著者
嵐田 絵美 塚越 覚 野田 勝二 喜多 敏明 大釜 敏正 小宮山 政敏 池上 文雄
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.491-496, 2007 (Released:2007-07-24)
参考文献数
25
被引用文献数
5 8

主にハーブを用いた園芸作業の持つ療法的効果について,心理的指標である精神健康調査(GHQ)および気分プロフィール検査(POMS),生理的指標である唾液中コルチゾール濃度およびフリッカー値を用い,主観的および客観的に検証することを試みた. GHQから,園芸作業による神経症症状の改善傾向が認められた.POMSから,園芸作業には緊張や不安,抑うつ感,疲労感,当惑などの一時的な負の感情を減少させる効果があることが明らかとなった.唾液中コルチゾール濃度は作業前に比べて作業後に低下し,作業によるストレスの緩和効果が認められた.フリッカー値の変化から,屋外での栽培作業は室内でのクラフト作業に比べて中枢性疲労の回復効果が大きい可能性が示唆された. 以上より,園芸作業は神経症症状や一時的気分の改善に有効であった.また,唾液中コルチゾール濃度とフリッカー値によって,園芸作業がストレスや中枢性疲労の解消に効果的であることを客観的に判断できた.質問紙による主観的評価に,客観的評価指標を組み合わせることで,園芸作業の療法的効果を総合的に判断し,より効果的なプログラムの構築と普及に寄与できると考えられた.
著者
江口 庸雄 市川 秀男
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.13-56, 1940 (Released:2007-05-31)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1
著者
増田 大祐 福岡 信之 後藤 秀幸 加納 恭卓
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.597-601, 2007 (Released:2007-10-24)
参考文献数
16
被引用文献数
5 13

‘高系14号’の甘味の向上を図るため,3,5,10,13℃下で20日間の貯蔵が糖含量や甘味度におよぼす影響を調査した.その結果,スクロース含量は3℃と5℃の貯蔵温度で,グルコース,フルクトース含量は10℃,13℃の貯蔵温度で急速に増加した.また,マルトース含量は処理温度に関係なく,処理後の日数経過に伴って低下した.この結果,蒸しイモの甘味度は5℃と10℃の貯蔵温度で最も高かった.しかし,5℃以下の温度では処理後に腐敗の発生が顕著であったため,短期間で甘味の向上を図るには10℃で貯蔵することが有効と考えられた.
著者
河崎 靖 鈴木 克己 安場 健一郎 高市 益行
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.395-400, 2011 (Released:2011-08-23)
参考文献数
20
被引用文献数
3 11

トマトの冬季施設生産における燃料費の削減のため,通常地面に配置する温風ダクトを,栽培ベッド上に吊り下げ,温風が生長点―開花花房付近に直接当たるように配置して局部加温を実施し,夜間の垂直温度分布,収量および消費燃料を慣行の暖房法と比較した.局部加温によって,群落上部で慣行より夜間の気温および植物体表面温度は高く推移したが,群落下部は慣行より低温となった.局部加温区における上物果率および果重は慣行区より大となり,品種により程度に差はあるものの,上物収量が多くなる可能性が示された.また,果実はゼリー部の比率が高くなった.面積当たりの燃料消費量は,局部加温区で慣行と比較して26.2%の削減効果が見られ,ダクト吊り下げによる局部加温法が実用的に実施可能であることが示された.
著者
村山 徹 箭田 浩士 宮沢 佳恵
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.241-245, 2007 (Released:2007-04-23)
参考文献数
24
被引用文献数
1 2

コシアブラ若芽の抗酸化活性をβ-カロテン退色法とDPPHラジカル消去活性で評価したところ,高い活性を示した.主たる抗酸化成分は,クロロゲン酸と同定された.グロースチャンバー試験で,その成分含量に影響する要因を検討したところ,光が強く,穂木が長いと含量が高まることが示された.その結果に基づいて,好適な促成栽培技術を確立するため,ガラス室内で栽培条件が収量と抗酸化成分含量に及ぼす影響を検討した.促成栽培では,10~15℃の水に30~40 cmの穂木を挿すことによって,クロロゲン酸含量の多い若芽を収穫できた.
著者
脇坂 勝 杉村 輝彦 石森 朝哉 神崎 真哉
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.427-432, 2009 (Released:2009-10-25)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

カキ(Diospyros kaki Thunb.)当年生台木を用いた幼苗接ぎ木法を開発するため,接ぎ木時期や台木の状態が活着率と苗の生育に及ぼす影響について検討した.加温施設下で播種110~195日後の当年生ポット台木を用いて4~8月に接ぎ木を行った結果,いずれの時期にも接ぎ木が可能であることが明らかとなった.カキ‘法蓮坊’実生台木に葉を残した状態で4~7月に幼苗接ぎ木を行うと,葉を残さないものに比べ,活着率は高くなった.台木に葉を残すもしくは残さない状態で接ぎ木を行った個体について,光学顕微鏡にて癒合部における組織やカルス形成の状態を観察すると,葉を残した台木の場合,接ぎ木20日後には穂木が発芽していない個体も含めたすべての個体でカルスが形成されたのに対し,葉を残さない台木に接いだ場合にはカルスを形成した個体の割合は低かった.以上の結果より,ポット育苗の当年生実生台木を用いた接ぎ木は,4~8月に台木に葉を残して行うと活着率が高くその後の生育もよいことが示された.
著者
福田 嘉太郎
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.16-36, 1925-07-01 (Released:2008-12-19)
被引用文献数
1
著者
中野 伸一 西野 勝 河井 孝文 村上 和秀
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.171-177, 2018 (Released:2018-06-30)
参考文献数
22
被引用文献数
1

夏から秋にかけて作付けする露地野菜においては,短時間強雨や台風に遭遇しやすく,圃場の冠水による被害は大きい.ここでは,レタスを冠水処理し,その時期と時間の影響や品種の違い,湛水後の液肥かん注による生育の回復効果について検討した.冠水処理の時期と時間の違いについて,レタスの生育ステージが結球前(葉齢13程度)までの生育前半の影響が大きく,12時間までの冠水処理では結球重が小さく,24時間の冠水処理ではすべて枯死した.一方,生育後半の結球初期(葉齢18程度)12時間までの冠水処理では,結球重への影響は小さかったが,収穫前(葉齢35程度) の冠水では,泥の付着により商品性が低下した.8月下旬播種作型における品種の違いについて,‘ハミングチャウ’は湛水処理による結球重の低下がなく,優れた耐湿性を示した.湛水後の対策として,実際の台風接近に合わせて,結球前(葉齢16程度) と結球初期(葉齢18程度) の2回の6時間湛水処理した区に対して,尿素の50倍液50 L・a–1を株元に施用すると,結球重が12%,球体積が33%大きく,無処理区と同等となり,事後対策として有効と考えられる.
著者
佐藤 茂 宮井 麻結 杉山 想 豊原 憲子
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.82, no.4, pp.337-343, 2013
被引用文献数
2

パラチノース(イソマルツロース)は,近年まで,植物体中では代謝されないスクロースのアナログとみなされてきた.筆者らは,カーネーション花弁から得た粗酵素抽出液に,パラチノース分解活性が存在することをみいだした.カーネーション'リリアン'由来の粗酵素抽出液を用いて検討した結果,分解活性は,α-1,6-グルコシド結合をもつパラチノースとイソマルトースを分解する α-グルコシダーゼ活性によることがわかった.パラチノースは,カーネーション'リリアン'と'ピュアレッド','ライトピンクバーバラ'の開花を促進したが,ヒゲナデシコ'新緋車'の開花を抑制した.カーネーション花弁由来のパラチノース分解活性は,ヒゲナデシコの活性よりも数倍高かった.これらの結果から,カーネーションではパラチノースはグルコースとフルクトースを供給することにより開花を促進し,他方ヒゲナデシコでは分解されずに蓄積したパラチノースが α-グルコシダーゼ活性などの一般代謝活性を阻害することにより開花を抑制することが推察された.
著者
水田 洋一 川西 孝秀 矢澤 進
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.165-170, 2003

培地を無くし,遮根できる布(底面遮根材)を用いて底面給液することにより,根域を薄層化することで,セル成型育苗システムを軽量化した&ldquo;セルシート&rdquo;育苗法を開発した.底面遮根材および根域を保護する資材(根域保護材)が,苗の接着性,生存率,地上部生体重に及ぼす影響をレタス,ハクサイ,トマトで調査した.底面保護材にテトロン200 lpiまたはテトロン250 lpiを用いると,シートを垂直にぶら下げた程度では苗は全く落下せず,苗を剥がしても根が傷がつかず,適当な苗の接着性があった.底面保護材にテトロン200 lpi,根域保護材に80 ℃で乾燥したピートモス200~400 ml/シートの組み合わせで,対照のセルトレイ区よりも地上部生体重が大きくなった.しかし,レタスではセルシートを根域保護材で被覆した場合,生存率が低下した.<br>
著者
遠藤(飛川) みのり 曽根 一純
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.95-104, 2017 (Released:2017-03-31)
参考文献数
14
被引用文献数
6

品質保持効果の高いイチゴ果実の輸送方法を確立することを目的に,新型容器およびMA包装を併用してイチゴ2品種を東南アジア2か国へ航空便および船便にて輸送し,品種別に包装資材を検討した.その結果,航空便においては‘福岡S6号’は伸縮性フィルム容器,‘おいCベリー’は宙吊り型容器を用いることで損傷程度の低減効果や果実硬度低下の抑制効果が期待できることが明らかになった.容器による品質保持効果が品種によって異なったことから,イチゴ果実の輸送において,容器および品種選定の必要性が示唆された.また,船便においては,損傷程度は新型容器により概ね低減されるものの,MA包装を併用することにより維管束のにじみなどが防止できることが明らかになり,新型容器に加えてMA包装の使用が推奨された.なお,MA包装の有無や品種,輸送条件を問わず損傷程度は損傷した果実の割合と高い相関を示し,イチゴにおいては損傷した果実の割合を元に損傷程度を評価できると考えられた.また,損傷する果実の割合を低下させるよう容器を改良することで,果実の損傷程度をより低減できる可能性が示唆された.
著者
番場 宏治
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸學會雜誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.368-378, 1968
被引用文献数
7

花ユリで見られる色素構成を解明するために, 21種類の花ユリについて花被に含まれるカロチノイドを呈色反応, T.L.C., カラムクロマトグラフィー, 吸収スペクトルおよび分配の諸方法を用いて定性的に調査し, 以下の結果を得た。<br>1. 21種類の花ユリのうち, 18種類にカロチノイドが存在し, それらは&beta;-カロチン, クリプトクサンチン, エキニノン様カロチノイド, ゼアクサンチン, カプサンチンおよびカプソルビンの6種であつた。<br>2. 黄花ユリは&beta;-カロチン, クリプトクサンチンおよびゼアクサンチンにより黄色に色彩発現していた。<br>原種の橙花ユリは, その色素構成により二つのグループにわけられた。一つはエキニノン様カロチノイドにより橙色に色彩発現しているグループで, これに属する花ユリは2種類あつた。他はカプサンチン&bull;カプソルビンにより橙色に色彩発現している種で, この色素をもつ花ユリは5種あつた。<br>3. 二つの交配種ではエキニノン様カロチノイドもカプサンチンカプソルビンも共存して, 赤色系に色彩発現していたが, これは種の成立過程で両グループの原種が交雑されていることを示唆している。<br>4. オニユリを除く赤色系花ユリの原種では橙色カロチノイドとアントシアニンは共存せず, いずれか一方の色素により色彩発現をしているが, 交配種ではこの規則性は失われ両色素が共存していた。<br>5. 花ユリの交雑親和性-特にアントシアニン系グループとカロチノイド系グループとの親和性-と花色を構成する色素の種類との間には絶対的な関連性があるとは思われなかつた。
著者
白山 竜次 郡山 啓作 木戸 君枝
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.71-78, 2017 (Released:2017-03-31)
参考文献数
19
被引用文献数
2

キクの暗期中断における間欠照明の花芽分化抑制に対する有効性を赤色光(以下R光と略す)および赤色光 + 遠赤色光(以下R + FR光と略す)を用いて検証した.同一照射時間帯(22:00~2:00) で連続照明と間欠照明を比較したところ,R光およびR + FR光ともにDuty比が低下するにつれて花芽分化抑制効果が低下した.またR光の連続照明とDuty比0.5で積算の放射照度を連続照明に対して1.0および0.5に設定した間欠照明の効果を比較したところ,1.0区は連続照明と同等であったが,0.5区は連続照明に比較して効果が劣った.このことから,本実験ではキクの同一時間帯での連続照明に対する間欠照明の優位性は確認できなかった.次に,同一積算照射時間において短時間の連続光(18分) と間欠により3時間に照射時間帯を拡張した間欠照明を比較した場合では,R光は間欠照明の効果が認められなかったが,R + FR光では連続照明に比較して間欠照明の花芽分化抑制効果が高くなった.これは短時間照明(18分) の場合,R + FR光の連続照明は,R + FR光によるフィトクロムの低Pfrレベルにより,暗期中断の効果が低下することによると考えられた.また,連続照明の時間帯を変えることで暗期中断の効果が変化したことから,同一積算照射時間の場合は,キクの暗期中断に対する感度が時間帯で変化することに注意する必要があると考えられた.実際のキク電照栽培では,暗期中断の時間がR + FR光での低Pfrによる花芽分化抑制効果の低下が発現する時間よりも比較的長時間であるために,間欠電照の優位性はほとんどないと考えられた.
著者
久保 隆 深澤(赤田) 朝子 藤村 泰樹 山道 和子 神田 由起
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.379-384, 2014 (Released:2014-12-26)
参考文献数
15
被引用文献数
1

大果で高品質なオウトウ品種を育成するため,種子親を‘紅秀峰’,‘サミット’を花粉親として交雑を行い,新品種‘ジュノハート’を育成した.本品種は1998年に交配後,2004年に35個体の実生のなかから選抜された.成熟期は育成地で満開57日以後の7月上旬で‘佐藤錦’の約5日後である.果実は大きく,果重は約11 gである.果形は短心臓形で,果皮色は濃赤である.果肉は硬く,糖度は19.1°で甘味が多く,酸含量は0.53%で酸味は少ない.核は大きいが,離れやすく食べやすい.S遺伝子型はS1S6で,‘佐藤錦’,‘紅秀峰’,‘南陽’および‘サミット’と交雑和合性で,紅さやか’および‘北光’と交雑不和合性である.‘佐藤錦’の受粉樹としての利用が可能である.‘ジュノハート’は見栄えが良く食味も優れることから,贈答用あるいは観光果樹園での普及が期待される.
著者
住田 敦 加屋 隆士 畠中 誠
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.1-4, 2008 (Released:2008-01-25)
参考文献数
14
被引用文献数
5 8
著者
山田 明日香 谷川 孝弘 巣山 拓郎 松野 孝敏 國武 利浩
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.296-303, 2008
被引用文献数
5

トルコギキョウの初秋出し栽培における切り花品質の向上を目的として,4 種類の赤色光(R; 660 ± 30 nm):遠赤色光(FR; 730 ± 30 nm)比の高い光源を用いた長日処理について検討した.赤色蛍光灯,カラー蛍光灯(R-type),電球型赤色蛍光灯および電球型昼光色蛍光灯の R:FR 比はそれぞれ 62.0,100.0,8.8 および 8.5 であった.'ダブルピンク'の苗を 7 月 11 日に定植し,定植直後から発蕾まで上記の光源を用いて暗期中断を行った.その結果,平均発蕾日は無処理の 8 月 11 日と比較して光源の種類により 2~5 日間遅れた.いずれの光源を用いた暗期中断も,無処理と比較して開花時の主茎の節数,側枝数および花蕾数が増加し,切り花長が長くなった.カラー蛍光灯(R-type)および電球型赤色蛍光灯を用い,トルコギキョウの 3 品種に対して暗期中断を行った.'キングオブスノー'の暗期中断区での平均開花日は無処理と同じであったが,'ダブルピンク'および'ピッコローサスノー'の平均開花日は,カラー蛍光灯(R-type)または電球型赤色蛍光灯で無処理よりも 3~6 日間遅れた.さらに,これらの光源により 3 品種とも無処理と比較して主茎の節数が増加し,茎長および切り花長が長くなった.'ダブルピンク'を供試し,実用上最も使用しやすい電球型赤色蛍光灯を用いた長日処理を日の出前 6 時間,日没後 6 時間,暗期中断 6 時間および終夜電照で行い,併せて無処理区を設けた.平均発蕾日と平均開花日は,すべての処理の中で終夜電照により最も遅れた.しかし切り花長は,日の出前電照により他の処理よりも長くなった.以上の結果から,定植直後から主茎の発蕾まで,電球型赤色蛍光灯を用いた午前 0:00 から明け方 6:00 までの長日処理により,初秋期出し栽培での切り花品質を向上させることができる.<br>
著者
Kim Hyun Jin Kim Jongyun Yun Do Lee Kim Ki Sun Kim Yoon Jin
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
The Horticulture Journal (ISSN:21890102)
巻号頁・発行日
vol.85, no.4, pp.360-365, 2016
被引用文献数
5

<p>コチョウランにおける植え込み培土の差異が生育と開花に及ぼす影響を検討するため,コチョウラン品種'ドリテノプシス クイーンビアー 満天紅'を 4 種類の植え込み培土(チリ産ミズゴケ,培土用ピートモス,培土用ベイマツ由来バーク堆肥とピートモスを 3:7 で混和した培土,チリ産ミズゴケとピートモスを 4:6 で混和した培土)でそれぞれ 15 か月栽培し,その生育状況を観察した.4 種類の培土の物理性(間隙率と保水力)と化学性(pH と EC)を調査したところ,液肥灌水をした 3 日目までは,ミズゴケ+ピートモス混合培土の体積含水率は,他の培土に比べて有意に優れていた.またバーク堆肥+ピートモス混合培土は他の培土に比べて土壌間隙率は低く維持された.体積含水率と土壌間隙率の変化は成長反応と関連性はなかったが,'満天紅'のシュートの成長と着花はピートモス培土でより促進された.おそらく pH 6.15 という適切な pH 条件下において,十分な水分と肥料の供給が培土を通じて地中の根から植物体に吸収されたことに起因すると考えられる.移植後 15 か月目には,ピートモス培土とバーク堆肥+ピートモス混合培土における植物体の成長は,他の培土に比べて葉は大きく,乾物重も大きかった.ピートモス培土で生育した植物体は,1 株当たり 2.75 本の花茎(穂状花序)を形成し,一方,他の培土では 2.00~2.33 本の花茎を形成した.ピートモス培土では 67%,バーク堆肥+ピートモス混合培土では 33%,ミズゴケ培土では 17%,ミズゴケ+ピートモス混合培土では 8%の植物体が 3 本の花茎を形成し,3 本立ちとなった.培土の違いのおける総開花数については統計学的に有意差はなかったが,総花蕾数に関しては,1 本当たりピートモスが 32.3 個,ミズゴケが 23.4 個,バーク堆肥+ピートモス培土が 23.0 個,ミズゴケ+ピートモス培土が 19.7 個であった.花茎(穂状花序)の出現時期については,ピートモス培土が他の培土に比べて短縮された.これらの結果から,コチョウランの栽培にピートモスを含む培土を用いることで,生産者はより安価な培土で葉の成長と蕾の形成を促進することができ,結果的により高い収益性を生み出しうるコチョウラン品種'満天紅'の高品質生産が可能になる.</p>
著者
佐藤 守 阿部 和博 菊永 英寿 高田 大輔 田野井 慶太朗 大槻 勤 村松 康行
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
The Horticulture Journal (ISSN:21890102)
巻号頁・発行日
vol.84, no.4, pp.295-304, 2015
被引用文献数
18

モモ[<i>Prunus persica</i>(L.)Batsch]とカキ(<i>Diospyros kaki</i> Thunb.)を供試し,福島第一原子力発電所事故の放射性降下物により休眠期汚染された落葉果樹に対する高圧洗浄機を用いた樹皮洗浄による放射性セシウムの除染効果を検証した.夏季洗浄処理として 18 年生モモ'あかつき'を供試し,2011 年 7 月 5 日と 27 日の 2 回にわたり,樹皮洗浄処理を実施した.休眠期洗浄処理として 2011 年 12 月 21 日に 30 年生カキ'蜂屋',2012 年 1 月 24 日に 7 年生モモ'川中島白桃'を供試し,樹皮洗浄処理を加えた.高圧洗浄処理によりカキではほぼ全ての粗皮がはく離したが,モモの表皮はほとんどはく離しなかった.2011 年夏季に洗浄処理されたモモ'あかつき'の果実中 <sup>137</sup>Cs 濃度は洗浄による有意差は認められなかった.2011 年から 2012 年の冬季に洗浄処理されたモモ'川中島白桃'の葉および果実中 <sup>137</sup>Cs 濃度は洗浄により有意に減少した.同様にカキ'蜂屋'でも洗浄処理翌年の葉および果実中 <sup>137</sup>Cs 濃度は洗浄により有意に減少した.これらの対照的な結果と矛盾しない現象として,汚染された樹皮洗浄液による二次汚染および樹皮からの追加的汚染の可能性について考察を加えた.
著者
渋川 潤一 相馬 盛雄 泉谷 文足 宇野 登喜
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸學會雜誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.81-88_1, 1958

Studies on the nutrient deficiencies of N, P, K, Ca and Mg in one-year old apple trees (varieties: Jonathan, Ralls and Indo) and in apple seedlings (seedlings of Jonathan and Indo) were carried out using sand culture method in 1954.<br> Nutrient deficiency symptoms and the contents of nutrient elements in the leaves showing symptoms were summarized as follows.<br> 1. Deficiency symptoms Nitrogen deficiency: Lack of nitrogen in the cultural solution resulted in the smaller leaves and the slower terminal growth of the apple trees very quickly. Leaves showed pale yellowish green color, but were neither scorched nor burned. Reddish coloring started on the older leaves and proceeded toward the younger ones, and finally terminal leaves turned to reddish brown.<br> Phosphorus deficiency: Phosphorus deficiency expressed itself in abnormally smaller size of the eaves and slenderness of the new growth. Foliage color was dark green, and later in the season it turned to bronze with purple or brown spottings, or to dull dark purple.<br> Potassium deficiency: Deficiency symptom of potassium appeared on the basal leaves of the current growth at first, and proceeded upwards as the time advanced. Terminal leaves, however, remain-ed normal. Slight marginal chlorosis of grayish yellow green color was followed by marginal scorching. The scorched area of grayish brown color extended into the body of the leaf in some cases.<br> Calcium deficiency: Visible symptom of direct calcium deficiency was not so easily distinguishable as in the cases of other elements. Margin of basal leaves was discolored and burned, its color changing to medium or dark brown.<br> Magnesium deficiency: Symptom appeared on the basal leaves of the current growth at first, and proceeded to younger ones. Prominent feature was yellowing of leaf margin and interveinal portions. Then those portions showed necrosis, and turned to brown. Many of the dead tissues were colapsed finally, as their size grew larger. Basal leaves were defoliated prematurely.<br> 2. The nutrient contents in the leaves which showed the visible deficiency symptoms were as follows:<br> Nitrogen 1.5_??_2.0%, Phosphorus 0.09_??_0.13%, Potassium 0.6_??_1.0%, Calcium 0.6%, Magnesium 0.20_??_0.29%, respectively.