著者
金綱 知征
出版者
甲子園大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の目的は、①ネットいじめの様相に関する基本的認識、②被害に対するリスク認知、③被害に対する不安、④匿名性信念、そして⑤被害予防意識の5つの心理的要因の相互関連性を検証し、ネットいじめ被害・加害の予防と対応に役立つ知見を得ることであった。携帯電話の普及率が95%以上という青年期後期の若者を対象に無記名自記式の質問紙調査を実施した結果、ネットいじめの様相について従来型いじめと同様の理解をしていることが示された。またリスク認知、被害不安はともに過去にネットいじめ被害経験をもつ者は有意に高く、高いリスク認知と被害不安は低い匿名性信念と合わさることで、高い予防意識へとつながることが示された。
著者
高垣 直尚
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

上部に降雨発生装置を取り付けた風波水槽を用い,風波の波高減衰実験を行った.その結果,波高減衰が起こるか否かは,風速および吹送距離よりもむしろ風波の大きさ(高さ)に強く依存することを明らかにした.また,降雨を伴う風波乱流場における気液両相の速度変動および水位変動計測,および単一の着色液滴を使用した液側界面極近傍の流動場の可視化実験を通して,気液両相の乱流場が降雨により強く影響を受けることを明らかにし,また,低風速時には雨滴の界面衝突により波高減衰が起こるにもかかわらず下降流が生じることも確認した.
著者
波多野 学
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

有機金属反応剤を用いるカルボニル化合物への炭素-炭素結合生成反応は有機合成化学の基幹反応である。従来の主流はカルボニル基の活性化を促すルイス酸化学であった。しかし、有機金属反応剤そのもの、すなわち炭素-金属結合が活性化できれば、求核性が増大し、反応効率は飛躍的に高まるはずである。研究代表者は種々の実用的な有機金属反応剤の求核能向上に着目し、炭素-金属結合の活性化を基盤とする触媒的炭素-炭素結合生成反応の開発を行い、不斉触媒反応へと展開した。
著者
風間 啓敬
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

生体内において、死細胞はその死に方により炎症を伴う場合と伴わない場合がある。炎症を引き起こす能力を持ち貪食能を備えたマクロファージや樹状細胞などは、死細胞に付随する抗原を取り込み、提示する能力を備えているため、死細胞の除去後における免疫応答惹起の決定において重要な機能を担っている。末梢における自己抗原に対する免疫寛容の破綻は、リュウマチをはじめとする自己免疫疾患の原因機構と考えられるが、免疫寛容の誘導機構に未だ不明な点が多いため、疾患の原因も不明である。これまでの研究から、死細胞を貪食する樹状細胞か分子レベルで細胞内のHMGB1の酸化還元状態を感知し、獲得免疫を担う細胞の活性化を調節していることを報告した。そこで本研究では生体内でのHMGB1の酸化還元状態を検出する方法を確立し、生体内での機能を探索することを目的とした。そのために樹状細胞をはじめ、貪食細胞の活性化を簡便に検出するためのマーカーを探索するために、免疫寛容を誘導する機構の解析を行った。HMGB1のCys106の酸化により、次亜硫酸化システインが生成されると仮定してその検出を試みた。ビオチン化maleamideを用いて還元型を、ビオチン化dimedoneを用いて酸化型(キャッピングされた次亜硫酸化基)の検出をウェスタンにより試みたが、検出できなかった。他の研究室からの報告では亜硫酸化、硫酸化システインが質量分析により検出されたことから、化学修飾法による不安定な次亜硫酸化システインの検出はできなかったと考える。一方、末梢での免疫寛容の機構を解析するため、ハプテン化アポトーシス細胞の静脈注射によりハプテンを抗原としたアレルギー反応(DTH応答)の抑制実験を、PD-1を遺伝的に欠損したマウスにおいて行った。予想通り、PD-1を欠損したマウスではDTH応答が抑制されなかった。CD8T細胞がDTH応答抑制に関与していること、さらにCD8T細胞におけるPD-1の恒常的発現により本来の機能である細胞障害活性を阻害すること、が報告されていたことから抑制性CD8T細胞でのPD-1の発現上昇が予想されたが、実験結果からCD8T細胞でのPD-1の発現は抑制性CD8T細胞への分化や機能には直接必要ないことが示された。しかしこれまでの研究では、抑制性CD8T細胞分化に関わる、PD-1陽性細胞に同定には至っていない。
著者
前田 明彦
出版者
高知大学(医学部)
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

Q熱(Coxiella burnetii以下Cb感染症)の臨床像を明らかにすることを目的に、発熱性疾患、原因不明の脳髄膜炎、および、不定愁訴を伴う不登校の小児を対象に、Cb感染症の病因的関与について、血清学的および分子細菌学的検討を行った。Cbゲノムの検出にはPCR法を、血清診断としては、蛍光抗体法による、I相菌抗体、II相菌抗体の各々IgG、IgM抗体を測定した。小児6例をQ熱と診断した。全例で、ペット飼育歴があり、遷延性の発熱(19日間〜7カ月間)が主訴であった。随伴症状に特異的なものはなく、不明熱2例、呼吸器感染症から髄膜炎に進展した例、SLE様症状、4カ月間持続する易疲労性のため不登校を呈した例など非特異的かつ多彩な症状を呈した。診断根拠は、全例血液中Cb-PCR陽性で、髄膜炎の1例を除いてCb抗体の上昇が確認され、他の感染症、自己免疫疾患は否定し得た。明らかな免疫不全症を有さないにもかかわらず、異なった複数の常在菌による敗血症を合併した例が2例認められた。4例においてはミノサイクリン、ドキシサイクリンの2〜3週間投与が奏効した。慢性Q熱と診断した3歳男児例では、テトラサイクリン系薬剤は無効、Cbの標的食細胞のアポトーシスを誘導するIFN γ投与が有効であったが、投与中止後に再発死亡した。肝脾腫、慢性疲労症候群を呈した2例では、Cbゲノムが間歇的に陽性となり、年余にわたる長期の治療、フォローアップが必要であった。不明熱ではQ熱を積極的に疑うことが、診断に重要であることが確認された。不登校を主訴とする12歳例はアジスロマイシンの間歇的投与により、Cbゲノムの陰性化に伴い、易疲労性および不登校は改善した。不登校児ではQ熱を鑑別することが必要である。
著者
梶谷 康介 中別府 雄作
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の目的は多機能分子であるレクチンタンパクの一種、ガレクチンの中枢神経における発現・機能に注目し、ガレクチンと精神疾患との関係を明らかにすることである。我々は本研究で以下の4つのことを明らかにした。1.マウス海馬において、ガレクチン-1が海馬の介在神経に発現する(ガレクチン-1陽性細胞の77%が介在神経マーカーであるソマトスタチン陽性)、2.マウス海馬における介在神経数はガレクチン-1欠損マウスと野生型マウスに差を認めない、3.統合失調症患者における血清ガレクチン-3濃度は健常者より優位に上昇している、4. 統合失調症の一部の精神症状とガレクチン-3濃度は正の相関を示す。
著者
三好 美織
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では,これからの社会を生きる児童・生徒が,理科教育において身に付けるべき科学的教養の内実と,理科の授業においてそれをいかに育成していくか,具体的な指導方略と習得状況を評価するための方法,評価規準を検討した。理科教育において科学的教養を育成し評価するにあたり,学習内容に則して科学的教養の具体を設定すること,知識,能力,態度などを総合して発揮することのできる文脈の中で,問題解決や探究活動など児童・生徒の実際的活動を通して科学的教養の育成を図ること,などが求められる。今後の課題として,教師の指導能力の向上のため,学習課題や実践事例の収集など,教員の支援体制の構築が必要になると考えられる。
著者
菅原 徹
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

研究/開発では、低温排熱を回収する為の実用に耐えうる熱電発電モジュールを開発することを最終的な目標とし、極薄フレキシブル基板上に多数の微細化した熱電素子を高密度で実装し、円筒状熱源に対して湾曲自在で密着性良く装着する従来にない高熱回収効率が可能なストレッチャブルでフレキシブルな熱電発電モジュールを開発した。
著者
島谷 康司
出版者
県立広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究の目的は,視覚性持続処理課題を用いた注意機能を評価するシステムを検証することであった。年中から年長児を対象に注意機能,運動機能,身体運動反応速度(視覚的注意を含む運動機能)の3課題を測定し,運動経験の有無によって視覚的注意機能の反応速度と身体運動反応速度の関係について検証した。対象は4~5歳の年中児19名,5~6歳の年長児22名とした。実験方法は,「もぐらーず」を使用して座位で上肢を利用してボタンを押す視覚的注意課題,立位で下肢を利用してボタンを押す身体運動反応速度の測定を行った。運動課題の測定には文部科学省の体力・運動能力調査に基づいて「反復横とび」,「立ち幅跳び」,「連続飛越し」,集中力には「静止立位時の重心動揺」の測定を行った。先の報告で,年長児童の粗大運動能力と注意機能の間には相関関係を示した(H23年度)。運動能力の上位群と下位群の比較では有意差は認められなかった。さらに運動能力の最も高い児の視覚性持続処理課題が低く,またその逆も認められたことから,低年齢層における座位時の視覚性持続処理課題の検査は適応的ではない。しかし,静止立位時の重心動揺と視覚性持続処理課題には関係性が認められ,年中児にとっては立位姿勢制御に注意を必要とした。また,年中児2名の発達障害疑いの児に粗大運動能力課題,視覚性持続処理課題,身体重心動揺検査を行い,同年代の児と比較した結果,低値を示した。上記のことから,年長児の場合は粗大運動能力と視覚性持続処理課題とを総合的に判断すること,年中児の場合は視覚性持続処理課題と粗大運動能力,さらに静止立位時の重心動揺を加えた総合的な評価が必要であることが確認できた。
著者
武井 基晃
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究の成果は、琉球王府時代の士族およびその子孫の門中についての今日的な成果(1~4)と、歴史的な成果(5~7)に分けられる。(1)士族系門中の全体像の理解(久米系門中の現在、屋取の門中の現在)、(2)門中団体による資料刊行の事業、(3)門中団体と法人制度の改正、(4)孔子廟移転の調査。(5)大正時代の『沖縄県「註記調書」集』活用の促進、(6)琉球時代の「家譜」の読解、(7)近世の琉球通事による英・仏への対応の研究。
著者
禰屋 光男
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

自然環境の高地滞在と人工低酸素環境への曝露を併用したトレーニングがエリート競技者の総ヘモグロビン量や最大酸素摂取量の変化に及ぼす影響を検討した。研究対象者が限定されたため、統計学的な有意性は認められなかったが、平均値として、総ヘモグロビン量の増大が見られた。大学生中長距離選手では同様の形態でこれらの増大が過去の研究で認められたため、エリート競技者でも同様の効果が生じるかさらなる検証が必要と考えられる。また、2回の10日間の高地・低酸素暴露による総ヘモグロビン量の増加の可能性を検討したが、連続的に21日間滞在する場合に生じた総ヘモグロビン量の増加は認められなかった。
著者
林 恵嗣
出版者
静岡県立大学短期大学部
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

2013年度は、食事摂取が呼吸化学受容器反射に及ぼす影響について検討し(実験1)、2014年度は、高糖質食の摂取がその後の運動時の呼吸循環反応に及ぼす影響について検討した(実験2)。実験1では、特にCO2に対する呼吸化学受容器反射について検討し、実験の結果、食事摂取は呼吸化学受容器反射を介して呼吸パターンに影響する可能性が示唆された。実験2については、高糖質食摂取と一般食摂取で比較した。その結果、高糖質食摂取によって食後の運動時には心拍数や換気量が低値を示し、体温上昇にともなう一回換気量の低下が小さくなった。このことから、食事内容の違いによっても呼吸パターンが変化する可能性が示唆された。
著者
山田 晋
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

草原生植物の生育地である二次草地とよく管理された二次林を対象に,結実種子を含む刈り取り残渣という新たな植生復元材料を用いた生態緑化技術の開発を実施した。多数の種と種子量が得られる刈り取り時期は,二次草地で10-11月,二次林で10月となった。約800g/m2の残渣を撒き出すことで出芽個体数が最大化し,かつ飛来する雑草の出芽を抑制できた。3月に種子を播きだすと,その後の結実種子の出芽率は最大化するが,出芽後の雑草との競合も高まり,個体の残存率は低下した。7月に播きだしを行うと出芽個体数は低下するが出芽後の雑草との競合が緩和され,発芽適温域が高い種に対してはこの時期の種子導入が適すと考えられた。
著者
伊藤 冬樹
出版者
信州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

高分子媒体中で形成されるピレン誘導体集合体の濃度変化にともなう蛍光スペクトル変化と集合体サイズの関係を定量化・モデル化し,これを利用して結晶核生成初期過程に関する知見を得ることを目的として研究を行った.ピレン誘導体の高分子薄膜での色素濃度に依存した蛍光スペクトル変化は,バルク結晶に至るまでの成長過程における集合体の階層性の存在を示唆するという結論を出した.また,再沈法によって作製したピレン誘導体ナノ凝集体の光照射にともなう蛍光スペクトル変化を見出した.これは,光照射によるピレン誘導体ナノ凝集体の溶解現象に起因する現象であるといえる.
著者
糸山 豊
出版者
名古屋工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

若材齢時におけるコンクリートは活発な水和進行過程にあり物性の変化が著しいため、クリープ試験期間中の水和進行を抑制させた状況下において試験を行う必要がある。そこで本年度は,若材齢時の水和組織を極力保持した状態で、それ以上の水和進行を抑制させるために、練混ぜに用いる水の一部を同体積のアルコールで置き換えたコンクリートおよびモルタルを対象として圧縮クリープ試験を行い、アルコール置換による水和抑制効果とクリープ挙動に及ぼす影響について検討を行った。また、異なる応力履歴においてクリープ試験を行い、クリープ挙動の履歴依存性について検討を行った。予備実験の結果から、アルコール置換率40%以下で1ヶ月間養生を行ったコンクリートが若材齢時におけるコンクリートの水和状態を保持していると判断し、置換率はコンクリートでは30%、モルタルではアルコール置換率の違いが強度発現、クリープに及ぼす影響を検討するため30%、40%の2水準設定した。クリープ試験中は温度30℃、湿度98%一定で、てこ式圧縮クリープ試験機を用いて一定応力を載荷してひずみ挙動を測定し、除荷後の回復クリープひずみ挙動も併せて検討を行った。本年度の研究で得られた知見を以下にまとめる。1 試験期間中の水和進行を抑制させてクリープ試験を行った結果、長期材齢時におけるクリープ特性の傾向がみられたことから、若材齢時のクリープは水和進行の影響を大きく受けることが推察された。2 セメント硬化体における微細空隙中の液体の特性がクリープおよび回復クリープの発生機構上、重要な役割を果たすことが推察された。3 練混ぜ水の一部をアルコール置換することで強度発現が小さくなり、水和反応が長期間にわたって抑制された。
著者
末石 直也
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

モデル選択の目的は、観測されたデータを基に「最適な」モデルを選ぶことである。しかしながら、最適なモデルはモデルの使用目的に応じて異なる。 本研究では、モーメント制約によってモデルが記述されているときに、経験尤度推定量を用いて、興味のあるパラメータを正確に推定するためのモデル選択の方法を考察した。また、推定量の平均 2 乗誤差を最小にすること目的とした、モーメント制約モデルのためのモデルアベレージングの方法を提案した。
著者
瀧川 渉
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

筋骨格ストレスマーカー(MSM)15 項目の進行状況について独自の基準を設定し、次のような研究成果を得た。(1)多くの項目において年齢と MSM スコアの間には有意な正の相関が確認された。(2)縄文人 5 地域集団間の比較では、男性の方が女性よりも MSM の出現状況において地域的な変異が大きいことが示唆された。(3)弥生人3地域集団を比較すると、北部九州弥生人は縄文人集団と異なる一方で、種子島弥生人は縄文人集団に類似する様相を示した。
著者
大久保 寛
出版者
首都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,鉱山地帯における磁界計測システム構築している。本システムの特徴は(1)センサにはフラックゲート磁力計を用いて,(2)地上・地中で同時観測し,(3)記録装置の時刻はGPSによって同期されている。本研究期間中の2008年6月に本観測地点からわずか26kmの地点での岩手・宮城内陸地震が発生した。本地震の発生時において,地震断層運動に伴うピエゾ磁気効果による磁界変化の観測に成功した。
著者
岩田 倫明 中沢 一雄 白石 公
出版者
独立行政法人国立循環器病研究センター
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では,非言語的な情報の保存,共有,理解法として医師の描くシェーマに着目し,先天性心疾患を対象として,視覚情報(シェーマ)と文字情報(診療情報)とが結合するデータベース構築に必要な技術を,Scalable Vector Graphics(SVG)で記述されたベクトルシェーマを用いて開発し,先天性心疾患患者の様々な情報を統合的に扱うことができることを小児循環器専門医の協力のもと,調査・検証した.ベクトルシェーマを介したデータ連携によって,先天性心疾患患者のシェーマ及び疾患名が整理保存され,データベース化できる可能性が示唆され,開発・試作したシステムが有用であることが示されたと考える.
著者
高橋 佐智子
出版者
実践女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

わが国の核家族化が進んで久しい。その結果、家族間での被服製作に関わる知識や技術の伝承は少なくなっている。また、中高等学校の家庭科教育における被服製作時間数の減少等により、大学の被服製作の授業では受講者スキルに合わせた実演指導が求められている。しかし、授業時間数に制限があるため難しいのが現状である。本研究は実演指導が必要な被服製作教育において、初心者にも理解できる電子教材を作成し、自宅等で被服製作技術を習得できるe-ラーニングシステム全般の開発と効果の検討を目的とする。本年度は被服製作に関する基本調査と電子教材の作成を行った。被服製作に関する基本調査:10代後半から20代前半の男女(男性154名、女性287名、計441名)を対象に学内のWEBサーバーに構築したアンケートシステムを利用し調査を実施した。調査の結果、被服製作の道具を持っている人は58%、被服製作ができない人は84%であり被服製作があまり一般的でないことが明らかとなったが、浴衣を製作してみたい人は60%であり被服製作への関心の高さも伺えた。また、被服製作の電子教材を使用したことがある人は21%、使用したい人は42%であることから被服製作の動画教材の使用経験は少ないものの、それらに対する期待は比較的高いと考えた。電子教材の作成:本研究では、関心が高かった上、伝統的な技術を要する浴衣製作を題材として選定し、動画教材を作成することとした。15回分の各テーマを設定し、見出し別に再生する事を可能にして反復学習が出来る内容にした。デジタルビデオカメラで撮影し、MacBookProのimovieにより編集した動画に解説の音声ガイドを入れた。作成した動画を学内サーバーから配信するWBTの初歩的なシステムを構築した。配信形式は、MWVとQuickTimeの2種類を用意した。今後は実際にシステムを運用して学習効果や使用しやすさを調査、検討したい。