著者
宮原 恵弥子
出版者
鹿児島大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-04-01

大量のDNAアルキル化剤投与後に生じる肝類洞閉塞症候群(SOS)は、時に致死的で発症の予測が難しくまた発症には個体差がある。これまで何が類洞内皮細胞を傷害するのか明らかになっておらず、完全な発症予防にも至っていない。当研究ではDNAアルキル化剤の代謝因子に着目し、in vitro及びin vivoでゲノム編集やsiRNAによる遺伝子のノックアウト、ノックダウンを行い、代謝酵素の活性の程度とSOS発症との関連を検討する。さらに還元型グルタチオンの合成材料となることでSOS発症の予防が期待できるN-acetyl cysteineを用い、抗腫瘍効果を落とすことなくSOS発症を予防できるか検討する。
著者
大西 真駿
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-04-01

不良または余剰なミトコンドリアを適切に分解し除去することは細胞の健康維持に重要である。マイトファジーはオートファジーの仕組みを利用してミトコンドリアを分解する仕組みであるが、その詳細な分子機構はほとんど不明であった。本研究では出芽酵母を用い、ミトコンドリアと隣接するオルガネラである小胞体に存在する膜タンパク質がマイトファジーの制御に関わるメカニズムを解明する。この解析を通し、小胞体がミトコンドリアの分解制御にどのように貢献し、適切なレベルの分解を正確に駆動しているかの理解がより一層深まると期待される。
著者
井上 博之
出版者
東京大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究では自然主義文学からハードボイルド探偵小説とフィルム・ノワール、多様な人種的マイノリティーの文学、実験的な現代作家までを見渡しながら、さまざまなイメージを投影されてきた20世紀カリフォルニアの文学・映画を分析対象とする。代表的なテクストの精読を通して、多種多様なテクストの重層的な網の目によって形成される特異な物語空間としてのカリフォルニアの姿を提示する。
著者
山根 裕美
出版者
京都大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-04-01

本研究の目的は、保全生態学と社会学の異分野融合的な手法を用いて、野生動物であるヒョウと人との関係を解明し、共生の方策を追求していく。そのためには、ケニアのバリンゴ県において、1)GPS首輪を野生のヒョウに装着を試み、センサーカメラを設置。個体識別し、生息域の推定を行う。2)ヒョウの複数個体間の生息密度や家畜のいる集落との距離から、ヒョウの社会性や環境適応性を明らかにする。3)地域住民に対する参与観察や半構造的インタビューを通じて住民感情を把握し、その関係性からヒョウの生態調査結果との整合性を検証する。調査地は人々の生活が密集しておらず、野生動物の生息についてもデータが乏しい地域である。
著者
久岡 加枝
出版者
国立民族学博物館
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-11-01

近年のロシアでは、アディゲ人をはじめとするコーカサス系諸民族の歌謡や舞踊が、若い世代の間で大衆的な人気を持つが、アディゲ人の歌謡や舞踊の担い手の活動を考察する本研究からは、ロシアにおけるマイノリティのアイデンティティと結びついた表演活動のあり方だけでなく、現代ロシアの若者文化の動向を明らかにすることが可能である。
著者
菊地 一樹
出版者
明治大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

法益侵害の発生が被害者(法益主体)の同意に基づく場合に、犯罪の成立は否定されるのが原則である。その根拠は、自ら法益処分を決意した被害者の「自律」の尊重に求められているが、その根拠と限界は十分明らかにされていない。本研究は、被害者の「自律」が犯罪の成否に与える影響を、具体的な問題領域の横断的な検討を通じて、理論的・統合的に解明し、法益主体の「自律」的な活動を過不足なく実現するための刑法理論を打ち立てようとするものである。
著者
祐野 恵
出版者
京都大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究の目的は、日本の地方政治における議会内過程に焦点をあて、議会による地方官僚の統制において一般質問が果たす機能的な役割を明らかにすることである。そのために、中核市にある12議会を対象とし、一般質問議事録のコーディングにより構築したデータセットを用いて、先行研究から導出した理論枠組みによる仮説を検証する。本研究は、大統領制における議会の官僚統制を視角に置く研究の系譜に位置付けられるとともに、実証研究の枠組みから実務的に関心の高い地方議会の議会改革を捉える内容である。
著者
伊藤 亜矢子
出版者
鳥取大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

脂漏性皮膚炎は、全世界で2-3億人もの人々が罹患する慢性かつ難治性の皮膚疾患である。皮膚に常在するマラセチア属真菌が炎症を誘導し表皮肥厚をきたすと考えられているが、そのメカニズムは未解明である。そこで我々は、マラセチアの認識と表皮肥厚の両者を橋渡しする炎症のイニシエーターとして樹状細胞に着目し、世界で初めて脂漏性皮膚炎患者の毛包にCD1a+の樹状細胞が顕著に集積していることを見出した。今回、これらの樹状細胞が脂漏性皮膚炎発症にどのように関わっているかを明らかにするため、病変部皮膚に浸潤する炎症細胞について、免疫組織化学的手法を用いて正常皮膚と比較検討し、さらに電子顕微鏡観察を行い以下の成果を得た。1)脂漏性皮膚炎では、正常皮膚と比較して毛包上皮内と真皮にCD1a陽性樹状細胞が多数集積していた。特異マーカーの検討により集積している樹状細胞はランゲルハンス細胞と考えられた。毛包以外の上皮では差はなかった。2)脂漏性皮膚炎では、正常皮膚と比較して有意に真皮・表皮・毛包のマクロファージが浸潤していた。3)脂漏性皮膚炎の真皮でマクロファージは播種状に分布していたのに対し、ランゲルハンス細胞は毛包周囲に結節状に分布し細胞集団を形成していた。4)その細胞集団について電子顕微鏡観察を行うとランゲルハンス細胞とマクロファージ、リンパ球が接着していた。上記1)~4)は、脂漏性皮膚炎の病態において毛包が重要な役割を持ち、さらにランゲルハンス細胞が起点となり他の炎症細胞と情報交換を行っていることを示唆する重要な新知見である。
著者
本山 央子
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2023-04-01

本研究は、日本が国内ジェンダー秩序との矛盾をいかに統制しながら、国際ジェンダー規範との交渉を通して「先進国」としてのアイデンティティを構築し特権的地位を主張してきたのか明らかにすることを目的とする。明治期以降の外交を通じた国際ジェンダー規範との交渉を包括的に把握したうえ、特に2010年代以降の外交におけるジェンダーの位置づけの変化を詳細に分析する。歴史的植民地主義、安全保障の再定義、新自由主義的ガバナンスの台頭という3つの要因に注目して外交・安全保障の政策形成・実践におけるジェンダー化された権力関係を明らかにし、変革の可能性を検討する。
著者
山崎 大
出版者
京都大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

膵臓への異所性脂肪の蓄積である脂肪膵は、膵β細胞機能障害によって糖尿病、炎症性アディポカインによって膵臓癌を惹起すると推察されている。しかし先行研究では一致した見解が得られていない。脂肪膵が糖尿病や膵臓癌の危険因子であるかを明らかにすることを目的とする。健診施設のCT検診受診者において、CT画像を用いて測定した膵脂肪量のデータと、10年間の一般健診データを突合し、脂肪膵と糖尿病発症の関連を縦断的に解析する。また健診施設の関連病院で、10年間に診療した膵臓癌患者の膵脂肪量をCT画像から測定する。CT検診受診者と膵臓癌患者の膵脂肪量を比較し、脂肪膵と膵臓癌の関連を検討する。
著者
松中 哲也
出版者
金沢大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

日本海において底層水の水温上昇と貧酸素化が観測され、地球温暖化によって深層循環が弱まりつつあることが示唆されている。深層循環停止と貧酸素化に伴う海洋生態系変化が懸念されている。本研究は地球温暖化に対する日本海深層循環の応答性を検知できる底層水の滞留時間評価法を確立する。日本海におけるI-129深度分布を広域的に明らかにし、I-129を深層循環トレーサーとして用いて底層水の滞留時間を推定する。
著者
上西 智子
出版者
東北大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-04-01

本研究の目的は、健康経営を実践している企業が、従業員に対して行っている健康づくりの取組で得られた成果をもとに、新たなビジネス領域へ事業展開するプロセスを明らかにすることである。具体的には、健康経営を実践している企業が、従業員や一般消費者の健康づくりの世界にどのように入り込んで健康づくりに資するのか、またどのような健康文脈を形成し、その価値を共創し展開させているのか、インタビュー調査を通してそのプロセスを実証的に明らかにする。
著者
新保 麻衣
出版者
東京大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-04-01

肺動脈腫瘍塞栓性微小血管症(PTTM)はがんに随伴する肺動脈塞栓症様の病態で、肺高血圧、右心不全のため短期間で致死的となる疾患である。本邦のがん罹患率は増加しているが治療も進歩し予後改善がみられている一方、PTTMは病態が未解明かつ診断、治療法が未確立であり担がん患者の予後に大きな影響を与えうる。実臨床でも多数の潜在患者が存在する可能性があるが国内外で系統だったエビデンスはほとんどない。本研究ではPTTM症例を前向きに登録し系統的に検査、治療介入を行い解析することで、病態解明、診断法確立と治療戦略開発を行い、診療現場への啓発と予後改善を目指す。
著者
武見 充晃
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

調子の波とも呼ばれる,運動学習過程における連続したミスの発生は単に回避すべき事象なのでしょうか.優れた運動技能を身につけるには,課題の成功に最適な身体動作パターンを理解する必要があります.しかしこの過程では,試行錯誤の帰結として動作のばらつきが大きくなることで,運動課題に連続して失敗しやすくなり得ることが考えられます.本研究では,試行錯誤の帰結として調子の波が生じているという仮説に基づき,運動学習中の連続したミスの発生が技能習得におよぼす正の影響を明らかします.また連続失敗の発生を操作できる神経刺激法を確立して,技能習得を促進できる技術手法を開発します.
著者
橋爪 脩
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

細胞内Mg2+を排出するトランスポーターCNNMの変異体線虫は、腸細胞でのMg2+蓄積によりミトコンドリアの活性酸素種(ROS)が増加し寿命が短くなる。ATPレベルも上昇していたことからミトコンドリアのエネルギー代謝異常が考えられた。Mg2+蓄積はがん悪性化への寄与も示唆されている。そこで、本研究では培養細胞や線虫、マウスを用いて過剰なMg2+によるミトコンドリアでのATPとROS過剰産生のメカニズム、そしてがん悪性化への寄与を明らかにし、Mg2+を排出するトランスポーターであるCNNMが進化的に高度に保存され、細胞内でのMg2+の過剰蓄積を回避する機構が存在する生物学的意義の解明を目指す。
著者
清水 裕也
出版者
帝京大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

今や国民病とも言えるアレルギー性鼻炎や高齢者に多い血管運動性鼻炎は鼻過敏症の代表疾患であり、外界からの刺激に対し鼻閉、鼻汁、くしゃみなどの病的反応が惹起されることが特徴である。この反応には知覚神経を介した鼻粘膜の過剰な応答が関与していると考えられているが、詳細は未解明な点が多い。近年の研究によりTRP(Transient Receptor Potential)チャンネルという体内で刺激センサーとしての役割を持つ分子が鼻腔の知覚神経にも存在することが明らかとなってきた。本研究ではその中でも冷刺激を感知するTRPM8に着目し、TRPM8が正常鼻腔や鼻過敏症でどのような役割を持つか明らかにする。
著者
富田 誠
出版者
東海大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、高度な専門性を持ち、専門領域を超えたコミュニケーションが難しい理系研究者を対象として、領域横断的な研究を進めるための視覚的対話のワークショップのプログラムを開発することを目的とする。このプログラムは、研究者自らが複雑な研究を図解し、図解されたものを用いて対話し、動かし合いを通して、創造的に連携点を見つけ出すことを特徴とする。研究の実施にあたっては、1.視覚的対話の手法の研究者に対する調査、2.WSの実施と分析による創造的連携の理論モデルの構築とツールの開発。3.プログラムの改善とツールと手法の公開 の3つを中心に進める。
著者
堀部 貴紀
出版者
中部大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

耐乾性や高温耐性など多様な環境ストレス耐性と健康機能性を併せ持つ食用サボテンは、 食品としてのみならず、過酷な環境に適応するモデル植物としても大きなポテンシャルを有 している。本研究では、サボテンの環境ストレス耐性をゲノム解読と遺伝子機能解析技術の確立により明らかにする。またメタボローム解析によりサボテンに含まれる特徴的な生体成分の動態を明らかにする。さらに、それらの成果をもとにしてサボテンの機能性や生産性を高める新規栽培方法の検討を行う。
著者
中野 正子
出版者
札幌医科大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では、65歳以上の一般高齢者に対しマインドフルネスに行い、認知機能への影響および血中エクソソームに含まれるmicro RNAの変化を検索する。マインドフルネスは、ボディースキャン・ヨガ・静座瞑想から構成される瞑想法で、認知症発症を抑制することが知られているが、そのメカニズムは明らかとなっていない。本研究によって、マインドフルネスによる認知機能向上とmicro RNAとの関連が証明できれば、エビデンスの確立した認知症予防法として提言できると考えられる。
著者
齊藤 高志
出版者
大阪医科薬科大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-04-01

全身性強皮症は間質性肺炎などを主徴とする自己免疫疾患であり、有効な治療に乏しい難治性の疾患である。脂肪由来間葉系幹細胞 (ASCs) は脂肪組織に豊富に存在し、低侵襲かつ容易に採取可能な幹細胞である。ASCsは抗炎症性作用と免疫抑制作用を示すため、免疫疾患に対する細胞療法として有用である。血液抗凝固薬の低分子量ヘパリン (LMWH) をASCsに作用させると、抗炎症作用がより高くなる。本研究は、「LMWHで活性化させたASCs」を病態モデルマウスに投与し、LMWH活性化ASCsの免疫抑制・組織再生効果を確かめる。