著者
辻 晶子
出版者
大阪電気通信大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、中世の天台寺院で稚児を対象にして行われた密教儀礼「児灌頂」に関する総体的考究を試みるものである。児灌頂とは、稚児を観音菩薩の化身へと変化させ聖性を発現させることを目的として中世の天台僧が修した儀礼である。今東光『稚児』(1936)がきっかけとなり一般に知られ、近年では稚児のセクシュアリティを強調する形で拡大されている。申請者はこれまで児灌頂の諸本研究に取り組み、テキストに則して儀礼を分析することで「児灌頂とは何か」という根本的な問い対する答えを提示してきた。これを承けて本研究では、近世以前の談義所寺院における児灌頂伝本の書写活動に焦点を当て、児灌頂儀礼の生成と流伝の解明を目指す。
著者
川北 晃子
出版者
長崎大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

人工呼吸器関連肺炎( VAP)は気管内挿管・人工呼吸器管理の患者に、人工呼吸開始後48時間以降に新たに発症した院内肺炎である。VAPを口腔ケアにより予防するために、さまざまな取り組みがなされているが、これまでの口腔ケアに加えてポビドンヨードの局所投与を行うことにより口腔咽頭の細菌数をどの程度の時間減少させることができるかをreal time PCR法を用いて直接測定する。その結果をもとに新たな口腔ケア方法を確立し実際にVAPの頻度を減少させることができるかを明らかにする。
著者
堀内 元
出版者
関西大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

野球のバッティング動作では、腹斜筋の肉離れを受傷することが多い。加えて、腹斜筋の肉離れのほとんどが投手側であることから、野球のバッティング動作中に負う腹斜筋の肉離れには共通した受傷メカニズムが存在することが推察される。また、投手側腹斜筋の肉離れは、ボールを正確にインパクトできなかったときに受傷する。このことから、フォロースルー局面においてバットを減速させる際に体幹周辺筋群が伸張性収縮することによって、肉離れが生じる可能性が考えられる。本研究では、フォロースルー局面に着目して、野球のバッティング動作中に負う投手側腹斜筋における肉離れの受傷メカニズムの解明に寄与する基礎的資料の獲得を目指す。
著者
斎藤 有吾
出版者
新潟大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

近年、推し進められている高等教育改革において、「学習成果の可視化」は重要なキーワードである。学習成果とは、大学での学習の結果、得た知識、技術、態度などの成果を指す。そしてその可視化が多くの高等教育機関において精力的に取り組まれている。しかし、多くの大学で実施されている方法は、ディプロマ・ポリシーに対応するような評価であるとは言い難い。そこで、医療系単科大学の藍野大学を主たるフィールドとして、上記の問題を乗り越えるための学習成果の測定手段を提案し、その信頼性・妥当性・実行可能性を検討し、さらに他分野への適用可能性を検討する。
著者
渡邉 公太
出版者
帝京大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、戦間期日本の国際連盟外交の実態を、外務省内の「連盟派」と呼ばれた外交官たちの活動を通じて明らかにするものである。国際法・条約解釈に関し、「連盟派」たちはいかにして日本の国際協調と満蒙権益の維持という重大な外交目標を両立しようとしたのか。本研究はこれまで本格的な検証がなされることのなかった「連盟派」を、国際情勢の変化にいかなる法理論でもって対応しようとしたのか考察し、当該時期の日本の「国際協調」の実態をとらえなおす。
著者
保坂 勇志
出版者
国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

EUVレジスト性能を電子線(EB)によって評価する手法について研究を行った。EUV照射時の特徴的な初期電子分布を再現するため、100 eV程度の超低エネルギーEB照射装置の開発を行った。超低エネルギーEBを照射したサンプル表面ではナノメートルオーダーの形状変化が確認された。また、レジストへの短パルスEUV照射試験を行った。ピコ秒EUV照射ではレジストの高感度化が確認され、X線光電子分光により照射後の化学構造の違いも観測されている。他にEB描画時の後方散乱の影響について電子散乱シミュレーションによる検討を行った。線幅100 nm以上ではEB描画の結果からEUV描画感度予測が可能となった。
著者
トウ ソウキュウ
出版者
信州大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

林業の成長産業化のため、森林整備の促進により森林資源の循環利用と地球温暖化対策のために広葉樹林も含めた正確な森林資源情報が求められている。森林調査をせずに、広域の森林において樹種別の本数や単木材積を精度よく把握できれば、森林管理が格段に効率化するだけではなく、地球環境モニタリングや再生可能エネルギー資源利用に極めて有効である。本研究は、ドローンレーザデータとUAVカメラ画像の組み合わせから樹種別の立木位置、樹高、胸高直径と材積を算出することができ、林層構造が複雑な広葉樹林にも適用できる高精度な森林資源解析技術を開発し、広葉樹資源の有効活用に貢献することを目指す。
著者
佐野 徳隆
出版者
京都大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2023-04-01

下垂体疾患(下垂体腫瘍・ラトケ嚢胞・下垂体の炎症性疾患)で手術を受けた患者の、病変部の検体および偶発的に採取された正常下垂体(特に前葉)組織を用いて、①下垂体組織幹細胞の染色と分離、②分離した幹細胞の培養、③培養、分化させた細胞のマウスへの移植を順次行うことで、将来的に歯下垂体機能低下症に対する自家細胞移植治療法の開発に寄与することを目標としている。
著者
小西 勇輝
出版者
産業医科大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-04-01

注意欠如多動性障害(以下、ADHD)は近年一般社会に広く知られるようになり、成人になってはじめてADHDと診断される事例が増えている。ADHDは、不注意、多動性および衝動性の3主症状を認める疾患であり、発達障害の中で唯一薬物療法が奏功する。本邦では服薬下の自動車運転について罰則の対象となっており、添付文章において運転は禁止されている。本研究の目的は、ドライビングシミュレータを用いて、疾患および薬剤が運転に与える影響の要因を分析することである。本研究成果により、薬剤と運転の矛盾が解消され、ADHD患者が根拠のない社会的制限を受けることなく、安心して薬物療法を受けることができる社会を目指す。
著者
高木 駿
出版者
北九州市立大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

近代美学では、「美」が「善」から独立したことに伴い、「悪」と混同されてきた「醜」も、独立した一つの概念と見なされるようになった。現代に入ると、醜さは、崇高との強い連関が発見され、美の範疇では理解不可能な芸術を説明するための美的範疇として定着した。しかし、醜さは、崇高と関係しない場合もあり、芸術にのみ限定されるものでもなく、特に「自然の醜さ」が未解明のままに残されている。本研究は、「自然の醜さ」の解明を行う。そのために、 カントの美学理論を用いる。カントの理論は、自然を対象とする理論であると共に、不快の感情に基づき、崇高と関わる醜さをも含めた様々な種類の醜さを説明できるからである。
著者
江原 慶
出版者
大分大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-04-01

近年,財政政策の目標を完全雇用とし,それに必要な資金を中央銀行と中央政府とが一体となって弾力的に供給しつつ,マイルドなインフレを達成しようとする「現代貨幣理論(MMT)」が注目を浴びている。MMTの背景に,ケインズ的な表券貨幣論があることはよく知られるが,ケインズ派と対立する貨幣論をもつとされる,マルクス経済学者の間でもMMTへの関心が高まっている。MMTが,貨幣論の立場の違いを 超えて一般的に成立するのか,検討する必要がある。そのため,本研究では,ケインズ派貨幣論・金融論との比較検討を行い,マルクス派MMTが実現可能かを検討する。それにより貨幣論史研究の成果が現代的な政策論議へと還元される。
著者
張 慶在
出版者
広島大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究では、東アジアの国や地域において(旧)軍港都市の観光地化が進められるプロセスについて、どのような社会・政治・文化の文脈が絡み合っているのかを明らかにする。具体的には、鎮守府が置かれ現在日本遺産となっている日本の旧軍港4都市(横須賀、舞鶴、呉、佐世保)、日本時代に開発され現在韓国海軍の母港となっている韓国の鎮海、日本時代から現在まで台湾海軍の中心となっている台湾の高雄において、軍港という表象が社会・文化・政治の文脈と如何に絡み合い、特に2000年代以降の地域の観光振興(観光地化)と如何に関連しているかについて分析・考察する。
著者
浦木 隆太
出版者
国立研究開発法人国立国際医療研究センター
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

持続感染から、慢性肝炎、さらには肝癌を引き起こすB型肝炎ウイルス(HBV)は、世界中で20億人にものぼる感染者がおり、公衆衛生上重要な感染症である。しかし、HBV持続感染が成立する機序や持続感染が維持される機序に関して、免疫学的に十分な解析は行われておらず、様々な課題が残されている。HBV持続感染時、宿主では抗ウイルス応答が活性化されていないことから、そのような応答を抑制する機序があると予測される。そこで、本研究課題では、免疫抑制能を有する制御性T細胞および制御性T細胞と相互作用する免疫細胞に焦点を当て、ウイルス学・免疫学的視点からHBV持続感染の成立および維持に重要な機序の解明を目指す。
著者
村田 大紀
出版者
佐賀大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

靭帯断裂に対する再生医療の応用として近年,in vitroにおいて作製した靭帯様構造物を移植する方法が,実験的に試されている。しかし,靭帯様構造物には人工材料が用いられており,長期にわたる異物反応や自己組織化の阻害など,そこには多くの問題が存在する。そこで申請者はまず,人工材料を用いることなく,これまで開発に携わってきたバイオ3Dプリンタを用いることで,iPS細胞由来間葉系幹細胞からなる,未分化な立体細胞構造体を作製することにした。その後,独自に開発した自動伸展培養容器を用いて,in vitroで靭帯組織へと分化誘導し,靭帯組織体を創出することで,新たな靭帯再建技術の確立を目指すこととした。
著者
小栗 寛史
出版者
岡山大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

国際法学においては、いわゆる「長い19世紀」を通して法実証主義が台頭し、それ以前に優勢であった自然国際法論に代替したと評価されてきた。しかしながら、同時期に上梓された文献を参照する限り、実際には近代国際法完成期及び戦間期を通して自然国際法論を採用する論者は少なくなかったことが判明する。このような研究状況に鑑み、本研究は、これまで十分に検討されてこなかった近代国際法完成期及びその後の戦間期における自然国際法論の内実を解明し、それらが国際法史においてどのような意味をもった営みであったのかという点を考察するものである。