著者
井山 弘幸
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.1-4, 2001-09-23 (Released:2017-11-17)
参考文献数
4
被引用文献数
1

科学や科学者についてわれわれが抱くイメージは、メディアや教育によって媒介されて形成されるものだが、近年これらのサイエンス・イメージが現実から乖離していることを指摘する者が増えてきた。歪められたイメージは、科学という人類の貴重な知的遺産について誤った理解を民衆に与え、時には過大な期待を促したり、過度の嫌悪を催させたりしている。サイエンス・イメージが形成されてきた歴史を振り返りながら、個々の類型の摘出を行いつつ、その生成原因を特定し、実際の歴史と対照しながら、科学教育の問題として捉え直す作業を行う。
著者
下村 勝平
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.39-42, 2020-12-13 (Released:2020-12-09)
参考文献数
3

本稿では,中学校数学での「証明」学習の困難を背景に,その改善の一方略として算数科における「説明」に着目した.研究目的を算数科において行われる「説明」の内容を対象とし,子どもがどのように「説明」を捉え,「説明」に関する概念を獲得していくかについて明らかにすることと定めた.そこで,「説明」の内容を検討できるような実験授業を計画・実施した.そこから,抽出児を選定し,分析を加えることによって「説明」に関する概念形成の様相を捉えた.
著者
小川 正賢
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.41-46, 2017-11-11 (Released:2018-07-01)
参考文献数
25
被引用文献数
1

「大学教育の国際化」という文脈で,大学の授業を英語で行うことが求められるようになってきているが,「教授学習言語を英語化する」とはいったい「具体的にはどのようなことなのか」を問う研究は多くない.本稿では,「英語と日本語との関係性」という視点から,大学教育の教授学習言語問題を見直す第一歩として,日本の理学系高等教育の創成期での「関係性」を探ることを試みる.具体的には,先駆けの一つであった札幌農学校を事例として取り上げ,そこでの教授学習言語の実情(創設期の外国人教師による英語の講義が,卒業生を中心とした日本人教師になって,講義が日本語化する状況)を受講ノートという史料に基づいて解読し,「英語と日本語との関係性」について,問題点を整理する.
著者
金児 正史
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.21-24, 2020-03-07 (Released:2020-03-04)
参考文献数
5

理科と数学を総合する学習に関する筆者の研究の1つとして,物理の単振り子の等時性に関する公式を導出する過程に着目し,これを,数学と物理を総合する題材に位置づけようとした。高校物理の等時性の公式の導出にあたっては,単振り子の糸の振れの角θが微小の時,sinθ≒θとなることを活用している。これでは単振り子の実験そのものが成り立たない状況である。しかし実際には振れの角θが1rad程度であれば,等時性が保たれる。そこで筆者は,振れの角θがかならずしも微小でない場合の公式の導出について,学び直した。その結果,テイラー展開の数学的知識の活用は必要だが,大方は数学Ⅲの学習内容を活用できることが分かり,理数探究への活用の可能性が見えてきた。
著者
吉田 安規良 島田 悠那 馬場 壮太郎
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.355-358, 2020

<p>地学分野おける野外観察学習は,小中学校ともに学習指導要領で重要視されているものの実施率が低い.本研究では,理科の学習指導に授業者の視点でICTを身近なものとして活用するための在り方を検討するため,マーカーレス型ビジョンベースAR技術を用いて,沖縄で実際に観察可能な断層としゅう曲に注目した中学校向け地層観察代替教材を製作した.また,教材製作過程から「理科を教える教師教育」の在り方を展望した.学習内容に興味関心がある学生は,高度なICT活用能力が無くても大学での学びを生かして自らのアイデアを基盤にARを利用した地層観察代替教材が製作可能である.製作した教材は,現職教員からARと携帯情報端末を用いるという枠組みは肯定的に評価されたが,内容構成や使用のメリットに関しては十分には受け入れられなかった. </p>
著者
城間 吉貴 北條 優 福本 晃造 レンゼッティ アンドレア 宮国 泰史 古川 雅英 杉尾 幸司
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.335-336, 2020

<p>琉球大学では,科学技術振興機構の支援を受けて2018年度より琉球大学GSCプログラム(琉大カガク院)を実施している。この事業では,早期から高校生の基盤的能力を伸長させる機会を提供している。このプログラムによる受講生の能力・資質の伸長を把握するため,受講前と受講後に受講生の能力評価を実施した。その結果から,琉大カガク院の受講により,受講生の研究基礎力が多面的に成長していることが示唆された。</p>
著者
吉田 安規良 岡本 牧子 江藤 真生子
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.33-38, 2020

<p>「一人一台端末」という教育ICT環境を活用できる教員の養成には,教職志望学生のICT活用能力の実態を様々な観点から知る必要がある.そこで,休校中の遠隔授業を想定して,中学・高等学校理科教員志望学生34人の教材探索力を把握した.8割の学生が,学校の授業で一般的に行われる授業者による説明を代替できる動画を含むコンテンツを提示した.ICTを活用したモデル実験や家庭学習では実施が相当困難な実験観察の代替を意図した解答が10人から寄せられた.「教員のICT活用指導力チェックリスト」と照合した結果,学生は,動画や映像などを利用して児童生徒の理解へつなげること,知識の定着や技能の習熟をねらった個別最適化学習,児童生徒が自ら当該コンテンツにアクセスできるような指導,他単元や他教科など全体を通した活用を想定できていたが,児童生徒がコンピュータを使ってアウトプットすることは想定していないことが推察できた.</p>
著者
石井 俊行 八朝 陸 伊東 明彦
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.222-233, 2016 (Released:2016-06-29)
参考文献数
14

This paper examines whether elementary school students’ understanding of parallel and serial connections of dry cells was improved by teaching the concept of electric voltage.Students in the experimental group were taught the concept of electric voltage for 20 minutes using analogy of water flow, such as, the dry cell is like a water pump to uplift water and the voltage stands for the height of uplift.The experimental group, who was taught electric voltage, showed a significantly higher achievement score than the control group in the post test. Moreover, the way of thinking about the brightness of the miniature bulb differed between groups on the circuit in which three dry cells were connected parallel.On the other hand, students in the experimental group showed more scientific answers to a descriptive question about electricity compared to the control group. The concrete understanding about phenomena regarding electricity may promote a scientific way of thinking.The results of this study imply that we can introduce the concept of electric voltage to elementary school science class if we exercise ingenious ways of teaching, even though the concept is not being taught under the present elementary school curriculum in Japan.
著者
小林 和雄 大高 泉
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 30 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.423-424, 2006-08-10 (Released:2018-05-16)
参考文献数
5

科学的な思考を科学的な探究(問題解決)の全過程における一連の思考と考えるならば,これらの諸過程における生徒の実態を把握することは科学的な思考力を育成するために不可欠である。その過程の主要な要素である仮説を設定するには「仮説」とは何かの認識が必要であり,そのような視座からAnton E. Lawsonらは未知の課題に対する問題解決のための仮説演繹的推論を行うには,「仮説」と「予想」の区別が重要であることを指摘している。本稿では,A E. Lawsonらが米国の高校と大学の生物教科書に対して実施した「仮説」と「予想」の定義に関する研究を参考にして,日本の中学生,高校生,大学生の「仮説」と「予想」に対する認識を質問紙法で調査したものである。その結果,A E. Lawsonらの定義するような「仮説」と「予想」の区別ができる生徒や学生は,非常に少ないことが明らかになった。
著者
野口 大介
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.259-260, 2020 (Released:2020-11-27)
参考文献数
10

全国の高校生によって発表された最近の化学研究テーマは従来の枠組みの区分には収まらない多様なものが増加する傾向にある.高校化学で学ばれることになる新たな項目「化学が果たす役割」に適合しうる先端的なテーマがある一方で,プラスチック(合成高分子)の再利用をテーマとしたものはほとんど見当たらなかった.
著者
仲達 修一 白神 陽一朗
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.12-24, 2018 (Released:2018-07-11)
参考文献数
22
被引用文献数
1

Okayama Prefectural Kurashiki Amaki Senior High School has worked on the practical study of scientific English since 2005, when the school was given a Super Science High School (SSH) assignation by the Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology (MEXT). In our school, and in this paper, the term “Scientific English” means “an approach to use English in science classes, and to make or practice slides in English”. As a result of adopting English into science classes in our Junior High School (established as an addition to the senior high school in 2007) and Group Research classes in our Senior High School, an attitude of attempting to communicate actively in English on scientific topics is emerging. With many opportunities to give presentations at science competitions in recent years, students’ presentations are now becoming highly esteemed in both content and English levels. This paper reports on the principle and practice of the implementation of “Scientific English” in our high schools, and teaching methods that are effective for Japanese students.
著者
安藤 秀俊 中村 孝之 小原 美枝
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.148-156, 2014 (Released:2014-09-11)
参考文献数
27

The need for cooperation between science and mathematics teaching was emphasized by the revision of the national curriculum in 2008. However, a lesson plan which involves cooperation between science and mathematics is rarely performed in the curriculum today. The purpose of this research is to propose a lesson which associates science and mathematics teaching and verify its educational effectiveness in high school. A lesson plan for mathematics class was prepared for 66 high school students, in order to apply Maraldai’s angle by inquiring the area of the film stretched across the surface of a soap film, and inside a regular tetrahedron. When Wilcoxon’s signed-rank tests were performed on 17 common items in the pre-and post-questionnaires before and after the lesson, significant differences were found in answers, such as “Science is required for mathematics”, “By studying mathematics we come to recognize a nature”, and “Science and mathematics are subjects which have close relation”. These results suggest that there was an clear educational effect in the lesson in which the combination of science and mathematics teaching were practiced.
著者
大村 優華 猪本 修
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.33, no.7, pp.17-20, 2019-06-01 (Released:2019-05-29)
被引用文献数
1

中学校理科における音の単元で,音色を授業で扱うための実験教材の開発について検討をおこなった.現行の学習指導要領では,中学校1年次において音による現象という単元を学習する.そこでは音の伝わり方や,音の3要素である音の大きさ,高さ,音色があることを学習する.音の3要素のうち大きさと,高さについては実験活動を通して理解ができるような授業が展開されることが多いが,音色に着目した授業はあまりなされていない.音色を波形から読み取ることが難しいなどの理由から音色に関する実験活動が乏しいのが現状である.そこで,音色について分かりやすく効果的に授業で扱えるような,複数の音叉を用いた実験教材の開発をすることにした.純音からなる音叉の音を複数個同時に鳴らすことによって,音色を形成する要因である倍音列を人工的に作り出すことが可能となる.これにより段階的に響きと波形の変化を学ぶことができるため,音色の理解が深まることが考えられる.また,本手法により単純な構成の波形をとる楽器の音色を再現することができる.
著者
中越 進
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 40 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.79-82, 2016 (Released:2018-08-16)
参考文献数
4

本研究の目的は,確率の実践と考察を通して,小学校算数科における確率の位置づけの示唆を得ることである。そこで,ニュージーランドの初等中等教育で実践されている確率指導を参考にし,小学校第3学年で授業実践を行い,分析,考察を行った。これらの結果から,以下の3点が明らかになった。① 「確からしさの考え(主観確率から間主観確率)」から導入することは有効である。② 日常事象を取り上げ,起こりやすさを定性的に表す活動が,確率的な実験場面を数値で表すことにつながり有効である。③ 現行の学習指導要領におけるカリキュラムにも「確からしさの考え」を位置づけ導入することができる。これらをもとにして,小学校における確率指導の実践に向けての示唆を得ることができた。
著者
山下 修一
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.3-11, 2002-03-10 (Released:2017-06-30)
参考文献数
12
被引用文献数
5

In this research, in order to get some ideas regarding the activity of communicating, I investigated what differences occur in the communication among homogeneous groups and heterogeneous groups. As a result of this research, the following four points became clear, and I got closer to understanding the makeup of groups in the activity of communicating. 1 ) In a homogeneous group which consisted of "superiors," the members all tended to agree on the same scientifically correct conclusions, but because they omitted explanatory comments, sufficient communication did not materialige. 2 ) In a homogeneous group which consisted of "inferiors," even if the communication were advancing on a mistaken premise, the function which corrects such mistakes did not operate, and general understanding was not deepened. 3 ) The ideas of superiors in the heterogeneous group were sometimes confused by the remarks of inferiors. 4 ) Communication in the heterogeneous group was fruitful, and, especially for the inferiors in the group, there was effective communication which deepened general understanding.
著者
大高 泉
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.293-294, 2001-12-10 (Released:2017-06-30)
被引用文献数
1
著者
川本 佳代 新井 紀子 内田 智之
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.73-78, 2005-11-05 (Released:2017-11-17)
参考文献数
10

オンライン上でカリキュラムを越えた学びを実現してきた「e-教室」をSSH指定校に導入することにより、高度な学びを目的とするオンラインと対面式の授業とのブレンディッドラーニングを実践した。本稿はその方法と効果を明らかにしている。投稿内容、レポート、アンケートを分析した結果、主な効果として、(1)クラス全体及び個人の解答に至る過程を中心とする記述力が向上したことから高度な学びが実現し、(2)相当数の生徒の数学に対する興味が深まり、数学に対する考えがより肯定的になり、(3)通常の授業よりも「深く考えられる」「面白い」と感じたという点があげられ、「e-教室」導入の意義があったといえよう。
著者
今野 法子 安川 洋生
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.27-28, 2013 (Released:2018-04-07)
参考文献数
3

私たちヒトは約 60 兆個の細胞が情報交換しながら一つの個体を作る多細胞生物だが,細菌は個々の細胞が独立して生活する単細胞生物である.そのため細菌は独自に生活していると考えられていたが,最近の研究により細菌は集合体を形成し,互いに共存していることが分かった.その細菌の集合体をバイオフィルムという.本演題では,子供たちが身の回りの細菌について理解を深め,科学教育への興味を増してもらえるように,食品微生物や環境微生物のバイオフィルム形成と,操作の簡単な卓上走査型電子顕微鏡によるバイオフィルムの観察法を紹介する.
著者
日置 洋平 隅田 学 中山 迅
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.55-60, 2000-12-09 (Released:2017-11-17)
参考文献数
10
被引用文献数
1

In this study, we investigated elementary student's understanding about dissolving. 21 G5 students and 21 G6 students were interviewed using"Contradiction -Explanation Method." The results were as follows. The onotological presupposition that unsupported objects fall downwards, was crucial base of student's understanding about dissolving. Subjects showed five types of conceptual integration of their ontological reasoning with scientific reasoning. Furthermore, the development trajectory was proposed in knowledge acquisition about the uniformity of solution. Finally, the implications of these results for science education were briefly discussed.