭部、背部、腹部、足底、胎生13週~22週、計36体)をHMB45, MITFなど各種抗体で免疫染色し、胎生期におけるメラノサイトの遊走過程を解明した。有毛部皮膚では、メラノサイトは胎生12から15週に、これから毛芽が形成される表皮基底層に存在し、足底皮膚では胎生早期、汗管形成以前にメラノサイトが汗管発生部位に到達し、汗管の伸長と共に深く入っていくことを明らかにした。エクリン汗腺にメラノサイト幹細胞が存在するとする近年の報告を裏付けるものであり、ヒトでの研究は初めてである。
著者
山本 仁志
出版者
立正大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

今回の研究費交付期間内に明らかになった知見は、「近年の情報チャネル、すなわち双方向的情報ネットワークの発展が、Winner-Take-All(WTA)現象を強化する効果の存在を示し、情報チャネル効果理論を構築したこと」である。ネットワーク社会における消費行動を理解する上でも、供給者の立場から戦略を設計する際にも、情報チャネル効果を理解することは重要な意味を持つといえる。我々の調査で、ネットワーク外部性では説明できない音楽ソフト市場や映画ソフト市場でも、WTA現象が進行していると観察できた。この現象のメカニズムを解明するため、情報チャネルの性質に着目し、消費行動に関するマルチエージェントモデルを構築し、シミュレーション実験を行った。シミュレーションにより、近年の情報チャネル、すなわち双方向的情報ネットワークの発展が、WTA現象を強化する効果の存在を示した。また、情報チャネルと消費者の構成比率の相互作用により、多様化社会と集中化社会に分岐するシナリオが提示できた。本研究で実施したシミュレーションを用いることで、財の供給者は、財の特性を理解する、消費者の構成を調べる、情報チャネルの現状を調べる、といった基本的な双方向情報チャネルの利用戦略を立案することが可能となった。このように、マーケティング領域における情報チャネル効果理論の有効性の端緒を示せた。また、双方向情報ネットワークの発展は、WTAをもたらす一方で消費者の選択の多様化を生んでいると考えられる。その代表例がC2C市場である。C2C市場を成功に導いた要因である評判システムのメカニズムを探り、オンライン市場では良い参加者の情報を流通させるポジティブ評判システムが有効であることを示した。
著者
黒田 尚宏
出版者
金沢医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

平成19年度は,平成18年度に作成した携帯電話のメール機能を利用したメーリングリストのシステムを利用し,学生の協力を得て更なる試験を実施した.学生の反応は即時応答性が高いことが実証され,またテュートリアル形式の授業の評価コメントを送ったり,授業の宿題など重要なお知らせを通知したりといった使用法については,学生へのアンケートの結果,学生にとっては有用性が高いことが判明した.携帯電話のメール機能を学生への連絡や呼び出しに使うという方法について,学生側の通信費の負担感について調査を行った結果,データ(パケット)量の多いWeb形式よりはメールの方が負担感は少ないものの,ある程度考慮して欲しいという意見が大勢であった.ただし,自分にとって有用な情報は紙の掲示だけでなく携帯メールにも送って欲しいという意見も多く,通信費の問題はあるものの,一方で学生の欲しがる情報を与えていれば,他方で教育目的の活用も受け入れられるであろうという示唆を得た.本学では学生個人のノートパソコンを必携化しているため,通信費の負担が理由で携帯電話のメール機能を利用したくない学生は,本学より付与されるパソコンの電子メールアドレスを利用すればよく,メール機能を教育目的に利用する基盤は整っていると考えられた.平成19年度は更に,簡易なMCQなどの小テストをメールとして発信し,その返信を自動収集・集計する機能を新たに追加して,学生に対してその使い勝手や有用性について検証を行った.検証の結果,Questionメールに対するAnswerメールの対応付けに大きな問題があることが判明した.例えば,複数の教員から同学年の学生に同時期にQuestionメールが発信された場合に,学生がそれぞれに回答した時,どのメールがどのQuestionに対応しているかの判断をどのように解決するか,という問題である.この問題に対し,本文の先頭にQuestionを一意にする番号(制御コード)を付加し,返信時にもそれをそのまま付けた形で返す方式を採用したが,学生側がこれをよく理解していないため,この制御コードを返信時に削除してしまう事態が多発してしまった.他の方式も検討したが,いずれも学生に周知しておかなければならない何らかのルールを設定する必要があり,メールのみでは最良の解決策は考えられなかった.したがって,小テストについてはメール内にWebページへのリンクを掲載し,Web側で回答させるのがよりよい解決方法ではないかという結論に至った.
著者
白仁田 沙代子
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

固体高分子形燃料電池における電極触媒のPt使用量削減を目指した新しいPt単原子電極触媒の開発を行った.その結果,次の成果が得られた.(i)Pt担持量がわずか0.6wt%の低担持量電極の作製に成功した.(ii)水素酸化反応におけるオンセット電位は,本研究で作製した電極はPt板と同程度であった.
著者
楠 綾子
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

冷戦期の日米の安全保障関係は、とりわけ旧日米安全保障条約下(1951~1960年)においては、在日米軍基地の設置と運用が中核となっていた。基地は米軍の極東戦略を支える重要なシステムであった。他方で、基地は、いわゆる「基地問題」という形で日本国民の反米感情を刺激し、日米関係の不安定要因でもあった。本研究は、米軍の戦略的利益と基地周辺住民の利益を可能なかぎり均衡させる方途を求めて、日米両政府が基地の設置と運用の方式について合意を形成した過程を考察した。
著者
松浦 年男 松井 理直
出版者
北星学園大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究課題では日本語の諸方言における有声阻害重子音の音響音声学的実現ならびに形態音韻論的分布について明らかにしてきた。特に天草市の諸方言における実態を詳しく調査し,同じ形態論的環境でも地域によって有声阻害重子音で実現するか否かが異なることを明らかにした。また,山形市周辺部についても調査を行い,声帯振動の実現が九州(天草)と異なることを明らかにした。さらに,九州地方の複数の地点において語根複合(助数詞,二字漢語)で有声阻害重子音が見られるかを調査し,一部の地域において生産性が高いことを指摘した。
著者
下條 昌彦
出版者
岡山理科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究では,無限次元力学系の理論や方程式の対称性に基づく漸近解析の手法により,爆発現象と界面運動に関連した非線形問題に取り組んだ.具体的には,以下の成果を得た.(1)半線形熱方程式の爆発点の位置を空間非一様性で制御するための詳細な条件を得た.(2)藤田型放物型方程式を複素化して得られる流体方程式の解の挙動を解明した.(3)曲率運動方程式の自由境界問題の解の挙動を「拡張交点数理論」を用いて完全分類し,解の凸性や漸近挙動の解析を行った.
著者
吉田 康行
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

グランジュッテはクラシックバレエの基本的な跳躍動作の一つとして知られている.グランジュッテの最後には片脚での着地が必要となる.しかし,グランジュッテはこれまでバイオメカニクスの研究対象にはなってこなかった.本研究は着地動作におけるダンス技能を考察するために研究計画を立てた.そして,運動学と運動力学のデータを解析に使用した.グランジュッテのダンス技能は着地後にブレーキ力を制御する方略に現れることが明らかとなった.
著者
小野 正嗣
出版者
明治学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

コンゴ出身の振付家フォスタン・リニエキュラの舞台作品『ベレニスと訣別するために』と『Cargo』を分析し、植民地支配、とりわけ言語支配が、被植民者の人々の現在のアイデンティティ形成に深い影響を及ぼしていることを明らかにした。また、レバノン出身のフランス語圏作家アミン・マアルーフの著作の詳細な読解から、この作家の文明論的考察が、今日の世界、とりわけ西洋とアラブ世界の対立を理解する上できわめて有効であることを明らかになった。
著者
眞鳥 繁隆
出版者
琉球大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)の腫瘍化機序を理解するために、PDGFリガンド、PDGF受容体の遺伝子異常を検索した。ほぼ全例でコラーゲン1A1-PDGFB融合が存在しコラーゲン1A2とPDGFBとの遺伝子融合は、我々が発見した1症例のみであった。受容体側の遺伝子異常は病理組織での解析で否定した。免疫染色でPDGF-Bの発現を高頻度で確認しPDGF-Bの発現の検索が他の間葉系腫瘍との鑑別の一助となることを確認できた。隆起性皮膚線維肉腫の腫瘍化機序としては全て、腫瘍細胞自身のPDGFの自己分泌により恒常的なオートクラインあるいはパラクラインにより、腫瘍性の増殖をきたすと結論した。
著者
能見 祐理
出版者
新潟薬科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

アミノ基を有するビタミンはカルボニル化合物と競合的に反応することでメイラード反応を抑制するが、反応生成物の化学構造に関する報告は少ない。ビタミン由来メイラード反応生成物の探索を行った結果、ピリドキサミンとキシロースとの反応で生成する主要な化合物 (XP-1)を見出した。構造解析により、XP-1はキシロースとピリドキサミン各1分子から、水2分子、アンモニアと水素各1分子が脱離した構造に相当する新規物質であることが確認された。XP-1の生成条件の検討した結果、高温・短時間の加熱で生成しやすいこと、キレート剤の添加により生成量が増加すること、五炭糖だけでなく六炭糖からも生成することが明らかとなった。
著者
徳永 健
出版者
工学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

従来のコンピュータに使用されている中央演算処理装置(CPU)に代わる次世代デバイスとして、4核Ru混合原子価錯体を用いた分子型量子ドットセルオートマトン(MQCA)論理回路に注目し、その実用可能性を探った。4核錯体の周辺に3組の入力を配置したモデルで論理回路としての動作をシミュレートしたところ、全16パターンの論理回路のうち10パターンで理想的に動作することが分かった。本モデルの論理演算時間は1 fs以内(THzオーダーのクロック周波数に対応)であることから、MQCAデバイスが従来型のCPUを上回る演算性能を有する可能性があることを明らかにした。
著者
浅野 泰仁
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では,集合知をさらなる発展段階に導くための基盤技術として,(1) 集合知の情報構造を利用してウェブから集合知を補完する手法と,(2) 得られた知識を整理して提示する手法を構築することを目指した.成果は,(1)としては,Wikipediaに不足しているテキスト情報をウェブから取得する手法,Wikipediaに不足している画像情報、特にエンティティ間の関係を説明するものをウェブから取得する方法,などの提案であり,(2)としてはウェブから取得した、エンティティ間の関係を説明するような画像をWikipediaの知識と合わせて提示する方法などの提案である.
著者
山本 泉
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

腎臓におけるCaveolin-1発現の意義について、Caveolin-1遺伝子改変マウスを用いて、各種実験腎炎モデルを検討した。①虚血再灌流、②尿細管結紮、③eNOS阻害剤投与、④抗VEGF抗体投与の各モデルで、ワイルドタイプの腎内微小血管内皮細胞のカベオラおよびCaveolin-1発現量に変化を認めなかった。一方、間質線維化を評価したところ、尿細管結紮モデルおよびeNOS阻害剤投与モデルで、Caveolin-1ノックアウトマウスにおける間質線維化増加を確認した。間質線維化を促進するマクロファージ浸潤は、尿細管結紮モデルにのみ生じ、Caveolin-1ノックアウトマウスにおいて強く認められた。
著者
小川 景子
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究はレム睡眠中の急速眼球運動に伴う脳活動と夢内容との対応関係を検討した。その結果、急速眼球運動の数が多いほど夢が印象的になり、運動野の賦活を反映する脳活動は、夢の活動性・奇異性と関連することが示された。さらに、急速眼球運動数は日中の新規運動学習課題の成績と正の相関関係を示した。この結果より、レム睡眠中の急速眼球運動はレム睡眠中の脳活動をより活性化することで、夢の内容をよりありありと鮮明にし、日中の新規学習課題の成績向上にも関与する可能性が示唆された。
著者
佐藤 直美
出版者
浜松医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

対象者は、がんの診断や再発の診断に際し、[どこか人ごとでぴんと来ない]ながらも、[やらざるを得ない]という感覚で、外来化学療法を開始していた。そして[やるからには望みをつなぎたい][まだ生きたい]という思いを徐々に強くしていった。治療の副作用からの不快感や、症状の進行による入院治療を経験しながら、[まだ何とかやれている]感覚を維持していた。しかし一方で、治療を主軸に生活していくことに心の揺れを感じ、日常性を維持するために努力することで折り合いをつけている側面もあった。