著者
大江 秀樹
出版者
福井大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

下部尿路症状の中で最も生活に支障をきたす症状が夜間頻尿で、高齢者の多くにその症状がある。夜間頻尿の原因としては夜間多尿が最も大きな病因といわれている。われわれの研究室では抗コリン薬が夜間多尿を改善し、尿産生リズムを夜型から昼型へ戻す可能性を報告したが、そのメカニズムは解明できていない。しかし、腎機能や内分泌系への影響は否定的で膀胱自体からの尿が再吸収される可能性が示唆される結果が予備実験から得られた。その機序として、細胞膜を通して水分子を移動させる水チャネル分子であるアクアポリン(AQP)が関与していると考えた。このAQPと膀胱における水吸収との関係性を解明するために本研究を計画した。
著者
鈴木 舞
出版者
東京電機大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2023-04-01

社会の重要課題のひとつである犯罪を事前に予測する事は、古くから試みられ、様々な手法が確立されてきた。近年ではビッグデータや人工知能(AI)を活用した高度な犯罪予測が可能となり、欧米をはじめ日本でも実際の運用段階に至っている。犯罪予測は、安全・安心な社会実現に寄与するとして、人々からの期待も大きいが、様々な課題も指摘されている。本研究の目的は、近時その高度化が進んでいる犯罪予測が、多様な要素の相互作用の中でどのように実施されているのか、そして犯罪予測に関していかなる課題が生じているのかを、科学社会学の観点から考察する事である。
著者
小田 龍聖
出版者
国立研究開発法人森林研究・整備機構
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2023-04-01

都市住民による観光を中心とした森林の活用への期待は大きく、特に森林のキャンプ場としての活用に期待が集まっている。多様化するキャンプ場の需要に合わせ効率的に施設整備を進めるためには、利用者ニーズを把握し、キャンプ場が人々に提供するコンテンツを評価する必要がある。そもそも都市の人々のキャンプ場の利用ニーズはどこにあるのだろうか。本研究は、アンケート調査やインタビュー調査に加えてSNSビックデータを活用し、森林キャンプ場の利用実態や利用者ニーズを経時的、広域的に把握、分析し、今後の森林キャンプ場整備の方向性を示すとともに、SNSによる調査手法の妥当性、有用性について検討する。
著者
武藤 敦子
出版者
名古屋工業大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

企業内で利用されているICカードとリーダーを用いた入退室管理システムから得られる社員の執務室・会議室への入退室履歴データを人の移動履歴データとして利用し、人間行動の定量的分析を行った。分析方法として、「個人への視点」と、「繋がり関係への視点」の2種類を引き続き検討した。「個人への視点」では、これまでの研究において提案した、個人の移動時間のパターンと個人属性との関係性を分析する手法に対し、より分析者が結果の解釈を可能とする可視化手法を提案した。提案手法は、非負値多重行列因子分解とクラスタリングを組み合わせた手法であり、本手法を用いて入退室データから新たな行動パターンの算出に貢献した。当該年度においては、国際会議発表として1件行った。「繋がり関係への視点」としては、これまでに提案してきた会議室ネットワークから算出した社員の活躍評価指標に対し、その物理的意味付けを行った。その結果、企業が判断する活躍者の要素に、会議参加数、会議で関わった人数、管理職との会議割合、部署と役職の多様さが関係していることを統計的に明らかにし、本内容について国内会議発表として1件行った。また、入退室データから各社員の移動に関わる負担度を算出する手法および、移動負担度の高い社員の負荷を軽減できる会議室割当最適化システムを提案し、実際のデータを用いて大幅な移動時間短縮を確認した。当該年度においては、国内会議発表として1件行った。
著者
廣田 雅春
出版者
岡山理科大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

ソーシャルビッグデータを分析することで,実世界のイベントや,人々の興味,観光スポットへのレビューなどを得ることが可能である.また,近年は観光産業が注目を浴びており,その中で個々人に最適な観光情報を提供することは,多様化した旅行形態において重要な課題である.ユーザの明示的な属性,暗黙的な属性,コンテキストは,データの欠損や,そもそもデータとして存在しないなど情報の提供に利用するのは困難な場合がある.そこで,本研究では,ソーシャルビッグデータにおいてそれらを推定する手法の開発,さらにユーザの多様な情報を包括的に考慮して旅行者に観光情報を提供するための技術の開発を目的とする.
著者
菊池 志乃
出版者
名古屋市立大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2023-04-01

認知行動療法(CBT)は、薬剤抵抗性の過敏性腸症候群(IBS)に有効な治療法であるが、医師や臨床心理士といった治療者の不足や、費用負担などの課題から、臨床での普及は進んでいない。本研究の目的は薬剤抵抗性IBSに対する治療者による短時間ガイドを伴う、インターネットを介したCBT(iCBT)プログラムを開発し、その有効性と費用対効果を無作為化比較試験で検証して、IBSに対するCBTの普及に向けた科学的根拠を創出することである。本研究の目標は実臨床におけるIBSに対するCBTの普及と実装であり、薬剤抵抗性IBSの治療選択肢拡大への貢献が期待される。
著者
蓬莱 政
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

研究を開始し、当院外来通院中及び入院となったうつ病患者の同意取得を試みたが、同意を得ることができなかった。その多くはDEX-CRH負荷試験について、ステロイド内服やCRHの静脈内投与に対する恐怖感を訴えてのものであった。加えて新型コロナウイルス感染拡大のため、初診患者、入院患者共に大幅に減少し、対象となる患者自体が減ってしまった。患者、健常者共に現時点での組み入れは極めて困難であり、今後、新型コロナウイルスの感染が落ち着き次第、再度検体収集を試みる予定である。他には気分障害や統合失調症に関する生物学的な研究を複数行った。
著者
佐藤 彰宣
出版者
流通科学大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は、「個人参加型フットサル」を社会学的に検討するものである。これまで社会学では、スポーツなど趣味をきっかけにした「コミュニティ形成」について関心が寄せられ、「社会関係資本」などの視点から研究が行われてきた。だが、特定の人間関係に基づくはずのチームスポーツを、あえて匿名の「個人」のままでプレーする「個人参加型フットサル」という参与形態は、「コミュニティ形成」や「社会関係資本」の視点だけでは説明できない。よって本研究では、「個人参加型フットサル」という形態がなぜ生まれ、都市空間と地域社会のなかでそれぞれどのように実践されているのかについて、実地調査と文献調査から明らかにする。
著者
木村 悠
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-04-01

ナトリウム利尿ペプチドは不全心筋より分泌される抗心不全ホルモンとして知られているが、脂肪組織への作用は明らかではない。当施設の先行研究では、循環不全による組織低温環境やインスリン抵抗性をきたす重症心不全、さらには肥満・糖尿病などの病態に対して、このホルモンがこれまで知られていなかった治療効果(熱産生効果・インスリン抵抗性改善)をもたらす可能性がある。本研究は基礎研究と臨床研究の両面からアプローチし、心臓-脂肪連関という新たな病態概念の確立を目的とする。本研究成果は心不全治療の概念を変え、肥満治療という観点や心不全治療へのResponderを見出すことで新たな治療戦略を提示できるものと考える。
著者
大林 太朗
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究の目的は、関東大震災(1923年)からの復興に向けた日本のスポーツ界の対応を明らかにすることであった。文献資料(文書、雑誌、新聞等)の収集・分析を通して、震災直後に大日本体育協会(現在の日本スポーツ協会・日本オリンピック委員会)が帝都復興院・東京市当局に対して提出した「願書」の内容や、各大学の運動部学生による復興支援活動・チャリティマッチの記録、さらには上野公園における被災者(主に避難民)を対象とした「慰安運動会」の内容と文化的特徴が明らかとなった。
著者
梅本 真吾
出版者
大分大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

好酸球性副鼻腔炎(ECRS)は組織中への著しい好酸球浸潤を特徴とする難治性の副鼻腔炎である。ECRSはステロイド以外の薬物効果が乏しく、手術を行っても高率に再発を来すため、新たな薬物療法の開発が求められている。一方で、内因性カンナビノイドはタイプ2カンナビノイドレセプター(CB2R)を通じて免疫系のバランスをとることが知られており、受容体発現が増強した際に外因性カンナビノイドを投与することで病態の修復を促す可能性が考えられている。本研究では、ECRSにおけるカンナビノイドシステムの寄与について検討することで、カンナビノイドシステムを介したECRSの治療の可能性につき評価する。
著者
池田 知哉
出版者
大阪市立大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-04-01

寒冷暴露(凍死)は特徴的所見に乏しく判定が困難な症例も多い.凍死を示唆する血液検査所見としてケトン体の上昇が報告されているが,低栄養でもケトン体は上昇し,低栄養と寒冷暴露の鑑別に適さず,新しい検査法が求められている.これまで我々は,寒冷暴露時にACTH(adrenocorticotropic hormone)の分泌細胞が出現することを明らかにした.この所見から,副腎皮質におけるコルチゾールが変化することが予測される.本研究では,「寒冷暴露に伴うコルチゾールの病態生理学的意義」を調べ,コルチゾールの動態が寒冷暴露の診断マーカとなり得るか明らかにし,法医学上の凍死診断の一助とすることを目的とした.
著者
大谷 崇仁
出版者
福岡歯科大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

平成31年度は平成30年度までに明らかにした細胞・分子レベルでの高濃度GluOCによる脂肪細胞の細胞死(ネクロトーシス)調節をマウス個体で再現可能かというテーマに挑戦する予定であったが、分子レベルでの思わぬ発見もあり、平成30年度に引き続き、高濃度GluOCが脂肪細胞に与える影響について解析を行った。明らかになった点は大きく2つである。1つ目はGluOCが脂肪分解に大きな役割を果たしているという点である。GluOCはその受容体であるGPRC6Aに結合することで、cAMP-PKA-ERK-CREBシグナルカスケードを活性化させ、脂肪分解の律速酵素として知られるATGL(adipose triglyceride lipase)の発現量を亢進させることは以前明らかにしたが、さらにその他の脂肪分解関連酵素であるペリリピンやHSL(hormone sensitive lipase)のリン酸化を亢進させ、脂肪分解を促進させることを明らかにした。2つ目は高濃度GluOCが脂肪細胞の細胞接着を調節しているという点である。脂肪細胞の細胞膜上には接着分子の1つであるACAM(adipocyte adhesion molecule)という分子が発現しており、これらはhomophilicに脂肪細胞間の接着を調節するのと同時に、脂肪細胞の大きさを調節することが知られている。高濃度GluOCはこのACAMの細胞膜上の発現を亢進させることが分かった。以上の2点から、GluOCは糖代謝のみならず、脂質代謝においても重要な役割を果たし、かつ脂肪細胞間の細胞接着を亢進させることで、脂肪細胞に肥大化しにくい性質を付与する可能性が示唆されたことは、今後の研究の新展開として重要な1年となったと考える。
著者
西山 雄大
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

身体と自己の関係に関する研究は哲学的探求のみならず、神経疾患や精神疾患に伴う身体感覚変容の病理解明や療法応用のためにも発展が望まれる領域である。最近では身体的自己意識研究が加速しており、特に代替物を自身の身体だと感じさせる錯覚実験が主に行われている。しかし、従来の実験はその手続き上の制約により、錯覚の生起過程を検証できず、錯覚強度も弱いという問題がある。本研究ではこの問題に対するひとつの解決策を提案するために、宙吊りの視点だけに自己を感じる『身体不在』体験を生み出す新規実験系を開発し、身体不在のまま体験者が歩行することで生じる感覚を心理・生理・行動の側面から検証・分析する。
著者
橋本 将志
出版者
岡山大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

近年脚光を浴びるようになったがん免疫療法も予後不良な膵がんにおいてはその効果は限定的である.がんウイルス療法は,既存の治療とは異なるメカニズム抗腫瘍効果を発揮し,がん免疫療法との相性がよいと報告されている.我々が開発した腫瘍融解アデノウイルス製剤のテロメライシンは現在臨床試験の段階にあるが,さらにp53がん抑制遺伝子を搭載した,p53発現腫瘍融解アデノウイルス製剤(OBP-702)を開発し,テロメライシンでは効果が不十分であった難治性がんの治療に挑戦している.本研究では,マウス・ヒトの膵がん細胞株を使用し,OBP-702が既存化学療法と比較し免疫学的治療効果を期待できる薬剤であるかを検討する.
著者
宮田 悠
出版者
滋賀医科大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

脳動脈瘤の発生や増大はマクロファージ依存的な慢性炎症により制御されていることはよく知られているが、脳動脈瘤の破裂には脳血管の器質的変化と炎症反応が重要であることが最近の我々の研究から示された (Miyata. J Neurosurg. 2019)。しかしながら、生じうる器質的変化の誘因や破裂に繋がりうる炎症反応の詳細な機構については未解明である。脳動脈瘤が安定した状態を維持する、あるいは破裂に至る変化を生じる機構を解明することは、脳動脈瘤破裂を制御する治療法の開発につながりうる。脳血管壁の器質的変化および破裂と関連する炎症反応の解析を行うことで、脳動脈瘤の破裂を制御する機構を解明する。
著者
大島 健司
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

がん細胞は、自身の生存に有利になるように、正常組織とは全く異なる代謝動態を獲得していることが知られており、がん特異的な代謝経路の同定とそれを標的とした治療法の開発が近年試みられている。我々は中枢神経系でのみ機能が明らかにされていたセリンラセマーゼという代謝酵素が、大腸がんにおいてL-セリンからピルビン酸を産生する新たながん代謝経路を担い、がん細胞の増殖を促進することを明らかにした。そして、セリンラセマーゼ阻害剤が大腸がん細胞の増殖を抑制し、さらには従来の抗癌剤である5-フルオロウラシルとの併用で大腸がん細胞の増殖を顕著に抑制することを明らかにした。
著者
水嶋 好美
出版者
浜松医科大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

この研究は、日本の看護師を対象として、「看護師の共感能力を評価する臨床対人反応性指標(原版)が共感を評価することができているか」を検証することを目的とした。この研究の対象者は、国立大学病院に所属する看護師と看護学研究者であった。分析を行った結果、臨床対人反応性指標は、18項目であり、2つの共感の要素を評価できることが明らかになった。その2つの要素は、患者の視点に立って患者を理解する「視点取得」と如何なる患者も無条件に理解しようとする「無条件の肯定的理解」を評価することが確認された。この共感の指標を用いて、共感を教育していくことで、看護師の共感の能力は向上すると考えられる。
著者
茨木 ひさ子
出版者
東京薬科大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-04-01

皮膚に塗布するmRNAワクチンシステムの基盤技術を創製する。mRNAの角質層および表皮内浸透性と、表皮樹状細胞(ランゲルハンス細胞)への取り込みから細胞質までの移行に優れる細胞内動態特性を兼ね備えた新規ハイブリッド脂質ナノ粒子を作製し、皮膚に塗るだけで細胞性免疫を誘導可能なmRNAワクチンシステムの基盤構築を目指す。角質細胞間脂質と樹状細胞に高親和性を示す生体脂質成分同定し、それらを配合したmRNA内封ハイブリッド脂質ナノ粒子をマイクロ流路法により作製し、その皮膚塗布後の角質層及び表皮内浸透性、樹状細胞指向性、標的タンパク質発現効果、免疫誘導効果をin vivo実験で検証する。