著者
安藤 章 森川 高行 三輪 富生 山本 俊行
出版者
日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.907-912, 2007-10-25
参考文献数
11
被引用文献数
5

ロードプライシングは、渋滞問題を解決する最も有効な政策のひとつと考えられているが、合意形成の困難さゆえ、国内での導入実績は皆無であるし、また海外においてもロンドン、シンガポールのように限定的なものになっている。筆者らは、受容性の高い新型ロードプライシングとして駐車デポジットシステム(PDS)を提案している。従来のロードプライシングとPDSの需要面の相違を把握するため、2006年秋に名古屋都心来訪者を対象としたアンケート調査を実施した。本研究は、このデータを用いて、ロードプライシングに対する地域住民の意識構造を解明するとともに、賛成派・反対派の意識構造の相違を明確にすることで、合意形成戦略の視点を明らかにした。最後に、この意識構造方程式を用いて、ロードプライシングと比較した場合のPDSの有効性を検証した。
著者
渡部 大輔
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.631-636, 2010-10-25
参考文献数
23
被引用文献数
1

本研究では、古代において国府と京を結んでいた七道駅路を中心として、古代物流ネットワークの形態解析と物流システムの移動利便性として移動距離や日数、運賃との関係について分析した。七道駅路ネットワークを構築した上で、本路・支路によって結ばれている国府の隣接グラフを構築した。そして、最小木と重複しない隣接グラフの辺は、地方と京をなるべく短い距離で結ぶように、放射・縦断方向に長い辺が構築されていることが明らかになった。七道駅路を用いた物流システムについて、運賃は距離と線形に比例する関係が見られ、往復日数の方が距離よりも運賃と比例関係が強いことが明らかになった。海上輸送は、陸上輸送と比べて、所要日数が少なく、運賃も大幅に低いことが明らかになった。このように、地形の起伏や広大な河川、海上輸送を含むかどうかが、移動に大きく影響していることが明らかになった。現在価値への換算すると、現代のトラック運賃と比べて、遠距離に行くほど差が広がっていることが明らかになった。このように、古代の物流においては、現代より日数、費用ともに大きくコストをかけて運ばれていたことが定量的に明らかになった。
著者
片山 健介 大西 隆 城所 哲夫 瀬田 史彦
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.817-822, 2003-10-25
被引用文献数
2

本論文では、地域統合の進展に伴う空間計画制度の変容に関する研究のケーススタディとして、イギリスの空間計画制度におけるEUの空間政策・計画の影響について論じている。はじめに、EUレベルでの地域政策・空間計画の展開について整理している。第3章では、(1)主としてEU地域政策の影響によるリージョナリズムによって、地域レベルの組織が設立されたこと、(2)EUレベルの政策・計画がRPGにおいて考慮されていること、を述べている。第4章では、National Planという考え方が、ESDPの最終合意の後に現れてきていることを示している。結論として、EUレベルと地域レベルの重要性が高まるにつれて、国レベルの計画は、地域計画の枠組みとしての機能とともに、EUレベルと地域・地方レベルの「導管」としての役割を求められている。
著者
平山 豪 中井 検裕 中西 正彦
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.595-600, 2003-10-25
被引用文献数
6

昨今、地球温暖化をはじめとする地球規模の環境問題が大きく取り上げられてきた。その中でも多くの人が住む都市の環境悪化が課題として注目されている。都市の環境悪化の例を挙げればヒートアイランド現象・大気汚染・ごみ問題・都市型洪水・エネルギー問題等々きりが無く、またこれらの原因は非常に多岐にわたり、その解決は困難を極めている。その中でも都市内における緑の喪失は多くの問題の原因であり、いかに緑地を確保していくかが大きな課題である。しかし、高密度に利用されている現在の都市においては新たに緑地を創出する為の土地はほとんど無い。そのため、新たに新規緑地を創出できる場としての屋上が注目され始めている。この様な背景を受け、行政は屋上緑化推進のために様々な施策を設けているがそれらがどの程度の効果又は害をもたらすか、屋上緑化推進の目的を本当に果たしているかは未だ明確に把握されていない。本論文では屋上緑化を義務化した屋上緑化義務条例と屋上緑化面積と引き換えに容積率を与える容積率割増制度を対象として取り上げる。 また、既存研究によると屋上緑化の経済的な効果にのみ着目すれば断熱材の利用や配色の工夫など代替的な方法でより安く・効果的な方法がある事が示され、屋上緑化の有効性が疑問視されている。しかしそれらの屋上緑化の評価には、本来緑地が持つ安らぎ・豊かさ感といった生理・心理的な効果は考慮されていない。ゆえにこれからの屋上緑化施策を考えるにはこの生理・心理面の効果を考慮に入れた経済的評価が必要であると思われる。 東京全体で屋上を緑化できる平坦屋根面積は屋上開発研究会によると約2000haと港区に匹敵する面積であり、その中でも宅地の占める割合が大きく、住宅の屋上緑化は東京における今後の緑地増加に対して大きな役割を果たすと思われる。よってその効用を明らかにする事は重要である。 そこで本研究では住宅の中でも、今後都心部おいて増加が予想され、しかも緑化義務条例・容積率割増制度の対象となり易い集合住宅に着目し、屋上緑化のなされた集合住宅の住民・周辺住民を対象とした仮想市場法(CVM)により生理・心理面を含めた屋上緑化による効用を定量化し、この結果を踏まえた上で、現在行政が行っている2つの屋上緑化推進施策と両制度併用時の評価を行なう事を目的とする。 結果として、まずCVMにより定量的に把握した。住民の平均WTPは679円・周辺住民の平均WTPは179円であった(抵抗回答は除く)。また分析により住民が利用可能な屋上緑地の方がその効用が高まり効果的であり、屋上緑化が効果的な地域は市街地等緑の不足が問題視されている地域であると考えられる。 次にそれに基づいて施策への評価を行った。「屋上緑化の義務化」制度(緑化率20%)にはある程度の妥当性が認められたが、指定容積率による段階的な緑化率の設定等改善の可能性もあると考えられる。「屋上緑化に対する容積率の割増」制度(緑化率50%、容積率50%増)は建物経営者にとって魅力的な制度となっており多くの適用が予想されるが、その結果として住民・周辺住民にとってマイナスの効果を及ぼす危険性があると思われ、高い指定容積率の建物に絞った適用が考えられる。また義務化制度のある東京都において容積率割増制度(緑化率30%、容積率30%増)を併用することは住民・周辺住民にとってマイナスの効用しか与えなく、さらには本来の屋上緑化推進という目的を果たし切れていないと思われる。
著者
郷内 吉瑞 大貝 彰 鵤 心治 加藤 孝明 日高 圭一郎 村上 正浩 渡辺 公次郎
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.34-40, 2008-10-15
被引用文献数
1

本研究は、防災まちづくりを支援するための技術開発として、地域防災力の評価手法の開発を試みるものである。はじめに、既往研究と防災に関する専門家へのヒアリング調査を基に、地域の災害時対応能力を構成すると考えられる評価の視点と項目、指標を設定した。その後、評価構造の階層をISM(Interpretive Structural Modeling)を用いて定量的に構築した。更にAHP(Analysis Hierarchy Process)を用いて、各評価項目の重み付けを行い、地域の災害時対応能力評価のための階層構造を構築した。加えて、DEMATEL法(Decision Making Trial and Evaluation Laboratory)を用いて、地域の災害時対応能力の基礎となる評価項目間の影響関係とその度合を明らかにした。そして、愛知県豊橋市の自治会を対象として、試験的に開発した手法を適用し、この手法により、地域の災害時対応能力の定量的評価が可能であることを確認した。
著者
村上 尚 村橋 正武
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.757-762, 2003-10-25
被引用文献数
3

現行の斜線制限等に代表される形態規制によって導かれる市街地景観は混乱している。このような市街地景観の現状に対して街並み誘導型地区計画は全国一律の形態規制を地域の実情に即した規制に置き換え、一定の市街地環境を確保しつつ、土地の有効利用の促進に併せて整った街並みの形成を誘導することが可能となった制度であり、その効果が期待される。 そこで本研究では、本制度が導入された事例を対象として制度導入の背景・目的、計画内容を分析し、制度の運用実態を明らかにする。次に適用地区における更新建築物、敷地状況より景観形成への実効性を分析し、制度の適用効果を明らかにし、本制度の効果と課題を明らかにすることを目的としている。
著者
有留 健太朗 有田 智一 藤井 さやか 大村 謙二郎
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.709-714, 2010-10-25

本研究では、「用途」に係る紛争に関して議会等への請願・陳情に至った事例の全国データを対象として、用途に係る問題の発生構造を把握し、用途がもたらす負の外部性の解決に向けた調整の実態について明らかにすることを目的とする。本研究で得られた知見は以下の通りである。まず、用途に関する負の外部性の評価項目として、(1)交通、(2)安全、(3)防火、(4)衛生、(5)時間、(6)上位計画との不適合、(7)既存施設・活動との親和性、(8)地域環境特性の変容、の8分野が見出された。用途地域制との関係性については、(1)現行用途規制で規定がない(墓地等)、(2)現行用途規制下での用途の定義が曖昧あるいは時代に適合していない(スーパー銭湯等)、(3)現行用途規制で対応できない詳細項目による問題の発生(営業時間、施設管理等)、(4)用途規制上許容されているが問題が発生(ワンルームマンション)、の4類型が主に見出された。ケーススタディより、負の外部性の解決に向けた調整は、基本的に民民間の任意交渉で行われる場合が多く、建築主の利益に関わる事項は変更等が困難である実態が明らかになった。
著者
村尾 俊道 藤井 聡 中川 大 松中 亮治 大庭 哲治
出版者
日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.103-108, 2009-10-25
参考文献数
12
被引用文献数
1

本研究では、京都都市圏での通勤交通における課題を明らかにするとともに、京都府での実際のプロジェクトを紹介することを通じ、職場MMの実行過程に着目し成功要因や課題を整理する。その結果、実施に至る準備段階においての関係者間の合意、組織の意思形成が重要であることを明らかにするとともに職場MM成功のための知見を提供した。これは、今後、職場MMを他地域で展開される際に極めて有益な知見となる。
著者
平岡 直樹 佐々木 邦博 伊藤 精晤
出版者
日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.331-336, 1999-10-15
参考文献数
30
被引用文献数
2

本著作物の著作権は(社)日本都市計画学会に帰属します。本著作物は著作者である日本都市計画学会の許可のもとに掲載するものです。ご利用に当たっては「著作権法」に従うことをお願いいたします。The aime of this paper is to reveal the historical transition of the planning thought on parks and avenues of Brussels, the capital of Belgium, and to clarify how it had been affected by the Haussmann's projected transformation of Paris. We analysed two pairs Of projects late in the 19th century. At the mid-century, the thougt of planning valued the aesthetics and city beauty- At the end of the century, parks and parkways system developed as the method to connect with important institutions and areas each other. The influence of Paris was not only simply copying Of the planning, but stimulated by social results and effect on upsurge of national prestige, in consequence of construction of magnificent parks and parkways.
著者
谷口 守 松中 亮治 平野 全宏
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.121-126, 2008-10-15
被引用文献数
8 3

自動車利用を原因とするCO2削減のため、都市のコンパクト化の必要性が指摘されている。しかし、マクロなレベルでは人口高密化の効果は検証されているが、「串とお団子」などの都市構造誘導策自体によるCO2削減効果は統計的に検証されていない。本論文では1987~2005年の4時点における全国38都市における居住者一人当たりの自動車CO2排出量を実際の居住者の交通行動データに基づいて算出し、その結果に対して簡便なモデル構築を通じて都市構造自体が自動車CO2排出に及ぼす影響を独自に抽出した。分析の結果、我が国の都市における一人当たり自動車CO2排出量は地方都市を中心に時系列的に増大していることが示された。また、都市構造パターンに応じて自動車CO2排出量に有意な差があることが明らかとなり、高密化策ほどではないが都市構造誘導策もその有効性が統計的に初めて検証された。