著者
久保田 泉
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 (ISSN:03896633)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.243-246, 2013

気候変動影響への適応策に関する国際制度設計において,途上国への資金供与問題が注目されている。本研究では,適応関連資金配分の優先順位づけをいかに行うかについての示唆を得るため,京都議定書下の適応基金と「気候変動影響への対応力強化のためのパイロット・プログラム」(PPCR)の運用状況を,対象国/プロジェクトの選定に着目して比較検討した。その結果,適応基金の被支援プロジェクトのホスト国は,脆弱国への支援が謳われているにもかかわらず,各種指標で脆弱国リストの上位に入っていない国が多いことがわかった。今後の適応関連資金メカニズムには,脆弱性に着目したPPCR 類似の資金配分方法を確保することが重要である。
著者
佐藤 直樹 ロイ キンシュック
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.24(第24回環境研究発表会)
巻号頁・発行日
pp.161-166, 2010 (Released:2011-08-12)

木質系資材は堆肥化過程において時間がかかるという問題が指摘されている。これまでに堆肥化装置の利用や大規模な堆肥化により時間の短縮をする研究が行われているが,普及という点で課題が残る。そのため本研究では,木材チップと落ち葉に,発酵鶏糞,米糠,菜種油粕を副資材として加えた原料に,発酵促進剤として木酢液や廃糖蜜を利用することで,小規模で機械を使わない木質系資材の堆肥化時間短縮の有用性を検討した。その結果,堆積物内の温度が堆肥化に必要な温度まで上昇した。また,発酵促進剤を加える事により温度が維持された。廃糖蜜を利用した区は,3ケ月でC/N比測定試験,4ヶ月で幼植物試験において完熟したと判定できた。
著者
上條 哲也
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 (ISSN:03896633)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.303-308, 2014

環境アセスメント報告書の質に対する住民協議段階の回数,代替案数と評価項目数の有効性を分析した。報告書の質はリー・コリー一括評価手法を用いて評価した。分析の結果,評価項目数が多くなると質の改善が認められた。考察の結果,良い質の報告書を作成する上で,住民協議段階の回数は2,代替案数は5,評価項目数は9 以上が妥当であることが示唆された。最後に,住民協議を行い幅広い影響を対象とした代替案検討の有効性を指摘した。
著者
上條 哲也
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 (ISSN:03896633)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.295-300, 2013

環境アセスメントの代替案検討手法として、主成分分析の有効性の検証を進めることが課題であった。5事例研究を対象に、階層分析法(AHP)と加重総和法及び主成分分析の総合評価結果を比較した。その結果、代替案と評価基準及び評点が適正に設定されれば、AHP や加重総和法と主成分分析結果が一致し、最適案選定理由の明瞭さ、恣意性の低さ、比較検討結果の検証、手法の簡易さの点で主成分分析の有効性が示唆された。最後に、主成分分析の特徴は、代替案の得失をわかりやすく説明できることであり、利害関係者の参加を通じてより良い意思決定が期待されることを指摘した。
著者
久保 暁子 山本 清龍 中村 和彦 下村 彰男
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集
巻号頁・発行日
vol.33, pp.181-186, 2019

<p>本研究では,ストレス軽減のためデジタル機器から一定期間離れる取り組みであるデジタルデトックスの基盤的な研究を企図して,①回答者の属性とデジタル機器の使用状況,デジタル機器の依存性を把握し,それらの関係性を明らかにすること,②平日・休日の過ごし方,デジタルデトックスへの意向を把握し,デジタルデトックスの可能性を考察すること,の2点を目的とした。その結果,約半数の学生がデジタル機器を4時間以上使用し,一部の学生は機器の使用によって学生生活に問題を抱えていた。学生の意向をふまえれば,日常の機器使用制限や自然豊かな場所への外出はデジタルデトックスに有効と考えられた。</p>
著者
大出 亜矢子 土光 智子 陳 文波
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 (ISSN:03896633)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.339-344, 2015

<tt>本研究はインドネシアスラウェシ島山岳地トラジャ地域農村において実施した生業項目に関する半構造型インタビュー調査とそのネットワーク分析から</tt>,<tt>過去</tt>40 <tt>年間の生業構造変化について分析する。各時期における生業項目の地域内の位置づけについてネットワーク中心性指標によって算出し</tt>,<tt>それぞれの時系列変化をとらえた。固有ベクトル中心性指標の時系列変化過程の</tt>t<tt>検定の結果から</tt>, 1979-1980, 1999-2000, 2009-2010<tt>の</tt>3<tt>時期に有意な変化が検出され</tt>,<tt>近年の多生業化傾向が示された。トレンド変化点との重複から道路や水利造成等の土地改変との関係性が示された。</tt>
著者
吉田 有里 上甫木 昭春 田原 直樹 澤木 昌典
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集
巻号頁・発行日
vol.16, pp.31, 2002

本研究は、道路拡幅や区画整理などにより寺社や民家の敷地内から道路上にはみ出して位置することになった路傍樹についてその現状を把握し、継承のあり方を考察することを目的とした。調査対象木は大阪市内に現存する23本とし、現地調査とヒアリング調査により路傍樹の現状を把握すると共に、3箇所の路傍樹を選定して、周辺住民に対するアンケート調査を行った。その結果、路傍樹に対する認知度は高く、好評価を得ており保全意識も高いが、管理への参加意向が低いことが問題であることが明らかとなった。また、対象木をよく知っている人ほど保全意識、管理への参加意向が高く、路傍樹に対する認知度を高めることが重要であると考えられた。
著者
吉留 大樹 石井 靖彦 小野田 弘士
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集
巻号頁・発行日
vol.34, pp.252-257, 2020

<p><tt>国内の戸建住宅における省エネ基準は,設計時の外皮性能および一次エネルギー消費量のみで評価されるため,施工技術や断熱施工精度による影響の実態が明らかになっていない。そこで,本研究ではあるモデルハウスにおける温湿度・HEMS データの実測評価および標準住宅モデルにおける熱収支シミュレーションの分析により,施工技術や断熱施工精度の影響を定量的に評価した。その結果,現行基準やトップランナーの住宅では施工技術や断熱施工精度の影響が大きく,除霜期においてはその熱損失が6 割以上を占めることが示された。</tt></p>
著者
古川 豊 渡邉 一哉
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.32(第32回環境情報科学学術研究論文発表会)
巻号頁・発行日
pp.131-136, 2018 (Released:2018-12-07)
参考文献数
13

農業用水路である文下堰では,イシガイ類が多数生息している。100 個体を用いた観察・実験の結果,次のような知見が得られた。1)水路内での性成熟期間は約3 年。2)性成熟までに流下する距離は120m。3)宿主であるドジョウへの寄生には10 秒以上の時間が必要であり,流速に換算すると0.012m/s以下となった。4)宿主への寄生のためにはグロキディウム幼生は10,000個/日以上の放出が必要で,その期間は15日程度であった。5)宿主の運搬距離は275m以上と算出された。成貝の生息地点よりも下流に寄生環境が存在する必要があるといった配置条件も示された。
著者
四方 勘太 大野 暁彦
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.34(2020年度 環境情報科学研究発表大会)
巻号頁・発行日
pp.115-120, 2020 (Released:2020-12-07)
参考文献数
10

本研究では,タケノコ生産林における維持管理手法の現状と変遷について境界部に着目し明らかにした。対象地の京都府西山地域ではタケノコや竹材の生産が盛んに行われてきた歴史があり,高品質のタケノコを栽培するために,「京都式軟化栽培」と呼ばれる栽培法が確立している。しかしこうした竹林は減少傾向にあり,広域的な地理的分布変遷の分析から,竹林面積に対する竹林外周の長さが大きくなり,竹林が細分化されていることが明らかになった。またヒアリング調査と測量調査など各畑地での空間分析から,タケノコ生産林の境界は竹林外部からの要因により形成された境界と造成を伴うタケノコ生産手法に伴う境界がみられることがわかった。
著者
西田 一也 大平 充 千賀 裕太郎
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.23(第23回環境情報科学学術研究論文発表会)
巻号頁・発行日
pp.197-202, 2009 (Released:2011-02-15)

本研究では冬季の農業水路における魚類の越冬実態と,越冬場の環境条件を明らかにすることを目的とし,東京都国立市を流れる府中用水において2006年9月から2009年1月にかけて,水路の魚類と環境条件の調査を行った。その結果,次の知見および推論が得られた。1)農業水路の上流区間の流量の多い区間が越冬場として重要であると推察された。2)水路に生息する魚類は非灌漑期に減少し,その密度は灌漑期に比べて局所的に大きくなった。3)橋のような大型のカバーが存在し,水深が大きく(35cm以上),流速が小さく(10cm/s以下),砂泥とリターの堆積する水路区間が恒常的な越冬場となっていると考えられた。
著者
谷川 智穂 中塚 雅也
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集
巻号頁・発行日
vol.34, pp.127-132, 2020

<p>日本の農山村地域においては,人口流出などによる高齢化や担い手不足による地域経済力の低下や空き家の増加などの問題が顕著に生じている。一方で田園回帰と言われるように,若者を中心とした農山村地域への関心の高まりが指摘され,過疎と呼ばれる地域への移住や起業の動きも少なからず発生している。本研究では,移住者による起業の立地条件を,周辺人口および交通アクセス性の面から分析し,一般的に起業に有利でない場所でも起業が発生していることを明らかにし,そういった場所における起業促進の可能性を指摘した。 </p>
著者
平田 晶子 髙野(竹中) 宏平 相原 隆貴 中尾 勝洋 津山 幾太郎 唐 勤 松井 哲哉 肱岡 靖明
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.34(2020年度 環境情報科学研究発表大会)
巻号頁・発行日
pp.210-215, 2020-12-07 (Released:2020-12-07)
参考文献数
20

気候変動にともない,西日本を中心に問題となっている竹林の拡大が,より高緯度,高標高域でも深刻化することが懸念されている。本研究では,日本と中国におけるマダケ属の分布情報と気候データを用い,マダケ属の潜在生育域を日本全土で推定する統計モデルを構築した。さらに現在と将来の潜在生育域の変化から,気候変動によって竹林の拡大リスクが増大する地域を推定した。その結果,東北地方から北海道の低地を中心に生育確率の上昇が予測された。西日本でも,広い範囲で現在より生育確率が上昇する傾向がみられた。気候変動による拡大リスクの変化を考慮しつつ,竹林の新規植栽や管理のあり方を検討する必要がある。
著者
堤田 成政
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.30(第30回環境情報科学学術研究論文発表会)
巻号頁・発行日
pp.111-116, 2016-11-28 (Released:2016-11-28)
参考文献数
16

政府や科学の透明性を高める手段としてオープンデータが注目されるなか,希少種保全活動に関するデータのオープン化は生息環境と保全活動にいかなる影響を及ぼすのか。その影響を把握することは容易ではない。本研究では希少種の生息環境の撹乱リスクを高めることなく保全活動を加速させること目標とした,データのオープン化を戦略的に検討するためのツールとして,データ公開による保全活動への影響,生息環境撹乱のリスクを相対的に図示化したフレームワークを提案する。事例として,長崎県対馬に生息するツシマヤマネコの保全に関わる主体者から情報公開の状況やデータのオープン化への対応状況に関する聞き取り調査を実施し,提案したフレームワークの適用を試みた。
著者
佐々木 章晴
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.34(2020年度 環境情報科学研究発表大会)
巻号頁・発行日
pp.204-209, 2020 (Released:2020-12-07)
参考文献数
26

野付湾は,アマモ(Zostera marina)が生育しており,ホッカイエビ(Pandalus latirostris)の漁場になっている。野付湾および湾外南側のアマモ場の流入河川の流域土地利用が河川水質に与える影響と,河川水質がアマモに与える影響について検討した。河川の流域森林率が低下し,流域窒素投入量が増加すると,河川水中のNO3-N,K,Caが増大した。そして,河川水中のNO3-N,K,Caが増大すると,アマモの生育質量が低下した。アマモ生育質量の低下は,NO3-Nの増加に伴って増大する未知の生育抑制物質が増加していることが原因ではないかと考えられた。
著者
ソ ユファン 本條 毅
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.32(第32回環境情報科学学術研究論文発表会)
巻号頁・発行日
pp.125-130, 2018 (Released:2018-12-07)
参考文献数
9

天空率は,都市構造を表す指標の一つである。天空率測定を,魚眼レンズカメラ,全天球カメラ,Google Street View,DSM などの手法を用いて行い結果を比較した。その結果,従来使用されてきた魚眼レンズカメラに加え,これらの方法で全て実用的に天空率を求められることが分かった。Google Street View やDSM を使用する場合には,撮影した時期の建物や土地利用などが,変化していないかの確認が必要であった。樹林内や街路樹のある道路での天空率測定の場合,二値化後の枝や葉の大小が誤差の原因であり,二値化の閾値の選定に注意が必要であることが分かった。
著者
近江屋 一朗 齋藤 雪彦 橋本 早苗
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.24(第24回環境研究発表会)
巻号頁・発行日
pp.369-374, 2010 (Released:2011-08-12)

農村移住者を対象に聞き取り調査を行い,移住者属性と余暇活動の関係を調べた。その結果,移住者の属性は定年退職タイプ,子育てタイプ,自然環境タイプ,その他のタイプに分類された。また,余暇活動は農村的余暇活動,準農村的余暇活動,都市的余暇活動に分類された。定年退職タイプの男性は主に農村的余暇活動を行っていたが,女性には準農村的余暇活動を通じて農村に溶け込む者がいた。子育てタイプは充分な余暇時間を持っているものは少なかった。自然環境タイプは多様な余暇活動を行っており,また,準農村的余暇活動によって農村住民と交流していた。その他のタイプには農村に魅力を感じていない移住者もおり,主に村外で余暇をすごしていた。
著者
桧尾 亮一 松岡 浩史
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.25(第25回環境研究発表会)
巻号頁・発行日
pp.7-12, 2011 (Released:2014-05-08)

近年,いくつかの自治体ではゴミ減量化や資源循環の観点から廃食用油利用によるBDF燃料化が行われている。本研究では稼働中のBDF化リサイクルシステムで得られた実測データを基にLCA手法を用いて二酸化炭素排出量の算出を行った。評価対象は廃食用油をBDF処理した場合と焼却・下水処理する場合を想定し算出した。BDF燃料のライフサイクル二酸化炭素排出係数としては1.34~1.65kgCO2 /Lと算出され,軽油の2.78kgCO2 /Lと比較すると41~52%程度の二酸化炭素排出量削減効果があったと考えられた。また,当該地域での一人当たりの年間削減量としては最大で約265gCO2 /年となった。
著者
伊藤 和男 直川 新也
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.32(第32回環境情報科学学術研究論文発表会)
巻号頁・発行日
pp.309-312, 2018 (Released:2018-12-07)
参考文献数
19

大阪府南部の富田林市の丘陵地に位置する,美具久留御魂神社では,大阪みどりの百選に選ばれている,コジイ(Castanopsis cuspidate)およびアラカシ(Quercus glauca)を占有種とする貴重な社寺林が長年保護されてきた。しかし,樹木の衰退状況を調べたところ,二樹種ともに衰退が確認された。また土壌化学分析を行ったところ,土壌pHが低くなっていた。またコジイ周辺の土壌では,衰退指数と土壌pHの間に,統計的有意な強い負の相関(ピアソン相関係数rp=-0.719,スピアマン相関係数rs=-0.737)が認められた。
著者
山田 浩之 河崎 昇司 矢沢 正士
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集
巻号頁・発行日
vol.18, pp.495-500, 2004

本研究は、水生生物の多様度・現存量および水質に着目して、アイガモ農法が採用されている水田の現状を把握し、さらに、慣行農法が採用されている水田との比較によって、アイガモ農法が水田の生物相や水質に及ぼす影響について検討した。その結果、水質に関しては、アイガモの移動に伴う水田土壌の巻上げや攪拌による懸濁物質やリンの増加、糞尿によるアンモニア態窒素の増加とその硝化による硝酸態窒素の増加が生じるという特徴があった。いっぽう、生物相に関しては、アイガモ農法水田で生物相の種数および固体数が低下する傾向があり、水田生態系を構成する生物相の多様度や現存量の低下が懸念された。