著者
大塚 明子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.171-181, 2003-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究は、17歳の身体醜形障害(BDD)を伴う強迫性障害(OCD)の女性患者に対して、曝露反応妨害法(E/RP)を中心とする認知行動療法(CBT)を行った結果、 CBT開始3か月間で不潔恐怖を主とする強迫観念、強迫行為やBDD症状に改善がみられた事例の報告である。治療においては、治療への動機づけや継続性を高める心理教育、治療意欲を高める課題を設定し、宿題でE/RPを繰り返し、成功体験をセルフモニタリングすることを通して、セルフコントロール力を高めることに重点が置かれた。最後に、本研究の結果をもとに、OCDと生物学的ならびに認知行動学的な共通性が指摘されているBDDに対するCBTの効果について考察した。
著者
境 泉洋 平川 沙織 野中 俊介 岡崎 剛 妹尾 香苗 横瀬 洋輔 稲畑 陽子 牛尾 恵 溝口 暁子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.167-178, 2015-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、ひきこもり状態にある人(以下、ひきこもり本人)の親を対象としたCRAFTプログラムの効果を検討することであった。本研究においては、CRAFT群7名、自助群7名が設定された。その効果測定として、ひきこもり状態の改善、相談機関利用の有無、否定的評価尺度、セルフ・エフィカシー尺度(以下、エフィカシー)、心理的ストレス反応尺度(以下、SRS-18)、ひきこもり家族機能尺度(以下、家族機能)について親に回答を求めた。その結果、自助群よりもCRAFT群において、ひきこもり状態の改善やひきこもり本人の相談機関の利用が多く認められた。また、CRAFT群、自助群のいずれにおいても、親の「エフィカシー」が向上し、SRS-18の「抑うつ・不安」、「不機嫌・怒り」、家族機能の「正の強化」、「負の強化」が改善された。考察においては、親の年齢、ひきこもり期間を統制したうえで無作為割り付けによる効果検証の必要性が指摘された。
著者
長江 信和 増田 智美 山田 幸恵 金築 優 根建 金男 金 吉晴
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.113-124, 2004-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
2

外傷後認知尺度は、外傷体験者の認知を測る尺度である(Foa et al., 1999)。外傷後認知は、否定的なライフ・イベントの体験者にみられる外傷的反応の予後に影響を及ぼすと考えられる。本研究では、大学生における否定的ライフ・イベントの体験の分布を調べるとともに、その体験者を対象として日本版外傷後認知尺度の尺度化を試みた。大学の教場で調査を行った結果、回答者2,622名のうち53.5%は自然災害や交通事故などの体験者であることが判明した。一方、外傷後認知尺度の翻訳版がバックトランスレーションの手続きを経て作成された。否定的ライフ・イベントの体験者に対して郵送調査を行った結果、Foa et al.(1999)と同様の3因子が見いだされ、良好な再検査信頼1生と基準関連妥当性が確認された。日本版外傷後認知尺度は、否定的ライフ・イベントの体験者である大学生一般に適用できる可能性が示唆された。
著者
山本 彩
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.115-125, 2014-05-31 (Released:2019-04-06)

厚生労働省研究班は社会的ひきこもりを、その背景要因によって精神障害群、発達障害群、パーソナリティの偏り群の3群に分類し各々のストラテジーを提案した。また本人に相談動機がない場合の方法としてCommunity Reinforcement and Family Training(以下、CRAFT)を推奨した。しかし2013年現在CRAFTを社会的ひきこもりへ応用した報告は数件見られるのみである。また社会的ひきこもりの背景に自閉症スペクトラム障害(以下、ASD)特性がある場合、CRAFTとASD特性への支援を組み合わせる必要が指摘されている。筆者はASD特性を背景にもつ社会的ひきこもりへ、CRAFTとASD特性への支援を組み合わせた介入を行うことで支援導入に成功した2事例を経験した。本稿ではその介入方法と経過を報告し、最後にASD特性を背景にもつ社会的ひきこもりへCRAFTを応用適用することの意義や課題について考察を加えた。
著者
高石 昇
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.39-46, 1997-03-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

11ヵ月の問,重症高所恐怖症と外出恐怖に悩む一症例が9日間でイメージ系統的脱感作を達成し,次いで28日間の現実脱感作によって,全治に至ることが出来た。短期治癒の要因として,病態としては,社会恐怖その他の神経症の合併のないこと,罹病期間の比較的短いこと,患者特性として,高い知的レベル,強い治療動機づけ,回避傾向の少なさなどが考察された。投薬は本治療前後に変法なく,従ってその効果は相殺されると思われ,また,恐怖に対する認知再構成も困難であり,本例の治療経験は改めて脱感作法のすぐれた有効性とその適応要因を示していると思われる。
著者
伊藤 大輔 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.13-22, 2009-01-31 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、致死性のないトラウマが外傷後ストレス反応、トラウマ体験後の認知に及ぼす影響を検討するとともに、致死性のないトラウマ経験者の認知と外傷後ストレス反応の関連を、致死性のあるトラウマ経験者との比較から検証することであった。大学生302名を対象に、外傷体験調査票、改訂版出来事インパクト尺度、トラウマ体験後の認知尺度が施行された。その結果、重篤な外傷後ストレス反応を発症・維持していた人数に、致死性のあるトラウマ経験群と致死性のないトラウマ経験群で有意差はみられなかった。また、自責の念は、致死性のないトラウマ経験群のほうが有意に高かった。さらに、トラウマ体験後の認知と外傷後ストレス反応の関連は、致死性のあるトラウマ経験群のほうが致死性のないトラウマ経験群と比較して強いことが示された。以上の結果から、今後、致死性のないトラウマ経験者の特異的な認知内容を検証する必要性が示唆された。
著者
原 信一郎 小宮山 博朗 前田 基成 中川 哲也
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.28-36, 1993-03-31 (Released:2019-04-06)

27歳男性の一次性夜尿症患者に対して,認知行動療法的アプローチを施行した結果,治癒にいたった症例を経験した。Kimmel法を柔軟に適用し,排尿我慢訓練を行なった。同時に,経時的に膀胱の超音波エコー像を撮り,患者に膀胱容量の増加を画像的にfeedbackすることによって我慢訓練を強化することに努めた。また,夜尿の持続は膀胱が小さく尿を保持できないため,という患者の強い思いこみの修正も行なった。この画像的feedbackの試みは,簡便で侵襲性もなく,患者の治療意欲をより高めていくすく・れた方法であると思われた。
著者
東 美穂 冨樫 耕平 大森 由紀乃 山本 淳一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.235-247, 2021-09-30 (Released:2022-01-12)
参考文献数
11

本研究では、発達障害のある幼稚園年長児に対して、「家族」「先生」「友達」とのコミュニケーション行動の獲得を支援する家庭用教材を作成し、オンライン発達行動支援を実施した。課題間多層ベースライン法を用い、カテゴリーごとの介入効果を検討した。支援者が母親に対して行った半構造化面接をもとに、標的行動を選定した。支援者はプローブ試行のみを実施し、母親が家庭トレーニング試行の実施者となった。その結果、3種類のコミュニケーション行動が獲得され、100%に近い正反応率で推移した。1カ月後フォローアップでも高い値を示した。母親の満足度調査の結果からは、高い満足度と低い負担度が得られた。
著者
吉田 裕彦 井上 雅彦
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.311-323, 2008-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
2

本研究は、通常学級に在籍している自閉症児におけるボードゲーム(SSTゲーム)を利用した社会的スキル訓練の効果について検討することを目的とした。通常学級での朝の自由時問における行動を般化場面として事前に測定した。訓練は、ボードゲームをクラスの仲間とともに20分の休み時間を利用して4週間に8回実施した。ゲームにおいてプレーヤーは、サイコロをふり、出た目の数だけコマを進める。チャンスカードのマスにとまると、カードに指示されたロールプレイを仲間と演じる。正しく演じられると2人ともにポイントシールを与えられる。その結果として、ターゲットにされた社会的スキルが向上し、般化場面における相互交渉が増加した。SSTゲームの効果と有効性について考察する。
著者
齋藤 順一 柳原 茉美佳 嶋 大樹 岩田 彩香 本田 暉 大内 佑子 熊野 宏昭
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.15-26, 2017-01-31 (Released:2017-10-11)
参考文献数
30
被引用文献数
1

本研究の目的は、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)のコア・行動的プロセスである価値づけ、コミットされた行為を測定する尺度を作成し、その信頼性と妥当性を検討することであった。研究1における探索的因子分析の結果、本尺度は【動機づけ】・【行動継続】・【強化の自覚】の3因子から構成された。本尺度は、十分な内的整合性、収束的および弁別的妥当性が確認された。研究2では、構成概念妥当性を、共分散構造分析により検討した。その結果、【強化の自覚】・【動機づけ】が高まることで【行動継続】が高まり、主観的幸福感が増加することで、結果的に体験の回避が減少する可能性が示唆された。今後は、臨床群、異なる年齢層などの幅広い属性を持つ被験者を対象として、信頼性と妥当性を検討していくことで、本尺度の有用性を確認する必要がある。
著者
田中 佑樹 嶋田 洋徳 岡島 義 石井 美穂 野村 和孝
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
pp.20-021, (Released:2021-06-17)
参考文献数
33

本研究においては、ユーザーからの入力データに基づく自動化された個別フィードバックによって、ストレッサーに応じたコーピングの実行と睡眠の質の改善を促すストレスマネジメントのためのスマートフォンアプリケーションを開発し、労働者を対象としてその有効性を検討することを目的とした。効果検証は、コーピングレパートリー、睡眠の質、心理的ストレス反応を指標として、アプリケーション群、ワークシート群、個別面接群の3群における介入前後の比較が行われた。計63名分のデータを分析した結果、コーピングレパートリーおよび心理的ストレス反応には、アプリケーション群とほかの2群の間に有意な効果の差異は見られなかったものの、睡眠の質は、むしろ個別面接群のみにおいて有意な改善が認められた。したがって、開発されたスマートフォンアプリケーションのコンテンツには改良の余地が残されていることが示唆され、今後の展望に関して考察された。
著者
石川 信一 元村 直靖
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.203-213, 2012-09-30 (Released:2019-04-06)
参考文献数
36

本研究は、うつ病性障害の児童青年に認知行動療法プログラムを適用した3事例についての報告である。治療前、すべての対象者は気分変調性障害、および複数の不安障害の診断基準に合致していた。心理士による8セッションの認知行動療法プログラムが実施された。その結果、すべての対象者が気分変調性障害の診断基準から外れることが示され、その効果は3ヵ月後においても維持されていた。そのうち2名の対象者については、自己評定の抑うつ尺度のカットオフ値を用いた基準において、臨床的に有意な改善を示すことが明らかとなった。加えて、すべての対象者が不安障害の診断基準においても改善が見られることが示された。以上のことから、本研究は、心理士によるわが国のうつ病性障害を示す児童青年に対する認知行動療法の適用を支持する初期的な成果を示すものである。
著者
大坪 陽子 原井 宏明 稲垣 幸司 瀬在 泉
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.99-106, 2016-01-31 (Released:2019-04-27)

背景:動機づけ面接(Motivational Interviewing:MI)は依存症に対する行動療法の効果研究から生じた面接スタイルで、種々の領域で行動変容を促す有用性が実証されている。MIの効果研究に用いられるMIスキルの評価尺度として動機づけ面接治療整合性尺度(MITI)がある。目的:MITI日本語版の使用にあたり重点的に評定者トレーニングを必要とする項目を明らかにする。方法:カウンセリング場面10例を6名の評定者が1時間の評価練習の後、MITIに基づいて独立に評価した。評定者間信頼性係数として級内相関係数を求めた。結果:評定者間信頼性係数は総合評価0.72、行動カウント0.59だった。考察:行動カウント項目(特に「MI一致」「閉じた質問」)で評価が大きくばらついた。結論:動機づけ面接の基礎トレーニングを修了した臨床家がMITIを用いて面接を評価する際、総合評価部分は1時間程度の評価練習で評定者間信頼性を担保できた。一方、行動カウント部分の評価練習はより多くの時間を割く必要があった。
著者
坂野 雄二 東條 光彦
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.73-82, 1986-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
70

本研究の目的は,日常生活のさまざまな状況における個人の一般性セルフ・エフィカシーの強さを測定する尺度を作成し,その信頼性と妥当性について検証することである。知覚されたセルフ・エフィカシーの強さを表わしていると思われる項目の選択と,それらの因子分析の結果にもとついて,16項目から成る「一般性セルフ・エフィカシー尺度(GSES)」が作成された。 再検査法,折半法,平行検査法等による検討の結果,GSESは内的整合性も高く,信頼性,妥当性も十分に高いことが示された。また,抑うつ状態にある患者と,中程度ないしは高程度のセルフ・エフィカシーを示す健常者との聞でGSES得点の比較を行ったところ,抑うつ状態にある者は,そうでない者に比べて得点が有意に低いという結果が示された。その結果,GSESは弁別力という点でも妥当性は高く,臨床的応用あるいは研究への応用に十分に耐えうることが示唆された。
著者
池田 浩之 森下 祐子 茂木 省太 中井 嘉子 井澤 信三
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.47-56, 2012-01-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

精神障害者への就労支援は近年注目されつつあるが、その就職状況の実態は依然厳しく、支援プログラムや支援システムも確立されていない現状にある。特に、実践は進みつつあるものの、就労支援プログラムの効果については検証されていないといった課題がある。本研究は、就労移行支援施設に通う精神障害および発達障害者6名を対象に、SSTと心理教育を中心とする認知行動療法に基づいたプログラムを実施し、プログラムの効果を測定することを目的に行った。結果、精神的健康度に改善がみられたほか、自己効力感においても得点の上昇がみられたことからプログラムの有効性が示唆された。一方、障害種別によって効果の現れ方に違いがみられ、障害に対応したプログラムの作成の必要性が示唆された。また、本プログラムはパッケージ化されたものであるため影響要因の特定は定かではないことから、今後プログラム内容の精選や順序効果の確認などが課題として残された
著者
三浦 正江 上里 一郎
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.49-59, 2003-03-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
9

本研究の目的は、中学生を対象にストレスマネジメントプログラムを実施し、その効果を検討することであった。プログラムは、心理的ストレスのメカニズムの理解、およびリラクセーション技法の習得から構成された。プログラムの効果判定のために、実施前後にストレス反応、認知的評価、およびコーピングの査定を行った。その結果、おもに以下のことが示唆された。プログラムの実施によって、(a)高いストレス反応が低減する、(b)低いコントロール感は高まり、高い影響性評価は低減する、(c)コーピングをあまり行わなかった生徒のコーピングの頻度が増加する。
著者
岸田 広平 石川 信一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.73-85, 2019-05-31 (Released:2019-08-23)
参考文献数
22
被引用文献数
1

本研究の目的は、児童青年の不安症と抑うつ障害に対する回避行動に焦点化した診断横断的介入プログラムの有用性と有効性に関する予備的検討を行うことであった。プログラムは個別形式の全6回であり、第1回は感情の心理教育、第2回は機能的アセスメント、第3回は回避行動の同定、第4回は回避場面の同定、第5回は回避行動への挑戦、第6回は振り返りと目標の設定であった。プログラムの対象者は、不安症または抑うつ障害を抱える児童青年8名であり、すべての対象者がプログラムを完遂した。介入の結果、臨床家評定の主診断の重症度と診断の数、自己評定の不安症状と抑うつ症状、親評定の不安症状、自己評定の情緒への有効性が示され、プログラムの有効性と有用性が示唆された。最後に、いくつかの限界はあるものの、プログラムの不安症と抑うつ障害への有効性について、エクスポージャーと行動活性化療法に基づく作用機序が議論された。
著者
宮崎 哲治 中川 彰子 青木 省三
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.57-66, 2014-01-31 (Released:2019-04-06)

妊娠中の強迫性障害に対し、薬物療法は行わず曝露反応妨害法を中心とする行動療法のみで奏効した患者を経験したので、若干の考察を加え報告する。患者は28歳女性。結婚後、トイレを汚したのではないか、自分が歩いた所は汚れてしまったのではないかという強迫観念が生じ、夫や実母に何度も汚くないとの保証を要求するようになった。妊娠後さらに強迫症状は悪化した。妊娠28週でA精神科診療所を初診したが、トイレに行った際には、除菌シートで足やトイレの床を拭き、トイレでの行動を克明にメモし、携帯電話のカメラで自分の行動などを撮影し確認していた。また、汚れやばい菌をまき散らしてしまうという強迫観念のため料理などの家事もできない状態であった。曝露反応妨害法を中心とする行動療法を開始したところ、強迫症状は徐々に改善していった。出産後は家事も育児も本人が行えるようになり、約半年後の受診時にも強迫症状は認めなかった。
著者
佐々木 美保 宮尾 益理子 奥山 朋子 七尾 道子 越坂 理也 佐田 晶 石川 耕 水野 有三 熊野 宏昭 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.81-91, 2018-05-31 (Released:2019-04-05)
参考文献数
24

本研究の目的は、成人2型糖尿病患者の抑うつ・不安がセルフケア行動に及ぼす影響を検討することであった。外来通院中の2型糖尿病患者65名を対象に質問紙調査を実施した。階層的重回帰分析の結果、セルフケア行動のうち、患者の食事療法遵守行動は不安から有意な負の影響が認められた。また、フットケア遵守行動では、抑うつから負の影響が認められた。一方、運動療法遵守行動には抑うつ・不安いずれからも有意な影響性は認められなかった。抑うつ・不安の高い外来通院中の2型糖尿病患者には、食事療法やフットケアに関する療養指導に先立って、セルフケア行動遵守場面における抑うつ・不安が生じる際の対処行動について、行動分析によるアセスメントと介入を行っていくことが有効であると考えられた。