- 著者
-
西野 秀昭
- 出版者
- 一般社団法人 日本科学教育学会
- 雑誌
- 日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
- 巻号頁・発行日
- vol.25, no.2, pp.111-116, 2010 (Released:2018-04-07)
- 参考文献数
- 6
ヤマトヒメミミズ Enchytraeus japonensis は,有性生殖に加え,「破片分離」による数体節からなる断片から完全な個体を再生するユニークな無性生殖によっても増殖することができる.中学校理科「生物の成長とふえかた」の単元において,有性生殖は身近でもあり,学習における類例には事欠かない.しかし無性生殖は,単細胞生物の細胞分裂などの類例しかなく,有性生殖は多細胞生物で行い,無性生殖は単細胞生物で行うような印象となってしまう.生殖の方法は,生物種と同様に多様であり,子孫の残し方の工夫は,生命尊重の概念や生命への畏敬の念にもつながる学習の対象となるものと考えられる.本研究では,破片分離という珍しい無性生殖法に着目し,ヤマトヒメミミズの破片分離の人為的誘導を中学校でも実施できるよう検討した.また,ヤマトヒメミミズの破片分離を導く別の簡易な方法として,培地の寒天を市販の食用寒天に置き換える方法を見いだした.この方法では,市販品を用いることで,経費も安価で済み,生徒各人が自分の寒天培地上でヤマトヒメミミズを培養するだけで破片分離による無性生殖を導くことができる.「生物の成長とふえかた」単元への導入に際し,本研究で示す観察・実験は寒天培地にヤマトヒメミミズを移して観察するのみで容易であり,実験の成功体験もほぼ確実であることから,中学校理科授業での効果が期待される.