著者
野本 宣夫
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.102-107, 1956-12-31 (Released:2017-04-07)
被引用文献数
1

The deciduous broadleaved forests dominated by beech (Fagus crenata) and oak (Quercus crispula) are found widely in the cool temperate mountains of Japan. The oak forest has been regarded as a seral forest succeded by the beech climax forest. 1) Three stands in the beech-oak forests of Okutama near Tokyo were researched comparatively by the author, and the process of ruin and rise between the oak and beech is illustrated in Fig. 2. The typical beech forest (C) might be regarded as stable for a long time, because there grew a great number of young beeches, while the oak forest (A) is regarded as unstable because it had none of its own inheritors, but beech ones. This fact shows clearly that the oak forest would be gradually succeeded by the beech forest with the progress of time. 2) In order to analyse such a process of succession mentioned above, the author applied the analytical method of MONSI and OSHIMA (1955). On the basis of the mutual action between the main physiological action of plants (production of matter-photosynthesis) and the main environmental condition in a forest (light intensity), the height-growth curves of young trees of oak and beech in the forest communities of various densities were calculated and drawn as shown Figs. 6 and 7. The fact of young trees under the Sasa-layer in the forest was also discussed.
著者
工藤 愛弓
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.157, 2022 (Released:2022-10-22)
参考文献数
67

昆虫の中には、性淘汰によって進化した誇張化形質を有する種がいる。体のどの部分が誇張化するかは種によって様々である。性淘汰によって誇張化する部位やその程度は、生息環境や餌、配偶相手および縄張りなどの資源を巡る闘争の形式とその強度、繁殖行動への利用の有無と密接に関連している。そのため、性淘汰に伴い誇張化した形質がどのように進化・維持されてきたのかを明らかにするには、それぞれの種が有する生活史についても理解を深める必要がある。著者がこれまで扱ってきたテナガショウジョウバエは、オスのみが誇張化した前脚を有し、オス間闘争やメスへの求愛に利用することが分かっている。一方で、野外における生態の理解は進んでいない。ハエ目において、テナガショウジョウバエのように脚を同性間闘争の武器として利用していることが分かっている例は極めて少ない。テナガショウジョウバエのオスにおける前脚の誇張化に影響を与えた要因を探ることで、他のハエ目昆虫で脚が武器として利用されない理由を明らかにできるかもしれない。本稿では、昆虫綱に属する種のうち、脚に性的二型性を有する種について、生息環境や食性・産卵基質などの生態との関連から、性淘汰に伴う脚の誇張化の理由を考察した。また、テナガショウジョウバエの形態と行動の種間差や系統間変異について紹介するとともに、現在進めている闘争と生活史形質との関連性についても概説する。これまでに組み立てられてきた精密な行動評価システムに加えて、今後は生活史形質や野外での生態を明らかすることで、テナガショウジョウバエが有するユニークな形質の進化メカニズムが明らかになることを期待している。
著者
荒木 希和子 福井 眞 杉原 洋行
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.169-180, 2017 (Released:2017-08-03)
参考文献数
54
被引用文献数
2

質を示すのは良性腫瘍である。また、悪性腫瘍(ガン)は、自らゲノムを改変したサブクローンを作り、そのニッチ幅もしくは環境収容力を広げることによって、周辺組織や他臓器に適応し、浸潤・転移する。これは細菌以外の生物個体レベルでは知られていない特異的な進化メカニズムである。マクロな生物の成育環境と同様、ガン細胞も変動環境下に存在し、治療や免疫は生体内での細胞に対する攪乱と捉えられる。そして、腫瘍細胞に突然変異等の遺伝的変化が蓄積するに伴い、ゲノム構成もサブクローン間で異なってくる。この遺伝的変化の時間的進行は、クローン性進化の分岐構造として、系統樹のような分岐図として示すことができる。組織内でのガン細胞の空間的遺伝構造は、組織内や成育地内で環境の不均一性とサブクローンの限られた分散距離を反映し、サブクローンがパッチ状に分布した構造になっている。このように、細胞レベルのクローン性の特性を生物のクローン性と比較することで、両分野に新たな研究の進展をもたらすことが期待される。
著者
酒井 理
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.55-64, 2020 (Released:2020-05-21)
参考文献数
68

近年の動物行動学では行動傾向の一貫した個体差に高い関心が注 がれ、幅広い分類群の動物種において個性の形成要因の探求や評 価手法の確立が進められてきた。しかしながら、発達的な観点が 当該分野の理解を複雑にしており、時間的に安定した個体差を扱 う「個性」と発達的な個体変化を扱う「発達可塑性」では互いに 概念の混乱を招いてきた。本稿では、発達的な観点が個性研究に おいてどのように扱われているかを俯瞰し、行動傾向の一貫した 個体差と個体の発達変化を統合的に扱う枠組みを紹介する。さら に、発達的な観点から個性を扱っている研究例を概観し、そこか ら見えてきた傾向や今後の展望について議論する。概念としては、 対象動物の生活史に基づいて一貫性を評価し、発達段階の変化し ない短期間における個性の存在と、重要な生活史イベントをまた ぐような長期間における個性の安定性とを区別することが重要で ある。また、発達的な観点から個性を扱うには、行動傾向の平均 値、個性の構造、個性の安定性の3点を意識することが有用となっ てくる。さらに、当該分野の文献調査から、様々な動物種におい て個性とその構造が発達段階をまたいで安定していないという傾 向が見受けられた。この結果は、個性は短期的には安定なものだ が長期的には不安定なものとして捉えることの重要性を提起する ものである。しかし現状では、個性の発達変遷や発達段階特異的 な構造に一般的な法則を見出すことが難しく、更なる知見の蓄積 と整理が必要である。
著者
大野 ゆかり 森井 悠太
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.65-70, 2021 (Released:2021-08-17)
参考文献数
20
被引用文献数
2

限られた研究費・労働力・調査時間の中で研究を行う研究者にとって、市民参加型調査は非常に魅力的な調査方法である。市民参加型調査には、広範囲で大量の生物観察データが得られる、得られたデータを使用して研究ができるといった、研究者にとってのたくさんのメリットがある。また、市民参加型調査は研究上の調査手法というだけではなく、研究のアウトリーチ活動になることや、市民の自然への関心を高めることができる、科学リテラシーの普及活動になるといった、研究者の社会貢献的な意味合いのメリットも、市民参加型調査から受け取ることができる。研究者(市民参加型調査の立案者)がこれらの市民参加型調査のメリットを十分に得て、目的を達成するためには、市民参加型調査の特徴を知り、適切なデザインをすることが必要である。海外における市民参加型調査の特徴を分析した研究によると、様々な市民参加型調査を主に、1.参加者が特定の少数で計画的に行うか/参加者が不特定多数で自由に行うか、2.参加者に求める調査の負担が大きいか/小さいか、の2つの軸で類別できるとされている。本特集ではさらに、3.調査対象の生物種が特定の少数か/不特定多数か、というもう1つの軸を加え、様々なデザインの市民参加型調査について紹介したい。東北大学の大野ゆかりが、不特定多数の参加者によって、簡便な調査方法を用いた、特定の生物群(ハナバチ類)を調査対象とする市民参加型調査について情報を提供する。京都大学の森井悠太が、たった1人の市民が多大な労力を払うことによってもたらされた、外来種・マダラコウラナメクジの調査データを基にした研究について情報を提供する。さらに、バイオーム(株)の藤木庄五郎博士は、不特定多数の参加者が簡便な調査方法で不特定多数の生物種を対象とする市民参加型調査について情報を提供する。最後に、東京大学の一方井祐子博士は、生態学に限らない様々な分野の市民参加型調査を俯瞰しつつ、市民科学(シチズンサイエンス)の可能性と課題を議論する。本特集では、研究者(市民参加型調査の立案者)が市民参加型調査のメリットを十分に得て、目的を達成するための適切なデザインの提示を目指す。本特集が読者らにとって、市民参加型調査の理想や、市民科学のもたらす未来について議論するきっかけとなることを期待したい。
著者
芦澤 淳 久保田 龍二 高橋 清孝
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.75-86, 2018 (Released:2018-07-23)
参考文献数
38
被引用文献数
4

アメリカザリガニによる生態系等への被害防止には、罠を用いた駆除が実施されてきたが、捕獲効率の向上を目的とした罠の選択や設置方法に関する十分な検討は行われていない。本研究は、捕獲個体の大きさと数、及び捕獲効率を指標に、籠網、アナゴカゴ、カニカゴ、網モンドリの効果的な使用方法を検討した。アメリカザリガニの捕獲個体数は、4 種類の罠すべてにおいて、罠設置後の時間経過と共に増加し、一旦ピークに達した後、減少した。試験期間全体では、籠網とアナゴカゴによる捕獲個体数が多かったが、罠を設置してから5 時間以内であれば、網モンドリによる捕獲個体数も籠網及びアナゴカゴと同程度に多かった。長時間の設置で餌の誘引効果が減少すると、罠からの脱出が生じたが、その程度は入口が開いている罠で高く、閉じている罠で低かった。そのため、アメリカザリガニの捕獲効率は罠の種類と設置時間によって異なり、0.2 日後には網モンドリで、1 日後と3 日後にはアナゴカゴで、7 日後には網モンドリ以外の罠で高かった。そこで、餌による誘因効果の経時的変化と罠からの脱出し易さを考慮して検討した結果、アメリカザリガニが高密度に生息している場合には、網モンドリを用いて数時間おきに1日2回以上の捕獲を行うこと、生息密度が低下し捕獲効率が低下した段階でアナゴカゴに切り替え長期間設置することで、効率的な捕獲が実現できると考えられた。
著者
新島 渓子 篠原 圭三郎
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.257-268, 1988-12-31 (Released:2017-05-24)
被引用文献数
1

The train millipedes, Parafontaria laminata group, are endemic in Central Japan and notorious for stopping trains during their outbreaks. Recently, it was established that the train millipede contains 3 species and 1 subspecies (P. laminata laminata ATTEMS, P. laminata armigera VERHOEFF, P. kuhlgatzi VERHOEFF and P. echizenensis SHINOHARA). The distribution of each species is restricted to a certain locality. P. laminata armigera is distributed in the mountainous region of Central Japan. Outbreaks occurred in autumn, at 8 year intervals, or in both 7th and 8th years in this region. The outbreak population consisted mainly of adults, but also 7th instars at times. The adult P. l. armigera laid eggs early in the next summer and died. The eggs hatched in the summer and the 1st instar larvae hibernated in the winter without molting. The larvae lived in the soil, molted once a year, and became adults after the 7th molt. The adults and some 7th instars swarmed on the soil surface in autumn, which was regarded as the outbreak. The swarming records of the other train millipedes were arranged according to the locality, although the periodicity of the outbreak is not clear.
著者
藤原 愛弓 和田 翔子 鷲谷 いづみ
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.131-145, 2015-11-30 (Released:2017-10-01)
参考文献数
35
被引用文献数
1

ニホンミツバチの分布の南限域である奄美大島の宇検村で採集された個体が、本州や九州とは明確に異なるハプロタイプを持つとの報告があり、奄美大島の個体群が、遺伝的に隔離された地域個体群である可能性が示唆されている。本研究は、奄美大島のニホンミツバチの保全上の重要性を評価し、保全のための指針を作るために必要な基礎的な生態的知見を得ることを目的として実施した。まず、1)ニホンミツバチの営巣環境を把握するとともに、2)奄美大島のニホンミツバチのワーカーと、東北地方や九州地方のワーカーとの体サイズの比較を行った。3)自然林の大木の樹洞に営巣するコロニーと、里地の石墓の内部空間に営巣するコロニーを対象として、ワーカーの採餌活動パターンおよび繁殖カーストの行動を把握するとともに、天候がそれらに及ぼす影響を把握した。4)自然林内の樹洞のコロニーにおいて、分封が認められたので、その過程を観察した。これら一連の調査に際して、5)天敵となり得る生物、巣に同居する生物と病気による異常行動の兆候の有無に関する記録を行った。本研究では、奄美大島のニホンミツバチは、鹿児島、岩手県のワーカー個体と比較して、体サイズが有意に小さいことが明らかとなった。また、ワーカーの捕食者は観察されたものの、コロニーの生存に大きな影響を与える捕食者や病気は観察されなかった。コロニーの採餌活動は天候の影響を強く受けていた。営巣は自然林だけでなく人工物でも観察されたが、亜熱帯照葉樹林内の樹洞のコロニーのみにおいて分封が観察された。一方、里地での墓、民家、学校の植栽木の樹洞に営巣した複数のコロニーが、殺虫剤などにより駆除されていた。これらのことは、自然度の高い森林内の樹洞が、ニホンミツバチの個体群維持に重要であることを示唆している。
著者
佐野 明
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.383-389, 2017 (Released:2018-05-01)
参考文献数
32

三重県内の洞穴に設置されたバット・ゲートの形状とコウモリ類の生息状況について調査した。10カ所の洞穴に設置されたバット・ゲートには、格子柵と上半が空いたハーフゲートがあった.翼が広短型のキクガシラコウモリ、コキクガシラコウモリ、テングコウモリと中間型のモモジロコウモリは格子柵の設置された洞穴でも生息が確認されたが、狭長型のユビナガコウモリはハーフゲートしか利用していなかった。したがって、ユビナガコウモリが分布する地域ではハーフゲートを設置するのが望ましい。
著者
富田 啓介
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.2014, 2021-04-20 (Released:2021-07-12)
参考文献数
28

西日本の丘陵地を中心に広く分布する湧水湿地は、希少な動植物種のハビタットとして保全上重要な生態系である。しかし、行動範囲の広い哺乳類や鳥類の生活空間としての機能や、それらの行動が湧水湿地の生態系へ与える影響はほとんど知られていない。本研究では、東海地方の湧水湿地を対象に赤外線自動撮影カメラによるカメラトラップ調査を行い、上記の問題を議論するための基礎的データとして、湧水湿地に出現する哺乳類と鳥類の種組成、撮影頻度、行動を把握した。延べ 4,602日の撮影によって、 7箇所の湧水湿地とその隣接地から 13種以上の哺乳類と 19種の鳥類を確認した。哺乳類ではイノシシが最も多く出現した。湧水湿地に出現する哺乳類の種組成は、湿地周囲の森林とほとんど変わらなかったが、撮影頻度は、総じて湿性草原の成立する場所で低くなっていた。哺乳類と鳥類は湧水湿地内で採餌、泥浴びや水浴びを行っており、排泄行動も確認された。このことから、湧水湿地は広域を移動する哺乳類と鳥類にとって重要な生活空間であると考えられた。また、哺乳類と鳥類の行動は、植生の攪乱や種子散布を通じて、湧水湿地の生態系に少なからぬ影響を与えている可能性が示唆された。詳細な影響内容や程度の解明は今後の研究に委ねられるが、湧水湿地の生態系の保全・管理を行うに当たっては、哺乳類と鳥類の行動にも十分配慮する必要がある。
著者
今埜 実希 清和 研二
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.319-328, 2011-11-30 (Released:2017-04-26)
参考文献数
74
被引用文献数
4

Janzen-Connell(J-C)モデルは、森林の種多様性を説明するモデルの一つで、「群集内の多くの樹種において種特異的な天敵が密度依存的な死亡を引き起こすことによりそれらの共存が促進される」というものである。このモデルは熱帯を中心として検証されてきたが、近年では温帯でも検証が始まってきており、多くの実証例が報告されている。しかし、J-Cモデルの検証は単一樹種や種子・実生段階のみで行われたものが多く、さらに天敵の種特異性について検証した例は極めて少ない。本論では、(1)一つの林分に共存する複数種で同時にJ-Cモデルが成立するか、(2)病原菌や植食者に種特異性はあるのか、あるとすればどの程度か、(3)J-C効果はどの位の生活史段階まで持続するのか、について、実証例を挙げながら紹介し、J-Cモデルの成立要因について議論する。
著者
矢島 稔
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.60-66, 1966-04-01 (Released:2017-04-08)

The behavior of the adult winter moths in an oak forest were studied in the winter season, in relation to the variation of the temperature and light. Among the 12 species of winter moths distributed around Tokyo, the results of study on Erannis obliquaria and E. dira are as follows : 1) In a deciduous forest near Tokyo, there are three different temperature zones : that is, the southern, the central and the northern part of the forest. Each part was divided into three layers, that is, the lower, the middle and the upper parts. 2) Adult males tended to concentrate at the southern part of the forest, and their movement in the forest was influenced by the variation of temperature and light. 3) The emergence of the moths was seen at noon when the ground temperature reachedthe maximum. After the emergence the female moth climbed up and down the tree, with relation to the variation of the temperature, and during night they remained at the middle layer where the hight temperature was higher than the other layers. 4) The female moths were more active than the male under the lower experimental temperature. The male moths of which wings were artificially eliminated, could walk more at the layer of lower temperature than the normal males, probably because of the wing area. 5) According to the variation of the light intensity, under the experimental hours, the males begun to walk and fly under the light of 5 Lux, and the females begun to walk under the light of 25〜30 Lux, but below 10 Lux, both stopped.
著者
飯田 貴天 村上 哲生 南 基泰 藤井 太一
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
pp.2115, (Released:2022-04-28)
参考文献数
56

ハッチョウトンボ Nannophya pygmaeaが生息している岐阜県可児市大森の湧水湿地群は、太陽光発電施設建設予定地となった段階で開発業者と地域住民らの事前協議によって湧水湿地群を保存することになった。本研究では、 8つの湧水湿地に生息するハッチョウトンボ個体群の遺伝的多様性まで考慮した保全のために、ミトコンドリア cytochrome c oxidase subunit I遺伝子部分領域( 658 bp)を用いて、各湧水湿地に生息する個体群の遺伝的多様性及び遺伝的分化について解析した。 294頭から 8つのハプロタイプが確認され、各湧水湿地に生息する個体群のハプロタイプ多様度は、生息している湧水湿地の面積および傾斜角度、湧水湿地表層水の pHおよび電気電導度、湧水湿地周辺部の植生高と有意な相関関係は認められなかった(ピアソンの積率相関分析, p > 0.01)。また、 8個体群間の遺伝的分化係数( pairwise Fst)を算出した結果、有意な遺伝的分化は全ての個体群間で認められなかった( 10,000回の Permutation test,p > 0.01)。これらの結果から、本湧水湿地群のハッチョウトンボ個体群は、各湧水湿地間を遺伝的交流の制限なく移動している同一個体群であると考えられた。本湧水湿地群のハッチョウトンボ個体群の遺伝的多様性維持のためには、各湧水湿地間の遺伝的交流の制限となる生息地適性の低下や湧水湿地の消失を防ぐ必要がある。現在、市民によって実施されている湧水湿地の水質のモニタリング、湧水湿地内への土砂流入・堆積のモニタリング・除去、周辺から湧水湿地内に侵入した植物の除去を今後も継続し、定期的にハッチョウトンボ個体群の遺伝的多様性についても評価していく予定である。
著者
高橋 純一 福井 順治 椿 宜高
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.73-79, 2009-05-30 (Released:2018-02-01)
参考文献数
41

絶滅危惧種であるベッコウトンボの羽化殻を用いたRAPD解析によって、ベッコウトンボの集団に直接影響を与えることなく、遺伝的多様性を明らかにした。静岡県磐田市桶ヶ谷沼地域の3つの発生地で採集した60個体に対して80種類のプライマーを使用しRAPD解析を行った。17種のプライマーから20個の遺伝子座で多型が検出され、12種のDNA型が見つかった。そのうち集団特異的なDNA型が合計4つ検出された。遺伝子多様度は平均0.317、遺伝子分化係数は平均0.07となり、集団間の多様性は小さかった。AMOVA分析によっても集団間の分化は検出できなかった。また3集団から見出された変異は98.7%が集団内の個体間変異に、集団間では1.3%となった。クラスター分析からも集団間は非常に類縁関係が高いことが明らかになった。
著者
齊藤 秀樹 竹岡 政治
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.121-126, 1989-08-30 (Released:2017-05-24)
被引用文献数
1

The structure of male flowers of Cryptomeria japonica D. Don, which consist of scales, pollen sacs and pollen grains, was studied using samples from five stands of different ages and origins of seedlings or rooting, and the methods for estimating the number of pollen grains contained in a flower were discussed. Each scale bears between 0 and 7 pollen sacs, with a mode of between 3 and 5 pollen sacs for each stand, the number varying according to stand age. The number of pollen grains per scale increases with the number of pollen sacs present. The mean number of pollen grains per single pollen sac for scales bearing three or more pollen sacs has a constant value in each stand and each year. When restricted by a small sample size, the multiplication of this constant value by the total number of pollen sacs per flower gives a useful estimate of the number of pollen grains contained in a flower. A rough estimate of the number of pollen sacs per flower may be obtained by using the proportional relationship between the total number of pollen sacs and scales on both a stand and year basis. The total number of pollen sacs per flower in the age sequence of stands consisting of seedlings grown from seeds declines with increasing stand age. However, the flowers from a young stand planted with short trees by rooting have the same number of pollen sacs as those from the mother stand. No rejuvenescence of male flowers is found in young trees that have been propagated vegetatively.
著者
遠藤 辰典 坪井 潤一 岩田 智也
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.4-12, 2006-06-25 (Released:2018-02-09)
参考文献数
28
被引用文献数
12

砂防ダムなど河川工作物による段差は、河川に生息する生物にとって往来を妨げる障壁となる。特に魚類は、川に沿った線的な移動を余儀なくされることから、隔離の影響が著しく大きくなる。そのため、河川工作物によって分断化された場合、工作物上流に隔離された集団が絶滅している可能性がある。そこで、本研究では河川工作物がイワナSalvelinus leucomaenisとアマゴOncorhynchus masou inhikawaeの生息分布に与える影響を調査した。2004年6月から9月に、放流魚と交雑の無い在来個体群の生息が期待される富士川水系の小河川において野外調査を行った。流程に沿った潜水目視により2種の分布域を調べ、GPSによって分布最上流地点および河川工作物の正確な位置を把握した。在来個体群が生息していた29河川に設置されている工作物は計356基(1河川あたり12.3基)であり、全てにおいて魚道は併設されていなかった。調査の結果、1970年代に河川最上流部までイワナ、あるいはアマゴが生息していたが、本調査を行うまでに工作物の上流域で絶滅したと推定される河川が、両種ともに確認された。また、2種の共存河川も5河川から1河川に減少していた。ロジスティック回帰分析を用いて、最上流にある河川工作物(UAB)より上流の2種の生息に影響を及ぼす要因を検討した結果、種、河川にある工作物数、UABより上流の集水面積が有効な説明変数として選択された。すなわちUAB上流の個体群の存在確率は、アマゴの方が低く、またUAB上流の集水面積(生息水域)が小さいほど、工作物数が多いほど低かった。このモデルから、個体群維持(50%個体群存在確率)に必要な集水面積は、イワナでは1.01km^2、アマゴでは2.19km^2と推定され、これより上流に工作物が設置された河川ほど、工作物上流に隔離された集団が絶滅する可能性が高くなることが示された。
著者
種子田 春彦 大條 弘貴 大塚 晃弘
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.447-464, 2016 (Released:2016-08-24)
参考文献数
126
被引用文献数
3

植物体内の水輸送は、個体が適切な水分含量を保ちながら光合成生産を行うために重要な現象である。通水コンダクタンスはこうした水輸送の速度を決める要素のひとつであり、植物種間や環境によって大きく変化する。そこで、通水コンダクタンスを調べることは、植物の水利用戦略を考えるうえで重要な情報を与える。本稿は、根、茎、葉の3つの組織における通水コンダクタンスの測定手法について、それぞれの組織の水の流れ方と手法の利点と欠点を中心に解説した。
著者
齋藤 智之 清和 研二
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.229-237, 2007-07-31 (Released:2016-09-15)
参考文献数
60
被引用文献数
3

生理的統合は、同化産物や栄養塩類や水、情報などを1つの個体内の複数のラメット間で地下茎や走出枝を通じてやりとりする現象である。クローナル植物は、一個体のおかれている面積より小さいスケールで撹乱や資源の不足などが生じるとその環境の不均一性に応答し、生理的統合がより効果的に機能することが知られている。ササは日本の植生を代表する多年生の矮性タケ亜科植物であり、長い地下茎に複数の地上稈をもつクローナル植物である。また、特に森林群集の構造やダイナミズムに大きな影響を与えることがよく知られている。したがって、ササのクローナル植物としての適応戦略を明らかにすることは、日本の森林の群集構造や遷移過程などを明らかにする上でも極めて重要だと考えられる。森林の林床は一般的に暗いが、頻繁に形成されるギャップにより、光資源は空間的に不均一である。著者らは、ササ1つ1つの個体がこのようなギャップと林冠下にまたがるように地下茎を伸長させていることを見いだした。このようなササの空間分布パターンは、生理的統合がその成長や資源獲得に重要な役割を果たしていることを示唆している。著者らはこれまでにいくつかの操作実験を行い同化産物と窒素の転流を確認し、チマキザサ(Sasa palmata)において生理的統合が機能することを実証してきた。さらに、森林の林床でどれ位の距離を実際に転流するかを調べた。本稿はこれらの実験結果を基に、ササにおける生理的統合の機能と森林における資源獲得戦略について論考した。