- 著者
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斎藤 隆
伊東 秀夫
- 出版者
- 一般社団法人 園芸学会
- 雑誌
- 園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
- 巻号頁・発行日
- vol.30, no.2, pp.137-146, 1961
- 被引用文献数
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花の性の分化に関して,葉の演ずる役割について研究した結果,次のような事実を認めた。実験方法は,始め高温連続照明の下で育苗し,随時発達状態に応じて,これに短日処理を与え,後再び高温連続照明の下に移し,それぞれの状態で植物体の葉が短日処理に感応した結果をその雌花発現状態の上で観察しようと試みた。<br> l.葉面積 本葉4葉展開したもので,葉身を3/4あるいは1/2切除し,面積を減らした結果,面積が減るに伴ない雌花発現数も減ることが.見られた。<br> 2.葉令 5葉展開した時期に,第1葉から第5葉のうち1葉のみを残してほかを摘除して験したところ,第3節葉が最も能力よく,第2節葉,第1節葉の順に続き,葉令の若過ぎるものも葉令の進み過ぎたものも,葉令中期のものより機能が劣ることが認められた。<br> 3.葉面上の部位 葉面上の部位による差は,先端寄りの半分を残したものが,縦半分割あるいは基部寄りの半分寄りを残したものより劣り,後の2者にはほとんど差がない。<br> 4.苗令と葉令 2葉・3葉・4葉ならびに6葉展開苗で,各1葉のみを残して摘葉し比較した。同節位の葉を比較すると,葉令は苗令の進行とともに進み,最も雌花発現能力の強い葉は苗令の進行とともに順次上節位に移つてゆく。<br> 5.苗令と葉面積 2葉・3葉・4葉および6葉展開苗で,頂端の葉1枚のみを残したものから,順次下位の葉1枚ずつを添えて残したものをつくつて比較すると,頂端の葉1葉のみの処理を受けたものは,6葉展開苗では雌花が僅か発現したが,ほかの苗では発現せず,苗令の違うことの影響が見られた。同じ葉数をもつ黄同志の間で苗令の進んだものほど雌花数が多かつた。葉面積が大体等しくても苗令の影響が現われた。<br> 6.未熟葉と成熟葉 圃場(気温20°C,日長15時間)で,葉が横径5cmあるいは7cmに達したら摘除する処理を行なうと,前者では第19節辺から雌花が冤られ,後者では第13節辺から見られた(標準区と同じ)。本葉3枚あるいは6枚展開した時に頂端の第1葉(未展開葉)を摘除し,その後も新葉を発生次第摘除しつづけると,前者では雌花は第5節から,後者では標準区と変らなかつたが,両区ともおそくなつて下位の雄花節に両性花・雌花が発現した。未熟葉を摘除すると雌花の発生を助長するものと見られる。<br> 本葉5葉展開時に(ガラス室栽培,気温25~30°C,日長15時間),第1~3節の葉を摘除し,その後の葉が完全に展張し次第順次摘除する区と,第4節までの葉を残し,第5節以上の葉は全部摘除しつづける区をつくつた場合,前者では下位の節から雌花が現われ,その総数も多く,後者では第1雌花が標準区よりやや後れ,その後の着生も少なく,総数が少ない。<br> 圃場栽培のものとガラス室栽培のものとが,未熟葉を摘除することに対して反対の結果を現わした。ガラス室では高温のため残された成葉の機能が急速に衰えたためと考えられる。<br> 完全展葉後に摘葉する場合に雌花の発現を助長するのは,摘葉が生育を弱め,生長点のauxin含量が低いことと関連していると考えられる。<br> 7.短日処理後の摘葉 未展開葉を摘除すると雌花が多く発現し成熟葉を摘除すると雌花の発現が少なかつた。<br> 8.部分短日処理 1株上で,生長点あるいは一部の葉を連続照明下におくと,他部に短日処理を施しても,雌花の発現が抑制される。温度が17°の場合には,生長点あるいは一部の葉を連続照明下においても,短日処理葉の面積に応じて雌花を発現した。<br> 9.枝別短日処理 1株上の2本の側枝の一方は短日処理し,他方は連続照明し,後者上の雌花の発現を見ると,雌花が発現した(1節)から短日処理枝からの影響が及んだことになる。連続照明枝上の成熟葉を摘除すると雌花節は1.8とややふえ,未展開葉を摘除すると0.2と減つた。短日処理枝の頂部を摘除しておいて連続照明枝の成熟葉を摘除すると雌花節は2.5とふえた。<br> 10.環状剥皮 主茎基部の環状剥皮は無効であつた。<br> 11.キュウリにおける雌花の分化は,葉が短日処理に感応してある特定の代謝産物つまり花芽形成に不可欠な物質を生成し,この物質が茎を通つてその個体上で最もauxinの多い生長点近くに移行して,生長点近くの未だ性の決定が行なわれていない花芽に作用を与えて起こるものと考えられる。しかし,この場合生長点のauxin levelが低いという条件も同時に充たされる必要があると思われる。