著者
原 圭寛
出版者
湘南工科大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は,学士課程のカリキュラム編成の際に「知識」と「能力」の関係がどのように問われてきたのかについて,思想史的に研究するものである。特に本研究では,1828年にイェール・カレッジが出版したカレッジ・カリキュラムについての報告書において1つのキーワードとなっている"discipline"という概念に着目する。この報告書は,学士課程の編成意図について論じられたまとまった文書としては,アメリカ最古のものの一つであるとされている。この文書における中心的な概念がどのような経緯で出現し,またその後のアメリカの学士課程編成にどのような影響を与えたのかについて分析を進めることで,上述の課題に答える。
著者
村松 圭司
出版者
産業医科大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

NDBは世界にも例のない悉皆性の高い医療保険のデータベースであるが、そのデータ構造が複雑であり利活用が進んでいない。申請者は先行研究として、データ構造の理解促進を目的に、実際のNDBに格納されているデータの個票と同じ形式で作成したダミーデータで構成される練習用データセットを開発する研究を実施している。本研究では、①練習用データセットを活用した教材及び②ミニテストによる自己チェックシステムを含む教育プログラムを開発する。そして、研究期間中に実際に受講してもらい、ミニテストやアンケートを行う。その後、これらの結果を用いて開発したプログラムの学習効果を測定する。
著者
栂 浩平
出版者
日本大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

一部の昆虫では,混み合い条件では変態(幼虫から蛹を経て成虫へ至る過程)が抑制され,混み合いから解放されると変態する現象が知られる.混み合いと言う環境要因を認識し,発生過程を可塑的に変化させることを可能にする機構はどのようなものだろうか.本研究では混み合いによる変態抑制に関わる発生遺伝学的な機構を明らかにするため,以下の解析を行った.ツヤケシオオゴミムシダマシの幼虫は集団飼育条件では変態しないが,隔離飼育によって変態が促進される.隔離後に集団飼育に移すと変態を抑制できることがわかった.昆虫の変態は幼若ホルモン量の低下と脱皮ホルモンの分泌によって促進される.これらに関連する遺伝子の発現解析を行ったところ,脱皮ホルモン関連の遺伝子が混み合いに移行後に発現が低下していることがわかった.脱皮ホルモン(20-Hydroxyecdysone)の注射によって混み合い条件でも変態が促進されたことも合わせると,混み合いは脱皮ホルモンの上昇を抑制する効果があることがわかった.一方で,混み合い条件における幼若ホルモン関連の遺伝子の発現の上昇に有意な差は見られなかった.しかし,発現は混み合い条件で上昇している傾向にあるため,詳細な解析が必要と考えられる.これまで変態の抑制は幼若ホルモンによる抑制が一般的に知られているが,混み合いによる変態抑制は脱皮ホルモンの制御によって達成されることを示した.混み合いによって発現が変動する遺伝子を探索するため,隔離条件と混み合い条件で飼育した幼虫を用いて,RNAシーケンス解析を行った.その結果,混み合いで発現が上昇もしくは減少する遺伝子を22個見つけた.今後は,これらの遺伝子をRNAiによりノックダウンし,混み合い条件での飼育でも変態してしまう遺伝子かどうかを検証する.
著者
西村 礼子
出版者
東京医療保健大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

看護基礎教育課程において、臨床判断能力の基盤となる解剖生理学の強化ならびに基礎看護学における臨床判断能力や倫理的判断・行動に必要な基礎的能力を養うためにシミュレーション教育の充実が求められている。本研究では、解剖生理学に基づく臨床判断がシミュレーションでの看護実践能力に与える影響を明らかにするため、従来(解剖生理学履修後に臨床判断・シミュレーションをそれぞれ履修)と改正(解剖生理・臨床判断・シミュレーションを統合した)授業設計を比較する。双方向的に統合した授業設計による看護実践能力を明らかにすることで、指定規則改正で求められる看護実践能力向上のための改正カリキュラムの開発の示唆を得る。
著者
渡部 邦昭
出版者
九州歴史資料館
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

アジア太平洋戦争末期に設置された2つの九州統括機関を調査し、戦時期の地方内政・軍政の構想と実態を明らかにする。具体的には、内務省の九州地方行政協議会・九州地方総監府(昭和20年6月改組)と、陸軍の西部軍管区・第十六方面軍司令部(事実上同一)を取り上げ、両機関に関する公文書の悉皆調査や関連施設の調査を実施する。これにより、両機関の設置改編の経緯、両機関に政府が期待した機能、両機関の実態を解明し、戦時期における地方内政・軍政の構想と実態を明らかにする。
著者
木庭 乾
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

2型自然リンパ球(ILC2)は、アレルゲンによる組織損傷に伴い産生されるIL-25やIL-33に反応し、迅速かつ多量に2型サイトカインを産生することでアレルギー性炎症を誘導する。申請者は多様な免疫細胞を比較したRNAシークエンスデータを解析し、ILC2が神経伝達物質であるセロトニンの受容体を特異的に発現していることを見出し、セロトニンがILC2の増殖やサイトカイン産生を抑制する因子であることを明らかにした。本研究では、アレルギー性炎症におけるセロトニンの新たな生理的役割を、ILC2の抑制という観点から明らかにし、その抑制機構の破綻とアレルギー疾患の因果関係を解明する。
著者
Kim MinKyung
出版者
名古屋商科大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

The purpose of this study is to develop machine scoring algorithms that can predict human scores of Japanese English as a foreign language (EFL) student writing samples across three writing genres (i.e., emails, descriptions, and persuasive essays). Japanese EFL undergraduate students will be recruited. Findings will provide a comprehensive understanding of writing features that distinguish higher- and lower-quality writing across multiple genres. The developed scoring algorithms will be freely available online to help EFL teachers and students better understand higher-rated writing features.
著者
Alexander Kilpatrick
出版者
名古屋商科大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

Human perception is shaped by experience. When input is improbable in the context of the perceiver's experience, perceptual systems will sometimes create an illusion so that the input conforms better to expectation. For example, Japanese does not allow homorganic consonant clusters and when Japanese listeners are exposed to non-native speech that contains homorganic consonant clusters, they sometimes report hearing an illusory vowel amid the cluster. This project will explore the various ways that Japanese listeners perceive input that is improbable in the context of their linguistic history.
著者
井下田 貴子
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

非母語話者は「学習言語の文脈」において、「学習言語の音素」を「母語の音素」で代用することが多々あり、このことが原因で、発音の誤りや異聴の可能性が高まることはよく知られている。中国人日本語学習者の場合、日本語の「う」「お」を後続母音とする半母音「ゆ,よ」において、「う」と「お」の識別の混同が、音声生成・知覚の両面で観察される。本研究では、半母音・拗音における母音と子音の音響特徴量に着目し、中国人日本語学習者の知覚識別境界および識別の手掛かりを探る。
著者
秦 正樹
出版者
京都府立大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

2019年度は,当初の研究計画にもとづいて,世論における政治的デマの受容傾向を明らかにする意識調査(サーベイ実験)を実施する予定であったが,以下の理由によって調査実施を遅らせることとなった.その理由は,昨年度に実施したサーベイ実験の結果にもとづいて,日本選挙学会で行った報告(秦正樹「「"普通の"日本人」ほど騙される?:政治的デマの受容メカニズムに関する実験研究」日本選挙学会,東北大学,2019年7月)でのディスカッションによるものである.当該ディスカッションでは,「普通の日本人」を測定する際の項目について,重要な視座を得た.とくに,社会心理学等で用いられている噂の受容に関する測定尺度を改めて整理したことで,より妥当性の高い研究とつなげられることとなった.また,これらの意見を反映した新たな調査については,事前の調査を2019年11月に実施しており,プリ調査の結果を踏まえたサーベイ実験を2020年3月までに行う予定であったが,今般の新型コロナ禍を踏まえたデマについて検討するべきであると考え,調査時期を延長することとした.加えて,前述の学会での報告ペーパーをもとに英語論文化を進めている.さらに,日本政治学会での報告(秦正樹・Song Jaehyun「争点を束ねれば「イデオロギー」になる?:サーベイ実験とテキスト分析の融合を通じて」日本政治学会,成蹊大学,2019年10月)でも,憲法改正に特化した有権者の態度形成に関して報告を行っており,こちらの論文は年報政治学2020-1に掲載予定である.
著者
小林 大地
出版者
新潟大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

「良薬は口に苦し」は孔子が残した言葉であり、古くから人々は苦い薬には良い治療効果があると信じてきた。一方、医療現場において患者は薬の苦味を不快に感じ、苦味が原因で患者が服薬を中断することがあり、近年の大きな問題の一つとされている。このため、苦味成分が治療に有効であることを科学的に証明し、社会的な理解を得ることは苦味による服薬の中断を予防することにつながる。本研究では苦味物質が抗炎症作用を有することを種々の苦味物質および、苦味受容体欠損細胞を用いて解析を行い、苦味による治療効果の可能性を追求する。
著者
高橋 望
出版者
琉球大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

平成3年の大学設置基準の大綱化以降、大学の個別化により学部・学科名称が多様化している。この多様化により、専攻分野と卒後の進路との対応関係が不明確となったことが、大学進学希望者らにとって、将来のキャリアを見据えた進路選びを阻害する一因となっている。本研究は、適切な進路選択を支援するため、まず、学位に付記する専攻分野の名称を専攻分野の代理指標として、専攻分野と卒後の進路選択との対応関係の変遷を解明することを試みる。そして、この対応関係に基づき、希望する進路と関係する専攻分野や大学を検索し、結果を比較表示するアプリケーションを開発し、大学進学希望者らへ進路選択支援システムとして提供する。
著者
國生 龍平
出版者
金沢大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

バキュロウイルスに感染したチョウ目昆虫の幼虫は異常な徘徊行動を呈する。この現象はウイルスによる利己的な宿主操作であると考えられている。これまでの研究から、バキュロウイルスは宿主の脳に感染することで直接的に行動中枢を操作していることが示唆されたが、その直接的な証拠はいまだ得られていない。そこで本研究課題は、ウイルスゲノムをターゲットにしたCRISPR/Cas9システムとGal4/UASによる遺伝子発現誘導システムを組み合わせることで、宿主行動操作における脳感染の重要性を実証し、行動操作に重要な脳領域を絞り込むことを目標とする。初年度であるH30年度は、実験材料である遺伝子組換えカイコおよびバキュロウイルスの作出に注力した。まず、5xUASの制御下でCas9遺伝子を、カイコU6プロモーターの制御下でウイルスの必須遺伝子をターゲットにしたsgRNAを発現するドナーベクターを作出した。このドナーベクターを用いてpiggyBacトランスポゼースによる遺伝子組換えを行うため、当該ベクターをカイコ卵にインジェクションした。一方、当初利用予定であったエンハンサートラップGal4系統が本実験の目的に足る発現パターンを示さないことが判明したため、現在TAL-PITCh法により中枢神経系解析用のGal4系統を作出中である。また、脳におけるウイルス感染領域の変化をイメージング解析するため、感染ステージ特異的にGFPやmCherryなどの蛍光タンパク質を発現する組換えバキュロウイルスを作製中である。
著者
荻本 快
出版者
相模女子大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

境界性パーソナリティ障害(BPD)への効果的な治療法が、内省機能(メンタライジング)に基づく治療として考案され、世界的に注目されている。内省機能とは、自己と他者の心理状態を振り返る能力のことである。内省機能を測定する質問紙であるReflective Functioning Questionnaire (RFQ)がFonagyらによって開発され多くの言語で翻訳されているが、日本語版は開発されていない。本研究の目的はRFQの日本語版の開発および妥当性と信頼性の検討である。RFQを日本語に翻訳し、BPDを対象として、因子構造、内的整合性、構成概念妥当性を検討する。
著者
渡辺 由希
出版者
淑徳大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

昨今、足利事件のような知的障害者が冤罪となった事件が社会問題となっている。知的障害者が被疑者となったとき、彼らに対する取調べには十分配慮が必要である。従来の法心理学の分野では、取調べに配慮が必要な対象として、子どもに焦点を当てた司法面接の研究が行われてきた。それらは、被害者や目撃者となった人から適切に情報を得る方法だが、被疑者への取調べには罪状認否などが含まれるという点で、面接の構造自体が異なる。加えて、知的障害者がもつ独特のコミュニケーション様式を踏まえた面接構造となる必要がある。よって本研究では、知的障害者への被疑者面接法を新たに開発し、適切な取調方法の提言に繋げたい。