著者
小西 友彦 赤木 浩一 畑野 和広
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.266-271, 2008-08-30 (Released:2008-09-11)
参考文献数
13
被引用文献数
3 5

LC/MS/MSによるヒト血清・尿中のヒヨスチアミンおよびスコポラミンの分析法について検討した.LC条件はODSカラムを用いて移動相に陽イオン分析用イオンペア試薬であるIPCC-MS3を添加し水-メタノール系でグラジエント分析した.イオン化はエレクトロスプレーイオン化ポジティブモードで行った.試料の前処理にはOasis HLBカートリッジおよびPSAカートリッジを用いた.血清・尿にヒヨスチアミンおよびスコポラミンを試料中濃度として0.2および10 ng/mLとなるように添加した場合の回収率は86.0~105%で,検出限界はいずれも0.02 ng/mLであった.本法を用いてチョウセンアサガオの喫食による中毒患者の血清4検体および尿3検体について分析した結果,血清からヒヨスチアミンおよびスコポラミンが0.45~3.5 ng/mL, 尿から170~670 ng/mLの範囲ですべての検体から検出された.
著者
畑野 和広
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.1-6, 2003-02-25 (Released:2009-01-21)
参考文献数
20
被引用文献数
17 15

LC/MS/MSによる食肉中のペニシリン系抗生物質(アンピシリン,ペニシリンG, ペニシリンV, オキサシリンおよびクロキサシリン)の迅速同時定量法について検討した.イオン化はエレクトロスプレーイオン化法を用いネガティブモードで行った.試料を蒸留水で抽出しC18カートリッジによるクリーンアップ後フェネチシリンを内部標準として添加した.牛,豚および鶏の筋肉,肝臓および腎臓に各薬剤を 10~250 ng/g 添加した場合の回収率は 77.3~99.8% であった.各薬剤の検出限界は筋肉および腎臓でアンピシリンが 6 ng/g, ペニシリンGおよびペニシリンVが 2 ng/g, オキサシリンおよびクロキサシリンが 4 ng/g, 肝臓でそれぞれ 15, 5 および 10 ng/g であった.本法を用いて筋肉23検体,肝臓14検体および腎臓22検体について分析したが,いずれの薬剤も検出されなかった.
著者
只野 敬子 安田 和男 牛山 博文 二島 太一郎
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.402-407_1, 1991-10-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
17
被引用文献数
2

健康食品として市販されているカキエキス錠剤について, マウスを用いる公定法により麻痺性貝毒 (Paralytic Shellfish Poison: PSP) 試験を行った. この結果, 17試料中11試料から 3.9~12.5MU/g のマウス毒性が認あられた. しかし, TLC法, けい光強度法及びHPLC法ではPSPは検出されなかった. そこでマウスの致死原因を検討した結果, 錠剤の成形剤の一つとして使用されている炭酸カルシウムがPSP抽出操作で用いる塩酸により, 塩化カルシウムに変換し毒性を示すものと考えられた. そこで塩酸の代わりに, 硫酸, クエン酸, リン酸等を使用したところ, いずれの場合もカルシウムの影響を受けずにPSPの抽出ができることが分かった.
著者
鈴木 敏之
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.117-131, 2016-10-25 (Released:2016-10-26)
参考文献数
84
被引用文献数
2 4
著者
赤木 浩一 畑野 和広
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.46-50, 2006-04-25 (Released:2008-08-04)
参考文献数
5
被引用文献数
20 23

LC/MS/MSを用いて,フグ組織およびヒト血清・尿中のテトロドトキシン(TTX)の迅速分析法を開発した.試料を2%酢酸で抽出し,フグ組織については水で希釈し,ヒト血清および尿については分子量分画5,000の遠心フィルターでろ過後,メタクリレート-スチレンジビニルベンゼンカートリッジを用いて精製した.フグ組織にTTXを0.1 mg/gと1 mg/g添加した場合の回収率は79∼90%,ヒト血清および尿に0.5 ng/mLと5 ng/mL添加した場合の回収率は93∼101%であった.検出限界は,フグ組織では0.01 mg/g,ヒト血清および尿では0.1 ng/mLであった.本法を用いて市販のフグの筋肉・皮・肝臓計30検体,フグ中毒による患者の血清7検体,尿5検体について分析した結果,すべての検体からそれぞれ0.04∼140 g/g,0.9∼1.8 ng/mLおよび15∼150 ng/mLの範囲でテトロドトキシンが検出された.
著者
吹譯 友秀 長谷川 貴志 高橋 和長 西條 雅明 浜名 正徳
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.94-102, 2014-04-25 (Released:2014-07-02)
参考文献数
10
被引用文献数
1 3

超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)による健康食品中のスタチン12成分の一斉分析法を構築した.抽出は抽出溶媒として50%(v/v)メタノールを用い,超音波抽出法で行った.精製はOasis MAXミニカラムを使用し,溶出溶媒としてメタノールおよび0.2%(v/v)リン酸含有メタノールを用いた.UPLC分析のカラムはACQUITY UPLC BEH C18 を用い,0.2%(v/v)リン酸水溶液 – アセトニトリルのグラジエントで分析を行った.添加回収試験の結果,回収率は89.2~100.9%,併行精度と室内再現性は7%以下であり良好な結果を示した.本法を市販の健康食品24製品に適用した結果,ロバスタチンが最大4.85 mg/ 包,ロバスタチン酸が最大1.28 mg/ カプセル検出された.他の成分は検出されなかった.1製品について,製品表示どおりに摂取するとロバスタチンの1日摂取量が6.74 mgとなった.当該製品はロバスタチンの1日最小薬用量10 mgの1/2を超えて摂取することになることから,当該製品を摂取することによる健康への影響が懸念される.
著者
渡邊 裕子 赤星 千絵 関戸 晴子 田中 幸生 田中 和子 下条 直樹
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.98-104, 2012-04-25 (Released:2012-05-19)
参考文献数
21
被引用文献数
2 3

全卵・卵白・卵黄を用いた菓子・肉団子・パスタ・プリンモデル食品を作製し,調理による卵タンパク質の検出値の変化を,抽出液にトリス塩酸緩衝液を用いたELISAキットにより測定した.菓子,肉団子では揚調理が最も低下し,肉団子はレトルト処理によりオボアルブミン(OVA)は検出限界以下(<1 μg/g)となり,オボムコイド(OVM)も最も低下した.ゆえに,調理温度とともに均一な加熱処理が加わる調理方法が卵タンパク質の検出に影響した.また,卵黄使用の肉団子レトルト処理とパスタでは,いずれの卵タンパク質も6 μg/g以下となり,さらに患者血清中のIgE抗体によるウエスタンブロット法では,OVA,OVMは検出されなかった.一方,抽出液に可溶化剤を用いたELISAキットでは,前述のキットに比べ定量値が上がり,加熱処理したタンパク質が検出された.
著者
高橋 紀代子 稲垣 洋子 戸田 和子 藤原 邦達
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.33-37, 1965

O社製ガス熱蔵庫53-010型につき, 格納試料中の細菌の消長を試料の容量, およびその他各種の要因について検討し, つぎの結論を得た.<BR>1. 格納する試料の容量によって菌の死滅時期は異なる.<BR>2. 大容量の場合, 最初まず菌は増殖を示し (格納後点火された場合1時間に約5倍), 以後次第に死滅の経過をとる.<BR>3. 牛乳中の生菌数についても同様である.<BR>4. ガス供給停止の時期によっては熱蔵庫はむしろフ卵器ようの作用を示す.<BR>したがってなお食品衛生学的に問題が残されており, 今後の改良が望まれる. 現在の型式による場合一般に食品格納と点火の時期, 食品の取りだし時期ならびに熱供給の停止時期について十分注意する必要がある.
著者
小西 典子 尾畑 浩魅 甲斐 明美 大塚 佳代子 西川 禎一 寺嶋 淳 工藤 由起子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.161-166, 2018-08-25 (Released:2018-08-30)
参考文献数
29
被引用文献数
2

腸管毒素原性大腸菌(ETEC)は,発展途上国において一般的な病原体として知られており,汚染した野菜や水を介して食中毒を引き起こす.また,ETECは,先進国でも食中毒を引き起こすが,その原因食品はしばしば不明である.そこで,食中毒統計を基に日本で発生したETEC食中毒事例を分析した.その結果,野菜および井戸水が原因食品の50%および22.2%を占めた.これら主な原因食品は発展途上国の場合と同様であった.また,ETECの血清群も分析され,血清群O6,O25,O27,O148,O153,O159およびO169が主要7血清群であった.ETECの代表的な血清群O148による食中毒発生事例について,その食品での検査法を中心に詳細に検討した結果,二段階増菌法および耐熱性エンテロトキシン遺伝子を対象としたリアルタイムPCR法によって本菌が効率的にカットネギから検出された.本研究では,日本でのETEC食中毒の原因食品および主要O血清群が明らかになり,ETECの国内環境での生存が示唆された.また,食中毒事例での原因食品究明において効果的な検出法が示された.
著者
久保田 晶子 岡部 亮 柿本 洋一郎 根本 了 青栁 光敏
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.167-173, 2018-08-25 (Released:2018-08-30)
参考文献数
8

畜産物中のヘキサジノン分析法として,試料からヘキサジノン,代謝物B,代謝物Cおよび代謝物Fをn-ヘキサン存在下アセトニトリルで抽出し,トリメチルアミノプロピルシリル化シリカゲル/エチレンジアミン-N-プロピルシリル化シリカゲル積層ミニカラムで精製した後,LC-MS/MSで定量および確認する方法を開発した.開発した分析法を用いて,牛の筋肉,脂肪,肝臓および牛乳の4畜産物に対し,各化合物を残留基準値濃度および定量下限値濃度(0.0025 mg/kg)で添加し,回収試験を行った結果,真度85.6~96.0%,併行精度0.8~4.9%の良好な結果が得られた.これらの結果から,本法は畜産物中のヘキサジノン分析法として有用と考えられた.
著者
寺井 朗子 萩野 賀世 浅倉 弘幸 大貝 真実 柳原 碧 木村 圭介 田中 智哉 觀 公子 中村 耕 荒金 眞佐子 中野 久子 門間 公夫 笹本 剛生
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.174-182, 2018-08-25 (Released:2018-08-30)
参考文献数
17
被引用文献数
1

イヌサフラン(Colchicum autumnale)は,ヨーロッパから北アフリカ原産の多年草で有毒植物である.食用であるギョウジャニンニクなどと外観が類似しているため,誤食による食中毒が発生している.形態観察や有毒成分の検出が困難な少量の試料からでも,イヌサフランであることを迅速に鑑別することを目的として,PCR法を検討した.イヌサフランのリボソームDNA中のinternal transcribed spacer (ITS) 領域をPCRにより特異的に増幅するプライマー対を新規に作製した.イヌサフラン9試料および48種類の農作物等から抽出したDNAを用いて,今回作製したプライマー対によるPCRを行った結果,イヌサフランのみを特異的に検出し,また,調理および人工胃液による消化を受けた試料についても検出可能であった.本PCR法は,イヌサフランに特異性が高く,迅速な鑑別に有用であることが確認された.
著者
大谷 陽範 田村 康宏 馬場 糸子 林 真輝 森岡 みほ子 新藤 哲也 橋本 常生
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.183-186, 2018-08-25 (Released:2018-08-30)
参考文献数
10
被引用文献数
2

魚類中PCBsの簡易かつ迅速なモニタリング分析を目的に,高速溶媒抽出装置(ASE)およびGC-MS/MSを用いた分析法を検討した.測定対象は3~7塩化PCBsとし,試料を抽出温度125°C,抽出溶媒n-ヘキサンでASEにて抽出の後,硝酸銀シリカゲル/硫酸シリカゲル積層カラムで精製し,GC-MS/MSで測定することで,簡易で迅速に分析を行うことができた.定量下限は総PCBsで0.78 μg/kgであった.スズキ,サバ,ブリ,サケ,サンマおよびイワシを対象に5並行の添加回収試験を行った結果,総PCBsの回収率は91–108%,変動係数は1∼3%であった.
著者
横関 俊昭 土屋 仁 藤田 和弘
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.187-191, 2018-08-25 (Released:2018-08-30)
参考文献数
14

穀類中に存在するアクリルアミドの前駆体である遊離アスパラギンをダンシル誘導体化後,HPLC-UVで測定する方法を評価するため,9試験室による試験室間共同試験を行った.試料には,遊離アスパラギンを含有しているうるち玄米粉,コーンフラワー,小麦強力粉,小麦全粒粉,ライ麦粉の5種類を用い,各試験室2回の併行測定とした.試験の結果,併行相対標準偏差および室間相対標準偏差はそれぞれ,0.5~2.2%および2.3~5.9%であり,HorRat値は0.4~0.6とCodex委員会が定める性能基準の2以下であったことから,本法の有効性が示唆された.
著者
足立 透 田中 彰 山羽 力
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.120-126, 1979-04-05 (Released:2010-03-01)
参考文献数
8
被引用文献数
1

35S-オクタデシル硫酸ナトリウムをラットに経口投与した後, 吸収, 排せつ, 体内分布ならびに尿中代謝産物の検討を行った.1) 経口投与した35S-C18ASは24時間以内に投与した35Sの約93%が尿中に, 2%程度が糞中にそれぞれ排せつされた. 一方, 臓器内への35Sの取り込みは少なく, 特に親和性のある臓器は認められなかった. したがって, 本化合物は吸収, 排せつが速く, 体内蓄積性の少ないものと思われる.2) 投与した35S-C18ASは生体内で代謝されて最終的には大部分がBA 4-Sとして, また一部が加水分解された無機硫酸が少量尿中に排せつされた.3) 尿中の主代謝物はDewex-1カラムクロマトグラフィーで分離した後, TLC, GLC, GC-MS並びに逆同位体希釈分析などから, BA 4-Sと同定した.
著者
梶本 五郎 笠村 貴美子 前場 佳子 真鍋 恵子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌
巻号頁・発行日
vol.4, no.6, pp.358-361, 1963

3月, 6~7月の梅雨期と, 夏を越した9月の3時期に市販の各種油脂食品, すなわちドーナツ, クラッカー, チョコレート, ポリコン, いかり豆, グリンピース油揚げ, カリントウ, お好み, チキンラーメン, トンメン, バター, マーガリン, ラード, マヨネーズ, 豚ハム, 鯨ハム, 魚肉ソーセージ, イカのクン製物, いりこ, ミリン干し, しらす佃煮, 花かつを, うまいか等23種を, それぞれ異なった店より無作為的に購入し, エーテル抽出油の過酸化物価および酸価を求めた.<BR>その結果<BR>1. 食品別では油脂の過酸化物価および酸価の高いもの, すなわち変敗度の高いものは, ミリン干し, いりこ, イカのクン製物, しらす佃煮, ハム等で, ついで花かつを, 油揚げ豆類, お好み, ドーナツ等で, 比較的, クラッカー, チキンラーメンは低くラード, マーガリン, バター類が最も低い.<BR>2. 季節別では概して3月頃より夏を越した9月頃の食品の方が変敗度高く, とくにいりこ, 油揚げ豆, お好み等は気温に影響され, マーガリン, バターなどは年中ほとんど一定であった.
著者
山下 梓 宮本 靖久 原山 耕一 鈴木 康司
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.126-133, 2018-06-25 (Released:2018-07-21)
参考文献数
11
被引用文献数
1

高速液体クロマトグラフ-四重極飛行時間型質量分析計(LC-QTOF-MS)を用いた乳および卵主要アレルゲンの一斉分析法を開発した.乳,卵の主要アレルゲンタンパクであるα-カゼイン,β-ラクトグロブリン,オボアルブミンを分析対象とした.これらタンパクのそれぞれをトリプシン消化しLC-QTOF-MS分析を行った結果,消化物のアミノ酸配列の精密質量に整合した16種のピークが検出された.消化物の定量には,これら各ピークのプロダクトイオンスペクトルを用いた高分解能MRM法を適用した.次に,さまざまな濃度の牛乳および卵標準液を同時添加した各種飲料について定量性能を評価したところ,飲料中濃度10 μg/g付近で良好な直線性,再現性,真度が得られた.さらに,両標準液添加飲料のELISA法による定量値とLC-QTOF-MS法の定量値で良い一致が認められた.これらの結果から今回開発したLC-QTOF-MSを用いたアレルゲン消化ペプチド分析法は,飲料中の乳および卵タンパクの一斉定量法として有用であると考えられた.
著者
檜垣 俊介 松尾 達博
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.114-120, 2018-06-25 (Released:2018-07-21)
参考文献数
10

希少糖の1つであるd-アラビノースの機能性食材としての利用の可能性を検討するために,ラットに50%(w/v)のd-アラビノース溶液を10~14 g/kgの範囲で段階投与し,急性毒性試験を行った.その結果,半数致死量(LD50)は,雄で12.1 g/kg,雌で11.6 g/kgと算出され,普通物であることが示唆された.一方,短期毒性試験では,今回の実験における食餌中への最小添加量である5%添加でもd-アラビノースの影響と思われるいくつかの症状が認められたことから,無毒性量は5%添加未満と推定された.すでに食品素材として利用されている希少糖d-プシコースは,10%の食餌への添加で毒性が見られないと報告されていることから,d-アラビノースはd-プシコースに比べて毒性が強いと推察された.以上の結果から,d-アラビノースを機能性食材として利用できるか否かについては,さらに詳細な検討を要すると考えられた.