著者
新保 史生
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

行政機関が個人情報を取り扱う情報システムを構築する際に、プライバシーの権利侵害を予防するため事前に影響評価を実施する手法(プライバシー影響評価: PIA)に関する研究を、諸外国におけるPIAの先行事例の調査など比較法的観点から調査研究を中心に行った。本研究の成果は、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律案(マイナンバー法)」において、プライバシー影響評価の実施について「特定個人情報保護評価」として明記され、現実の制度として導入すべく検討がなされるに至っている。
著者
柏木 恭典
出版者
千葉経済大学短期大学部
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の成果として、まず2013年5月に、『赤ちゃんポストと緊急下の女性-未完の母子救済プロジェクト-』を完成させ、上梓した。20万字以上にのぼる研究書として、公的な研究成果を残すことができた。本研究を通じて、ドイツにおける赤ちゃんポストの実情、そしてその背景、また赤ちゃんポストの是非を巡る議論をまとめ、その根源に「緊急下の女性」への支援の問題が潜んでいることを明らかにできた。
著者
白木 洋平
出版者
立正大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では東京都周辺域を研究対象地域,1997年から2006年までの夏季12時から18時までを研究対象期間とし,東京都周辺域における熱環境の違いが対流性降雨の頻度に与える影響について相関分析による統計的評価を行った.次に,研究対象地域内にて最も都市が発展している東京都に着目し,熱環境の他に建物パラメータを加えて再度相関分析を行った.
著者
音成 貴道
出版者
東京歯科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

顎顔面領域は、硬組織や軟組織、空気等が存在している。この領域に病変が生じた場合には、硬組織である骨を指標として手術を行っている現状がある。硬組織に生じた病変はCTが有用であり、軟組織に生じた病変はMRIが有用である。これらCTとMRIを同時に表示することが可能であれば、硬組織と軟組織に生じた病変はいずれも診断が用意であろうと考えられる。平成18年度には、Fusion画像が用意に作成できるようにシステムの構築を行い、また良好なMRI画像が撮像可能になるように顎骨専用コイルを購入した。平成19年度には、第20回日本顎関節学会総会・学術大会にて、顎関節部に対する解剖構造と血流によるFusion画像を作成し、学会報告を行った。まず、顎関節部を通常の撮像であるプロトン密度強調画像で撮像を行い、解剖構造の確認を行った。さらに、血管の走行を描出するMRアンギオグラフィの撮像を行った。アンギオグラフィにはTOF法とPC法があるが、頭頸部領域では比較的細い血管が多いため、PC法を用いた。プロトン密度強調画像とPC法アンギオグラフィによるFusion画像を作成し、顎関節部の三次元的な血管の走行を観察した。顎関節外側部では、浅側頭動脈が走行しており下顎枝後方から下顎頭外側に走行するのが確認でいた。顎関節内側部では、顎動脈の分枝が横に走行しており、深側頭動脈に分岐する部位も確認できた。これらの画像は三次元的に任意の方向から観察が可能であるが、発表形式から動画での報告となったが、その後の質問では活発な討論がされ、関心の高さが伺われた。顎関節痛などの痛みの評価や、治癒過程においても新たな診断モダリティとなる可能性があると思われ、疼痛等の臨床情報についても今後検討を続けていく。
著者
増田 弘毅
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

様々な実データ時系列の背後にある確率過程の構造に関する漸近推測,その中でも特に,確率過程の二次変動の局所的性質を加味した推測方式を研究した.また,漸近推測に際して必要となる,確率過程の漸近挙動も興味の対象である.今年度は特に下記の結果を得た.1. Realized multipower variation(MPV)の長期高頻度観測版を定義し,その漸近挙動を導出した.統計への応用として,確率過程の飛躍部分が適当な条件をみたす下では,飛躍の具体的な構造に関係なく(それを局外母数として)拡散部分およびドリフト部分を同時に漸近正規性をもって推測可能であることが分かった。推定量は計算容易であり,より精度の高い推定量の構成に役立つことが期待される.種のウィーナーポアソン確率積分に関する条件付期待値の公式を導出した.これはウィーナー積分に関する既存の結果を拡張するものであり,飛躍付確率過程モデルへ "small-sigma"理論を適用する際に,その実装における基本的な道具となる.3.合ボアソン型飛躍付拡散過程の$\beta$-ミキシング性を,(ランダムな)初期条件に関係なく成立する条件を導出した.条件は全て当該確率微分方程式の係数およびレヴィ測度で表現されており,検証容易である.4. 期間で高頻度データが得られない場合での日次ボラティリティの推定方法を,ウェイト付実現ボラティリティを介して定式化し,実証分析を行った.このような推定手法は,昼休みと夜間において取引が停止する日本市場などにおいて,特に夜間の収益率変動が累積ボラティリティに及ぼす影響が大きいことが経験的に知られているため,重要である.本結果は,経済で重要なボラティリティ予測を安定して行うための道具となる.
著者
松本 尚之
出版者
横浜国立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究では、民政移管から10年目を迎えたナイジェリアにおいて、諸民族の伝統的権威者(王や首長)が国家行政のなかで持つ役割や影響力について調査研究を行った。特に三大民族の一つであるイボ人を事例とし、小規模地域集団を単位として選ばれる王(エゼ)が、地方集団を越えて行使する影響力を考察した。調査では、州政府や地方政府が、各集団の王制に対して与える影響力を把握するとともに、各政府が組織する伝統的権威者の助言会議の実態について把握することを目指した。それによって、今日のナイジェリアにおいて伝統的権威者が果たす媒介者としての役割を明らかにし、アフリカにおいて王位や首長位が持つ現代的な意味を考察した。
著者
小川 泰信
出版者
国立極地研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究課題の目的は、極域電離圏及び磁気圏で観測される極風(ポーラーウィンド)の生成機構の解明である。極風が生じ始めると考えられる極冠域の上部電離圏(400-1,000km)におけるイオン組成の高度分布と各イオン種の速度分布を、2007年夏期から2008年冬期にかけて実施した欧州非干渉散乱(EISCAT)スヴァールバルレーダー(ESR)観測データを用いて調べた結果、(1)酸素イオンに対する水素イオンの比率は、電離圏モデル(IRI-2001)値に比べて観測値の方が大きいこと(高度400-600kmでは約3倍)、(2)昼側カスプ領域より低緯度側の領域では、主イオンである酸素イオンとマイナーイオンである水素イオンにより、全上昇イオンフラックスの保存が広い高度幅で成り立っていること、等を明らかにした。
著者
須賀 健一
出版者
徳島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

腹膜硬化症モデルラットで腹膜の細胞外基質蛋白(ECM)の蓄積とともに各種インテグリンの発現が増強した。Tumor growth factor-β(TGF-β)で培養線維芽細胞を刺激するとECMの増加とともにインテグリンの発現が増強した。以上よりTGF-βにより誘導される腹膜線維芽細胞のインテグリンの発現増強が異常なECM再構築などに関与し、腹膜硬化症の発症・進展に関連することが示唆された。
著者
永田 瞬
出版者
高崎経済大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、ジーンズ産業における若年層のキャリア形成と地域間ネットワークの課題を明らかにする。具体的には、①三備地区(岡山県、広島県)におけるメーカー側の製造・販売ネットワークと人材育成の分析、②若年層の就業意識と学校側カリキュラムである。三備地区の繊維産業集積における自社ブランドメーカーは、縫製加工業者や洗い加工業者と密接な取引関係を結び、産地外の織布メーカーとも取引を活発化させている。学生服メーカーは、短期需要に即応するため、国内立地を選択している。以上の事情は、他地域の産地型産業集積にとっても示唆に富む。
著者
前田 義信
出版者
新潟大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

社会問題のひとつである"いじめ"は強者から弱者に対して行われる従来型の一方的な攻撃から,対等な他者との間で加害者と被害者が流動的に入れ替わる双方向の攻撃へとその性質を変容させつつある.当事者はいつ自分が被害者になるか予想することもできない不安を常に持ち,それゆえ対等な他者からの承認を常に必要とする“フラット"な関係が築かれるようになった.また流動性ゆえに,教育者をはじめとする支援者も対策に頭を悩ませている.そこではどのような事態が生じているのか?本研究では,エージェント,価値,エージェントが起こす行動,相互作用で構成される形式的な人工学級モデルを提案し,マルチエージェントシミュレーションによってその現象を調べる.エージェントの一人はヒトが操作可能なプレイヤーに置き換えることができるようにもした.相互作用を繰り返すことによって自分が見出す価値数がゼロになった経験を有するエージェント(いじめ被害者)と,他のエージェントから反感性の行動を連続的に受け続けたエージェント(いじめ被害者の候補=潜在的いじめ被害者)を定義し,その状況を調べた.その結果,交友関係における対立回避やべき乗分布に従ういじめの特性が観察され,支援者によるいじめ発見の困難さとの関連性を考察した.
著者
鈴木 孝幸
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

これまでの研究で、指が発生する時には指原器の先端の細胞群が重要であり、この細胞群に指間部からのBMP(骨形成成長因子)のシグナルが特異的に入る事が分かりました。そして私はこの細胞群をPFR(phalanx forming region)の細胞群と名付けました。本研究でPFRの細胞群は驚くべき事に後側からのシグナルにしか反応しないと言う特性を持っている事が示されました。そしてその原因として、指間部において後側から前側にかけて液性因子の流れがあることが判明しました。また多指の鶏である烏骨鶏の原因遺伝子座も特定し、論文が受理され現在in pressです。
著者
廣瀬 陽子
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、かつては共に共産圏であった旧ソ連、旧東欧諸国(特に黒海地域)のEUへの接近・統合プロセスを明らかにすることを目的に、文献研究と現地調査によって比較検討を進めたものである。特に、紛争勃発と平和構築のプロセス、未承認国家、民主化、経済発展、エネルギーポリティクスなどを中心に両地域を比較した。歴史的背景に加え、欧州への地理的な近さ、ロシアの影響力の強さなどが特に両地域の違いを生んでいることが分かった一方、旧ソ連・旧ユーゴスラヴィアに見られるような「連邦解体後」の共通問題なども明らかになった。
著者
田中 智之
出版者
岡山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

マスト細胞は全身に分布する免疫細胞の一種であり、その性質は分布する組織によって異なることが知られている。本研究では従来検証が困難であった成熟マスト細胞の機能を、新たな培養系を構築することにより検討した。成熟マスト細胞モデルではIgE非依存性の刺激に対する応答性が亢進する一方で、IgE依存性の抗原抗体反応の応答は低下していた。この成果は、組織におけるマスト細胞による免疫応答の調節機構を解明する上で、適切な組織マスト細胞モデルを構築することの重要性を示している。
著者
小野 文枝
出版者
横浜国立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、利用者が意識せずに構成可能なパーソナルネットワークの構成を検討している。通常、地震に関する情報は様々なネットワークを経て伝達される。しかしながら、様々な経路による遅延やネットワークの完全性が保証されていないなどの問題が存在している。そこで、本研究では、様々な経路を介さずに震度情報を取得するパーソナルネットワークを提案した。また、取得した情報を共有するために、省電力伝送可能な通信法を検討した。これらの結果、従来のネットワークを介さずともその場所の震度情報が取得可能となり、小電力で高効率な通信法を用いて情報共有が実現できる可能性があることを明らかにした。
著者
玉城 陽子
出版者
琉球大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

1.大学在学時に測定・記録した基礎体温(BBT)と頸管粘液の変化について、1983〜1986年度入学学生(1G)105人、1988〜1990年度入学学生(2G)73人、1998-1999年度入学学生(3G)72人計250人ついて比較し、年代的な差異があるのかを明らかにするために分析した。1)排卵と無排卵(V型の一部・VI型)の両方の周期をもつ者は1、2、3Gそれぞれ24.7%、15.7%、33.8%であり、全周期無排卵型であったのは1、2、3Gそれぞれ8.6%、11.4%、12.3%と年代が上がって行くに従い高率になっている。2)黄体機能不全の可能性がある周期がある者は、1、2、3Gそれぞれ27.6%、26.6%、50.0%であり、全て黄体機能不全の可能性がある者は、1、2、3Gそれぞれ46.0%、48.4%、32.8%であった。3)低温水準の平均については、1、2、3グループそれぞれ36.29±0.18、36.33±0.13、36.24±0.17であり3Gが最も低温であった。4)頸管粘液については、牽糸状粘液が排卵日と一致した周期はどの年代も約半数であった。2.現在30代前半〜40代前半である1、2G学生178人のうち現住所が把握できた151人に対し郵送にてアンケートによる追跡調査を行い、返答があった69人(回収率45.7%)について分析した。1)169人中50人(72.5%)が既婚者であり、既婚者中14人(28.0%)が不妊治療の経験者であった。この14人についての学生時のBBTは、無排卵周期が1回でもあった者は50.0%、黄体機能不全の可能性がある周期が1回でもあった者も、50.0%であった。このうちの1人は、学生時より無排卵のため治療していた。2)学生時の生活習慣の振り返りで見てみると、排卵に影響していたのは、ダイエットの経験、飲酒の機会であり、黄体機能に影響していたのは、ダイエットの経験、外食の機会であり、過短・過長月経など周期へ影響したものは、外食の機会、ストレスの有無であった。
著者
河合 克宏
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

IRBITによるCaMKIIα活性制御の分子機構およびその生理的意義を明らかにし、脳神経系におけるIRBITの役割を解明するため、in vitro kinase assay,細胞株発現系、培養神経細胞およびIRBITを全身で欠損したIRBIT KOマウスを用いてIRBITがCaMKIIα活性に及ぼす効果を検討した。いずれの実験系においてもIRBITがCaMKIIα活性を抑制する事を明らかにした。さらにIRBIT KOマウスが学習行動試験や社会性行動試験等の行動実験において行動異常を示す事を明らかにした。
著者
奥野 久美子
出版者
大阪市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

菊池寛の作品「岩見重太郎」および「入れ札」を中心に、大正期文学と博文館長篇講談とのかかわりを明らかにした。「岩見重太郎」においては博文館長篇講談が典拠であることを明らかにした。また「入れ札」でも同叢書が利用されていた可能性、および同叢書が川村花菱など大正期の他作家にも利用されていたことを証した。具体的成果は学会での口頭発表 2 件、論文 2 本である。
著者
作山 葵
出版者
自治医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

高齢化が進行し骨粗鬆症の患者数が増加しており,ビスフォスフォネート系薬剤(以下BP薬)の服用による顎骨壊死が多く報告されている. BP薬がインプラントへおよぼす影響をインプラント周囲骨形成の観点から研究を行った.インプラントと骨接触率は,下肢においてBP薬投与の有無により顕著に有意差があった.下肢と顎骨では,インプラント周囲への新生骨形成が異なるため新生骨形成を解明するには顎骨を観察する必要がある.またBP薬を投与していない時に,活発な骨形成が認められた.BP薬は, インプラントが骨結合した後でもインプラント周囲骨へ影響をおよぼすため定期検診が重要である.
著者
黄 盛彬
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

昨年度に引き続き、日本と韓国両方の政策当局および関連業界、専門家などを対象に積極的に聞き取り調査を行い、数回にわたって韓国での実際の「日本大衆文化」の受け入れ状況、そして日本における「韓国文化」の実態にっいても調査を進めてきた。一連の研究作業の成果は、単行本としての出版を目指しているが、本研究を進めながら研究の対象を、両国における関係認識のほうにシフトさせた経緯があり、今年度においても直接的な研究の成果は「日韓の相互認識」に関連するものが多かった。その第一の理由は、昨年7月以来、いわゆる「歴史教科書問題」や「靖国神社問題」で韓国内の世論悪化などを背景に「日本大衆文化」の追加開放が中断されている状況が続いたことに関連している。この問題をめぐる韓国内のメディア言説や政策担当者とのインタビュー結果などから、「日本文化開放政策」が一般の貿易政策とはちがって、さまざまなレベルの日本認識(他者像)に大きく影響されていることがわかった。「日本文化禁止」政策にも過去の歴史をめぐる記憶や政治が大きく関わっており、その点を解明した上でさらに近未来の展望を示す作業がより緊要な作業であると指摘できた。一方で、2002年W杯の共同開催をきっかけに両国間の文化交流・交易の動きは大きく進展した。しかし、一連の現象においても、日本と韓国それぞれの「自画像」と「他者像」をめぐってさまざまな相互作用が見られたので、いわば両国における相手認識がどのように国内政治へ動員され、いかなる作用をもたらすのかを解明する作業に主に取り組んできた。なお、今後も本研究テーマの問題意識を維持しながら、「東アジアの文化の地形を、市場、イデオロギー、民族、言語などの多様な層の分節状況および相互に影響しあう複雑な絡まりのダイナミックス」を解明する作業を続けていきたい。本研究はその出発点となるものであった。
著者
中澤 秀雄
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

研究代表者は平成12年度から13年度にかけて、「リスク社会における情報空間と社会的亀裂に関する比較都市研究」というタイトルで科学研究費を受けているが(課題番号13710119)、平成15年度から開始された本課題はその継続という性格を持っており、本年度が最終年度となる。本課題による成果は3点に要約できる。第1に新潟県巻町・柏崎市を対象とした地域社会研究が終了したことである。毎年1回の現地調査によって継続的に情勢をフォローしてきたが、平成15年度末に巻町民を対象としたサーベイ調査を実施した。これらのデータをもとに、地域情報空間の配置に関する比較研究の成果として、『住民投票とローカルレジーム』(ハーベスト社)を世に問うた(2005年11月)。これが最終年度にふさわしい成果としてまず挙げられる。第2に、メディア・社会情報研究と地域社会学を結びつけ、情報空間の地域間格差に関して理論的彫琢を行い、その成果を『講座地域社会学』(東信堂,2006年1月刊行予定)および『越境する都市とガバナンス』(法政大学出版局,2006年1月刊行予定)に執筆した論文に盛り込んだ。第3に、当初構想していた研究課題からさらに進んで、北海道野幌におけるまちづくり活動を暫定的に総括する論文(中澤・大國 2005)やサステナブル都市論を日本に適用する論文(中澤 2004)、地域間比較の視点のもとに持続可能な地域自治を探求する仕事(中澤 2005)も積み重ねてきた。この3年間において発表した著書・論文は(共著を含め)合計13編にのぼり、与えられた研究費に比して十分効果的に、研究課題の目的を達成したと考えている。以上の成果から明確化してきた今後の方向性は2つある。A.東京圏内、あるいは東京圏と非東京圏の亀裂の状況を、より総合的に明らかにすること。B.その亀裂状況をこえて、持続可能な自治のモデル(ビジネスモデルならぬガバナンスモデル)を探求していくこと。とくに後背地としての農村をプロデュースしながら存立基盤を作っていけるような都市のあり方を理論化し、同時に説得的な具体例を構築していくこと、である。