19 0 0 0 OA 2.肥満症と炎症

著者
菅波 孝祥 小川 佳宏
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.4, pp.989-995, 2011 (Released:2013-04-10)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

肥満を中心として発症するメタボリックシンドロームの基盤病態として慢性炎症が注目されている.最近,マクロファージを中心とする免疫担当細胞が肥満の脂肪組織に浸潤し,アディポサイトカインと総称される生理活性物質の産生異常を招来することにより,メタボリックシンドロームの病態形成に中心的な役割を果たすことが明らかになってきた.本稿では,肥満の脂肪組織に浸潤するマクロファージに焦点を当てて,脂肪組織炎症の分子機構に関する最近の知見を概説する.
著者
内山 真一郎
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.97, no.8, pp.1805-1808, 2008 (Released:2012-08-02)
参考文献数
10
被引用文献数
7 8

トルーソー(Trousseau)症候群は悪性腫瘍に伴う血液凝固亢進により脳卒中を生じる病態である.脳梗塞の成因の多くはDICに併発した非細菌性血栓性心内膜炎による心原性脳塞栓症と考えられ,原因となる悪性腫瘍は固形癌が多く,その中では婦人科的腫瘍が最も多い.皮質に多発する梗塞が多く,血液凝固マーカーの上昇を認め,原疾患の治療と抗凝固療法が必要となる.
著者
井川 正道 米田 誠
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.8, pp.1584-1590, 2017-08-10 (Released:2018-08-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

ミトコンドリア病は,主にミトコンドリア遺伝子変異によるミトコンドリア機能不全を原因とした全身疾患であり,脳卒中様発作を特徴としたMELAS(mitochondrial myopathy,encephalopathy,lactic acidosis,and stroke-like episodes)やMERRF(myoclonic epilepsy with ragged-red fibers)が代表的な病型である.ミトコンドリア病は,小児期だけでなく,成人期にてんかん,脳卒中様発作を発症することも多く,糖尿病や心筋症等の合併も多いため,内科(成人・臓器横断的)診療において常に念頭に置くべき疾患である.本稿では,中枢神経系症状を中心に,その診断及び治療上の要点について概説した.
著者
孫 大輔 南学 正臣
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.97, no.5, pp.929-933, 2008 (Released:2012-08-02)
参考文献数
8
被引用文献数
1

BUN(血中尿素窒素)やクレアチニンは腎機能を推定するのに便利な指標であるが正確なものではない.特にBUNは脱水や心不全など腎血流が低下した状態では尿細管内での再吸収が亢進するため高値となる.一方,血清クレアチニンは,筋肉量にほぼ比例するため大きく変動することはなく,腎機能の指標として適している.しかし高齢女性,四肢切断者,筋萎縮者で低値となるので注意が必要である.

18 0 0 0 OA 1)肺と腎臓

著者
有村 義宏
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.9, pp.2530-2536, 2011 (Released:2013-04-10)
参考文献数
10
著者
亀崎 豊実
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.7, pp.1599-1608, 2014-07-10 (Released:2015-07-10)
参考文献数
10
被引用文献数
4

自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の診断は,貧血と黄疸があり直接クームス試験が陽性であると比較的容易であり,ステロイド治療への反応性も良好である.クームス陰性AIHAや低力価寒冷凝集素症,発作性寒冷ヘモグロビン尿症などの非典型的な特殊な病型では診断に苦慮することが多いため,臨床病態やクームス試験結果の解釈に注意を要する.ステロイド不応性や不耐性の症例への対応では,近年,抗体療法が注目されている.

17 0 0 0 OA 4.細胞表面形質

著者
増田 亜希子
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.7, pp.1807-1816, 2011 (Released:2013-04-10)
参考文献数
12

フローサイトメトリー(FCM)を用いた細胞表面抗原検査は,白血病やリンパ腫の診断に欠かせない検査の一つである.急性白血病初発時の診断・病型分類に必須であるだけでなく,寛解導入療法後は微小残存病変(MRD)の評価にも有用である.悪性リンパ腫の場合,FCMと病理組織所見を併用することで,より正確な診断が可能となる.FCMは胸・腹水等の体腔液にも応用できる.FCMを活用するには,代表的な抗原の種類,結果解釈のポイントを理解する必要がある.
著者
石川 勲
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.5, pp.1101-1107, 2014-05-10 (Released:2015-05-10)
参考文献数
11
被引用文献数
4

運動後にみられる急性腎障害には,ミオグロビン尿性と非ミオグロビン尿性の2種類がある.ミオグロビン尿性はマラソンなど過度の運動により横紋筋が融解されて起こる急性腎障害で赤褐色尿(コーク色の尿)で発見される.血清CK値は基準値上限の20倍以上と著しく高い.一方,非ミオグロビン尿性は運動後急性腎障害(ALPE)で,典型例は運動会で200 mを全力疾走した後に,背腰痛で発見される.血清CK値は基準値内か軽度上昇で,腎性低尿酸血症患者に起こりやすい.
著者
山口 昭三郎 金古 善明 山岸 高宏 大山 良雄 天野 晶夫 新井 昌史 中村 哲也 長谷川 昭 倉林 正彦
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.92, no.1, pp.143-145, 2003-01-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

67歳,女性.クラリスロマイシンの投与を受けた後, torsades de pointesが頻発した.内服中止後に頻拍は消失し,本剤により惹起されたQT延長症候群と診断した.内服中止後も, QTc延長(0.51秒)とV2-6の二相性T波,イソプロテレノール,メキシレチン静注投与後のTU波の形態変化を認め,基礎に再分極異常の存在が示唆された.本剤は使用頻度の高い薬剤であり,投与後の経過に十分留意する必要がある.
著者
Eikan Mishima Kazuichi Maruyama Toru Nakazawa Takaaki Abe Sadayoshi Ito
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
Internal Medicine (ISSN:09182918)
巻号頁・発行日
vol.56, no.13, pp.1687-1690, 2017-07-01 (Released:2017-07-01)
参考文献数
15
被引用文献数
11

CYP3A4-inhibitors can potentiate the hypotensive effect of calcium-channel blockers. However, insufficient attention to such drug interactions may result in serious adverse reactions. A 71-year-old hypertensive man prescribed nifedipine was hospitalized for infectious endophthalmitis. Antimicrobial therapy with voriconazole lowered the blood pressure, and then clarithromycin further lowered it through the excessively elevated nifedipine concentration, leading to ischemic acute kidney injury. After the discontinuation of clarithromycin and voriconazole, the blood pressure and renal function were recovered. The combination of CYP3A4-inhibitors such as clarithromycin plus voriconazole can synergistically potentiate calcium-channel blockers. Co-prescription of multiple CYP3A4-inhibitors with calcium-channel blockers increases the risk of hypotension and acute kidney injury.
著者
Yoshito Kamijo Michiko Takai Yuji Fujita Yasuo Hirose Yasumasa Iwasaki Satoshi Ishihara Takashi Yokoyama Keiichi Yagi Tetsuya Sakamoto
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
Internal Medicine (ISSN:09182918)
巻号頁・発行日
vol.53, no.21, pp.2439-2445, 2014 (Released:2014-11-01)
参考文献数
33
被引用文献数
9 22

Objective We conducted a multicenter retrospective survey of patients poisoned by synthetic chemicals (SCs) in Japan. Methods Letters were sent to 467 emergency facilities requesting participation in the study, and questionnaires were mailed to facilities that agreed to participate. Patients The study participants were patients who were transported to emergency facilities between January 2006 and December 2012 after consuming SC-containing products. Results We surveyed 518 patients from 60 (12.8%) facilities. Most patients were male (82.0%), in their 20s or 30s (80.5%), and had inhaled SCs (87.5%) contained in herbal products (86.0%). Harmful behavior was observed at the scene of poisoning for 56 patients (10.8%), including violence to others or things in 32, traffic accidents in seven, and self-injury or suicide attempts in four. Other than physical and neuropsychiatric symptoms, some patients also had physical complications, such as rhabdomyolysis (10.0%). Of the 182 patients (35.1%) admitted to hospitals, including 29 (5.6%) who needed respirators, all of the 21 (4.1%) hospitalized for at least seven days were male, and 20 had physical complications (rhabdomyolysis, 12; liver dysfunction, 5; renal dysfunction, 11; and physical injuries, 3). Most patients (95.6%) completely recovered, although 10 (1.9%) were transferred to a psychiatric department or hospital, and three (0.6%) were handed over to the police due to combative or violent behavior. SCs such as synthetic cannabinoids, synthetic cathinones, or methoxetamine were detected in 20 product samples. Conclusion Consuming products containing SCs can result in physical complications, including rhabdomyolysis, injuries, and physical or neuropsychiatric symptoms, which may require active interventions, such as respirator use or prolonged hospitalization.
著者
森 亨
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.91, no.1, pp.129-132, 2002-01-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
3
被引用文献数
2 3
著者
今村 圭文 河野 茂
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.10, pp.2228-2236, 2015-10-10 (Released:2016-10-10)
参考文献数
6

肺炎は死亡率,発症率ともに高い重要な疾患である.つまり,肺炎の診療には専門医だけでなく非専門医も携わる機会が多く,日本の肺炎診療の質を向上させるためには優れた肺炎診療ガイドラインが不可欠である.エビデンスがまだ十分ではなかった時代に初版の市中肺炎診療ガイドライン,院内肺炎診療ガイドラインが作成され,その後,よりエビデンスに裏づけられ,かつシンプルで実用性の高いガイドラインとしてそれぞれが改訂された.また,超高齢社会の日本では市中肺炎と院内肺炎のいずれにも分類しがたい中間的な肺炎症例も多く,医療・介護関連肺炎として新たに定義され,診療ガイドラインが作成された.今後は,便宜性も考慮し,これらのガイドラインを1つにまとめた肺炎統一診療ガイドラインの作成が進められている.EBM(evidence-based medicine)の重要な要素はエビデンスだけではない.医療者の経験・技量,患者の背景・意向・価値観も考え合わされたガイドラインが今後も作成されることが望まれる.
著者
入江 潤一郎 伊藤 裕
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.4, pp.703-709, 2015-04-10 (Released:2016-04-10)
参考文献数
12
被引用文献数
1

腸内細菌は食事からのエネルギー回収の促進,体脂肪蓄積を助長する腸管ホルモン産生,エンドトキシンによるインスリン抵抗性の惹起などを介して肥満症の病態形成に寄与する.肥満患者では腸内細菌叢の偏倚が認められ,その腸内細菌が形成する腸内環境が減量に対する抵抗性の一因となっている.腸内細菌叢の偏倚の解消を目指した腸内環境の整備が,新たな肥満症の治療となることが期待される.

16 0 0 0 OA VI.薬剤性脳症

著者
望月 仁志 宇川 義一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.8, pp.1579-1583, 2017-08-10 (Released:2018-08-10)
参考文献数
10

薬剤性脳症とは,薬剤の投与による脳の代謝異常によって生じる脳症で,稀な病態ではない.その症状は障害される部位により異なるため,意識障害から小脳失調まで多彩である.発症の機序は,薬剤の神経細胞・軸索への直接障害,髄鞘障害,脳受容体への作用,電解質異常,肝酵素相互作用,血管原性浮腫ならびに自己免疫性等が想定されている.原疾患とは異なる症状が出現した際には,薬剤性脳症の可能性に気付くことが重要である.
著者
吉松 博信
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.4, pp.917-927, 2011 (Released:2013-04-10)
参考文献数
10
被引用文献数
6 2

肥満症治療では食事・運動療法が用いられる.しかしその実行と継続は困難で,リバウンドすることも多い.肥満を助長する因子は過食や運動不足以外にも数多く存在する.したがって,肥満症患者一般ではなく,患者固有の問題点をそのライフスタイルの中から抽出し,治療に応用する行動療法的アプローチが必要になる.エネルギーバランスの是正だけでなく,ライフスタイルそのものが変容することで,減量とその長期維持が可能になる.
著者
寺嶋 淳
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.101, no.11, pp.3154-3161, 2012 (Released:2013-11-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1

イノシシなどの野生動物の肉を生食して寄生虫疾患に罹患することがあるが,近年では,食肉用家畜の食肉を生食することによるカンピロバクター,腸管出血性大腸菌などの細菌感染症が発生している.腸管出血性大腸菌感染症では溶血性尿毒症症候群や脳症で死亡することもある.また,馬肉の住肉胞子虫による食中毒や豚レバー刺しによるアジア条虫症も報告されており,肉の生食による危険性を十分に認識しておかねばならない.
著者
杉山 幸比古
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.89, no.5, pp.868-873, 2000-05-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
4
被引用文献数
1

ツベルクリンは結核菌を発見したKochによって作られた,結核菌の培養濾液であり,その後,蛋白成分の精製が行われpurified protein derivative (PPD)と名付けられた. PPDによるツベルクリン反応で,結核菌に対する感染の有無の診断, BCG接種の技術評価が行われる.日本では発赤径10mm以上を陽性としている.ツ反応の判定に際しては,その「促進現象」や「ブースター現象」といったものをよく理解し,判定する必要がある.