著者
石崎 武志 宮下 晃一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.6, pp.1607-1612, 2011 (Released:2013-04-10)
参考文献数
17

ALI/ARDSの急性期救命率が改善されてきたことで,ALI/ARDS長期生存例が増えてきた.その結果生還者に様々な後遺症が見られ,QOL (quality of life) が著しく損なわれることが判明してきた.おもな後遺症としては,呼吸機能障害,神経筋障害(critical illness polyneuropathy),認知機能障害,精神障害(外傷後ストレス症候群)等が知られ,これらが総合して健康関連QOLの低下を招く.
著者
谷口 正実
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.6, pp.1426-1432, 2013-06-10 (Released:2014-06-10)
参考文献数
20
被引用文献数
3 4

・アスピリンに対するアレルギーではなく,COX1阻害作用を持つNSAIDsにより,強い気道症状を呈する不耐症であるが,選択的COX2阻害薬は安全に使用できる.・成人喘息の約5~10%を占め,男女比は1:2で小児ではまれである.・ほとんどの症例で好酸球性鼻茸を合併し,近年では好酸球性中耳炎や胃腸症,異型狭心症の合併が増加している.・通常のアレルギー学的検査では診断不能で,問診(NSAIDs使用歴,嗅覚低下,鼻茸手術歴の確認)が重要であり,確定診断には内服試験が必要である.・静注用ステロイドの急速静注は禁忌であり,NSAIDs誘発時にはエピネフリンが奏効する.
著者
戸倉 新樹
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.96, no.5, pp.1006-1012, 2007 (Released:2012-08-02)
参考文献数
14

光アレルギー機序で発症する疾患には,1)光接触皮膚炎,2)薬剤性光線過敏症,3)日光蕁麻疹,4)慢性光線性皮膚炎(CAD)がある.光接触皮膚炎,薬剤性光線過敏症は抗原となる光感受性物質が明らかであり,その他は明確でない疾患となる.光接触皮膚炎は,抗原が皮膚に塗られて,紫外線が当たって発症し,薬剤性光線過敏症は抗原が薬剤という形で経口投与されて,紫外線が当たって発症する.光接触皮膚炎の原因には,ケトプロフェン,スプロフェンやサンスクリーン薬がある.診断は光貼布試験が決め手となる.薬剤性光線過敏症の原因には,ニューキノロン,ピロキシカム,降圧利尿薬,チリソロール,メチクランをはじめとして多くの薬剤がある.日光蕁麻疹は日光照射により膨疹が生ずる疾患である.CADは,外因性光抗原を原因としない自己免疫性光線過敏症と呼ぶべき疾患で,時にHIV陽性者,ATL患者に発症する.
著者
山田 明子 栗原 琴美 立木 規与秀 重光 胤明 福家 顕宏 山口 利昌 山上 啓子 南 美枝子
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.1, pp.92-98, 2016-01-10 (Released:2017-01-10)
参考文献数
10
被引用文献数
2 1

症例は36歳,女性.発熱,嘔吐,下痢症状に続いて筋肉痛,四肢脱力が生じ,ショック状態となり,救急搬送.全身性浮腫と血液濃縮所見,低アルブミン血症,筋逸脱酵素の上昇を認め,血管透過性亢進による循環血漿量減少性ショック及び横紋筋融解症と診断した.大量補液とカテコラミン,アルブミン,ステロイドホルモンの投与を行い,病状は改善した.約3年前より程度の差はあるが,数カ月おきに同様のエピソードを繰り返していた.除外診断を行い,IgG-κ型のM蛋白血症を認めたことからSystemic capillary leak syndrome(SCLS)と診断した.
著者
河手 久弥 髙栁 涼一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.4, pp.878-885, 2014-04-10 (Released:2015-04-10)
参考文献数
10
被引用文献数
3

副腎皮質機能低下症(副腎不全)は,副腎から分泌されるコルチゾール,アルドステロン,副腎アンドロゲンが欠乏した状態で,副腎自体の病変による原発性と,視床下部-下垂体の病変による続発性に分けられる.副腎皮質機能低下症は,特徴的な症候を欠くため,しばしば診断・治療が遅れることがある.グルココルチコイドの適切な補充が行われない場合は致死的となることがあるため,的確な早期診断・治療が求められる.
著者
池上 龍太郎 清水 逸平 吉田 陽子 南野 徹
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.8, pp.1652-1658, 2017-08-10 (Released:2018-08-10)
参考文献数
11

血管は,加齢に伴って構造的・機能的変化を来たし「老化」する.加齢に伴い,高血圧や糖尿病などが合併することで,血管老化はさらに加速し,心血管疾患が発症するリスクは大きく上昇する.老化のプロセスには未解明な点が多く存在するが,一定の制御機構を伴う生命現象であることが広く認識されるようになっている.最近の研究報告により,「細胞レベルの老化」が「個体や臓器の老化」,「老化疾患の発症」に深く関連することがわかってきた.本稿では,血管老化のメカニズムについて細胞老化を中心に概説し,老化そのものを治療標的とした次世代の治療戦略について考えてみたいと思う.
著者
柳瀬 敏彦
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.4, pp.640-646, 2016-04-10 (Released:2017-04-10)
参考文献数
9
被引用文献数
4 5

急性副腎不全症(副腎クリーゼ)は,急激に糖質コルチコイド(glucocorticoid:GC)の絶対的または相対的な欠乏が生じ,致命的状況に陥る病態である.既知・未知の慢性副腎不全症患者に種々のストレス(感染,外傷など)が加わり,ステロイド需要量が増加した場合と治療目的で長期服用中のステロイド薬が不適切に減量・中止が行われた場合の発症が多い.症状は非特異的であり,消化器症状や発熱が前面に出る場合があり,急性腹症などと誤診される場合もある.副腎クリーゼが疑われる場合は,ACTH(adrenocorticotropic hormone),コルチゾールの測定用検体を採取後,躊躇なく治療を開始する.治療は生理食塩水,ブドウ糖液とヒドロコルチゾンの静脈内投与を基本治療とする.
著者
四ノ宮 成祥
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.101, no.11, pp.3103-3113, 2012 (Released:2013-11-10)
参考文献数
11

バイオテロは決して頻度の高い事象ではないが,一旦起きると社会への衝撃は計り知れない.我々は,過去にオウム真理教のバイオテロ未遂事件やアメリカ炭疽菌郵送事件のような事例を経験したことを忘れずに,適切な対策を講ずる必要がある.また,過去に生物兵器として開発された生物剤がテロに用いられることのないよう注視するだけでなく,今後は遺伝子組換え技術を利用した新たなタイプの生物剤を用いたテロが起きないよう防止することも大切である.
著者
佐藤 健太
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.12, pp.2535-2544, 2017-12-10 (Released:2018-12-10)
参考文献数
8

超高齢社会を迎えた今,multimorbidity(多併存疾患状態)が当たり前となり,旧来の科別・疾患志向ではなく,患者の抱える問題志向の包括的プロブレムリストを用いて診療を行う重要性が増してきている.本稿では,患者の訴える症状や身体所見等の基本情報からプロブレムリストを作り上げていく基本的な方法から,膨大で複雑な問題点を抱える患者での応用的なプロブレムリストの運用方法,膨らみすぎたプロブレムリストの縮め方等について解説する.
著者
坊内 良太郎 小川 佳宏
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.1, pp.57-65, 2015-01-10 (Released:2016-01-10)
参考文献数
14
被引用文献数
2

腸内細菌はエネルギー吸収,腸管免疫など種々の生物学的機能を有する共片生物であり,宿主の代謝や免疫に多大な影響を及ぼす.腸内細菌叢の乱れ(dysbiosis)により短鎖脂肪酸の合成が低下し,腸上皮バリアが破綻,lipopolysaccharide(LPS)の血中への移行を介して全身の慢性炎症が惹起され,肥満・2型糖尿病を発症する.dysbiosisは腸管免疫寛容を破綻させ,1型糖尿病の発症にも関与する可能性がある.治療応用につながるさらなる病態解明が期待されている.
著者
岸森 健文 小菅 邦彦 井上 豪 関 淳也 犬塚 康孝 武田 晋作 竹内 雄三 岡田 正治 池口 滋
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.11, pp.2221-2229, 2016-11-10 (Released:2017-11-10)
参考文献数
9
被引用文献数
2 1

院内心停止で自動体外式除細動器(automated external defibrillator:AED)がショック不要と判断した中に3例の心室頻拍(ventricular tachycardia:VT)が含まれていた.事後検証で解析システムには問題がないとわかった.医療関係者は,AEDによる解析の限界を認識しておく必要がある.また,心電図モニターをいち早く患者に装着し,必要に応じてマニュアル除細動器を手配することが求められる.心電図モニター付きAEDを設置している施設では,マニュアルモードに切り替えて電気ショックをする方法に習熟しておく必要がある.
著者
吉川 勉
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.2, pp.309-315, 2014-02-10 (Released:2015-02-10)
参考文献数
10
被引用文献数
4

たこつぼ型心筋症は一過性の特徴的な心機能障害を呈する新しい概念の心筋症である.心電図ではST上昇,T波陰転化,QT延長などを呈し,急性冠症候群との鑑別が重要となる.院内死亡は急性冠症候群と同程度であるが,背景となる疾患に大きく影響される.急性期に,致死的心室性不整脈,ポンプ失調,心破裂,全身塞栓症など多彩な心合併症を呈する.その発生機序はいまだ不明であるが,交感神経機能亢進が最も有力である.急性期治療の確立,心合併症の予測,再発の予防などが今後の課題である.

31 0 0 0 OA 3)肝臓と腎臓

著者
渡辺 毅
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.9, pp.2544-2551, 2011 (Released:2013-04-10)
参考文献数
49
被引用文献数
1 1
著者
平和 伸仁 梅村 敏
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.109, no.4, pp.778-783, 2020-04-10 (Released:2021-04-10)
参考文献数
8
被引用文献数
1
著者
加藤 哲夫
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.95, no.5, pp.821-825, 2006-05-10 (Released:2009-03-27)
参考文献数
2

細胞外液中の主要な陽イオンはナトリウムであり体内の総ナトリウムの増減は細胞外液の増減を意味する. ナトリウム濃度の調節は腎におけるナトリウムの水の調節によってほとんど決定されており, 高ナトリウム血症はナトリウムよりもむしろ水の調節異常と理解するほうが実際的である. 低ナトリウム血症は, 絶対的なナトリウム欠乏の場合と, 相対的な水の過剰の場合がある. 治療に当たっては病態の正確な理解が必要不可欠である.
著者
Takahiro Higashi Shunichi Fukuhara
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
Internal Medicine (ISSN:09182918)
巻号頁・発行日
vol.48, no.16, pp.1369-1375, 2009 (Released:2009-08-17)
参考文献数
25
被引用文献数
7 47

Background The overuse of antibiotics results in the unnecessary spread of resistant strains. A common setting for antibiotic overuse is in the treatment of upper respiratory tract infections (URIs), which are predominantly due to viruses. Objective To investigate the type and frequency of antibiotic prescription for URI without apparent bacterial infection in Japan, based on both visits and facilities. Design Cross-sectional analysis of insurance claims submitted to an employer-sponsored health insurance plan in Japan between January and March, 2005 for diagnoses of URI. Claims having a potentially valid reason for antibiotic prescription (e.g., secondary diagnosis of pneumonia) were excluded. Outcome Measures Antibiotics prescribed for these URI visits. Results From a total of 24,134 claims, 2,577 claims (non-bacterial URI, one visit per claim) were analyzed; antibiotics were prescribed in 60% of these visits. Third-generation cephalosporins were the most commonly-prescribed drug class (46%), followed by macrolides (27%) and quinolones (16%). In general, visits to physician offices were more likely to result in an antibiotic prescription than visits to hospital outpatient clinics. No statistically significant difference was identified among hospital types, including private and public ownership or teaching hospital status. Analysis of the frequency of antibiotic prescription by facility revealed two peaks in distribution, with one group prescribing to about 90% of URI patients and the second appearing to prescribe to about 40% of patients. Conclusion Antibiotics are frequently prescribed to URI patients in Japan. Although overuse results from the difficulty in accurately distinguishing viral from bacterial URIs, some facilities appear to attempt to differentiate the underlying cause of the URI while others do not.