著者
盛本 圭一
出版者
明星大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

近年の日本で議論されている消費税制の変更や家計間の経済格差の問題を現実的背景として,家計の異質性と消費税の効果の関係を現代的なマクロ経済モデルを用いて理論的に分析した.特に家計間で起こる資源の再分配効果に焦点を当て,それが集計変数の動学に対して及ぼす影響を調べた.また,その研究過程で財政問題の基礎として公的債務残高拡大の問題とそれへの対応が重要な意味を持つことが判明し,欧州型の財政規律の場合を例にとってそのテーマを理論的に研究した.
著者
梅崎 修
出版者
法政大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

最終年度は、戦後の代表的な賃金制度である職能資格制度の普及過程に携わった人事担当者の口述記録を整理し、冊子の形にまとめた。この史料によれば、職能性資格制度と職能給の普及は職務給の改良を残しつつ行われたことを確認できる。また、日本生産性本部の海外視察団のデータ・ベースと視察参加者のオーラルヒストリーを検証し、「日本生産性本部による海外視察団の運営と効果-海外視察体験の意味-」『企業家研究フォーラム』第4号(2007年9月)(森直子、島西智輝と共著)を発表した。海外視察団参加というアクターたちによって、新しい経営技法が紹介される過程を検証した。さらに、終戦直後の労使関係と分析した「職員・工員身分差の撤廃に至る交渉過程-「経営協議会」史料(1945〜1947年)の分析-」『日本労働研究雑誌』No.550(2007年5月)(南雲智映と共著)を刊行し、その連続で終戦直後の賃金制度導入を検証した。賃金制度に関しては、日本労務学会(2007年8月)でその成果を発表した。身分差撤廃と新人事制度設計に伴う労使の交渉を読み解いた。以上の分析は、終戦直後の混乱期から、徐々に企業内秩序が形成されるプロセスを扱っている。すなわち、職員・工員身分差撤廃が達成した後、欧米の人事制度を日本的に改良しながら、「能力」を基盤に秩序が作られたことがわかる。なお、新人事制度の従業員に対する説得力は、生産性向上に繋がるという点であったと言える。
著者
谷口 綾子
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究では,ベビーカー連れの外出の難易度認知について移動時満足度(STS)を用いて評価するとともに,ベビーカー連れのSTSに周囲の人々の対応がどの程度関係しているのかを探索的に検証し,欧州の先進国と我が国の比較を行った.その結果,我が国ではベビーカー連れの移動時に周囲からの支援を受けた経験が欧州各国よりも少ないこと,ベビーカー連れの移動の認知的幸福感は,一般にSTSが低いとされる通勤目的よりもさらに低いことが示された.また,ベビーカー連れでの移動時に周囲の人々から受けた支援の経験や,記述的規範の知覚が,ベビーカー連れのSTSに正の影響を与えていることが示された.
著者
家本 真実
出版者
摂南大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

アメリカ著作権法では、他人の著作物を許諾を得ずに使用し、新たな著作物を制作しても、フェア・ユース(公正な使用)であるとされれば著作権侵害とならないことを定めている。しかしどのような場合にフェア・ユースだと判断されるのかを先例から見極めることは非常に難しく、実務においてこの法理が役立っているといえるのか、議論になることも多い。そこでこの研究では、著名な芸術家の現代アート作品をめぐっておこなわれた裁判をフェア・ユースが争われる最近の事例の1つとして取り上げて検討し、芸術のコミュニティにおいて他人の作品を使用する際の指針としては不十分であり、さらなる判決の積み重ねが必要であることを明らかにした。
著者
木村 俊彦
出版者
奥羽大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

前年度の研究でFmθと交感神経機能との関連が明らかとなったことから,今年度は睡眠時bruxismと脳波Fmθとの関連を究明するために,ストレス負荷を行った後に睡眠させた場合の睡眠時bruxismとFmθの発現様相を検討した.被験者は健常成人男性3名とした.実験的ストレス負荷には内田クレペリンテストを採用した.生体情報の記録には脳波,筋電図,眼電図,心電図および呼吸を記録した.脳波はA2-Fz部位とA1-C3部位からの単極導出法を行い,Fmθの判定基準は6〜7Hzの正弦波様のθリズムで背景脳波よりも明らかに高い振幅を有し,1秒以上持続するものとした.心拍数の測定項目は心拍数とCVRRとした.眼電図は右側眼窩外側縁からの単極導出法にておこなった.筋電図は左側咬筋浅層部からの双極誘導を行い,bruxismの判定に用いた.bruxismは最大かみしめ時の筋電図原波形を解析ソフトウェアRMSにて実行値に変換し,処理後の波形から各被験者毎の最大咬みしめ時に対して20%以上のものをbruxism,20%未満のものを嚥下と定義した.導出した生体情報はマルチテレメータシステム,PowerLab/8sp(ADInstruments)を介して取り込み,Chart, HRVにて解析した.その結果,実験的なストレス負荷においてはFmθが発現し,睡眠中はFmθは発現しなかった.しかし,睡眠中では全ての被験者においてbruxismの発現が認められた.Bruxism発現時の心拍数,CVRRを発現前後と比較したところ,CVRRでは有意差はなかったが,心拍数では有意に増加した.今後,顎機能異常者に対して同様の実験を行うことにより,bruxismとFmθ,自律神経機能との関連がより明確になるものと思われる.
著者
大泉 丈史
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究における骨吸収抑制剤ビスフォスフォネートの抗腫瘍作用に関して,骨吸収抑制作用が最強のzoledronateと窒素非含有ビスフォスフォネートのetidronatの併用投与により,zoledronateの抗腫瘍作用をetidoronateが抑制したことを明らかにした.また,顎骨壊死モデルマウスの作製に関しては,マウス顎骨では作成が困難と考えられた.
著者
波佐間 逸博
出版者
長崎大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

東アフリカ牧畜社会における暴力紛争を文化化していく政治・社会科学的言説を検討することをつうじて、植民地期以来の構造機能主義的な、均質で自己完結的な集団観と、稀少資源をめぐり共約不可能な形で対立する利害集団モデルにもとづいた介入によって、低強度紛争が、かえっていっそう促進されている現実が生じていることを批判的にあぶりだした。また、東アフリカにおいて一般化している集合的暴力にたいする、牧畜社会における人びとの対処方法と、それらが創造され、活用されてきた社会的プロセスを記述、分析することによって、ローカルな共同体が独自に洗練させてきた牧畜世界の共生論理と実践をあきらかにした。
著者
佐藤 篤
出版者
山形大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

グリオブラストーマの治療ではアルキル化剤であるtemozolomide( 以下TMZ と略す) が用いられているが、グリオーマ幹細胞ではTMZ 耐性を与えるDNA 修復酵素のO6-methylguanine-DNA methyltransferase ( 以下MGMT と略す) が高発現しているため、TMZ 治療後も残存し再発につながると考えられている。本研究では1)MEK あるいはMDM2 を阻害によりp53 依存的にMGMT の発現が低下すること、2)MEK 阻害剤とTMZ の併用によって単剤投与よりも有意に細胞死が増強すること、3) マウス頭蓋内腫瘍モデルにおいてMEK 阻害剤とTMZ の併用で単剤投与よりも生存期間が有意に延長することを確認した。本研究の成果は、難治性腫瘍の一つであるグリオブラストーマに対してMEK-ERK-MDM2-p53 経路が新たな治療ターゲットとなる可能性の有効性を示唆するものである。
著者
河崎 智恵
出版者
奈良教育大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、ライフキャリアの視点よりキャリア決定プロセスを明らかにするとともに、ライフキャリアに関する能力・態度の質問紙調査を実施し、能力・態度領域の尺度を構成し、尺度を用いて、キャリア経験・活動の有無による諸能力の差異を分析した。次いで米国キャリア教育の教科書等の分析を行い、就学前段階からのライフキャリア教育のカリキュラムモデル・カリキュラムを作成した。これらの知見をもとに、卒業後のキャリア発達を支援する教育プログラムを開発し、教育実践を行った。
著者
原田 二朗
出版者
久留米大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

ヘムオキシゲナーゼは、シトクロムP450還元酵素やビリベルジン還元酵素など複数のタンパク質と相互作用し、基質ヘムをビリベルジン、次いでビリルビンへと変換するヘム分解系で働く酵素である。本研究課題では、ヘムオキシゲナーゼに関わる酵素群との相互作用機構を明らかとすることを目的としている。また研究の一環として、新しい手法であるNMR緩和分散測定法が、タンパク質の未知機能探索に有効であることを実証していく。
著者
高山 成
出版者
大阪工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

近年、登攀型の壁面緑化植物として急速に普及しているノアサガオを使って、植栽面の面積に対して約11倍の葉面積を繁茂させた。この壁面緑化物の水消費量の日平均値は、1日あたり18.4mmであった。気象条件のみに支配される基準蒸発散量に対する水消費量の比を水消費量率とした時、同期間における水消費量の最大値は15程度だった。水消費量率の最大値15に対する日々の水消費量率を標準水消費量率として、日平均風速、日平均土壌体積含水率、日積算壁面日射量、対地葉面積指数の環境因子を説明変数とする推定モデルを構築した。日々の水消費量の実測値に対する、モデルの推定値の絶対平均誤差は6.1%程度と良好な結果が得られた。
著者
筆保 弘徳
出版者
横浜国立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、まず、これまで難しかった回転水槽実験で発生する水面運動の定量化と、運動パターンを定量的に分類する解析手法と定義を提案した。粒子画像流速測定法により運動場の定量化を行い、運動エネルギーを算出した。この運動エネルギーを用いた定義により、すべての実験の運動パターンを客観的に分類した。今後は、まだ成功していない回転水槽実験を用いた台風コア領域の再現を目指し、本研究での手法を適応して台風の非軸対称構造の形成メカニズム解明を行う。
著者
土井 正好
出版者
広島工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

係留索引張ロードを計測するロードセル及びセンサインターフェースを導入した。実験はCPP(可変ピッチプロペラ)翼角設定に対する係留索ロードを計測した。また強風時にかかる係留索のロードを計測した。次に船舶推進及び強風影響による係留索のロードモデルを設計し、MATLABシミュレーションによって一般化最小分散制御を適用し、その有効性を検証した。実験の結果、CPP翼角推進には明確なむだ時間があることを確認し、予測制御法の一手法である一般化最小分散制御を適用することによって、速応性のある目標値追従性を達成し、強風時などの悪天候において係留索にロードがかからない操船法を確立した。
著者
野堀 潔
出版者
秋田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

Double transgenic mice crossed GFP-LC3 transgenic mice with alphaMyHC-mCherry-LC3 transgenic mice are a new and useful tool to examine the role of autophagy in the heart. Terada M, Nobori K, et al. Circ J. 2010 Jan;74(1):203-6.上記論文にて報告した我々が作製したalphaMyHC-mCherry-LC3トランスジェニックマウスを、理化学研究所・バイオリソースセンターに寄託した。C57BL/6-Tg(Myh6-mCherry/LC3)1Acvmという名称で登録となり、2011年5月のRIKEN BioResource Center Mouse Mail Newsにて、Mouse of the Monthとして取り上げられた。alphaMHC-mCherry-LC3トランスジェニックマウスとGFP-LC3トランスジェニックマウスとのダブルトランスジェニックマウスを利用した上記論文に記載したオートファジー解析方法により、心不全を発症するデスミン心筋症モデルマウスα-β-crystallin R120Gにて、オートファゴゾームとライソゾームとの融合障害が起きているかについて検討した。
著者
儀利古 幹雄
出版者
大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

最終年度は、漢語複合名詞アクセント(例:末広町、運動会)の平板化に焦点を当てて研究を行った。はじめに漢語複合名詞に関する全体的な調査を行った結果、アクセントの平板化を起こしている度合いが著しい語群が観察されたので、それらを特に重点的に調査した。具体的には「~町」「~会」「~祭」といった漢語複合名詞について、そのアクセントが平板化を起こしているかどうか、起こしているとすればその要因はどういったものなのかを調査・分析した。調査の結果、「~町」「~会」「~祭」という漢語複合名詞のアクセントは、高年層から若年層へと世代が下るにつれて平板化を起こしていることが明らかになった。ただ、これらの語群のアクセントの平板化には、話者の世代という言語外的要因以上に、言語内的要因(言語構造的要因)が大きく影響を及ぼしていることも統計的に明らかになった。具体的に述べると、前部要素(「末広町」の「 末広」、「運動会」の「運動」)が3モーラである場合は4モーラである場合と比較してアクセントの平板化の進行具合が早く、また、2 モーラや5モーラ以上である場合はアクセントの平板化は起こらないが明らかになった。さらに、前部要素の末尾の音節構造が重音節の場合は軽音節の場合と比較して、アクセントの平板化の進行が遅いことも明らかになった。これらの結果は、アクセントの平板化という言語変化現象は、ただ単に「若者」が引き起こしているのではなく、言語構造そのものにも大きな原因がある、すなわち、アクセントの平板化を起こしやすい語と起こしにくい語がそもそも存在しているということを示唆している。この結果は、アクセントの平板化の原因として言語外的要因のみを重点的に扱ってきた従来の研究に対して一石を投じるも のである。
著者
田村 武幸
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

ブーリアンネットワーク(BN)は、細胞内での遺伝子の制御関係を記述するための離散的な数理モデルのひとつである。BNの定常状態を求める問題やBNを制御する問題はNP困難であることが知られているが、近年の計算機の高性能化により中規模のBNであれば厳密アルゴリズムや整数計画法を用いて解ける場合がある。本研究課題では、AND/OR BNの周期が2の定常状態を見つける厳密アルゴリズムを開発し、周期が1のBNの定常状態を見つける問題や、BNを目的状態へ導く問題、定常状態を制御する問題に対する整数計画法に基づく手法を開発した。
著者
立野 勝巳
出版者
九州工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では, 動物の感覚受容機構に発想を得たセンサシステムを提案した. 本センサシステムは, 電気受容細胞が雑音を活用して神経活動を同期させる現象を利用して, 入力信号の強度と違いを出力パルスの発火頻度と同期の程度に符号化する神経回路である.神経回路の構造は, マウス味蕾を参考にした. 基礎データとして, マウスの味蕾細胞モデルを作成したり, グラスキャットフィッシュの電気刺激に対する行動を調べたりした. 行動実験では, 電気刺激に対するグラスキャットフィッシュの忌避行動を明らかにした.
著者
三輪 容子
出版者
日本歯科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

今回の研究でアカハライモリの歯の発生/再生過程においてVEGFとVEGFレセプターの特徴的な局在性が示された。VEGFはヒト、げっ歯類同様イモリの歯の発生においても内エナメル上皮や象牙芽細胞の分化に幅広く影響を与えている可能性が考えられる。
著者
尾上 哲治
出版者
熊本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

宇宙空間に存在する直径1 mm以下の固体微粒子を宇宙塵とよぶ.地球に流入した宇宙塵の一部は大気圏突入時に溶融し,大気圧下で酸化鉱物を晶出する.この酸化鉱物のうち,スピネル類に含まれる鉄の化学組成を調べることにより,過去の地球大気の酸素分圧を定量的に求めることが可能であると考えられる.本研究では,過去2億5千万~1億7千万年前と32億年前のチャート層から回収した溶融宇宙塵に含まれるスピネル類の化学組成を明らかにし,さらにそこに記録された各地質時代における地球大気の酸素分圧を解読するための鉱物学的,地球化学的基礎研究を行なった.
著者
内貴 章世
出版者
岡山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

アカネ科のアリドオシ属においては、二型花柱性(短雄しべ・長雌しべをもつ花と長雄しべ・短雌しべをもつ花がみられる現象)は倍数性と相関し、4数体では二型花柱性が崩壊している。本研究では二型花柱性をもつ2倍体では自家・同型不和合性を示し、二型花柱性を持たない4倍体では自家受精による結実が可能であることが明らかになった。また分子系統学的解析により、4倍体の出現はアリドオシ属内で複数回起こっていることが示唆された。