著者
古川 洋和 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.48, no.10, pp.889-895, 2008-10-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
14

本研究の目的は,自律訓練法(AT)によるリラクセーション効果の妨害要因である不安感受性の操作が,ATによるリラクセーション効果に及ぼす影響を明らかにすることであった.健常大学生を対象に,(1)不安感受性が高く,AT指導前に不安感受性の緩和を目的とした認知行動プログラムが行われる介入群(10名),(2)不安感受性が高く,AT指導前に不安感受性に対する介入は行われないH統制群(5名),(3)不安感受性が低いL統制群(40名),の3群についてATによるリラクセーション効果の差異を検討した結果,H統制群は,ATによるリラクセーション効果が得られないことが明らかにされた.本研究の結果から,不安感受性の高い者においても,AT実施前に不安感受性を緩和することで,ATによるリラクセーション効果を促進できることが示され,不安障害の治療にATを用いる際は,不安感受性を緩和させてからATを指導する必要性が指摘された.
著者
園田 順一 武井 美智子 高山 巌 平川 忠敏 前田 直樹 畑田 惣一郎 黒浜 翔太 野添 新一
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.329-334, 2017

<p>ACT (Acceptance and Commitment Therapy) は, 1990年代に, 米国のヘイズら (Hayes SC, et al) によって発展され, 心理療法として, 急速に世界に広がった. わが国でも次第に知られるようになった. ACTは, その精神病理として6つの構成要素を挙げ, それに治療過程を対応させている. われわれは, これに倣って森田療法で対応した. 驚いたことに, ACTと森田療法はきわめて類似している. その共通点として, ACTと森田療法は, どちらも精神病理においては, 回避行動ととらわれがみられ, 治療過程においては, 受容と目的に沿った行動を強調している. このような中で, 1920年代に生まれたわが国の森田療法の存在は, 現在, 光り輝いている.</p>
著者
長岡 千賀
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.603-607, 2020 (Released:2020-10-01)
参考文献数
9

心理カウンセリングの対話におけるクライエントとカウンセラーの関わりについて, 身体動作の同調性 (身体動作が相互作用者間で同期する現象) を切り口として検討した. 分析した事例は, プロのカウンセラーとクライエント役の対話4事例で, そのうち2事例は心理面接として高く評価されたが (高評価群), あとの2事例はそうではなかった (低評価群). 加えて, 高校教諭と高評価群のクライエント役の悩み相談の対話2事例も分析対象とした. これら6事例を撮影した映像を解析して各人の身体動作の大きさの時系列的変化を測定し, 相互移動相関分析を行った. 結果から, ①カウンセラーの身体動作はクライエントの身体動作の約0.5秒後に起こる傾向があること, またこの傾向は, ②高評価群において特に顕著であり, ③悩み相談の対話では確認されないこと, また④時間経過に伴って同調性の強さが変化することが示された. クライエントとカウンセラーの関わりの質の変化について考察した.
著者
福井 義一
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.347-353, 2021 (Released:2021-05-01)
参考文献数
34

過敏性腸症候群 (irritable bowel syndrome : IBS) の診療ガイドラインでは, 標準的治療が奏効しなかった第3段階で心理療法が推奨されており, エビデンスを有する心理療法の1つとして催眠療法が挙げられている. しかしながら, 本邦において, IBSに対する催眠療法の有効性は十分に周知されておらず, 患者からの催眠療法に対するアクセシビリティも低い. 本稿では, IBSに対する催眠療法の適用について, そのエビデンスと背景にあるメカニズムについて述べ, 介入研究でよく使用されてきた催眠療法プロトコルの構成要素を紹介した. また, 実際にIBSに対して催眠療法を適用する際の工夫について述べ, 今後のわが国におけるIBSに対する催眠療法の課題と展望についても論じた.
著者
中尾 睦宏
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.45, no.7, pp.487-494, 2005-07-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
22
被引用文献数
2

ハーバード大学医学部心身医学研究所は,心身医学に関する研究をしていると同時に,リラクセーション練習と認知行動療法を組み合わせた行動医学的ストレスマネジメントブログラムを外来患者に実践している施設である.その活動の核となる考えはハーバート,ベンソン所長が提唱した「リラクセーション反応」である.リラクセーション反応は,ストレス反応とは逆の生体反応で,血圧,心拍数,基礎代謝の低下といった身体変化だけでなく,心の穏やかさやコントール感など心理的変化を伴う.本稿では,ます,この心身医学研究所の活動を,臨床,教育,研究に分けて紹介する.次に,筆者が心身医学研究所で学んだことを通し,帝京大学医学部附属病院でどのように心身医学を展開してきたか,本学会の将来計画,広報委員の1人として報告する.
著者
安部 計彦
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.187-194, 2005
参考文献数
6

乳幼児期に体験した虐待はその後の人生に大きな影響を及ぼし,心身症状を示す例も多い.未熟で無防備な子どもは,圧倒的な暴力で安全を脅かされ,長時間放置される中で,心身のバランスを崩しながら,歪んだ形でその場に適応している.その結果,虐待から逃れ,成長した後も人生の長期にわたって歪みは残り,心身のバランスは歪み,人との安定した関係を築けす,自他への暴力や攻撃的な言動が現れる.また他者から支配されることを嫌い,自他の人を信用していないため,援助関係の構築も困難になる.このような虐待が心身症状として現れるメカニズムやその対応法について報告する.筆者は長年児童相談所で,心理判定員および判定係長として子どもや家族の治療や心理的援助を担当し,また相談係長として介入や家族調整,地域や関係機関による援助体制の構築を行ってきた.また長年,心理治療の一つである箱庭療法について,九州大学病院心療内科の先生方と勉強会を続けてきた.今回はこれらの経験をふまえ,児童虐待と心身医療の関係について述べたい.
著者
岩橋 成寿 田中 義規 福土 審 本郷 道夫
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.42, no.7, pp.459-466, 2002-07-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
18
被引用文献数
3

自覚されたストレスレベルを測定するPerceived Stness Scale(PSS)を翻訳・改変して日本語版自覚ストレス調査票(Japanese Perceived Stress Scale;JPSS)の開発を試み,一般成入群351名と心療内科患者群65名を対象に,信頼性と妥当性を検討した.α信頼性係数は両群でそれぞれ0.82と0.89であった.JPSS得点の平均値は,患者群において一般成人群に比し有意に高値であった.両群においてJPSS得点と社会再適応スケール(Social Readjustment Rating Scale;SRRS)得点はそれぞれ正の相関を示し,相関係数は患者群で有意に高い値を示した.患者群において,JPSSはSRRSに比べ,精神的自覚症および抑うつ性尺度とより強い相関を示した.JPSSはPSSと同等の信頼性と妥当性を有し,本邦において自覚ストレスを測定する有用なツールになり得ることが示唆された.
著者
中川 哲也
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.17-25, 1991-01-08 (Released:2017-08-01)
被引用文献数
3

The therapeutic guideline for psychosomatic disorders, which was edited by the Medical Strategy Committee of the Japanese Society of Psychosomatic Medicine in 1970,has been cited and utilized on many occasions. Hewever, following the progress of medicine, there have been increasing numbers of opinions, which insist on the necessity of revised criteria of psychosomatic disorders and introduction of new therapeutic approaches to the guideline among the members of the above-mentioned Society. Under such circumstances, Dr. Ikemi, the chairman of the Board of Directors and also the chairman of the Committee of Medical Education and Training, started working on the revision of the therapeutic guideline. After consulting with the members of the Board of Directors and councillors several times, he pointed out the fundamental problems concerning the revision of the therapeutic guideline in December, 1989. As the chairman of the Committee of Medical Education and Training, succeeded to Dr. Ikemi, I proceeded with the work and at the 31st Congress of the Japanese Society of Psychosomatic Medicine I would like to propose the outline of newly revised guideline for diagnosis and treatment in psychosomatic medicine as the presidential address. The main items of the new guideline are as follows. 1. The concept of psychosomatic medicine 2. The developmental background of modern psychosomatic medicine 3. Behavioral medicine and psychosomatic medicine 4. Consultation-liaison psychiatry and psychosomatic medicine 5. Classification of mental disorders by DSM-III and DSM-III-R. 6. Psychosomatic disorders 7. Doctors who engage themselves in the practice of psychosomatic medicine 8. General principles in the practice of psychosomatic medicine 9. Psychosocial evaluation a) Interviews b) Psychological tests 10. Psychophysiological examination 11. Psychosomatic diagnosis 12. Psychosomatic treatment modalities 13. Summary of psychosomatic treatments 14. Terminal care From now on, after discussing and arraging the proposed draft for the new guideline with the members of the Comittee of Medical Education and Training, I will announce the final form of the revised guideline for diagnosis and treatment in psychosomatic medicine to all the members of the Japanese Society of Psychosomatic Medicine. Ideeply appreciate many constructive opinions and supports by the councillors of the Japanese Society of Psychosomatic Medicine and the present and former staff members of our Department of Psychosomatic Medicine.
著者
安藤 美華代 竹内 俊明 山本 玉雄 福島 一成 大原 健士郎
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.35, no.7, pp.593-600, 1995-10-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
12
被引用文献数
1

In an ealier study we investigated the psychological aspects of fasting therapy with Naikan, using questionnaires, the Rorschach test, and the Baum test. Our results showed that all patients showed some improvement, and that the therapy contributed toward psychological stability. In the present study, we increased the number of subjects, and used standard psychotherapy as the control condition with which to assess the effectiveness of fasting therapy, its suitability for effect, and its adaptability, based on results from CMI, YG, TEG, and the Rorschach test. The subjects were 37 patients hospitalized due to psychosomatic disease and neurosis who had undergone fasting therapy. Fourteen of these cases were followed for half a year. Controls were patients, matched for age, sex and disease, who had been suffering from psychosomatic disease or neurosis and had been given psychotherapy. The effect of fasting therapy was assessed by having the case physician evaluate patients under nine headings (symptoms, mental stability, interpersonal relations, understanding of the disease, attitudes toward work, disposition, cheerfulness, emotional control, and judgment) all measured on a 4-points scale. No patients received a negative assessment, and treatment was judged to be highly effective in 18 cases and somewhat effective in 19 cases. The 5 patients who interrupted therapy were similarly studied. The results showed that the standard psychotherapy group showed some improvement in subjective self esteem, but little change in deep personality structure. In comparison, those who continued with fasting therapy steadily improved in subjective self esteem, emotional control, ego strength, and self image. In those patients showing a marked improvement, there was also some improvement in conflict concerning affective wants. These results suggest that the fasting therapy induces in patients a sense of having been "psychologically reborn" after having undergone an extreme physical state. As we had expected, the effects of fasting therapy gave rise to the following observations : questionnaires are inadequate for revealing changes in deep personality structure, while patients in whom the effect of therapy was less pronounced seemed to have less imagination and empathy, but greater internal tension. Furthermore, although the patients who were unable to complete therapy were good at affective expression and introspection, they also tended to be aggressive and to have anxiety about affection. For that reason, these patients are less well suited to undergo fasting therapy with its many restrictions, accordingly, a more mild form of therapy should be devised for these patients.
著者
立谷 泰久
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.166-173, 2018 (Released:2018-03-01)
参考文献数
7
被引用文献数
1

国立スポーツ科学センター (JISS) は, トップアスリートの国際競技力向上のための研究とサポートを活発に行っている. JISSの心理サポートの中に 「個別 (1対1) サポート」 がある. 個別サポートを担当するのは, スポーツメンタルトレーニング (SMT) 指導士, 臨床心理士などの資格を有しているスタッフである. このサポートでは, 選手の主訴や希望に合う担当者を充てるが, サポートを進めていくと, その担当者が対応できない訴えが出ることがある. その際には, SMT指導士, 臨床心理士, 心療内科 (精神科) 医で連携しながら, 1人の選手を2者・3者でサポートを進めていく. トップアスリートには, 多様な心理的課題・問題を抱えながら競技活動を行っている選手もいるため, さまざまな特徴をもった複数のスタッフが対応できることが望ましく, JISSはそれが可能となる国内唯一の機関といえる. 世界の舞台で活躍するトップアスリートのサポートには, 多様な心理分野の協働が不可欠といえる.
著者
澤原 光彦 北村 直也 末光 俊介 青木 省三
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.1353-1359, 2015-12-01 (Released:2017-08-01)

わが国の自殺死亡者は年間3万人を超える事態が1998年から14年間続いた後,2011年から減少に転じ,2014年には25,000人台に減少したが,若年者の自殺死亡率は依然としてきわめて高い水準にあり,15〜39歳までの各年代の死因の第1位を「自殺」が占めている.本稿では,警察庁統計,自殺対策白書,自殺総合対策大綱,各種レビューを参照して,若者の自殺の特徴を紹介した.次いで,学校,地域,救命救急センターで現在行われている自殺防止活動の一部を紹介した.さらに,救命救急センターにおいて自殺企図者に精神科医が対応するときに,注意を要する点を述べた.最後に,思春期・青年期に自殺企図を生じ,そのために筆者が関与した症例のうち代表的な事例3例を提示し,それぞれに短く解説を加え,私見を述べた.
著者
中島 節夫
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.203-211, 1999-03-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
21

わが国の心身医学の歴史を顧みると, その初期には「いわゆる催眠僚法, がかなり用いられ, それなりの効果をあげていたが, 最近, 心身医僚の臨床ではほとんど催眠痕法は用いられなくなった.心身医学の領域で催眠療法が廃れた原因として, alexithymiaの概念がわが国に導入され, 心身症は催眠感受性が低く, 催眠療法は心身症の治療法としては無効であるとされたことと, 心身医学療法に対する診療報酬があまりにも低すぎることがあげられる.その後, 心身症の治僚法として, 催眠を母胎として生まれた自律訓練法, さらにはそれを発展させた自律療法が取り入れられるようになったが, もう一度, 他者催眠を見直してもよい時期にきているのではなかろうか。
著者
中尾 睦宏 熊野 宏昭 久保木 富房 Arthur J Barsky
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.41, no.7, pp.539-547, 2001-10-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
14
被引用文献数
6

身体感覚の増幅に関連する心理特性を明らかにするため, 日本語版の身体感覚増幅尺度(Somatosensory Amplification Scale ; SSAS)を作成した.大学病院の外来患者81人(心療内科48人, 内科33人)を対象に10項目からなるSSASを施行し, 身体症状数, 心理社会的ストレス度, 気分状態の心理身体指標を併せて質問紙で評価した.SSASは各項目間の相関がよく(Cronbachのα係数0.79), 他の心理身体指標と有意な関連があった(p<0.05).心身症患者群の方が内科患者群よりSSAS得点が高く(p<0.005), 多重logistic回帰分析で年齢, 性別, 心理身体指標の影響を統制しても両群は有意に識別された(p<0.05).心身症の訴えや機能障害を簡便に評価する指標としてSSASの臨床的有用性が示唆された.
著者
辻内 優子 熊野 宏昭 吉内 一浩 辻内 琢也 中尾 睦広 久保木 富房 岡野 禎冶
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.205-216, 2002-03-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
28

化学物質過敏症(MCS)とは, Cullenによって提唱され, 化学物質の少量持続暴露か大量暴露を受けた後に, 多臓器にわたって臨床症状が発現する機序不明の病態とされている.本研究ではこのMCS概念に基づき, 心身医学的観点から比較検討(患者18名, 健常者35名)を行った.その結果, 発症および経過には心理社会的ストレスの関与が認められ, 過去1カ月間の飲酒・喫煙歴が少ないという生活習慣の特徴が認められた.発症後の状態として, 患者群は多くの身体症状と精神症状を自覚しており, 精神疾患の合併が83%で, 身体表現性障害・気分障害・不安障害が多く認められた.
著者
有村 達之 小牧 元 村上 修二 玉川 恵一 西方 宏昭 河合 啓介 野崎 剛弘 瀧井 正人 久保 千春
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.259-269, 2002-04-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
12
被引用文献数
3

本研究の目的は,アレキシサイミア評価のための改訂版 Beth Israel Hosoital Psychosomatic Questionnaire構造化面接法(SIBIQ)の開発である.SIBIQはアレキシサイミア評定尺度である改訂版BIQの評定に必要な面接ガイドラインと評定基準を含む半構造化面接である.心療内科を受診した45名の患者にSIBIQを実施し,良好な内的一貫性(α=0.91)と評定音間信頼性(ICC=0.82)を得た.また,アレキシサイミア評価の質問紙であるTAS-20との間に正の相関(r=0.49)があり収束妥当性が支持された.因子分析では(1)アレキシサイミア,(2)空想能力の二因子が抽出された.
著者
石澤 哲郎
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.949-957, 2015-08-01 (Released:2017-08-01)

心身医学領域では自律神経失調症状をきたす患者を診察する機会が少なくない.近年,自律神経機能の正確かつ非侵襲的な測定手法として心拍変動(heart rate variability:HRV),血圧変動(blood pressure variability:BPV),圧受容体感受性(baroreflex sensitivity:BRS)が頻用されている.HRVとは心臓の拍動周期のゆらぎのうち自律神経入力のゆらぎをその主な起源とするものであり,BPVとは末梢の血管運動性交感神経活動や呼吸による機械的刺激などの影響による血圧のゆらぎのことである.そして迷走神経系を介した徐脈反応の大きさがBRSと定義される.周波数解析を用いてこれらを分析することで,心血管系自律神経機能を交感神経系と副交感神経系に区別して定量的に評価することが可能となる.また,非線形解析という手法を用いることで,自律神経機能の非線形的特性も評価することができる.本稿では神経性食欲不振症患者を対象とした研究結果を中心に,循環器系自律神経機能の定量的評価に関する最新の知見を紹介する.
著者
岩橋 成寿 國井 啓子 坂元 和子
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.439-444, 2014

福島第一原子力発電所(以下,福島第一原発)から44kmの地点に位置する災害拠点病院において,原発事故直後に職務遂行が困難になった看護師の2例を報告する.症例1:30代,女性.3月14日に両親が親戚宅に避難し,自分一人が自宅に残った.それから強い不安感が持続し,3月15日の午前中に受診した.血圧が175/104mmHgと上昇し,感情がコントロールできない状態であった.不安状態と診断し,薬物療法を開始し,1ヵ月間の休養と,両親と一緒に過ごすように指示した.2週間後に受診した際には,仕事に復帰したいと述べ,4月18日から復帰した.症例2:20代,女性.3月24日の15時に,精神的に不安定になり,面接した.患者は最初に,3月15日の準夜勤務時に,2人の先輩が来なかったときのショックについて話した.食欲低下,不眠,倦怠感が続いており,もうどうでもいいという感じになる,と訴えた.過労状態であり,休むように指示したが,「休むと避難した人と同じになってしまう.休むのなら辞めたい.」と受け入れなかった.3連休を与えて睡眠薬を投与し,休職せずに3週間で回復した.福島第一原発事故後に,当院看護師には,放射能汚染および自主避難をめぐる強い心理的ストレスが加わっていた.