著者
神宮 翔真 小川 結衣
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.33(2019年度 環境情報科学研究発表大会)
巻号頁・発行日
pp.1-6, 2019-11-25 (Released:2019-11-22)
参考文献数
21

茨城県つくば市のロードキル(RK)を通報した市民と,RK を記録した道路維持委託業者が,轢死した哺乳動物種を正しく特定したかを調査した。我々は,1,601 の哺乳類のRK 記録を入手し,通報した市民および野生動物の非専門家である委託業者による種の同定結果を,専門家による同定結果と比較した。結果として,市民による種同定に対し,委託業者が判断を下すことで,種同定の信頼性向上には大きく寄与している一方で,希少種や特定外来生物の出現の多くが記録されない結果となった。現状は道路維持管理のみを目的としたシステムだが,教育プログラム等によって信頼性の向上を図ることで自然環境保全への活用は十分可能と考える。
著者
山本 清龍 荒牧 重雄
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.26(第26回環境情報科学学術研究論文発表会)
巻号頁・発行日
pp.319-324, 2012-11-26 (Released:2014-09-20)
参考文献数
25

本研究では,わが国において最高峰を誇る富士山を事例として取り上げ,①高所登山における登山者属性と登頂断念にいたった理由,状況を把握すること,②自然公園における高所登山のリスク管理について考察することの2点を目的とした。その結果,富士登山者の63%が若年層であり初めての登山者が55%であること,登頂率は92%,登頂を断念した登山者が7%であることが明らかとなった。また,登頂を断念した理由は急性高山病とそれに類する自覚症状が多く,断念した登山者の76%は八合目で下山を開始していること,宿泊をしなかった登山形態では登頂を断念する登山者が有意に多いことなどが明らかとなった。最後に,結果をふまえて自然公園における高所登山のリスク管理について考察し,必要と思われる管理施策について提案を行った。
著者
土田 勝義
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.16(第16回環境研究発表会)
巻号頁・発行日
pp.17, 2002 (Released:2003-09-22)

長野県の霧ヶ峰高原は、昔から半自然草原が発達しているが、草原景観や、草花を嘆賞する観光地として親しまれている。しかし最近、亜高山帯にもかかわらず帰化植物の繁殖が目立ってきている。とくに北米原産のヒメジョオンやヘラバヒメジョオンが草原に一面に広がってきている。これらの帰化植物は、草原景観や、野生植物に大きな影響を与え、生物多様性の低下を招いている。そこでヒメジョオン類の生態を調査し、適正な駆除法を得るために、引き抜きや茎の切断実験を行った。その結果、ヒメジョオン類の生活史や繁殖様式が明らかにされた。また実験により7月初旬に茎の根元の切断が、個体の駆除と種子生産の阻止に効果があることが分かった。
著者
山田 浩之 河崎 昇司 矢沢 正士
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.18(第18回環境研究発表会)
巻号頁・発行日
pp.495-500, 2004 (Released:2007-01-12)

本研究は、水生生物の多様度・現存量および水質に着目して、アイガモ農法が採用されている水田の現状を把握し、さらに、慣行農法が採用されている水田との比較によって、アイガモ農法が水田の生物相や水質に及ぼす影響について検討した。その結果、水質に関しては、アイガモの移動に伴う水田土壌の巻上げや攪拌による懸濁物質やリンの増加、糞尿によるアンモニア態窒素の増加とその硝化による硝酸態窒素の増加が生じるという特徴があった。いっぽう、生物相に関しては、アイガモ農法水田で生物相の種数および固体数が低下する傾向があり、水田生態系を構成する生物相の多様度や現存量の低下が懸念された。
著者
髙野(竹中) 宏平 中尾 勝洋 尾関 雅章 堀田 昌伸 浜田 崇 須賀 丈 大橋 春香 平田 晶子 石郷岡 康史 松井 哲哉
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.33(2019年度 環境情報科学研究発表大会)
巻号頁・発行日
pp.49-54, 2019-11-25 (Released:2019-11-22)
参考文献数
14

Velocity of Climate Change (VoCC)とは,気候変動影響評価指標の一つで,生育や産業に適した気候条件を得るために生物や人間活動が移動しなければならない速度を示す。本研究では,基準地域メッシュ(約1 km2)の日本陸域37 万7981 メッシュを対象に,1981?2010 年(現在気候値)と2076?2100 年(将来予測値)の年平均気温を用い,6 気候モデル×3 排出シナリオ×3 つの閾値=54 通りのVoCC を計算した結果,VoCC は36.8?308.6 m/year と推定された。更に,APLAT(環境省の気候変動適応情報プラットフォーム)への実装を想定し,VoCC に加えて位置情報を出力することで,自治体等の様々な主体が地域気候変動適応に利活用する方法を考案した。
著者
吉水 湧樹 坂部 創一 山崎 秀夫
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.28(第28回環境情報科学学術研究論文発表会)
巻号頁・発行日
pp.337-342, 2014 (Released:2014-12-03)
参考文献数
15

この研究の目的は,共同運動と論理的思考を好むことが情報環境におけるテクノ依存症傾向が及ぼす新型うつ傾向に対する抑制要因になるかどうかを調査することである。情報系大学生に対する調査データは共分散構造分析で分析され,論理的思考傾向を示す学生及び単独運動よりも共同運動を好む学生に,より低い新型うつ傾向がみられた。現今の情報化社会における新型うつ傾向を予防するために,共同運動と論理的思考への愛好が振興される必要があり,また共同運動愛好を奨励することによってテクノ依存症傾向が低下すると思われる。
著者
武田 重昭 神崎 澪妃 加我 宏之 増田 昇
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.28(第28回環境情報科学学術研究論文発表会)
巻号頁・発行日
pp.349-354, 2014 (Released:2014-12-03)
参考文献数
11

近年,本研究では,旅が大衆化した江戸期の名所案内記の中でも,はじめて観光モデルルートが掲載された「京城勝覧」を対象に近世京都における観光特性を明らかにすることを目的とした。本文に記載されている17 日間の案内文から,観光対象およびそれらの順序,観光対象についての説明内容を抽出して分析した。観光特性は,短距離で観光拠点が多い巡覧型,中距離で観光対象の少ない散策型,長距離で観光拠点が少ない遊山型,長距離で観光対象が多い周遊型の4つのタイプに分類でき,各タイプにおける人工物と自然物を調和させた観光特性が確認できた。
著者
和田 有朗 品川 崇
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 (ISSN:03896633)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.179-184, 2018

食品ロスに関する個人の内的要因と食材を捨てない行動との関連を調査した。また,食品ロス対策の評価シートを用いて,消費者の意識に変化が生じるのかを調査した。その結果,食材を捨てない行動と無駄にしない調理技術の間には,やや強い関連が認められた。評価シート実施後に変化した意識項目の結果からは,まずは家庭でできる食品ロス削減案の提案と一人一人が容易に取り組めそうな行動から行っていくことが必要だと考えられる。
著者
對馬 孝治 舩橋 亨 笹田 勝寛 河野 英一
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 (ISSN:03896633)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.49-54, 2014

本研究では,河川に広く生息するオイカワ(<i>Zacco platypus</i>)を対象に,体組織の炭素と窒素の安定同位体比が食物源の違いを反映して河川(およそ-26‰と16‰)と遊水地(およそ-22‰と11‰)で異なったことを利用し,水域間の移動を明らかにした。同種の採補は,神奈川県内の境川,境川支流の和泉川,神奈川県立境川遊水地公園内の俣野遊水地,下飯田遊水地の隣接する4水域で実施した。出水による越流前後で河川と遊水地で採補された個体の安定同位体比の比較から,越流による河川から遊水地内へのオイカワの移動が確認された。遊水地は出水による生息域の流下を防ぐ役割があり,遊水地は河川のオイカワの生育場として重要な場所であることが示唆された。
著者
對馬 孝治 舩橋 亨 笹田 勝寛 河野 英一
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.28(第28回環境情報科学学術研究論文発表会)
巻号頁・発行日
pp.49-54, 2014 (Released:2014-12-03)
参考文献数
14

本研究では,河川に広く生息するオイカワ(Zacco platypus)を対象に,体組織の炭素と窒素の安定同位体比が食物源の違いを反映して河川(およそ-26‰と16‰)と遊水地(およそ-22‰と11‰)で異なったことを利用し,水域間の移動を明らかにした。同種の採補は,神奈川県内の境川,境川支流の和泉川,神奈川県立境川遊水地公園内の俣野遊水地,下飯田遊水地の隣接する4水域で実施した。出水による越流前後で河川と遊水地で採補された個体の安定同位体比の比較から,越流による河川から遊水地内へのオイカワの移動が確認された。遊水地は出水による生息域の流下を防ぐ役割があり,遊水地は河川のオイカワの生育場として重要な場所であることが示唆された。
著者
土光 智子 福井 弘道 大澤 啓志 一ノ瀬 友博
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.23(第23回環境情報科学学術研究論文発表会)
巻号頁・発行日
pp.107-112, 2009 (Released:2011-02-15)

害獣でありアンブレラ種でもあるツキノワグマは,有効な生息地管理が期待されており,本種の生息地推定には意義があると思われる。本研究では,環境指標によるツキノワグマ生息確率予測モデルを開発した。ロジスティック回帰モデルは,log(p/(1-p))=(-1.486e+01)+(7.335e-04)*x1+(9.470e-03)*x2であった。ここでx1 は徒歩道・庭園路等への距離(m),x2 は標高(m),p は本種の生息確率を示している。本モデルは,生息地管理に応用が可能であり,今後は他の地域個体群生息確率予測への適用可能性の検証が望まれる。
著者
ソ ユファン 本條 毅
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 (ISSN:03896633)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.125-130, 2018

天空率は,都市構造を表す指標の一つである。天空率測定を,魚眼レンズカメラ,全天球カメラ,Google Street View,DSM などの手法を用いて行い結果を比較した。その結果,従来使用されてきた魚眼レンズカメラに加え,これらの方法で全て実用的に天空率を求められることが分かった。Google Street View やDSM を使用する場合には,撮影した時期の建物や土地利用などが,変化していないかの確認が必要であった。樹林内や街路樹のある道路での天空率測定の場合,二値化後の枝や葉の大小が誤差の原因であり,二値化の閾値の選定に注意が必要であることが分かった。
著者
宮内 大策 藤原 一繪
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 (ISSN:03896633)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.69-74, 2007
被引用文献数
1

大分県大分市の埋立地に造成された植栽後30 年を経過した環境保全林で,常緑広葉樹24 本(クスノキ,アラカシ,タブノキ,ホルトノキ,マテバシイ)を伐倒し,幹の直径や樹高を測定したのち,幹重・枝重・葉重を秤量し,相対生長関係を作成した。同林内で胸高直径測定可能な樹木を対象に毎木調査をおこない,伐倒調査で作成した相対生長関係を適用して,二酸化炭素固定量推定の礎となる地上部現存量の推定を行った。その結果,地上部現存量は327.3(幹:230.1,枝:82.3,葉:14.9)t/ha と推定され,日本の常緑広葉樹林の50~60 年生の既往研究と同程度の地上部現存量であることが分かった。
著者
岩田 優子
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.30(第30回環境情報科学学術研究論文発表会)
巻号頁・発行日
pp.25-30, 2016 (Released:2016-11-28)
参考文献数
12

兵庫県豊岡市と新潟県佐渡市は,それぞれコウノトリとトキの野生復帰事業の一環として,環境保全型農業の普及に取り組んできた。現状において,両市は,(1)環境保全型農業の作付面積の推移,(2)無農薬米の作付面積,の2点で違いがある。これらの違いを説明するために,本研究では,マルチアクター間の協働ガバナンスに焦点をあて,普及プロセスへの影響について比較分析を行った。両市の分析の結果,野生復帰事業における各アクターのリーダーによるネットワーク拡大の有無が,環境保全型農業普及における協働プロセスの循環,特に,最終フェーズである「成果達成」の点での大きな差異につながることが示された。
著者
上東 伸洋 坂部 創一 山崎 秀夫
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 (ISSN:03896633)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.273-278, 2016

<p>本研究ではSNS 交流が,共感力や現実の友人関係,QOL(Quality of Life)を連鎖的に向上させるという仮説を設定した。そして,情報系大学生を対象に集合調査法で調査し,共分散構造分析で検証した。その結果,SNS 交流がそれらの要素を向上させていることが検証された。また,SNS 交流のネットと現実の共感力へ及ぼす促進効果が現実友人関係やQOL に与える影響は,SNS 疲れやテクノ・ネット依存症傾向の悪影響よりもその向上効果が高いことが示された。さらに,ネット共感力が現実共感力を向上させる可能性も示唆された。 </p>
著者
真田 康弘
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.22(第22回環境情報科学学術研究論文発表会)
巻号頁・発行日
pp.363-368, 2008 (Released:2011-01-07)

現在日本が南極海及び北太平洋で行なっている捕鯨操業は,国際捕鯨取締条約第8条に規定される科学調査目的の捕獲許可発給に基づくものである。本小論ではこの条項の起源を探るとともに,商業捕鯨モラトリアム以前の各国の同条項に基づく捕獲許可発給運用の歴史を振り返り,国際捕鯨取締条約の有効性を減ずるものがなかった否かを検討するものとする。加えて,現在の日本の調査捕鯨のヒントとされている1977年より行われた捕獲許可発給に関して,これがどのような背景・理由から行なわれたのかを探るものとする。
著者
市原 純
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 (ISSN:03896633)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.295-300, 2012

<tt>本研究は、地方自治体における国際環境協力の実施に影響を及ぼす要因を明確にすることを目的とする。とりわけ、政治的要因、行政余力などの行政的要因および地域間の波及要因が環境協力の実施や関連予算額の決定に対して影響を与えるのか、計量分析により検討する。計量分析の結果、革新知事、職員数に占める環境関連職員の割合や地域間の波及要因が環境協力実施に影響を及ぼすこと、また、職員数に占める環境関連職員の割合が、環境協力予算額の決定に影響を及ぼすことが確認された</tt><tt>。 </tt>
著者
吉田 登
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.18(第18回環境研究発表会)
巻号頁・発行日
pp.313-318, 2004 (Released:2007-01-12)

本研究では、最も流通する地域通貨の1つとして知られているアメリカ合衆国のイサカアワーを対象として、流通状況とその地域経済への影響を調査、分析した。まず、現地ヒアリング等によりイサカアワーの流通のしくみを図化し、イサカアワーで提供される財・サービスのメニュー数の推移を把握した。次に、年間の取引内容及び金額について、主要ユーザーヘのアンケート及びインタビューにより調査した。分析の結果、イサカアワーは年間に約1万1千アワー(約1200万円相当)の流通規模を有すること、また産業連関分析を用いて推計した地域通貨による乗数は1.34であり、郡経済の乗数1.2を上回る地産地消の効果を有することを明らかにした。
著者
嶋田 喜昭
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 (ISSN:03896633)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.167-172, 2011

近年わが国では,ペット(犬猫)飼育数の増加に伴い,三大ペット公害(鳴き声,悪臭,不衛生)をはじめとするさまざまな問題が発生している。本研究は,名古屋を事例とした住民意識により,特に犬の飼育を考慮した際の都市環境の改善のための課題を検討したものである。まず,ペット飼育に関わる問題や法令など,わが国のペット飼育を取り巻く現況を把握した。次に、名古量市・北名古屋市の住民を対象とした意識調査を実施し,犬の飼育実態や,犬の飼育に関連した都市施設ならびに政策に対する必要意識等を分析した。そして,街路や公園内の各種施設のニーズやその費用負担に対する意識,また重視されている政策等を示した。
著者
山﨑 雄大 常松 展充 横山 仁 梅木 清 本條 毅
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.30(第30回環境情報科学学術研究論文発表会)
巻号頁・発行日
pp.43-48, 2016 (Released:2016-11-28)
参考文献数
10

本研究では2020年の東京五輪のマラソンコースを例に,その温熱環境を把握することを目的として,MRT(平均放射温度)とWBGT(湿球黒球温度)の計算事例を示した。その結果,猛暑日である2015年8月7日の事例では,9時~18時でコース上のすべての地点でWBGTが熱中症の「厳重警戒レベル」とされる28℃以上となった。またコース上にできる影によってWBGTが低下するため, 日陰を選んでコース取りをすることにより,ランナーが体感するWBGTを低く抑えられる可能性が示唆された。