著者
岸根 雅宏 野口 秋雄 真野 潤一 高畠 令王奈 中村 公亮 近藤 一成 橘田 和美
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.151-156, 2018-06-25 (Released:2018-07-21)
参考文献数
15
被引用文献数
2

過去の検討によってDNA検出が不可能であった高度加工食品(しょうゆ,コーンフレーク,でんぷん糖,甜菜糖,植物油など)については,現在遺伝子組換え表示対象外となっている.われわれは,それら高度加工食品のうち,水飴,甜菜糖および植物油を対象として,最新のDNA抽出キットを用いることでDNAが検出可能であるか検討を行った.食品原材料植物の種特異的内在性遺伝子DNAの検出を指標とした結果,いずれの試料においてもDNA検出可能と判定された試料はなかった.DNAが検出されなかった試料の大部分は,抽出DNAへのPCR阻害物質の混入は認められず,抽出DNA量がPCRによる検出限界以下であることが原因であると考えられた.
著者
武森 真由美 坂牧 成恵 貞升 友紀 植松 洋子 門間 公夫 新藤 哲也 小林 千種
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.99-105, 2018-06-25 (Released:2018-07-21)
参考文献数
7
被引用文献数
1

HPLCおよびLC-MS/MSを用いた食品中のエリスリトール,マルチトール,ラクチトールおよびトレハロースの分析法を開発した.HPLC分析では,アミノ基結合型ポリマーカラムを用い,カラム温度を室温とすることで定量することが可能になった.LC-MS/MSでは,SRMモードにより定量・確認を行うことができた.また,試験溶液を1,000倍以上に希釈することで,試料由来のマトリックスによる影響を抑えられた.紅茶飲料,ゼリー,ラムネ菓子およびチョコレートを用いた添加回収試験の結果,回収率はいずれもHPLCで90%以上(CV≦6.1%),LC-MS/MSで94%以上(CV≦4.8%)であった.クッキーについては,まず水で抽出してからエタノールを加えることで,HPLCで回収率83%以上(CV≦4.1%),LC-MS/MSで回収率90%以上(CV≦3.0%)と良好な結果が得られた.
著者
西島 千陽 千葉 剛 佐藤 陽子 山田 浩 梅垣 敬三
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.106-113, 2018-06-25 (Released:2018-07-21)
参考文献数
17
被引用文献数
11

サプリメントによる健康被害の未然・拡大防止には,現時点で発生している有害事象を短期間に全国レベルでできるだけ多く収集し,行政的対応を検討する取り組みが求められる.そこで全国的なオンライン調査により,消費者から直接情報を収集して有害事象の把握を試みた.有害事象としては下痢に着目し,4つの調査会社で実施した.その結果,軽微な症状が多いが痛みや吐き気を伴う事例もあること,下痢経験者の8割以上はどこにも報告していないこと,関与する原材料として植物エキスが疑われることが明らかとなった.有害事象の経験頻度に調査会社間で誤差はあるが,オンライン調査はサプリメントによる有害事象の発生を全国レベルで短期間に把握できる有用な方法と考えられた.
著者
村上 友規 仲井 菜都希 安藤 尚子 岡山 明子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.121-125, 2018-06-25 (Released:2018-07-21)
参考文献数
6
被引用文献数
5

測定時間短縮を目的として,フルオレスカミン蛍光誘導体化UPLC法を用いたヒスタミンの迅速分析法を検討した.トリクロロ酢酸を用いて抽出し,遠心分離後の上清をろ過後,固相抽出をせずに蛍光誘導体化し試験溶液とした.移動相にはイオンペアを使用せずに10 mMリン酸塩–アセトニトリル(75 : 25)を用いた.鮮魚,調味料およびそれらの加工品などを対象に妥当性試験を実施し,食品ごとの平均回収率は95.8~117.7%であった.本法は前処理から測定まで迅速に行うことができることから,緊急性を要する食中毒発生時の測定に有用である.
著者
服部 賢志 塚田 政範 森田 美文 末永 和也
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.157-160, 2018-06-25 (Released:2018-07-21)
参考文献数
13

長野県で開発された果汁中のカビ毒であるパツリンの分析法をCodex Procedural Manualの性能規準ガイドラインおよびGuidelines on Analytical Terminologyの目標値を満たしているか単一試験室により妥当性評価を実施した.結果として,りんごおよびなし果汁において,真度は98.8~103.4%,併行精度は6.4%以下,室内精度は8.1%以下およびHorRat値は0.4以下であり目標値を満たしていることが確認できた.
著者
篠崎 淳一 数馬 恒平 佐竹 元吉 近藤 一成 紺野 勝弘
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.134-140, 2018-06-25 (Released:2018-07-21)
参考文献数
15
被引用文献数
1

自然毒,特に有毒植物の誤食による食中毒は症状が重篤なことが多く致死率が高いことが特徴である.そのため,原因植物の迅速かつ正確な同定が求められている.本研究では1989~2015年に厚生労働省に報告された植物による食中毒事例を調査した.植物由来食中毒の傾向を鑑みて,発生件数の多い4種(バイケイソウ類,チョウセンアサガオ類,トリカブトおよびスイセン)および死亡事例があるイヌサフランの迅速・簡便な同定法を構築した.PCR-RFLP法を利用した本法は電気泳動像において,有毒植物では2本,食用植物では1本のバンドを検出することで判定できる.また,本法は簡便な操作で,高価な機器を必要とせず,短時間に一義的な結果が得られる.また,調理した試料に対しても適用可能である.
著者
鈴木 一平 竹林 純 梅垣 敬三
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.141-145, 2018-06-25 (Released:2018-07-21)
参考文献数
13
被引用文献数
2

複数の化合物から構成される微量のビタミンを,一括して定量する際に微生物学的定量法(microbiological assay, MBA)が広く用いられている.MBAは試料溶液中ビタミン濃度と菌体の生育量の関係が通常シグモイドを描くため,一般的な直線回帰で求めた検量線では定量性に問題が生じる場合がある.そこで,本研究では乳児用調製粉乳中のビタミンB6定量をモデルケースとして,回帰モデルの選択(直線,2次,3次回帰モデルおよび4パラメーターロジスティックモデル(4PLM))が定量結果に及ぼす影響について検討した.その結果,4PLMに基づく検量線を用いることにより,試料溶液中のビタミン濃度が標準溶液の範囲を逸脱した際にある程度妥当な定量値を得ることができることから,信頼性の高いビタミンB6定量が可能となった.同様の結果はナイアシンの定量でも確認できた.以上の結果から,MBAにおいて4PLMに基づく検量線を用いることで,ビタミン定量値の信頼性向上が期待される.
著者
慶田 雅洋 津郷 友吉
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.59-67, 1969-04-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
36
被引用文献数
1 1

ジメチルニトロソアミンなどの低級ニトロソアミンの強い発がん性についてはすでに確かめられている. これらのニトロソアミンは食品中で亜硝酸と第二級アミンの反応によって生成する. ノルウェーにおける1957年のにしん飼料中毒事件はニトロソアミンによって起こったものであることが明らかにされている. 亜硝酸塩を肉色の発色剤として使用する肉製品のニトロソアミン含量について測定した結果はドイツにおいて多くとも1ppm以下であるという漠然とした成績が得られているにすぎない. チーズの製造の際に原料に添加した硝酸塩より熟成中にキサソチンオキシダーゼの作用で亜硝酸の生成することが確認されている. しかしながら現在までのところでは添加した硝酸塩よりニトロソアミンの形成されることは証明されていない. 小麦粉中にも検出したという報告もあるが, いずれの食品においても現在のところではまだ検索の初期の段階であって今後の成果が期待される. ただその中でも国際酪農連盟を中心としたチーズ中のニトロソアミンに関する組織的な活動が注目される. 現在のところでは0.5μg以上のニトロソアミンを検出する方法が開発されているが, 将来さらに精度を高めることが期待される.
著者
合田 幸広 穐山 浩 大槻 崇 藤井 明美 豊田 正武
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.56-62, 2001-02-25
参考文献数
6
被引用文献数
1 10

アフラトキシン (AF) 通知分析法においても, 健康危害及び環境汚染防止の目的で, 使用溶媒の見直しが要求されている. 著者らは既に報告した毒性の高い溶媒を用いない多機能カラムにHPLCを組合せたAF分析法の応用範囲を拡大する目的で, 通知で分析が義務付けられたナッツ類及びジャイアントコーンを含め, より多種の試料の添加回収実験を行った. その結果マカデミアナッツ, クルミ, ヘーゼルナッツ, ブラジルナッツ, ジャイアントコーン, コメ, コムギ, ソバでB<sub>1</sub>, B<sub>2</sub>, G<sub>1</sub>, G<sub>2</sub>ともに良好な回収率 (85~106%) を得た. また, 妨害ピークが検出された香辛料6種及び紅茶について, 市販のアフィニティーカラムを組合せた分析法を検討した. その結果, G<sub>2</sub>, B<sub>2</sub>で一部回収率が低いものの, B<sub>1</sub>, G<sub>1</sub>の回収率は良好 (71~112%) でこれらの試料でも分析可能であることが示された.
著者
千葉 剛 小林 悦子 佐藤 陽子 井出 和希 池谷 怜 山田 浩 梅垣 敬三
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.234-240, 2017-10-25 (Released:2017-10-27)
参考文献数
8
被引用文献数
3

健康食品の利用が原因と思われる健康被害の事例において,保健所を介して厚生労働省へ報告が上がってくるのは年間20件程度しかない.その原因を明らかにするために,消費者(調査1:44,649名,調査2:3,000名),医師・薬剤師(各500名)を対象にアンケート調査を実施した.2016年の一年間に健康食品の利用が原因と思われる体調不良を経験した消費者は17%いたが,保健所に連絡した人はそのうちの11%のみであった.保健所に連絡しなかった理由は「報告するほどの被害ではなかったから」が最も多かった.2016年の一年間に患者から健康食品の利用が原因と思われる健康被害の相談を受けたことがある医師は7%,薬剤師は4%であった.保健所に報告したのは医師,薬剤師ともに6%のみであった.保健所に報告しなかった理由は「健康食品が原因と断定できなかったから」が最も多かった.
著者
松岡 猛 栗原 秀夫 末藤 晴子 三浦 裕仁 日下部 裕子 穐山 浩 合田 幸広 一色 賢司 豊田 正武 日野 明寛
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.197-201, 2001-06-25
参考文献数
10
被引用文献数
4 30

現在我が国で,食品及び飼料として安全性の確認されていない遺伝子組換えトウモロコシCBH351系統を特異的に検知するプライマーを開発し,PCR条件を設計した.PCR用プライマーは,2又は3生物種由来のDNA配列部分を増幅するように設計し,安全性が確認されている他の遺伝子組換えトウモロコシ,ダイズ,コメ,コムギ,オオムギに対して偽陽性がなく,特異的な検知を行うことができた.検知下限を調べるため,CBH351粉末とnon-GMトウモロコシ粉末の混合試料を調製し,DNAを抽出後,PCRを行った.その結果,CBH351を0.05~0.1%混合したものまで検知可能であった.
著者
松永 明信 山本 敦 水上 英一
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.408-412_1, 1988-12-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
19
被引用文献数
4

間接吸光度検出イオンクロマトグラフィーによる食品中のフィチン酸 (PA) の分析法を確立した. 分析カラムには Shim-pack IC-Al, 溶離液にはナフタレン-1, 3, 6-トリスルホン酸塩 (pH 5.5) を用い, PAの溶出を295nmで検出した. なお試料は0.6N塩酸で抽出し, 中和した後, 陰イオン交換樹脂カラム (AG1-X4) に負荷した. 0.2N塩化ナトリウム, 水で洗浄した後, 2N塩酸でPAを溶出させ, 減圧乾固して塩酸を除去した. これを水に溶解し, 0.45μmのフィルターでろ過して試験溶液を調製し, 測定に供した. 大豆, 押麦, 小麦粉にPAを添加して回収実験を行ったところ, 回収率は93.0~98.3%であり, また定量限界は0.05g/kgであった. 各種食品中のPA含有量を測定したところ, 米ぬかの値が特に高く, 72.4~87.0g/kgであった.
著者
大須賀 愛幸 植松 洋子 山嶋 裕季子 田原 正一 宮川 弘之 高梨 麻由 門間 公夫
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.73-79, 2018-04-25 (Released:2018-04-25)
参考文献数
12

高タンパク食品中の酸性タール色素分析法について,回収率に優れ,かつ簡便で迅速な試験法を作成した.試薬量等のスケールダウンを行い,さらにポリアミド (PA) カラムに負荷する液の調製法として,溶媒留去の替わりに抽出液を水で希釈し有機溶媒濃度を下げ,色素をPAカラムに保持させることにより,操作の簡便化および迅速化を達成した.またPAカラムで色素を精製する際,負荷する液のpHを汎用されるpH 3~4からpH 8.5にすることで,高タンパク食品における,キサンテン系色素の回収率が大きく向上した.高タンパク食品の中でも特に酸性タール色素の分析が困難とされてきた辛子明太子での11種類の色素の回収率はpH 8.5で精製することで63~101%となり,pH 3.5での精製(回収率18~95%)に比べ大幅な改善が認められた(5 μg/g添加).
著者
高橋 迪子 安田 祐加 高橋 肇 武内 章 久田 孝 木村 凡
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.89-92, 2018-04-25 (Released:2018-04-25)
参考文献数
24
被引用文献数
4

本研究では,菓子パン等の材料であるフィリング中におけるノロウイルスの生残性と,近年抗ウイルス効果が見いだされた加熱変性リゾチームの有効性を検証した.小売店で購入したチョコレートクリームおよびマーマレードジャムにMurine norovirus-1 (MNV-1) を4.5 log PFU/g接種し,4℃で5日間保存したところ,MNV-1の感染価は5日間ほとんど減少しなかった.一方,加熱変性リゾチームをこれらフィリング中に1%添加することで,フィリングに接種したMNV-1は0.9~1.2 log PFU/g減少した.
著者
辻村 和也 吉村 裕紀 田栗 利紹 本村 秀章
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.253-259, 2017-12-25 (Released:2017-12-28)
参考文献数
31
被引用文献数
7

2015年11月長崎県において,腐肉食性巻貝であるキンシバイ(Nassarius(Alectrion)glans)喫食による食中毒事例が発生した.本食中毒事例は,国内でも3例目の珍しい事例であり,知見が乏しい.そこで行政および医療機関の協力のもと,経日的に採取された患者血清および尿中のテトロドトキシン(TTX)濃度推移と巻貝中の毒成分解析を行った.LC-QqQ-MS/MSによるTTX分析の結果,調理済巻貝の食品残品,患者血清および尿のすべてからTTXが検出された.食品残品試料では,1個体でヒトの致死量に達する量のTTXを含有するものもあった(食品残品試料2:2.5mg/individual).また,患者血清においては,発症日翌日に最高濃度42.8ng/mLを示し,2日分の尿中排泄量は2.4mgと試算された.以上の結果から,本事例では患者は少なくとも致死量相当のTTXを摂取したと推察された.また,キンシバイの毒性成分解析のため,TTX定量分析に加え,LC-QTOFMS/MSによるTTX類縁体探索およびマウスバイオアッセイによる総毒量算出を行った.その結果,キンシバイの総毒量はTTX単体でないことが明らかになり,残余毒力の一部分はTTX類縁体である11-oxoTTXが占めることが推察された.以上の結果,本事例を含めキンシバイは過去の事例と同様に,食品衛生上極めて危険な種であると考えられた.
著者
横関 俊昭 西川 佳子 小木曽 基樹 藤田 和弘
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.247-252, 2017-12-25 (Released:2017-12-28)
参考文献数
14
被引用文献数
3

アクリルアミドの前駆体である遊離アスパラギン(Asn)の穀類中の分析法を開発した.試料中から5%(w/v)トリクロロ酢酸溶液でAsnを抽出し,ポリマー系逆相固相カートリッジを用いて精製した後,ダンシル誘導体化を行い,HPLC-UVで測定した.分析カラムはODSを用い,0.01mol/L酢酸アンモニウム溶液とアセトニトリルのグラジエント溶出により行った.検量線は,0.5~100μg/mLの範囲で良好な直線性を示した.片栗粉,うるち米粉,小麦全粒粉の3試料を用いて添加回収実験を行った結果,平均回収率は97.7~102.6%,併行精度(RSDr)は0.8~2.0%,室内再現精度(RSDwr)は1.4~6.2%の良好な結果が得られた.本法による定量限界は,片栗粉で13mg/kg,うるち米粉で4mg/kgであった.片栗粉,うるち米粉,小麦全粒粉を含む15試料について,本法とアミノ酸自動分析計による定量値の比較を行ったところ,いずれの試料においても定量値は同等であった.
著者
山本 明美 工藤 志保 中谷 実 花石 竜治 増田 幸保 木村 淳子 櫻庭 麻恵 柴田 めぐみ 工藤 翔 五日市 健夫 佐藤 裕久 村上 淳子 古川 章子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.281-287, 2017-12-25 (Released:2017-12-28)
参考文献数
8

記憶喪失性貝毒は,日本では規制対象となっていないがEUなどでは重要視されている貝毒の1つである.筆者らはHatfieldらの方法等を参考にHPLC-UVによる記憶喪失性貝毒の分析法を構築し,組成型認証標準物質を用いて性能を評価した.17個の分析結果から推定された真度は97.5%,室内精度はRSDとして1.5%でHorRat(r)値は0.16であった.これらの推定値はCodex Procedural Manualに収載されたガイドラインに示されている分析法の性能規準値を満たしていた.また,組成型認証標準物質を用いて内部品質管理を実施した.処置限界は分析法の性能評価結果から設定した.大部分の結果が処置限界内となり,妥当性確認された分析法の性能から予測される分析値の品質が維持されていることを確認した.本分析法を実際に使用する目的は,ホタテガイ中の記憶喪失性貝毒が4.6mg/kg未満の確認であることから,この条件での適用性を,ホタテガイへの添加試料を用いて確認した.
著者
片岡 洋平 渡邉 敬浩 林 恭子 小澤 蘭 滝澤 和宏 穐山 浩
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.275-280, 2017-12-25 (Released:2017-12-28)
参考文献数
9
被引用文献数
4

ミネラルウォーター類(MW)製品中の六価クロム分析法を構築し,その性能を評価し妥当性を確認した.さらに定量下限値を推定した本法を用いて,2016年に市場流通していたMW類150製品における六価クロム濃度の実態を調査した.実態調査に併せて分析した添加試料からは93~107%の範囲で回収率が得られ,妥当性確認した分析法の適用性が高いことが示された.調査した150製品のうち65製品から六価クロムが検出され,検出率は43%であった.また,検出された濃度の最小値は0.0001mg/L,最大値は0.0019mg/L,中央値は0.0003mg/Lであった.0.0001~0.0002mg/Lの範囲で六価クロムが検出される製品数が最も多かった.本研究において実施した実態調査では,食品衛生法により設定されている規格値(0.05mg/L)を超過する濃度で六価クロムが検出される製品は発見されなかった.