著者
窪田 聡 遠藤 路子 林 里紀 高橋 博徳 村松 嘉幸 腰岡 政二
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.97-102, 2013 (Released:2013-04-01)
参考文献数
20
被引用文献数
3

根域環境制御システムを用いて根域温度を調節することによって,鉢植え花きの生育制御が可能かどうかを明らかにするために,バーベナとゼラニウムの生育と開花に及ぼす根域温度の影響について検討した.バーベナを根域温度15,20および25℃で栽培したところ,地上部の生育は25℃で著しく促進され,植物体の乾物重は15℃の約1.5倍に増加した.ゼラニウムを冬季に最低気温8℃とし,根域加温温度を無加温,13および18℃で栽培した.その結果,根域温度が18℃では地上部の生育と着蕾率および小花数は明らかに増加し,植物体の乾物重は無加温に比べて約2倍に増加した.以上のことから,根域環境制御システムを利用して根域温度を制御することにより,植物の成長を制御できることが明らかとなった.
著者
藤原 孝之
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.1-5, 2006 (Released:2006-04-11)
参考文献数
28
被引用文献数
4 2
著者
細野 達夫 浅井 雅美 西畑 秀次 臼木 一英
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.459-466, 2022 (Released:2022-12-31)
参考文献数
8

冬季積雪地域である富山県砺波市および新潟県上越市で秋播き移植栽培したタマネギ ‘ターザン’ の抽苔株率データを用い,抽苔株率推定モデルについて検討した.タマネギの花芽形成に関する温度反応を積算したVD値,または日々の温度反応と葉数との積を積算したVDLN値について,積算期間を変えて抽苔株率との近似曲線への非線形回帰における決定係数を調査した.VDについては,いずれもの場合も決定係数が低く抽苔株率を高精度に推定することはできなかった.一方,植物体の大きさを加味したVDLNの決定係数については,砺波と上越の全データを用いた場合,1月20日まで,または移植後80日間の積算で0.75以上,砺波のデータのみを用いた場合は2月20日以降または移植後120日以降までの積算で概ね0.95以上と高かった.よって,VDLNを用いるモデルの有効性が示唆された.実用的な指標として,砺波において移植後140日までのVDLN > 490が ‘ターザン’ の抽苔可能性の目安として示された.
著者
松本 雄一 内田 将太 福本 有香 金屋 紗弥 平野 彩夏 渡邉 啓一
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.233-239, 2021 (Released:2021-06-30)
参考文献数
25

キクイモ栽培における重要課題である白絹病の抑制技術について検討を行った.培地での白絹病菌叢の伸展程度および培土でのキクイモ発病度は,いずれもpH 8以上の条件で抑制効果が見られた.一方,「野菜類」作物群に登録のある殺菌剤を添加した培地では,水和硫黄剤の2剤で菌叢の伸展が抑制された.土壌混和が可能な資材のうち水和硫黄剤の主成分である硫黄を含む肥料においても培地での菌叢伸展の抑制および培土でのキクイモ発病度の抑制効果が見られた.この硫黄資材を汚染圃場に施用したキクイモ栽培においても生育中の白絹病による枯死株率は低下した.さらに,系統間での耐病性の比較においては,三瀬在来系統よりもサンフラワーポテト系統の方が枯死株率は低く,耐病性を有していると考えられた.これらの結果から,キクイモ栽培において硫黄資材の施用と耐用性系統を併用することで,キクイモ白絹病に対する抑制効果を高められる可能性が考えられた.
著者
金好 純子 古田 貴音 塩田 俊 赤阪 信二 柳本 裕子 栗久 宏昭
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.19-26, 2014-01-15 (Released:2014-03-31)
参考文献数
30
被引用文献数
5 4

レモン3品種の自然交雑種子を播種し,1果実当たりの三倍体の出現数は,0.36~0.70個体/果であった.発芽した実生における三倍体出現率は,重量が大粒種子の1/3未満1/5以上の小粒種子では46.6~59.6%,1/5未満の極小粒種子では37.5~47.6%で高いことから,レモンでは二倍体どうしの交配においては,小粒の種子を選抜すれば,効率よく三倍体が得られることが明らかになった.自然交雑実生から得られた三倍体は,88.2%が花粉を形成したが,花粉量は少なく,種子数は1個未満が80%で無核性の系統が多かった.また,‘道谷系ビラフランカ’の自然交雑実生から三倍体を選抜し,レモン新品種‘イエローベル’を育成した.樹勢は強く枝梢は密に発生し,枝梢の長さは中で節間は短い.枝梢のとげの発生割合は65.8%で多い.成熟期は果汁割合が高くなる12月中旬である.果実は球~長球形で,果実重は約214 gである.果皮はやや滑らかで,果皮は5.1 mmで薄く果汁が多い.香気は中である.種子は1果当たり2.9個で少ない.酸度は約5.3%でまろやかな食味である.このように‘イエローベル’は,酸度が低い,果汁が多い,種子が少ないなどの特長があり,レモンの需要拡大への利用が期待される.
著者
八幡 昌紀 永嶋 友香 大寺 佑典 杉浦 颯希 周藤 美希 富永 晃好 向井 啓雄 國武 久登
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.29-37, 2021 (Released:2021-03-31)
参考文献数
39
被引用文献数
1

カンキツ類の倍数性育種を効率的に進めるために,種子の形態と重さに着目し,二倍体ブンタン‘晩白柚’(Citrus maxima(Burm.)Merr.)と三倍体グレープフルーツタイプカンキツ ‘オロブランコ’(C. maxima × C. paradisi)との交雑を行い,得られた種子の形態および重さと,それぞれの種子から得られる実生の倍数性との関係を調べた.‘オロブランコ’ を交雑した場合,1果実当たりの総種子数は二倍体ナツミカン ‘川野夏橙’ を交雑した対照区より有意に少なくなり,不完全種子としいなが多く出現した.‘オロブランコ’ との交雑から得られた実生の倍数性をFCMで解析した結果,対照区と同様に完全種子のほとんどが二倍体であったが,200 mg未満の完全種子からは三倍体が高い頻度で出現し,500 mg以上の大きい完全種子からは四倍体の出現が認められた.不完全種子からは三倍体と異数体が多く出現し,さらに半数体も2個体得られた.以上より,これらの種子を選抜することにより効率的に様々な倍数体を獲得できると考えられる.
著者
蕪野 有貴 田口 巧 松永 邦則 高橋 ゆうき 元木 悟
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.345-357, 2018 (Released:2018-09-30)
参考文献数
25
被引用文献数
5 6

アスパラガスの露地栽培において,1年間の株養成後,定植翌年の春に萌芽してくる若茎をすべて収穫し,その株の収穫を終了させる栽培法(1年養成株全収穫栽培法)を開発し,採りっきり栽培と名付けた.採りっきり栽培では,アスパラガスのセル成型苗を,新規ホーラーを使って深植えすることにより,霜害や低温のため,これまでは定植が不可能とされてきた早春の定植を可能にした.本研究では,採りっきり栽培の定植適期を検討するため,ムラサキアスパラガスの‘満味紫’およびグリーンアスパラガスの‘太宝早生’の2品種を用いて,定植時期が異なる株の生育および収量を比較した.その結果,両品種ともに,新規ホーラーを使って早期に定植することにより,大株が養成できた.また,定植時期が早まるに従ってL級規格以上の太ものの若茎の収量が増え,総収量および可販収量も増える傾向であった.さらに,春季の出荷端境期となる4月に収量が増え,露地栽培の年間平均単収に比べて,収穫1年目の収量だけで同等かそれ以上となった.採りっきり栽培は,省力かつ低コストで高品質多収栽培が可能であり,高収益が見込める新栽培法である.
著者
村上 覚 種石 始弘 鈴木 公威 佐々木 俊之 橋本 望
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.117-125, 2019 (Released:2019-06-30)
参考文献数
16
被引用文献数
1

開花期が早い ‘レインボーレッド’ においても自然受粉を可能とする雄品種として ‘にじ太郎’ を育成した.‘にじ太郎’ は ‘レインボーレッド’ の偶発実生から選抜した二倍体品種である.花粉品質は,酢酸カーミン染色率はやや低いものの,発芽率は他品種と同程度であった.一方で,‘トムリ’ と比べると,採葯量および採取純花粉量は少ないため,花粉採取用としては適さないと考えられた.‘にじ太郎’ の花粉で受粉した ‘レインボーレッド’ 果実は,‘トムリ’ 花粉で受粉した果実と比べて,結実率や果実品質に差はみられなかったものの,黒色の充実した種子が増えた.開花期は ‘レインボーレッド’ と重なるため,‘レインボーレッド’ を自然受粉させることができる.3年間の自然受粉栽培について検討した結果,1.0~1.5 mの1年生側枝を ‘レインボーレッド’ に高接ぎして配置した場合,枝から2 mの範囲内では概ね80%の結実率を確保でき,果実品質も比較的良好であったが,それよりも離れると結実不良や果実の肥大不良が懸念された.このことから,4 m間隔で ‘にじ太郎’ の枝を高接ぎし配置することが望ましいと考えられた.以上のことから ‘にじ太郎’ は ‘レインボーレッド’ の自然受粉に有効であると考えられ,‘レインボーレッド’ の安定生産に寄与することが期待できる.
著者
大林 沙泳子 八幡 昌紀 仲條 誉志幸 藤井 明子 向井 啓雄 原田 久 高木 敏彦
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.407-412, 2009 (Released:2009-10-25)
参考文献数
28
被引用文献数
1 1

ニホンスモモ‘貴陽’の結実不良の原因を解明するために,いくつかの基礎的な調査を行った.‘貴陽’は‘太陽’より早期落果が激しく,満開56日後の落果率は‘太陽’が80.4%であるのに対し,‘貴陽’では95.5%であった.不完全花の発生頻度と花柱内での‘ハリウッド’花粉の花粉管伸長には両品種に差がなかった.一方,‘貴陽’の花粉は‘太陽’よりも大きさにばらつきがみられた.花粉稔性は,‘太陽’の染色率と発芽率がそれぞれ91.6%と47.6%であったのに対し,‘貴陽’のそれらは70.4%と3.2%であり,‘太陽’と比較して著しく低かった.さらに,‘貴陽’では種子の大きさにもばらつきが認められ,完全種子の出現率(71.3%)は‘太陽’(93.0%)より低かった.最後に,‘貴陽’の倍数性を解析した結果,染色体数24本を有する三倍体であった.
著者
稲葉 幸雄 吉田 智彦 杉山 信男
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.431-434, 2007 (Released:2007-07-24)
参考文献数
16

代表的な促成栽培用品種である‘とちおとめ’,‘女峰’および‘とよのか’を用いて,主茎腋芽の発達に及ぼす定植後の温度と施肥量の影響を検討した.植物体は温度条件と施肥量を各2段階に変え,これらを組み合わせた4条件下で栽培した.頂花房直下の腋芽を第1節腋芽とし,第4節までの腋芽のタイプを定植後52日目に調べた.腋芽は休眠芽,一次側枝,ランナーに分類した.3品種とも第1節腋芽はすべて一次側枝に発達した.いずれの品種でも第3,4節の腋芽は低温下では休眠芽となるものが多かったが,高温下ではランナーとなるものが増加した.‘とちおとめ’,‘女峰’では施肥量が増えると休眠芽の割合が減少したが,‘とよのか’では施肥量の影響は小さかった.第2節では,休眠芽の割合は低く,高温下でランナーの割合が増加した.施肥量が増えると,‘とちおとめ’では一次側枝の割合が増加したが,他の2品種では一次側枝の割合はほとんど変化しなかった.以上の結果は,第2節の腋芽の発達を調節するため,品種によって温度や施肥条件を変える必要があることを示唆している.
著者
浅利 正義
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.161-167, 2009 (Released:2009-04-25)
参考文献数
12

ハイブッシュブルーベリーの効率的な大量増殖技術を開発するため,2~3 cmに短く切断した(短切)1年生の休眠枝(挿し穂)を用いた増殖法を検討した.短切挿し穂の腋芽の発芽適温は20℃前後であり,‘ブルーレイ’では発芽が暗黒条件で不良であった.照明条件では,‘ブルーレイ’と‘ディキシー’ともに高い発芽枝率を示した.短切挿し穂の腋芽の発芽に対するベンジルアデニン300 ppmと600 ppmの噴霧処理の効果は判然としなかった.照明条件で発芽処理した後に照明条件および暗黒条件で新梢が1 cmに伸長した短切挿し穂は,ピートモスと鹿沼土の等量混合培土に新梢基部が露出しないように挿し木することでいずれも90%前後が発根した.発根部位は新梢基部がほとんどであった.本法は慣行法と比較して苗の生育は劣るが,3倍量以上の挿し木苗を獲得可能である.
著者
車 敬愛 鈴木 栄 石川 駿二 小池 洋男 荻原 勲
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.257-265, 2009 (Released:2009-07-25)
参考文献数
17
被引用文献数
6 6

3種のブルーベリーの栽培が可能な東京において,64品種・系統について生育と果実の成熟・品質の特性を3年間調査した.主成分分析の結果から,5倍体のサザンハイブッシュブルーベリー(SHB)‘Pearl River’を除いて,ラビットアイブルーベリー(RB)だけのグループとノーザンハイブッシュブルーベリー(NHB)とSHBの混合のグループに分類された.主成分分析のNHBとSHBの混合グループの下方に分布したSHBの品種は,果実が小さく,クエン酸含量が少なく,糖酸比は高く,リンゴ酸の割合が高い特徴を示した.また,収穫日と開花日および収穫日と着色開始日との間に正の相関関係が認められ,NHBについては,収穫日と1果重,収穫日と全有機酸含量,収穫日とクエン酸含量との間に正の相関関係が,収穫日と糖酸比との間に負の相関関係が認められた.さらに,考察ではブルーベリー育種において交配親として有用と予想される各品種の特徴を評価した.
著者
真野 隆司 水田 泰徳 森口 卓哉
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.219-225, 2012 (Released:2012-07-15)
参考文献数
19
被引用文献数
1 2

樹勢の異なるイチジク(Ficus carica L.,‘桝井ドーフィン’)に対し,不織布マルチの被覆とかん水が樹体の生育と果実品質に与える影響を検討した.不織布マルチは着色良好で糖度の高いイチジクを生産できるものの,いや地条件下やかん水量の少ない樹勢の弱いイチジクに対して行うと,一層樹勢を弱め,小玉果や変形果の発生を助長した.一方,密植栽培で樹勢の強いイチジクに対して不織布マルチをする場合,pF 2.5程度を維持できれば,密植樹の樹勢を抑制でき,収穫時期も早まるとともに果実品質も向上することが明らかになった.
著者
松島 憲一 伊藤 卓也 北村 和也 根本 和洋 南 峰夫
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.391-399, 2022 (Released:2022-12-31)
参考文献数
34

日本産在来トウガラシ52品種を用いてRAPD法により多型解析を行いその類縁関係を解析した.その結果に基づくUPGMA法による系統樹ではI~Vの5つのクラスターに分類することができ,そのうちのクラスターIVは2つのサブクラスターに分けることができた.クラスターIおよびIIは京都の伏見系4品種と石川県の ‘剣崎なんばん’,クラスターIIIは上向き着果の香辛料用品種,クラスターIVのサブクラスターIV-aは観賞用開発良品種および果実色に特徴を有する品種で構成されたが,最大の品種数によって構成されたサブクラスターIV-bは雑多な品種群が混合して構成された.残るクラスターVはベル・ブロッキー型の大果品種によって構成された.以上の結果,大まかな日本の在来品種の類縁関係や遺伝的関係が明らかになり,その一部は文献などの史実と一致した.
著者
細見 彰洋 三輪 由佳 磯部 武志
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.197-203, 2015 (Released:2015-06-30)
参考文献数
26

イチジク株枯病抵抗性を有する‘Ischia Black’や‘Negronne’台木とした,イチジク‘桝井ドーフィン’の接ぎ木苗を,緑枝接ぎを使って1年で育成することを目的に本研究を実施した.両台木品種の挿し木の生育は,挿し穂の採取時期(12月,3月)よりも採取部位の影響が大きく,前年枝の比較的基部を挿し穂とすれば,展葉は遅れるものの発根は速やかに進行し,結果として緑枝接ぎ可能な台木苗を早く準備できた.一方,両品種の台木と穂木品種‘桝井ドーフィン’の緑枝接ぎでは,接ぎ木が遅いと接ぎ穂自体は生存しても年内の接ぎ木活着率は低かった.また接ぎ穂は,登熟が始まっている部位より,未登熟部を利用した方が展葉開始が早く,初期に障害葉を生じ易いものの,穂木生存率が高かった.以上から,緑枝接ぎによる当年育成の生育良好な苗を得るには,なるべく基部由来の挿し穂を用いて台木の挿し木苗を養成し,接ぎ木をできるだけ早く,穂木品種の未登熟部分を利用して行うことが望ましいと考えられた.
著者
東出 忠桐
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.133-146, 2018 (Released:2018-06-30)
参考文献数
83
被引用文献数
15 13

The fresh fruit yield of tomatoes (Solanum lycopersicum L.) is determined by yield components and related traits. In a low-truss cultivation in Japan, there was no significant difference in light use efficiency between different planting densities and stages. Accordingly, dry matter production is described by a function of intercepted light: Total dry-matter production = light use efficiency × Intercepted light. Light interception is determined by leaf area index (LAI) and the light extinction coefficient in the plant canopy. The efficiency of dry matter production per unit of intercepted light, i.e., light use efficiency, is determined by not only the leaf photosynthetic rate but also light extinction coefficient. The higher yield of modern tomato cultivars in The Netherlands is due to the increase in total dry matter production of plants, not by an increase in dry matter partitioning to fruits. An increase in the photosynthetic rate and a decrease in the light extinction coefficient may result in an increase in light use efficiency among Dutch cultivars. The yield of greenhouse tomatoes in Japan has increased little since the 1980s. Recently, Japanese researchers have attempted to improve the yield using current Japanese cultivars. Elevation of CO2 and fogging in a greenhouse improved the fresh fruit yield and total dry matter production in Japanese cultivars. However, the fraction of dry matter distribution to fruit in ‘Momotaro York’ was significantly decreased. The fruit yield was also improved by grafting the Japanese scion ‘Momotaro York’ onto Dutch rootstock ‘Maxifort’ (S. lycopersicum × S. habrochaites). The increases in yield and total dry matter production were mainly determined by the increase in light use efficiency.
著者
細見 彰洋
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.185-191, 2019 (Released:2019-06-30)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

イチジク株枯病抵抗性がある ‘セレスト’,‘ネグローネ’,‘イスキア・ブラック’,‘キバル’ を台木としたイチジク ‘桝井ドーフィン’ 接ぎ木樹について,本病汚染がない圃場での生育と果実生産性を,いや地耐性のある ‘ジディー’ 台樹を参考に加えて自根樹と比較した.健全圃場において定植2年目から4年目ないし5年目まで調査した結果,結果枝の全長と基部径は ‘セレスト’ 以外の台木使用樹で自根樹を上回る年があった.また,果実生産性(着果率,成熟日,1果重,果皮色,果肉糖度)は,基部節付近(1~5節)において,‘ネグローネ’台樹,‘キバル’台樹,‘ジディー’ 台樹の着果率が,また,‘ジディー’ 以外の台木使用樹の果肉糖度が,それぞれ自根樹を下回る年があった.しかし,これらは限定的で,大半の特性に自根樹との差異はなかった.また,イチジク株枯病の発生はないものの,いや地が生じている圃場で,定植2~4年目の生育を比較した.その結果 ‘ネグローネ’,‘イスキア・ブラック’ 台樹の生育は,‘ジディー’ 台樹には劣るものの,自根樹とは有意差がなかった.以上,イチジク株枯病抵抗性の4品種いずれを台木として使用しても,自根樹に比べて穂木 ‘桝井ドーフィン’ の生育や果実生産性が大きく変化することはなかった.よって,これら4品種の台木としての価値は抵抗性の強弱を第一として評価され,この点で優れる ‘キバル’ や ‘ネグローネ’ の選択がふさわしいと考えられた.
著者
細見 彰洋 磯部 武志
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.133-139, 2023 (Released:2023-06-30)
参考文献数
32

調査した農家圃場のイチジク ‘桝井ドーフィン’ 樹は,5年ほどの間に年々樹勢が低下し,いわゆる「いや地」被害の状況にあった.これらの樹に,緑化樹の枝葉を素材とする木質堆肥を,1 m2当たり約0.4 m3の量で樹冠下の地表にマルチ施用した.その結果,施用2年目には無施用に比べて樹勢の衰弱が軽減され,その効果は施用6年後も持続していた.また,無施用樹でみられた着果数や果実肥大の減退も回復が見込めた.木質堆肥を施用した土壌は,無施用に比べてCECや腐植が高く,三要素の中では硝酸態窒素と交換性カリウムの濃度が高かった.本調査から,木質堆肥の施用が,いや地被害で衰弱したイチジク樹の樹勢回復の一助となり, その効果に, 少なくとも木質堆肥施用による土壌の理化学性の改善が関与している可能性が考えられた.
著者
西本 登志 矢澤 進 浅尾 浩史 佐野 太郎 安川 人央 皆巳 大輔 東井 君枝 矢奥 泰章 杉山 立志 平野 博人
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.483-489, 2018 (Released:2018-12-31)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

カプシノイドを含有し,食味がよいトウガラシの新品種‘HC3-6-10-11’を育成した.カプシノイドを含有する良食味品種の‘ひも’を種子親,カプシノイドを高含有しカプサイシノイド含有量が少ない‘CH-19甘’を花粉親とする交雑後代から選抜し,F8世代で固定を確認した.特性調査と現地適応性検定試験を経て2015年に品種登録出願を行い,2017年に品種登録された.‘HC3-6-10-11’は,果実重量が6 g前後であり,雨除け栽培では,‘甘とう美人’や‘サラダ甘長’と同等以上の果実収穫量が得られた.2014年の果実のカプシノイド含有量は1956 μg・g–1DWであった.果実生産は奈良県内に限られ,未熟果のみ販売が可能であり,販売先を飲食店と加工業者に限定している.
著者
間合 絵里 滝澤 理仁 池田 知司 中﨑 鉄也 土井 元章 北島 宣
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.19-26, 2023 (Released:2023-03-31)
参考文献数
13

本研究では,光透過性を有する有機薄膜型太陽電池(OPV)の設置がトマトの生育と果実生産に及ぼす影響を明らかにすることを目的とし,OPVを設置した温室(OPV温室)と設置していない温室(対照温室)でトマトの果実の収量と品質,植物体の生育量および光合成関連形質を調査した.調査は秋冬栽培と春夏栽培で実施し,秋冬栽培では86台,春夏栽培では106台のOPVパネルをそれぞれOPV温室内側に設置した.秋冬栽培と春夏栽培の両方でOPV温室内の日射量は対照温室に比べ減少した.両栽培において収量では対照温室とOPV温室の間に有意な差は認められなかったものの,OPV温室の果実乾物重は日射量の少ない秋冬栽培で対照温室に比べ23%減少した.また,秋冬栽培と春夏栽培で両温室の植物体の生育量と光合成関連形質を調査した結果,光合成関連形質は両栽培においてOPV温室でほぼ同様に低下したのに対し,植物体の生育量は果実乾物重と同様に秋冬栽培で大きく減少した.これらの結果より,OPVパネルの設置が果実乾物重と植物体に及ぼす影響は特に日射量の少ない時期で大きくなることが明らかとなった.また,本研究に用いたOPVパネルの性能では,OPVパネルの設置は収入を減少させ,特に秋冬栽培で大きな減収となった.これらの結果から,OPVパネルを用いたトマト栽培のソーラーシェアリングでは,日射量の少ない時期はパネルをはずし,日射量の多い時期にパネルを設置することが有効であると考えられた.