著者
上田 年比古 河村 明 神野 健二
出版者
九州大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

1.セルフチューニングコントロール理論を用いたゲート開度操作のための定式化:セルフチューニングコントローラーに河口堰ゲート開度の最適制御を行うための定式化を行った。まず河口堰を含む汎用的な河川システムを考え、河口堰からの総放流量を制御変数とし、河口堰貯水池位を被制御変数とするセルフチューニングコントローラーの一般的な定式化を後退演算子を用いて導いた。次いで簡単な河口堰システムに対するセルフチューニングコントローラーの式を具体的に示した。2.数値シミュレーションおよび実際の遠賀川河口堰開度制御に対する適用:1.により定式化した手法の適用性、有用性、制御効果の検討のために、まず、本手法を流入量の関数形、未知パラメーターを予め与えた、いわゆる素性のはっきりしたシミュレーションデータに対して適用し数値シミュレーションを行った。この結果本手法が未知パラメーターを精度よく同定でき、目標水位を維持する最適放流が適確に求められることが示された。次いで、本手法を実際の遠賀川河口堰開度の制御に適用した。そしてセルフチューニングコントローラーにより河口堰ゲート総放流量を決定した場合の上流側水位と現存の操作ルールを用いた場合のそれを比較した。その結果、セルフチューニングコントローラーを用いた方が安定して目標水位を維持できることを示した。3.台風洪水期における感潮河川の水位予測:河口堰ゲート開度を最適に制御するには河川水位の予測が必要となる。ここでは物理性を考慮した複雑なモデルは使わず、簡単な周期関数モデルまたはARMAXモデルを用い、カルマンフィルターによりリアルタイムで精度よく洪水時の感潮河川の水位予測を行う手法を示した。次いで本手法を鹿児島県川内川に適用しその予測精度について検討した。
著者
A. MUHAMMED ULUDAG
出版者
九州大学
雑誌
Kyushu Journal of Mathematics (ISSN:13406116)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.393-419, 2005-09
被引用文献数
9

We study branched Galois coverings of the projective plane by smooth K3 surfaces. Branching data of such a covering determines in a unique way a uniformizable orbifold on the plane. In order to study Galois coverings of the plane by K3 surfaces, it suffices to study orbifolds on the plane uniformized by K3 surfaces. We call these K3 orbifolds and classify K3 orbifolds with an abelian uniformization. We also classify K3 orbifolds with a locus of degree less than 6 and with a non-abelian uniformization. There are no K3 orbifolds with a locus of degree greater than 6. Although we give some examples of K3 orbifolds with a sextic locus, our results are incomplete in this case.
著者
森平 雅彦
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、高麗時代の朝鮮半島に元朝治下の中国より朱子学が伝来・普及した背景について、対元関係を軸に解明するものである。最終年度となる本年度は、まず13世紀末から14世紀初頭にかけての初期段階において、高麗知識人が朱子学を摂取するにいたった契機として、元の禿魯花(turγaγ=質子)制度、および禿魯花が充当されるケシク(kesig=皇帝の宿衛)制度との関連性を総合的かつ詳細に解明した。すなわち根本資料の一角をなす「崔文度墓誌銘」(韓国国立中央博物館所蔵)や『櫟翁稗説』(お茶の水図書館所蔵)の実物調査をふまえた考察を通じ、当該期には安〓・白頤正・李斉賢・崔文度などの朱子学先駆者が、みな禿魯花として、あるいは禿魯花をへてケシクの構成員となった国王・王族のケシク勤務に随従して元都に長期滞在し、そのなかで朱子学に触れた状況が実証的に解明され、元との政治関係が朱子学伝播を媒介する構造の一端が明らかになった。以上の成果は12月9・10日開催の九州史学会大会(於九州大学)において「朱子学の高麗伝来と元朝ケシク制」と題して発表した。また14世紀の状況について両国交流の制度的環境(外交・交通など)を含めた基礎リサーチを完了した。すなわち14世紀前半には、元で開始された科挙への応試が高麗国内の朱子学学習熱を刺激し、かかる背景のもとで国家規模の蒐書事業が推進され、また高麗国内でも朱子学書が刊行されるにいたった。さらに双方の交流パイプが拡大・深化するなか、元の儒教振興政策・中国知識人の高麗訪問、高麗人の元での科挙受験や仕官にともなう人的交流や留学機会の増加、交易商品としての書籍移入など、朱子学の学習契機にも多様化がみられた。その後14世紀後半には元との関係が冷却化するものの、移入された元版本やその複製本の刊行による基盤整備のもと、高麗国内における朱子学振興の態勢が強化されていったとみられる。
著者
吉田 敏 位田 晴久 下町 多佳志 川満 芳信 尾崎 行生 渡部 由香 安永 円理子
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

西南暖地の施設園芸における冷却技術の普及を阻む原因が,冷却技術を導入したときの温度効果を定量的に評価する手法や,冷却がもたらす植物生育,収量および収穫物の品質への影響について,生産現場に十分な理解が得られていないことにあるとの観点から,環境制御施設,模擬実験温室および実際の生産現場において施設冷房・冷却を導入した場合の環境観測および植物生体計測に関する検討を行い,冷却がもたらす生産性向上効果について評価した.
著者
嶋崎 譲
出版者
九州大学
雑誌
法政研究 (ISSN:03872882)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.467-480, 1961-03-25
著者
徳永 哲
出版者
九州大学
雑誌
Comparatio (ISSN:13474286)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.xvii-xxv, 2004

In 1915, W.B.Yeats had a chance to read some scripts of Noh theatre that Fenollosa and Pound had translated into Japanese, and in 1916, he wrote in 'Note on the first performance of At the Hawk's Well'. "I have found my first model - and in literature if we would not be parvenus we must have a model - in 'Noh' stage of aristocratic Japan." What is the meaning of "a model" that he writes in the essay? It is evident that he did not imitate the Noh scripts. He had been seeking for the ideal theatre or 'Poetic Drama' for many years before he met the Noh scripts. He tried to realize "the emotion that comes with music of words" and "the moment of exaltation, of excitement of dreaming" on the stage. But creation of 'Poetic Drama' without example was extremely difficult. He took Gordon Craig's advices and he tried to use 'Screen' on the stage and made the actors wear 'Mask'. Although he tried to do different things to create 'Poetic Drama', he was not satisfied with the results. His encounters with the Noh scripts, Fenollsa's essays and Michio Ito solved his difficult problems. He learned totally new forms from the Noh theatre, including actor's movements, existence of musicians and Japanese dancing. The process of groping for his 'Poetic Drama' from 1889, brought him to make At the Hawk's Well. I believe that W.B.Yeats could complete his 'Poetic Drama' in the Noh-inspired At the Hawk's Well.
著者
福嶌 智
出版者
九州大学
雑誌
飛梅論集 : 九州大学大学院教育学コース院生論文集
巻号頁・発行日
vol.3, pp.161-173, 2003-03-28

This study is trying to get a perspective of identity constitution on Chinese-Japanese students from China (originate in "Chugoku-Zanryu-Koji or Chugoku-Zanryu-Fujin" ) and "Zainichi" students(originate in Korean Residents in Japan). Whereby, I consult Hall's disquisition(1990/1998, 1996/1998, 1996/2001) and Ishikawa's disquisition(1992, 1996, 2000). These disquisitions acquire below: I. One's identity is never static, rather than having dynamism. From this point of view, one's identity is always on constituting "process" . II. Identity constitution is "dialogitic" prosess. From this point of view, one's identity constitution is never separated from others' effort. III. And we must drop the idea that "Identity is united and coherent". IV. One's identity should be free from "Nation States" and "Cultures based on Nation States". Therefore, studies of education about(not "for") foreigner students in Japan must illustrate "whole aspct" (Ishikawa: 2001) by uniting "localized aspects" (Ishikawa: 2001) from these perspectives.
著者
伴野 豊 藤井 博 河口 豊 日下部 宜宏 竹村 洋子
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究では九州大学大学院農学研究院附属遺伝子資源開発研究センターに保存される世界最高水準のカイコ突然変異体の有効利用と効率的保存を目的として行った。その目標は次の3点にあった。1、DNAレポジトリーの確立(遺伝子資源の有効利用)2、精子レポジトリーの構築(効率的保存)3、遺伝子資源の情報発信(情報レポジトリー)上記3項目に関する達成度は以下の通りである。(1、DNAレポジトリー)約450系統を網羅するDNAレポジトリーを計画通り構築した。各系統に関して10個体を個別に保存し,系統内の多型解析を必要とする研究にも対応したレポジトリーとなり、既に国内・外の研究に活用されている。これまでは研究者が飼育を必要としていた為に利用が限定されていたが桑の確保などの必要がなくなり、利用が拡大している(2、精子レポジトリー)本課題では精子を採取する過程と人工授精の過程に極めて高度なテクニックを有する為に、研究分担者である竹村が開発した技術を扱う事が可能な人材の育成に時間を要した。このために目標の全系統の精子レポジトリー構築には至らず、30系統に留まった。今後、技術の改善に努める必要がある。(3、情報レポジトリー)2005年3月までに報告されたカイコの突然変異遺伝子に関する情報の収集を行った。その結果、カイコ突然変異遺伝子に関しては2005年3月までに報告されている全てについて遺伝子記号,遺伝子名,形質特徴,文献引用が一覧出来るデータベースを構築し、「カイコ突然変異体利用の手引き2005」を刊行した。以上,DNA,精子,情報という3つ事項のレポジトリー化が計られ,カイコ遺伝子資源を効率的に活用・保存できる基盤が出来上がった。
著者
中林 敏郎
出版者
九州大学
雑誌
九州大學農學部學藝雜誌 (ISSN:03686264)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.154-158, 1951-11

I have separated the flavonoid pigments systematically by the method of two dimensional paper chromatography ( Table 1) and some results of the detection of these pigments in plants by this method are cited in Table 2.近時発達したペーパークロマトグラフ法は供試試料が少量ですむ事, 操作が簡単である事, 及び分離能が秀れ, 且, 微量物質も槍出し得る事等の利点より生物体申の成分の検索に極めて有効な手段であるが, 先に大島及び私は本法によるフラボン類の系統的分析法を発表し, 其後本法による植物中のフラボン類の槍索及び分離を試みてゐるが, 今回は之迄に得られた結果匠ついて報告する. フラボン類のペーパークロマトグラフ法については他にWenderや刈末, 橋本並びに藤瀬, 立田等の報告があるが, 私共はフラボン類のRf値とその構造との間に或る関係の存在する事を見出した. 即ち展開溶媒どして醋酸エチル-醋酸一水(50:2:50 vol%)の混合溶媒の有機層を用ふるとフラボン類のRf値はそれに結合する糖の種類によつて支配され, 又 n-ブタノールー醋酸一水(4:1:5 vol%)を用ひた場合同一糖を有するフラボン類に於てはそのOH基, OMe基の数によつて支配される. 即ち二次元展開による系統的分析が可能となる. 既知のフラボン類のRf値を示せばTable 1の如くなる. Table 1より推定される様に, 醋酸エチル-醋酸を用ひるとRf値がO.OO~O.20附近のものはdi-又はtri-glycoside, 0.30~0.40ではglucoside, 0.60~O.80 で rhamnoside, 0.90~1.00では遊離のaglyconeである事が判る. 又n-ブタノール-醋酸の場合はOH基の多いものはRf値が小さく, OMe基の存在はRf値を大とする. 以上の結果より本法によつて得られる不明のフラボン類が如何なるものであるかを推定する事が可能となる.
著者
山田 龍雄
出版者
九州大学
雑誌
九州大學農學部學藝雜誌 (ISSN:03686264)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.415-422, 1951-11

This report is about the results of the survey at Fukutomi Village in Saga Prefecture at 1939 and 1944. On the Japanese farmer that male head of the family have governed, it will be needed to research the farm size related not moments of family labours but to family composition. So I grouped all farms at this village as : the normal farmer, part-time farmer and the conscripted farmer for military service?as it was war-time, and I designed the following family types-3 generation couples, 2 generation couples, older, middle, younger couple and so on, and 1 divided the all farms of the 3 groups into these types in order to research the relation of the family composition and the farm size. The results of the static and dynamic observation shows the remarkable relation between them concerning normal farmer, containing the conscripted farmer, but not part-time farmer. In order of generalize of this results, however, we must consider the progress of agricultural all productivity the existence of part-time farmers and the condition of the land market etc.序言において述べたように, 調査村はこの問題に対する資料を明瞭ならしめるために, 土地の供給比較的豊にして, 従つて比較的耕地の取得の機会が多く, 農業経営組織も単純且つ同様で, 技術体系は殆ど裸手労働に依存し, 従つて労働と土地の関係がより直接的であり, そこに家父長的家族制度に彩られた労働構成の作用が敏感なるべき村である. その結果, 以上に見たように, 殻態的, 動態的観察を通じて, 農家家族構成と農業経営規模との間には, かなり密接な関係のあることを認めざるを得なかつた. もとよりこの村の條件は我国として, やや特異であり, その結果についても従つて特殊的であると言われるかも知れない. しかし私はこれを基礎的・基本的な事実と解したいのであつて, それが現在の我国農村における具体的事実と相異することは言うまでもないことである. 以上の諸事実は言うまでもなく農業における労働生産力の発達によりて, 克服されてゆく, 我国農村のその発達段階と言へども, この調査村における程, 即ち役畜飼養農家率1/4に示される程度低くはないから, 家族構成と経営規模の関係がそれ程明らかに浮び上らないのは当然である. けれどもこの関係が明瞭でないことを, 直ちに農業生産力の発達に結びつけるのは早計であろう. 前に第2表において明らかなように, 兼業農家の間では, この関係は甚だ撹乱されるのである. そして我国農村を一般的に見る場合, 生産力の発達によるよりは寧ろ, この兼業化によつて, この関係がかくされている方が多いと思われる. この場合上のような事実となつてはあらわれないが, 家父長的家族制度は, 零細農家の他のあらゆる経済的條件と相まつて, 強く農業生産力の発達を阻んでいること, 諸家の説く通りである. そこでこの関係を攪乱すべき條件をできるだけ捨象しながら, 綜合体として考えた農家家族構成と農業経営規模との関係を, 明瞭に且つ具体的ならしめようとした意味があつたのである.
著者
衣笠 哲生
出版者
九州大学
雑誌
法政研究 (ISSN:03872882)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.527-596, 1982-03-25
著者
萱嶋 泉
出版者
九州大学
雑誌
九州大學農學部學藝雜誌 (ISSN:03686264)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.1-24, 1960-08

This paper reports general information obtained concerning the daily fluctuation of spider populations found in the cabbage fields in Fukuoka and Takanabe districts, the feeding of these on injurious crop insects, and the effect of Misumena tricuspidata (Fabricius) on them. The experiments or observations were carried out from September 3 to October 31 at Fukuoka and from November 10 to February 20, 1960, at Takanabe. A list of the species of spiders found to occur in the experimental cabbage fields is as follows : District of Fukuoka 1. Misumena tricuspidata (Fabricius). 2. Neoscona doenitzi (Boe. et Strand). 3. Lycosa t-insignita Biis. et Strand. 4. Agelena opulenta L. Koch. 5. Oxyopes sertatus L. Koch. 6. Lycosa sp. 7. Chiracanthium kompiricola Di.in. et Strand. 8. Theridiosoma eperioides Bos. et Strand. 9. Dolomedes herculus Bos. et Strand. 10. Plexippus crassipes Karsch. 11. Leucauge subblanda Bos. et Strand. 12. Hahnia cortcicola Bi.s. et Strand. District of Takanabe 1. Misumena tricuspidata (Fabricius). 2. Neoscona doenitzi (Bos. et Strand). 3. Lycosa 1-insignita Bcs. et Strand. 4. Leucauge subblanda Bos. et Strand. 5. Lycosa coelestis L. Koch. 6. Oxyopes sertatus L. Koch. 7. Plexippus paykulli (Audouin). 8. Tihellus tenellus (L. Koch). A list of the speci e s of insects caught by the spiders is as follows : a. Injurious insects of direct importance District of Fukuoka 1. Mamestra brassica Linne. 2. Agrotis fucosa Butler. 3. Agrotis ipsilon Hufnagel. 4. Prodenia litura Fabricius. 5. Mesographe forticalis Linne. 6. Udea testacea Butler. 7. Oebia undalis Fabricius. 8. Plusia jessica Butler. 9. Pieris rapae crucivora Boisduval. 10. Phytomyza atricornis Meigen. 11. Brevicoryne brassica Linne. 12. Nysius plebejus Distant. 13. Gryllulus mitratus Saussure. District of Takanabe 1. Phaedon brassica 13aly. 2. Phyllotre t a striolata Fabricius. 3. Oebia undalis Fabricius. 4. Plutella maculipennis Curtis. 5. Pieris rapae crucivora Boisduval. 6. Phytonryza atricornis Meigen. 7. Hylemyla platura Meigen. b. Injurious insects of indirect importance District of Fukuoka 1. Cnaphalocrocis medinalis Guenee. 2. Scopula modicaria Leech. 3. Adoxophyes orana Fis. von Ros. 4. Hymenia recurvalis Fabricius. 5. Nephotettix bipunctatus cincticeps Uhler. 6. Niraparvata lugens Linne. 7. Chlorita flavescens Fabricius. 8. Eutettix disciguttis Walker. 9. Cicadella viridis (Linne). 10. Musca domestica Linne. 11. Stomoxys calcitrans Linne. 12. Lucilia caesar Linne. 13. Paratettix histricus Stal. District of Takanabe 1. Acrolepia manganeutis Meyrik. 2. Illiberis pruni Dyar. 3. Erythroneura apicalis Nawa. 4. Empoasca onukii Matsuda. The present observations revealed that the effects of spiders on the cabbage pests were not neglizible. Especially Misumena tricuspidata was not only very effective but also very easy to make mass production in the laboratory. Thus Misumena tricuspidata may be regarded as a promising spider in the control of crop pests. Out of 140 individals of Misumena tricuspidata liberated 32 per cent were established in the cabbage field at Fukuoka, while out of 100 spiders liberated 60 per cent were established at Takanabe. This higher percentage of establishment seemed to be caused by the less active season of the spiders (at the end of November and throughout December), when the spiders became more sluggish before overwintering. During the course of experiments there was found no evidence that the spiders attacked the beneficial insects in the cabbage fields.果樹園や水田に,どんな種類のクモがどんな程度棲息しているかという研究は,今迄にPickett及びPatterson(1946),Stultz(1955),Chant(1956),Dondale(1956,1957)Nakao及びOkurna(1958),Kobayashi(1958)等によつて行なわれてきた.然し蔬菜園にクモがどの程度いて,何を食べて生活しているかという研究は,私の知る範囲に於いては未だないようである.けれども此の事を調査する為には,今迄おこなわれたように,月に一度又は週に一度,実験場に行つて調べる方法では不充分であつて,少なくとも1日に1回は圃場に行き,そこに棲息しているクモの習性を熟知することが必要となつてくる.筆者は過去4年間此のような研究をおこなつて来たが,諸種の都合で連続1週間或いは10日間位の研究しか出来なかつた.ところが幸いに昭和34年9月1日から,昭和35年3月31日まで九州大学農学部に国内留学を許可され,安松京三教授の御指導のもとに調査を行うことが出来た.すなわち福岡地方では9月4日から予備試験を開始し,9月11日から10月10日までの30日間,高鍋地方では11月10日から12月2日までの23日間,35年1月5日から1月17日までの13日間,蔬菜園特にキャベツ畠に於ける毎日のクモの活動状況を調査した.又天敵として最も有効であると思われるハナグモを福岡では10月3日から10月23日まで,高鍋では11月20日から12月10日までの各21日間放飼して,その定着性並びに害虫捕食状況な調査したのである.研究期間は決して長いとは言われないが,日々の調査で種々有益な事柄を知り得たので,ここにその大要をまとめて'発表する次第である.本文に入るに先だち,調査期間中終始懇篤な御指導並びに本文の校閲を添うした九州大学農学部教授安松京三博士に対し,?に謹んで感謝の意を表する.又平嶋義宏助教授,日高輝展助手,大学院学生矢野宏二氏を始め,教室の各位に,更にクモに関し日頃種々御指導と御援助を賜わる八木沼健夫氏,大熊千代子姉の両氏に哀心から感謝の意を表すると共に,宮崎大学農学部教授中嶋茂博士,宮崎県教育庁学校教育課の関係諸先生並びに宮崎県立高鍋農業高等学校落合寅次郎校長に厚く感謝する次第である.