著者
鬼塚 陽子
出版者
群馬大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

シャーガス病の原因となるTrypanosoma cruziには、宿主防御反応を回避し、自らが生き残る機構が存在するという仮説を立て、宿主の病原体排除機構「オートファジー」に着目した。これまでに、原虫感染細胞では宿主オートファジーが抑制され、特にオートリソソーム形成が進行しないことを明らかにした。そこで、オートリソソーム形成に関わるSNARE 複合体 (Stx17, VAMP8, SNAP29) に焦点をあて、複合体と相互作用する因子を探索する。その機能を in vitro、in vivo の実験系を用いて解析し、原虫感染率、病態に対する影響を評価する。
著者
木舩 崇
出版者
九州大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

自閉症スペクトラム障害(ASD)は、最も頻度の高い神経発達障害の一つである。ASDの発症には、松果体系とドーパミン系の機能不全が関与する可能性があり、それぞれ独立してASDへの関連が研究されてきた。しかし、松果体から分泌されるメラトニンは、睡眠導入の他、抗酸化、抗炎症、抗アポトーシスなど多様な作用を示すことから、この両者の間にはASDの発症に関する病理学的相互作用が推定される。本研究では、病態モデルとしてASD児から供与された乳歯幹細胞(SHED)をドーパミン作動性ニューロン(DN)に分化誘導し、両者の相互作用を細胞生物学的解析により明らかにする。本研究は、ASDの発症機序解明と治療法開発に寄与すると期待できる。
著者
平野 史朗
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

地震時に断層面上の滑り速度が満たすべき偏微分方程式の、最も基本的な形式を考察した。従来の震源物理学における順問題的アプローチとは異なり、地震波の観測から知られる経験則を満たすという要請から出発することで、Klein-Gordon 型という方程式を導いた。この方程式はこれまでにも順問題的に提唱されたことがあったが、全く異なる方向から類似のモデルが導かれることを示したのがひとつめの主要な結果である。次いで、この方程式に確率的な揺らぎをもたらすノイズ項を付加したものが断層の支配方程式であると考え、そのノイズが満たすべきパワースペクトル密度について考察した結果、まずはこの方程式についてのインパルス応答を調べることが重要と判断した。そこで差分法によりインパルス応答を近似計算したところ、方程式に含まれるパラメタ間の比に応じて、断層滑りが波のように伝播する場合と、拡散する場合の2通りが得られることが分かった。前者は通常の地震の振舞いとしてよく知られるが、後者はスロー地震のモデルとして提案されていたものであり、それらを包括的に説明しうるモデルであると考えることができる。また、それらパラメタの正負が断層面上の摩擦則において考えられてきた滑り距離依存性と滑り速度依存性に関係することも見出された。以上の結果を、12月の American Geophysical Union 2019 Fall Meeting にて公表し、他研究者と議論した結果、今後の方向性についていくつかの可能性が得られた。
著者
江崎 智絵
出版者
防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群)
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

オスロ・プロセスが停滞して以降、現在に至るまでの期間は、ハマースの動向に注目すると以下の3つの時期に区分することができる。第一期が2001年から2005年まで、第二期が2006年から2010年まで、第三期が2011年以降である。本研究の対象期間は、第三期に該当するものである。本研究では、2012年以降のパレスチナ情勢を事例として取り上げ、まず、パレスチナ内部の政治情勢および同地域を取り巻く国際関係の推移を時系列で整理する。それを踏まえ、①パレスチナ内部のパワー・バランスにおけるハマースの動き、②ハマースと近隣中東諸国との関係、という2つの側面について同時並行的に分析していく。
著者
大西 永昭
出版者
松江工業高等専門学校
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2023-04-01

新規メディアの登場とともに更新されてきた我々人間の認識や感性が文学にどのように影響してきたのかを、世界でも有数のビデオゲーム大国である日本の現代文学を題材として考察を行い、ゲーム的な感性が現代人にいかに根付いているかを明らかにする。
著者
小幡 圭祐
出版者
山形大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-04-01

本研究は、明治初年に長らく地方行政に携わり、その後に中央行政にも参画した、薩摩藩出身の官僚・三島通庸(1835~1888)が、どのような思想を抱き、またその思想に基づき、いかに地方・中央で行動をとったのかを、彼の残した膨大な史料群「三島通庸関係文書」(国立国会図書館憲政資料室所蔵)を網羅的に分析することで解明し、地方・中央行政史研究を深化させることを直接の目的とする。本研究により、これまで分断して行われてきた中央行政史研究と地方行政史研究の成果の見直し・架橋をはかるとともに、日本近代史研究において地方官に着目する視座を提起することを目指す。
著者
阪下 裕美
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-04-01

歯周病は歯周組織破壊を伴う慢性炎症性疾患であり、従来の原因除去療法のみでは失われた歯周組織を再生させることはできず、安全で有効性の高い歯周組織再生療法の確立が今も求められています。そこで本研究では、皮膚や心臓などの損傷組織に骨髄由来platelet derived growth factor receptor a発現(PDGFRa+)細胞を動員して組織再生を促進するDNA結合タンパクhighly mobility group box 1 (HMGB1)ペプチドに着目し、同分子による歯周組織再生増強効果を検討します。さらに、歯周組織再生に関与する細胞を同定し、歯周組織再生機序の解明を目指します。