著者
山本 哲也 吉本 潤一郎
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
pp.20-040, (Released:2021-09-10)
参考文献数
30

機械学習は、近年注目を集めている人工知能技術の一分野であり、問題に対して最適な解決策に到達するための方法やパラメータを自動的に決定する計算戦略である。このアプローチでは、多次元データセットに内在する規則性を発見することによって、個人の状態に焦点を当てた予測モデルを構築することができる。そのため、認知行動療法をはじめとした臨床実践において、アセスメントの効率化・精緻化や、最適な介入方法の選定に寄与する可能性がある。そこで本論文では、まず機械学習アプローチの枠組みや、統計学との違い、そしてその特長を概観する。加えて、これまでのメンタルヘルス領域において、機械学習アプローチが適用されている主な研究テーマを整理したうえで、臨床心理学および認知行動療法研究に寄与しうる活用例を紹介する。最後に、機械学習アプローチの限界に触れながら、今後の応用可能性について論じる。
著者
竹林 由武
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.167-175, 2014-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

観察研究は、無計画に実施すると研究成果の解釈が困難になることが多い。観察研究によって有意味な知見を産出するためには、研究段階で測定誤差や交絡を最小にする必要がある。観察研究の報告法のガイドラインであるSTROBE声明(Strengthening the Reporting of OBservation studies in Epidemiology statement)は、有意味な知見を得るための研究計画を立てる一助となる。本稿では、STROBE声明に準拠し、観察研究の研究計画段階で留意すべき事項((1)研究目的の明確化、(2)研究を実施する科学的背景と論拠の説明、(3)例数設計の実施、(4)信頼性と妥当性のある測定指標の選択、(5)交絡要因の測定)の解説と、その具体的な記載事例を紹介することを目的とする。
著者
松原 耕平 新屋 桃子 佐藤 寛 高橋 高人 佐藤 正二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.39-50, 2019-01-31 (Released:2019-06-08)
参考文献数
39

本研究の目的は、幼児期の社会的スキルと問題行動が児童期の社会的スキルと抑うつ症状に与える影響を検討することであった。調査開始時点で年長児(5~6歳)であった100名を対象として、幼児期に社会的スキルと問題行動を測定し、小学校5年生時(10~11歳)と6年生時(11歳~12歳)にそれぞれ社会的スキルと抑うつ症状を測定した。その結果、幼児期の協調スキルと主張スキルは児童期の社会的スキルを媒介して、抑うつ症状の低減に寄与することが明らかとなった。幼児期の問題行動は児童期の社会的スキルと抑うつ症状のどちらにも影響はみられなかった。これらの結果から、児童期の抑うつ予防のために幼児期の社会的スキルに焦点を当てることの意義について議論された。
著者
齋藤 順一 富田 望 熊野 宏昭
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.67-77, 2020-05-31 (Released:2020-10-23)
参考文献数
26

公認心理師は、心理学の実証性と専門性に基づいて、客観的データに基づくアセスメントと、有効性の認められた心理学的介入を重視する。そのために、保健医療分野で活動する公認心理師は、各疾患に対する最新のエビデンスについて最低限の知識を得ておく必要がある。多くの疾患において認知行動療法(cognitive and behavioral therapies; CBT)に基づく介入の有効性が示されていることから、本論文では、CBTが保険収載されている疾患(2019年9月現在)を中心として、公認心理師として身につけておくべきCBTに関する知識についてまとめた。具体的には、うつ病、不安症・不安関連障害、摂食障害について、CBTマニュアルを参照しながら、各疾患の特徴、心理社会的要因、心理学的介入について整理した。最後に、現場でCBTを活用していくために、基本となる考え方や技法について学ぶ際に必要となる姿勢について論じられた。
著者
岡島 義 金井 嘉宏 陳 峻雲 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.1-12, 2007-03-31 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、社会不安障害(SAD)を対象として、安全確保行動のひとつである「恐怖場面内での回避行動」を測定する尺度(Avoidance Behavior In-Situation Scale:ABIS)を作成することであった。健常大学生121名とSAD患者10名を対象に、不安喚起場面とその場面内で用いる「恐怖場面内での回避行動」について自由記述による回答を求め、項目を作成した。次に、健常大学生470名とSAD患者46名を対象に自己記入式によるABI尺度を実施した。探索的因子分析を行った結果、2因子28項目が抽出され、十分な信頼性を有していた(α=.90)。妥当性は、内容妥当性と基準関連妥当性の観点から確認された。以上の結果から、ABISは高い信頼1生と妥当性を有することが明らかにされた。
著者
岸田 広平 石川 信一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.61-72, 2019-05-31 (Released:2019-08-23)
参考文献数
27

本研究の目的は、子ども用快活動尺度(Children’s Pleasant Activity Scale: CPAS)を作成し、CPASの信頼性と妥当性を検討することであった。CPAS、および、抑うつ/不安症状、正負感情、社会的スキルを測定する質問紙を用いて、児童331名に対する調査を実施した。COSMIN(COnsensus-based Standards for the selection of health Measurement INstruments: de Vet et al., 2011; Terwee et al., 2011)に基づいて、CPASの信頼性と妥当性が検討された。その結果、いくつかの限界はあるものの、CPASの信頼性(内的整合性、再検査信頼性、測定誤差)と妥当性(表面的妥当性、構造的妥当性、仮説検証)が確認された。項目反応理論を用いて検討した結果、CPASは平均的に快活動に従事しているものに対して高い測定精度を有する尺度であることが示唆された。最後に、児童青年の快活動への介入に関する示唆および本研究の限界と今後の課題が議論された。
著者
松永 美希 土屋 政雄
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.133-142, 2020-05-31 (Released:2020-10-23)
参考文献数
29

本稿では、主に職場メンタルヘルス対策における予防の枠組みから、認知行動療法の適用と課題について報告した。一次予防では、広く健康な人々にもストレスへの気づきや対応を促すためにも認知行動療法を活用したストレスマネジメントが有用である。二次予防では、メンタルヘルス不調者への早期介入に認知行動療法の諸技法は適しており、職場調整をねらった他職種や人事労務との連携においても認知行動療法による問題理解の明快さは有用である。三次予防では、休職者の復職支援や精神障害者の職場適応に向けた症状コントロールや働き方に関する意思決定などに認知行動療法が適用されている。近年では、これらの予防的取り組みにおいて、マインドフルネスやアクセプタンス&コミットメント・セラピーといった第三世代の活用事例も増えている。今後は、生産性の向上などポジティブな側面にも認知行動療法の適用を広げていくことが課題である。
著者
古川 洋和
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.213-222, 2010-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

本研究の目的は、歯科恐怖症に対する認知行動療法(CBT)の効果研究について展望を行うことであった。文献検索の結果、12編の研究が抽出された。主な結果は、以下のとおりであった。(1)CBTの技法として、エクスポージャー、リラクセーション(応用リラクセーションを含む)、認知的再体制化、ストレス免疫訓練、系統的脱感作が行われていた。(2)すべての治療技法は、治療前後にかけて主要評価項目の値を改善していた。(3)治療後において、エクスポージャーと系統的脱感作は、統制条件と比較して大きな効果サイズが認められた。(4)治療後において、応用リラクセーションは、統制条件と比較して中程度以上の効果サイズが認められた。(5)治療後において、認知的再体制化は、統制条件と比較して中程度以下の効果サイズが認められた。最後に、わが国においても統制研究を行うことの必要性が提示された。
著者
酒井 美枝 伊藤 義徳 甲田 宗良 武藤 崇
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.1-11, 2013-01-31 (Released:2019-04-06)
参考文献数
27

「創造的絶望(絶望から始めよう) : Creative Hopelessness(CH)」とは、不快な私的事象を制御することへの動機づけの低減を目的としたアクセプタンス&コミットメント・セラピーにおける治療段階、および、その介入によって獲得されたクライエントの姿勢を指す。CHの獲得の効果を検討した研究はなく、その理由としてその弁別法がない点が挙げられた。そこで、本研究では、行動分析学における「言行一致」を用いて、CHの獲得を弁別し、その効果を検討することを目的とした。社会的場面への回避傾向の高い大学生17名に対して、CH Rationale(講義とエクササイズ)を実施した。結果として、CHが獲得された言行一致群は他群と比べ、介入後のRationaleに関する習得度が最終的に高くなる傾向が示唆された。また、言行一致群では介入前後で社会的場面への苦痛度や精神的健康が改善することが示された。
著者
加藤 宏公 柳澤 博紀 奥村 英雄 井上 眞人 三田村 仰
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.249-260, 2021-09-30 (Released:2022-01-12)
参考文献数
17

本研究では、3名の慢性期統合失調症患者に対しグループ介入のアクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)を実施し、介入プログラムの効果を検討した。介入はプログラム4回とフォローアップ2回の全6回であり、シングルケースデザインを用いて、アウトカム指標として価値に基づく行動の生起頻度、プロセス指標としてVQ、CFQ、BEAQを測定した。結果、価値に基づく行動の生起頻度は、3名共に有意な増加(p<.05)が認められた(Tau=0.43—0.53)。プロセス指標は、目視分析において介入中は有意な傾向があり、介入後はベースラインのレベルに戻る傾向がみられ、1名のVQ(前進因子)のみが有意であった(Tau=0.69)。以上から、グループACTプログラムは統合失調症のリカバリー支援として各参加者の価値に基づく行動の促進に有効であり、介入後の行動の般化と維持には、段階的な介入方法のさらなる検討が必要である。
著者
乳原 彩香 石川 信一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.1-14, 2020-01-31 (Released:2020-10-23)
参考文献数
30

不眠症状に対する認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy for Insomnia: CBT-I)は、その有効性が確認されているものの、改善メカニズムは明らかではない。本稿では、不眠症状の改善に寄与する認知行動的要因を取り上げ、その研究動向の整理と今後の展望を行うことを目的とした。国内外の複数のデータベースにて、英語と日本語にて「insomnia」「CBT-I」「mechanism」「mediator」にあたる検索語を用いて検索を行い、6編の研究を採択した。そのうち4編の研究が媒介分析を実施していた。その結果、睡眠に関する非機能的信念、安全確保行動、入床時間の変動性、身体的・認知的過覚醒がInsomnia Severity Indexによって測定される不眠症状の改善に媒介することが示された。最後に、現在までの研究動向を踏まえ、不眠症状の改善に媒介する認知行動的要因に関する研究展望が論じられた。
著者
瀬口 篤史
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.25-36, 2020-01-31 (Released:2020-10-23)
参考文献数
22

本事例では、頭部の不快感により一人または娘と二人での外出が困難となった女性のクライエントに対し、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)に基づく介入を行った。また、介入を通した外出行動の改善を、頻度、家から離れられた距離、行くことができた場所の数の三つの次元から行動指標を用いて外出行動を測定し、改善を評価した。その結果、いずれの次元においても改善が示され、外出が困難なクライエントに対するACTの有効性が示唆された。介入の有効性と複数の次元から行動を測定することの有用性などについて考察した。
著者
松永 美希 鈴木 伸一 貝谷 久宣 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.157-166, 2006-09-30 (Released:2019-04-06)

われわれは、腹痛への予期不安が強い全般性社会不安障害の28歳男性患者を経験した。患者は、他者からの否定的評価を恐れて、10年近く社会的交流を回避していた。この症例に対して、認知行動療法(リラクセーション、社会的スキル訓練SST、認知再構成法、エクスポージャー)を行った。その結果、リラクセーションを用いて不安に伴う身体症状に対処できるようになり、SSTでは、社会的交流に必要な振る舞いを獲得し、認知再構成法やエクスポージャーを通して、不合理な思い込みや他者からの否定的評価に対する不安が低減した。全13回の面接終結後、社会的機能は著しく改善し、フォローアップ期においてもその改善が維持されていた。本報告では、本症例の治療経過と、社会不安障害に対する認知行動療法の効果について検討した。
著者
野口 美幸 飯島 啓太 野呂 文行
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.163-173, 2008-05-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
2

本研究では、特定不能の広汎性発達障害と診断され、攻撃的行動を示す児童を対象として機能的アセスメントに基づく介入を行い、その効果を検討した。対象児は介入開始時7歳9か月の男児であった。機能的アセスメントの結果より、1)友人の注目を得るために攻撃的行動を行う、2)欲しいものや状況を得るために攻撃的行動を行うという仮説を立てた。そこで、攻撃的行動の代替行動によって注目を得られるように代替行動分化強化を実施した。また、攻撃的行動による強化の獲得機会を低減するためにタイムアウトを行った。その結果、べ一スライン期には、攻撃的行動が15観察単位以上観察されていたが、代替行動分化強化を行った週は13観察単位観察され、その後タイムアウトを導入した後、徐々に観察単位数が低減した。本研究の結果から、攻撃的行動を示す特定不能の広汎性発達障害児に対して機能的アセスメントに基づく介入が有効であることが示唆された。
著者
柳澤 博紀 杉浦 琢
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.15-23, 2020-01-31 (Released:2020-10-23)
参考文献数
15

チック症状に対する行動療法として、ハビット・リバーサル(Habit Reversal: HR)の有効性が示されているが、音声チックや重症度の高い症例の蓄積が少ないと国内外で指摘されている。本研究では叫び声様の重度音声チック症状を抱えたクライエント(Cl.)に対してHRを含んだ行動療法を実施し、客観的行動指標を用いたうえで単一症例研究法により効果を検証した。Cl.は40代女性、入院後約1カ月の服薬治療も著効なく行動療法を開始した。ベースラインでは1日5時間の測定を4日行い、叫び声の頻度は1日平均93.5回であった。介入は各回約15分程度心理士と共に咳払いを用いた競合反応訓練を練習すること、および同様の練習を日常的に実施する宿題であった。介入は25日間で10回実施した。介入開始後叫び声の頻度は大幅に減少し、約4週で叫び声は生起しなくなりCl.は退院した。介入実施後3年経過後も症状の再発は見られていない。重度音声チック症状に対するHRの有効性が示唆された。
著者
宮崎 哲治
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.267-277, 2016-05-31 (Released:2019-04-27)
参考文献数
11

患者は40歳代前半の女性。双極II型障害の大うつ病エピソードのため出勤できなくなり、やがて一人暮らしであるのに買い物に行くことさえもできず食欲も低下していったため任意入院となった。入院後約1カ月が経過してもベッドで横になったままの状態が続いていたため、薬物療法に加え行動活性化を施行した。機能分析に基づき、楽しみ、喜び、達成感が得られる活動や復職につながる活動を徐々に増やしていくことによって、大うつ病エピソードが寛解し復職が可能となった。行動活性化は行動パターンを変えることによってうつ病を改善していく技法であり、行動療法の一技法である。双極性障害に対する精神療法に関する研究は少ないが、双極性障害の大うつ病エピソードに対して、特に復職を目指している双極性障害の大うつ病エピソードの患者に対して行動活性化が有効であることが本症例により示唆された。
著者
笹川 智子 金井 嘉宏 村中 泰子 鈴木 伸一 嶋田 洋徳 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.87-98, 2004-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
30

本研究の目的は、日本版Fear of Negative Evaluation Scale(FNE;石川ら,1992)の短縮版を作成し、その測定精度を項目反応理論(IRT)の観点から評価することであった。項目数を削減することによる情報量の損失を、段階反応モデルを用いることで補い、12項目五件法の尺度を構成した。テスト情報関数の形状から、作成された短縮版は幅広い尺度値レベルで安定した測定精度を保つことが示された。特に特性値の高い被検者に対しては30項目二件法の原版よりも有効性が高く、Leary(1983)のBrief Fear of Negative Evaluation Scale(BFNE)との比較においてもすぐれた測定上の特徴をもつものであった。また、簡便なスクリーニングテストとしての有用性や、他の尺度との併用など、臨床・研究場面への応用可能性が論じられた。
著者
宮崎 眞
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.55-66, 2004-03-31 (Released:2019-04-06)

本研究は重度知的障害のある児童2名を対象とし、見立て遊びを指導し促すことによって発語行動がどのように変容するか検討することを目的とした。指導1-1で「焼きそば」、指導1-2で「カレーライス」「魚焼き」「サンドイッチ」および「目玉焼き」に従ってふり動作の系列を遂行するように、言語教示、動作の示範、動作を言語化の手続きにより指導した。指導2ではさらに「歯磨き」等のスクリプトを新たに加えた。対象児が遊びを開始するのを待ち、ふり動作を行ったときに対象児の動作を言語化する指導手続きを中心にした。指導1〜2の結果、両対象児は見立て遊びを自発するようになった。発語の系列化といった形態面での変化はなかったが、この見立て遊びの進展に伴い、言語面では発話の機能が多様化する傾向が認められた。