著者
元木 悟 西原 英治 高橋 直志 Hermann Limbers 篠原 温
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.603-609, 2007 (Released:2007-10-24)
参考文献数
26
被引用文献数
1 3

アスパラガスのアレロパシー物質に対して吸着性能が優れた活性炭を,育苗培養土に混合し,その影響を調べた.その結果,育苗時の根から滲出されるアレロパシー物質を活性炭が吸着し,生育が早まり,育苗期間を短縮させる可能性があることが示唆された.本手法を8科30種の園芸作物に適用した結果,トマト,トルコギキョウ,レタス,キュウリ,キャベツ,ブロッコリーおよびアスパラガスなどで対照区に比べて育苗培養土に活性炭を混合あるいは添加した効果が認められた.なお,育苗培養土への活性炭添加の効果には品種間差異が認められたが,アレロパシー活性が高いと報告されている園芸作物に対しては生育を早めさせたことから大いに利用できる技術であると考えられた.
著者
松本 和浩 加藤 正浩 竹村 圭弘 田辺 賢二 田村 文男
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.339-344, 2010 (Released:2010-07-28)
参考文献数
21
被引用文献数
6 8

秋季の窒素施肥量の違いがニホンナシ‘二十世紀’と‘豊水’の耐寒性と脂質含量に及ぼす影響を調査した.‘豊水’は‘二十世紀’に比べ,多肥による影響を受けやすく,施肥後,樹体内窒素の増加が著しく,耐寒性の上昇が抑制され,春季の生長も阻害された.脂質およびPC含量は‘二十世紀’に比べ‘豊水’で少なかった.両品種とも多肥処理により,脂質およびPC含量の増加が抑制され,脂質の不飽和度の上昇も抑制された.このように,窒素多肥による脂質含量や脂質不飽和度の低下が,耐寒性の低下に影響を及ぼしていると考えられた.
著者
葛西 智 工藤 智 荒川 修
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.69-74, 2011 (Released:2011-02-02)
参考文献数
18

2007,2008および2009年の3か年,果実細胞分裂期のNAA 14.7 ppmの1回処理によるリンゴ‘ふじ’の裂果抑制効果試験を行った.満開2週間後処理は,3か年中2か年で裂果抑制効果が認められたが,同時に収穫果の果重の低下が認められ,新梢伸長が抑制される場合もあった.一方,満開3または4週間後処理では,試験を実施したいずれの年においても裂果抑制効果が認められ,果実品質や新梢伸長に及ぼす影響はみられなかった.また,NAA処理による裂果抑制は,細胞数の減少に由来した果実肥大盛期における果実肥大量の低下が関与する可能性が考えられた.
著者
岩波 宏 守谷 友紀 花田 俊男 阪本 大輔 馬場 隆士
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.79-85, 2021 (Released:2021-03-31)
参考文献数
24
被引用文献数
1

NAC水和剤による摘果効果は年次間差が大きい.そこで,樹体の状態と気象条件から効果に影響を及ぼす要因を抽出し,その要因を用いて,摘果効果(落果率)を予測するモデルを作成するとともに,そのモデルから,年次変動の原因およびその程度を推定した.NAC水和剤処理による‘ふじ’の落下する果実の肥大停止時期は,NAC水和剤を早くに処理しても遅くに処理しても,無処理樹で生理落果する果実が肥大停止する時期と同じ時期であった.NAC水和剤処理による落果率は,処理時の果そう内平均着果数,平均果そう葉数,処理後3日間の平均最高気温,満開後3~4週の平均日射量の4つの要因で概ね推定できた.果そう内着果数と果そう葉数は果そうの栄養状態を表し,果そう内の着果数が多く,果そう葉数が少ないリンゴ樹の果実は落下しやすかった.気象要因である処理後の気温と日射量については,日射量の方が落果率に及ぼす影響は大きく,年次による落果率の違いは,満開後3~4週の平均日射量の年次による違いが主な原因であった.近年はこの時期の日射量が高いため,NAC水和剤の摘果効果が不十分な年が多く,NAC水和剤単独処理では省力化の期待できる落果率80%を安定して達成するのは困難であると推定された.
著者
林田 達也 柴戸 靖志 浜地 勇次
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.197-201, 2010 (Released:2010-04-25)
参考文献数
30

結球アブラナ科作物であるハクサイおよびキャベツの結球葉と収穫残さである外葉のCa供給源としての有用性を明らかにする目的で,化学形態別Ca含量を部位別に分析し,その特性について明らかにした.ハクサイ‘無双’,キャベツ‘金系201’における総Caおよび水溶性Ca含量は収穫残さである外葉のほうが,可食部である結球葉,主茎より高かった.両作物の結球葉における水溶性Ca含量はツケナの40%以下であった.しかし,ハクサイおよびキャベツの外葉における総Caに占める水溶性Ca含量の比率は,結球葉より高く,キャベツの外葉における総Ca含量および水溶性Ca含量はそれぞれツケナの2.1および2.9倍であり,ハクサイの外葉の総Ca含量および水溶性Ca含量はツケナと同等であった.以上のことから,ハクサイおよびキャベツの収穫残さである外葉はCa供給源として有望であることが示唆された.
著者
登島 早紀 岡本(中村) 理恵 阿部 健一 坂嵜 潮 小松 春喜 國武 久登
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.345-352, 2017 (Released:2017-09-30)
参考文献数
32
被引用文献数
2 3

温暖な日本の気候に適し,健康機能性を有するラズベリー品種の作出のため,環境適応性の高い在来野生種ナワシロイチゴ(Rubus parvifolius L.)とラズベリー‘インディアンサマー’(R. idaeus L.)の種間交雑を行った.葉,花および果実の形態的調査において,‘07RUBIXP01’は両親の中間的な値を示し,RAPD分析によるDNA評価でも雑種性が確認された.‘07RUBIXP01’は小さな刺が見られるものの,暖地環境下でも旺盛な生育を示し,両親に比べ果実重が有意に高いことが確認された.総ポリフェノール,アントシアニンおよびエラジタンニン含量測定において,‘07RUBIXP01’は両親の中間的な値を示した.特にエラジタンニン含量において‘インディアンサマー’と比べ約4倍高い値を示した.さらに,糖と有機酸含量の測定では,両親に比べ糖酸比が高く,食味に優れていた.2012年に‘07RUBIXP01’として品種登録し(農林水産省品種登録第21801号),今後日本の温暖地域において有望なラズベリー品種として期待できる.
著者
石井 孝昭 松本 勲 シュレスタ Y. H. ワモッチョ L. S. 門屋 一臣
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.556-558, 1998-07-15
参考文献数
8
被引用文献数
10

カンキツ園に生息する草を4月上旬と7月上・中旬に採取し, それらの草の根におけるVA菌根(VAM)菌の感染状態を観察した.その結果, 春草ではスイバ, カモジグサ, ハコベ, クサフジ, ホトケノザおよびウマゴヤシ, 夏草ではヒメムカシヨモギ, イヌビユ, ギョウギシバ, ガズノコグサ, ツユクサ, カタバミおよびメヒシバにおいて, 70%以上の菌根感染率を示した.また, 春草のハコベ, クサフジおよびホトケノザにおいてはVAM菌胞子が根中に多数形成されていた.しかし, イヌタデ, ギシギシおよびスギナでは感染がみられなかった.
著者
名徳 倫明
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.237-242, 2018 (Released:2018-06-30)
参考文献数
14

ラン科植物の中のPaphiopedilum属 (Paph) は,様々な品種改良が行われ,現在では,花型が大きく丸く,色彩の鮮やかな整形交配種が多く誕生している.そこで今回はPaphの白色整形花の評価をJOGAのメダル審査にて入賞した1981年から2015年までの入賞個体を対象として,花形や大きさを調査した.また,白色整形花の改良に大きく貢献した2種のPaph. F. C. PuddleおよびPaph. Skip Bartlett交配系統に分類して集計した.30年の経過とともに,花径幅,花弁幅では15 mm程度大きくなり,花弁幅/花径幅では0.1程度上昇した.これらの値からも,白色整形花はより大きく丸く品種改良されていることが伺えた.さらに2000年前後から改良が大きく進み,特にPaph. Skip Bartlettの血統を引くS系交配が品種改良に非常に貢献し,今後もこれらの系統を使った交配親を用いることにより,大きく品種改良が進むであろうと考える.
著者
小泉 丈晴 工藤 暢宏 立石 亮 野村 和成 井上 弘明
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.11-16, 2008 (Released:2008-01-25)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

‘愛知早生ブキ’などの三倍体品種の雌株に花粉稔性のある群馬県在来‘水ブキ’(雄株)を交配し,実生作出の可能性について明らかにした.さらに,‘愛知早生ブキ’と群馬県在来‘水ブキ’(雄株)との交配により,得られた実生の特性を明らかにした. 1. フキの三倍体品種である‘愛知早生ブキ’,徳島県在来‘水ブキ’および‘吉備路’の雌株に群馬県在来‘水ブキ’(雄株)を交配することにより稔実種子が得られた.‘愛知早生ブキ’では採取した種子の2.0%,徳島県在来‘水ブキ’と‘吉備路’の種子では0.4%の出芽がみられた. 2. ‘愛知早生ブキ’と群馬県在来‘水ブキ’(雄株)の交配により得られた実生は,交配親に比べて,葉柄の生育が旺盛なものや葉柄部にアントシアニンの発生が無いものがみられた. 3. フローサイトメトリーによる相対的核DNA量の測定から‘愛知早生ブキ’と群馬県在来‘水ブキ’(雄株)の交配により得られた実生について倍数性を推定すると,‘AM-35’は二倍体,‘AM-1’と‘AM-51’は異数体と考えられた. 4. ‘愛知早生ブキ’と群馬県在来‘水ブキ’(雄株)の交配により得られた実生から選抜した‘AM-1’は,早生性で葉柄部のアントシアニンの発生は少なく,収量も多いことから,育種目標に適した有望な系統であった.この組み合わせ交配から得られた実生個体の選抜により,新たな葉柄収穫用品種が育成できる可能性があると考えられた.
著者
蛭田 正
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸學會雜誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.294-304, 1935

1. 筆者は關東州に於て, マンシウズミ外3種砧木に接木せる苹樹の根群比較調査を試みたれば, 茲に其結果を發表せんとす。<br>2. 苹樹の根群は其砧木に依つて個有の形質を現はす。<br>3. T-R率はマンシウズミを砧木とせるもの最も高く1.5, 次はマルバカイドウ砧のものが0.9オホバズミ及コバズミ砧のものは0.7前後なり。<br>4. マルバカイドウ及マンシウズミ砧木の苹樹は深根性にして最深部は2m60cmに達するも, オホバズミ及コバズミ砧木の苹樹は淺根横張性にして,僅かに1mに達するものあるのみなり。而してマルバカイドウ砧苹樹は最も深根性なるも, 深層に達する根量及分布範圍狹く, 且全細根量少きため, 養水分吸收上, 又は寒氣及乾燥抵抗力の點より見ればマンシウズミ砧苹樹が遙かに優るものと認む。<br>5. 苹樹砧木價値よりみれば4種の内マンシウズミが最も優れ, 次はマルバカイドウにして, オホバズミ及コバズミは矮性を目的とする場合の外價値無し。
著者
横尾 宗敬 松尾 平 岩佐 俊吉
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸學會雜誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.235-243, 1962
被引用文献数
1

モモの整枝を行なう際に, 主枝の間隔をあけて出すと下部主枝が優勢になりやすく, 3本の主枝を均斉に作るのは容易でない。従つて, この原因を明らかにし, 主枝形成のよい方法を見出すために1955年から1961年までこの研究を行なつた。<br>1. 主枝間差の判定には, 主枝間最大差% (3主枝間断面積最大差/3主枝総断面積&times;100) を算出して行なつた。<br>2. 主枝間隔をあけて出した場合には, 下の方の主枝が大きくなるが, 車枝の場合は必ずしも下の方から出た主枝が大きくなるとは限らず, 主枝間差も少ない傾向があつた。<br>3. 第2年目には主枝の大きさの順位の変つたものがあり, 第2主枝が大きくなる傾向があつた。深耕してあるものは第1主枝の大きいものの割合が少なくなり, 主枝間差の顕著に回復するものもあつたが, 無深耕のものは依然として第1主枝の大きいものの割合が多かつた。<br>4. 定植前細根を切去したものは主幹の下の方からの枝が多く伸び, 上の方からの枝は少なかつた。断根しなかつたものは関係が逆であつた。<br>5. 台木を実生し居接をかけて直根の発達した樹では主枝間差を非常に少なくすることができた。<br>6. 遅植, 追肥, 断根の処理から, 主枝間差の原因として, 発根が遅れ, ある時期以後根が急激に伸び, これが栄養供給の不均衡を起こすことが考えられ, その後の試験の結果, 3月下旬移植したものはその後2か月位は根が動かず, その後急激に伸長を始め, 6月下旬に大部分の根が動くのを認め, これを7月初旬からの急激な主枝間差の発現の大ぎな原因と考えた。<br>7. 実生台木に居接したモモの直根は, その年の終りまでは明らかに認められたが, 2年目の終りには側根の発達が著しく, 認められなくなつていた。<br>8. 深耕を行ない実生台木に居接し, 整枝した場合にも, 下部主枝優勢性は現われる。しかし, 満足な主枝形成のためにはこの方法が唯一の方法と思われる。<br>9. 土壌条件の悪い場合には, 2本主枝にし, これから1本ずつ亜主枝を出すようにして, 4本主枝を出す整枝が合理的ではないかと考えられる。
著者
塚本 洋太郎 田中 豊秀
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.147-154, 1964

1. 前報にひき続き電照下のキクに対し, NAAとジベレリンその他の植物調節物質の単独または混合散布を行ない, キクの発蕾に対する抑制効果を調べた。抑制栽培用の品種, ディセンバー•キングを使用した。NAAと混用した植物調節物質はジベレリンのほかにアスコルビン酸, チアミン, トリプトファンであつた。栄養素である尿素も使用した。別に10月咲の品種, 新東亜を用いてNAA, ジベレリン, アスコルビン酸, トリプトファンを短日処理開始後に散布し, 開花に対する抑制効果を調べた。<br>2. 無散布では発蕾抑制のあらわれる最低照度は8~12luxであつた。NAA 50ppmを散布すれば約2luxの電照下でも抑制できた。<br>3. NAA 100ppm散布により40luxの電照と同程度に発蕾を抑制することができたが, 生長抑制が著しかつた。NAA 50ppm散布は生長に対する抑制作用が小さく, 2~3luxの電照との組合せにより40luxと同程度の抑制が認められた。<br>4. アスコルビン酸は発蕾に対して抑制的であつた。NAA 25ppmとアスコルビン酸50ppmの混合液散布は低照度においてNAA 50ppmと同程度発蕾を抑制した。チアミンにもその傾向が認められたがアスコルビン酸ほど明らかでなかつた。<br>5. 新東亜を使用した実験でトリプトファン100ppmおよび200ppm散布は開花を抑制した。しかしアスコルビン酸との混合液散布は新東亜の開花に対しても, ディセンバー•キングの発蕾に対しても抑制の作用が認められなかつた。<br>6. ジベレリン50ppm散布は発蕾に対し抑制的であつた。NAAとジベレリンの50ppm混合液散布はNAA50ppm散布に比べ著しく発蕾を抑制した。NAAとジベレリンとの間に相助作用のあることを示している。花の品質には影響なかつた。<br>7. NAA 25ppmと尿素1%の混合液散布はNAA 50ppm散布と同程度発蕾を抑制する傾向がみとめられた。<br>8. この実験からキクの電照抑制栽培において, 設備不じゆうぶんによる照度の不足はNAAとジベレリンとの50ppm混合液散布により, 12luxの低照度でも発蕾を抑えることが可能であるといえる。
著者
艾爾肯 牙生 加藤 鎌司 明石 由香利 Nhi Phan Thi Phuong Halidan Yikeremu 田中 克典 龍 波 西田 英隆 龍 春林 Wu Min Zhu
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.52-65, 2011
被引用文献数
18

中国新疆ウィグル自治区のハミウリは <i>cassaba</i>, <i>chandalak</i>, <i>ameri</i> および <i>zard</i> の 4 変種に分類されているが,その遺伝的多様性についてはほとんど研究されていない.そこで,ハミウリおよび近隣地域の在来品種を含むメロン 120 系統を供試して,遺伝的多様性ならびに類縁関係を解析した.ハミウリ 24 品種の種子長はいずれも 9 mm 以上であり,欧米のフユメロン変種と同じく大粒系に分類され,中国東部のマクワ・シロウリ(小粒系)とは明瞭に異なった.一方,イラン,アフガニスタン,パキスタンおよび中央アジア諸国では,大粒系および小粒系の両者が混在していた.PS-ID 領域(<i>Rpl16-Rpl14</i>)の SNP(一塩基多型)および ccSSR7 マーカーにより葉緑体ゲノムの塩基配列多型を解析した結果,供試したメロン品種が 3 種類の細胞質型(母系)に分けられること,そしてハミウリの細胞質型(T/338bp 型)が欧米のフユメロン品種(T/333bp 型)と異なることが明らかになった.一方,RAPD および SSR マーカーを用いた核ゲノムの多様性解析では,ハミウリの多様性指数(D = 0.243)が他地域の在来メロンより低いことが判明した.系統間での遺伝的距離に基づくクラスター分析の結果,ハミウリのうち果実の貯蔵性に優れる <i>ameri</i> 変種および <i>zard</i> 変種のほとんどが第 2 クラスターに分類されたことから,両変種は遺伝的に分化していないと考えられた.一方,早熟で果実の貯蔵性が悪い <i>chandalak</i> 変種は第 4,第 6 クラスターに分類され,上記 2 変種とは遺伝的に分化していることが判明した.第 2 クラスターには他地域のメロン 12 系統も含まれたが,このうちトルクメニスタンおよびアフガニスタンのメロン 3 系統がハミウリと同じく大粒系(種子)で T/338bp 型(細胞質)であったことから,ハミウリが西方から導入されたと考えられた.これに対して,中国東部のマクワ・シロウリは小粒系,A/338bp 型であり,また核ゲノムの解析でも第 1~第 9 クラスターから遠く離れた第 10 クラスターに分類されたことから,ハミウリとは別起源であることが示された.<br>
著者
高橋 郁郎 花澤 政雄 染矢 泰
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸學會雜誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.92-98, 1937

遺傳質の平等な樽植又は鉢植の温州蜜柑樹を用ひ, ボルドウ合劑及石灰硫黄合劑撒布が, 蜜柑の品質に及ぼす影響を試驗し, 大要次の如き成績を知り得た。<br>1. ボルドウ合劑の撒布は, 蜜柑の着色を遲延せしめ, 其の濃度を淡くし,特に果梗部附近の色を不良ならしむ。<br>2. 石灰硫黄合劑の撒布は, 蜜柑の着色を促進し, その色を濃厚ならしむ。<br>3. ボルドウ合劑の撒布は, 果皮の割合を増し, 果皮と果肉の間に緩みを生ぜしめ, 果汁中の酸を増し, 糖分を減じて品質を損す。<br>4. 石灰硫黄合劑の撒布は, 果皮の割合を減じ, 其の質を脆くし, 果皮を果肉に密着せしめ, 果汁中の酸を減じ, 糖分を増し, 品質を上進す。<br>5. 果汁の酸の變化は, 初夏よりも秋期の撒布に多く, 糖分量の相違は初夏の撒布と秋期のそれとの間に大差なく, 撒布囘數多き程著しきを見た。<br>6. コロイド銅劑の使用は, ボルドウ合劑の如き不良影響無きを認めた。本試驗の詳細なる記載は「靜岡縣の柑橘」昭和12年5月號及び6, 7月號に連載する。
著者
神尾 真司 宮本 善秋 川部 満紀 浅野 雄二
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.447-452, 2006 (Released:2006-12-27)
参考文献数
17
被引用文献数
3 5

数種のモモ台木品種と岐阜県飛騨地域在来のハナモモに‘白鳳’,‘昭和白桃’を接ぎ木して凍害による主幹部障害,枯死樹発生に及ぼす影響を検討した.‘おはつもも’台は3年生時から穂木部を中心に障害が発生し,4年生時にはすべて枯死した.これに対し‘モモ台木筑波1号’台,‘ハローブラッド’台および‘国府HM-1’台は3~4年生時に穂木部,台木・接ぎ木部ともに障害が発生したが,枯死には至らなかった.中でも‘国府HM-1’台は,障害程度が最も軽症であり,障害発生抑制に有効な台木であると考えられた.一方,台木品種による穂木品種の発芽期,開花始期,展葉期に差は認められなかった.また,樹体生育量には差は認められたが,障害発生との関係は明らかでなかった.
著者
神尾 真司 田口 義広
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.137-142, 2009 (Released:2009-04-25)
参考文献数
20
被引用文献数
1

岐阜県飛騨地域におけるモモ幼木の主幹部の障害および枯死樹の発生原因を解明するため,モモ台木用品種を複数供試して根圏土壌中の線虫密度の品種間差,生育に及ぼす影響ならびに障害樹,枯死樹発生との関連を調査した.土壌から分離された植物寄生性線虫のうちキタネグサレセンチュウと枯死樹発生との関係は明らかでなかった.ワセンチュウには品種間差が認められ,密度の高い‘おはつもも’は細根が脱落減少し,障害樹,枯死樹の発生率が高かった.一方,密度の低い‘ひだ国府紅しだれ’は発生率が低かった.これらのことから,主幹部障害と枯死樹の発生原因としてワセンチュウの関与が考えられた.
著者
工藤 暢宏 木村 康夫 新美 芳二
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.9-12, 2002 (Released:2007-11-30)
参考文献数
16
被引用文献数
9 11

カシワバアジサイの有用形質をセイヨウアジサイに導入することを目的として,種間雑種の作出方法を検討した. 1.セイヨウアジサイを種子親,カシワバアジサイを花粉親にした種間交配では,受粉後2週間ほどで子房が緑化肥大し,さく果を形成するが,完全な種子はできなかった. 2.交配後のさく果から胚珠を取り出し培養すると胚が発達して,肥大した胚が出現することが確認された.しかし,‘ハルナ’を種子親にした場合では,出現直後に胚が生育を停止し枯死した.‘ブルーダイヤモンド’を種子親にした場合には,非常に低い割合であるが,順化可能な雑種と思われる個体が得られた. 3.順化後温室で栽培した再性個体にはカシワバアジサイ特有の鋸歯が観察され,雑種であると判断された.しかし,雑種個体の全体的な形態は種子親の特徴を多く受け継いでいた.培養開始から2年後に胚珠から再生した雑種6個体のうち1個体が開花したが,花序は中心がやや山型に盛り上がったテマリ型で,種子親の‘ブルーダイヤモンド’の特徴が強く現れていた.
著者
南山 泰宏 古谷 規行 稲葉 幸司 浅井 信一 中澤 尚
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.411-416, 2012 (Released:2012-09-30)
参考文献数
13
被引用文献数
2 5

京都府特産野菜のひとつである舞鶴市在来の甘トウガラシ‘万願寺’では,栽培環境によって,時折,辛味果実が発生して問題になっている.これまでの遺伝解析研究において,生食用のピーマン品種では,単一の劣性遺伝子により辛味果実が全く発生しないことが明らかにされている.本研究では,新品種‘京都万願寺2号’の育成過程で得られた戻し交雑世代を用い,この遺伝子座に連鎖したDNAマーカー(SCY-800)の開発を行った.また,各戻し交雑世代を本DNAマーカーで選抜したところ,在来品種‘万願寺’の主要特性を残しながら,辛味果実が全く発生しない優良個体が得られて新品種の完成に繋がった.先行して育成された‘京都万願寺1号’と各形質を比較すると,新品種は低温期のアントシアニン着色果実の発生が少なく,辛味のない長果を産することが判明した.以上より,新品種はこれまでの品種にない優良形質を有しており,今後の生産現場への普及に期待がもたれる.
著者
苫名 孝
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸學會雜誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.117-124, 1961

1.リンゴ品種紅玉の貯蔵果実について窒素含量および採収時期の差異がジョナサン・スポットの発生に及ぼす影響を調査した。<br> 2.スポットの発生の多い個体は一般に果皮および果肉に窒素を多く含んだ。特にこの関係は施肥試験においても認められ,燐酸欠除・窒素多用区では葉内および果肉内の窒素含量が最も多く,スポットの発生が著しかつた。<br> 3.また,一般に,比較的早期の採収果にスポットの発生率が高かつた。特にスポット発生の多い燐酸欠除・窒素多用区でもこの傾向は強く,10月末の採収果にはほとんど発生しなかつた。<br> 4.紅玉果実の生長に伴なう窒素含量の分布および消長をみた。その結果,種子の発育期を終り果実の最大容積増大期に入ると,特に果肉内の窒素含量(絶対量)は急増した。
著者
村濱 稔
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.487-490, 2007 (Released:2007-07-24)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

塩化ベンザルコニウム処理がストック切り花の水揚げに及ぼす効果を検討した.100 ppm以上の濃度で水揚げに大きな効果があった.その際の水深は1 cmあればよく,水道水おいて水揚げに必要な水深4 cmよりはるかに浅くても十分であった.また,塩化ベンザルコニウム溶液で4時間水揚げを行い,箱詰めし,室温で18時間放置し(輸送シミュレーション),その後生けた場合,切り戻しなしでも水が揚がることが明らかとなった.