著者
黒澤 昌志
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究では次世代型ディスプレイとして期待されるシステム・イン・ディスプレイの実現に向けて,透明基板(石英等)上に高品質な歪みシリコンゲルマニウム(SiGe)を形成するプロセス技術の開発を目標としている.本年度に得られた成果を以下に記す.(1)金属(Al,Ni)誘起成長法とSiGeミキシング誘起溶融成長法の重畳により,(100),(111),(110)方位に整列した単結晶Ge薄膜を石英基板上に同時混載することに成功した.得られたGe薄膜には積層欠陥等は存在せず,高いキャリア移動度(約1000cm^2/Vs)を示すことを明らかにした.(2)本プロセスで形成したGe(100),(111),(110)単結晶薄膜には,約0.6%の2軸性伸張歪みが印加されていることを明らかにした.この歪みが石英基板との熱膨張係数差に起因することを理論計算により明らかにした.(3)更なる伸張歪み増強を目指し,SiN歪み印加膜付Si,Ge薄膜へのUV光照射を試みた.500℃以下の温度にてUV光(248nm)照射をすれば,更に約0.7%の伸張歪み増強が可能であることを見いだした.この現象は,SiN膜中に含まれるH原子の脱離により,SiN歪み印加膜の応力が増大したためであると推測される.
著者
山田 巌
出版者
九州大学
雑誌
九州大学医学部保健学科紀要 (ISSN:13482319)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.73-78, 2003-09

The purpose of this study is to examine variation which appeared in the stock culture by Rice Bran. As the result , biochemical property of Escherichia coli differed clearly from property of isolation culture, but agreed in the case of Klebsiella pneumoni
著者
山田 巌
出版者
九州大学
雑誌
九州大学医学部保健学科紀要 (ISSN:13482319)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.47-50, 2004-02-20

The purpose of this study is to examine growth and formation of capsule of bacterial culture by Rice Bran. As the result , the following findings were obtained. 1) The growth by Rice Bran agar was confirmed in after cultivation of 48-72 hours, but isolated colony formation was difficult. 2) The growth by Rice Bran broth could be confirmed after the cultivation of 24 hours on all bacterial culture. 3) The formation of cupsule by Rice Bran broth could be confirmed in E. coli, K. pneumoniae, K. oxytoca. 4) As for K. pneumoniae, formation of capsule by blood broth was confirmed in both blood broths. E. coli, K. oxytoca were confirmed in human blood broth. In addition, a capsule of K. pneumoniae was thicker in Rice Bran broth than in blood broth.
著者
櫻井 祐子 横尾 真 湊 真一
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

効率的な提携を形成すること(提携構造形成問題)は,人工知能やマルチエージェントシステムの研究領域において,重要な研究分野となっている.本研究課題では,多分岐ゼロサプレス型BDD~(MTZDD)を応用し,(1) あらゆる特性関数を記述可能,(2) 既存の表現法よりも指数的に簡略化可能な場合が存在,(3) コアに関する問題をMTZDDのノード数の多項式時間で求解可能,(4) 提携構造形成問題は混合整数計画法を用いることで,既存アルゴリズムよりも高速に解を求めることが求解可能といった性質を持つ簡略記述法の提案などを行った.これらの研究成果は,国際会議 PRIMA2011で優秀論文賞を受賞した.
著者
山本 勝
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

金星や地球を含めた地球型惑星大気力学の理解を深めるために,金星大気大循環モデルの高度化に向けた微細擾乱の数値実験を行った.地表付近と雲層内の3次元マイクロスケール気象シミュレーションによって,対流調節や対流混合が静的安定度の鉛直構造や地表風の構造に与える影響を調査した.微細擾乱の数値実験と並行して,高度化するベースモデル(大気大循環モデルと微物理モデル)の整備を行った.特に,金星大気大循環モデルの妥当性を議論するために,モデルの中の極渦の力学等を明らかにした.
著者
松村 瑞子 因 京子
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

(1)社会的身分や年齢に差がある話者間の会話やテレビのインタビュー番組など公開を目的とした会話のデータを収集し、文字化を行なった。次に文字化したデータをタイプ1(ある程度親しいが上下関係のある対話者間の会話(大学教授と学生等)、タイプ2(医者が患者を診察してる場面の会話)、タイプ3(テレビのインタビュー番組における女性司会者と客の会話)に分類した。(2)次に、日本語における丁寧さの基準とは何かを考察するために各々のタイプのデータを分析した。その結果、日本語のポライトネスには、ポライトネス・レベルの基準となる言わばポライトネス・レジスターを決める「わきまえ」を示す部分と、そのレジスターの枠内で会話を成功させるために用いられる「ストラテジー」が存在することが分かった。井出(1989)はアンケートに基づいて「わきまえ」は話者の意図的選択ではなく社会的慣習によって決まってくるものであると論じたが、本研究では実際の会話の綿密なデータ分析を行なった結果、「わきまえ」の表現は会話参加者の相対的地位によって決まっていること、また使用されるストラテジーの種類や頻度も会話参加者の相対的地位や状況によって左右されていることを示した。さらに、この結果を国際学会(International Symposium on Linguistic Politeness : Theoretical and Intercultural Perspective.Dec.7,1999.Chulalongkorn University, Thailand)にて発表した。(3)最後に、日本人および日本語学習者がそのポライトネスの基準をどの程度認識しているかの調査を行い、日本人と学習者の間の意識のずれを特定した。収集したデータやアンケート結果を基盤にして、日本語会話における丁寧さの実態を日本語学習者に合理的に提示するための資料・教材を作成した。
著者
藏田 耕作
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

骨細胞ネットワークの健全性に着目して骨リモデリング機序を調査することを目的とし,局所的なひずみや破断を与えながら骨細胞を培養できる実験系およびマウス脛骨に疲労亀裂を付与できる動物モデルを開発して実験を行った.その結果,骨基質に生じる大ひずみにより骨細胞ネットワークが損傷を受け,その周囲でアポトーシス細胞が誘導されることが分かった.これがシグナルとなり,損傷部位をターゲットとした骨リモデリングが開始されたり,骨強度低下を補償する骨形成が生じたりすることが示唆された.
著者
大森 亮介
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

ウイルスの抗原性は多様な原因により決定され、温度などの環境要因からも大きく影響を受ける。これまでの進化学や理論疫学での感染症の研究では環境変動の感染症流行に与える影響を詳細に調べたものは少なく、宿主免疫の進化を考える上で、この環境要因による影響を考慮することは必要不可欠である。このため、環境要因の変化による感染症の流行をコイヘルペスウイルスを例に解析した。コイヘルペスは感染した個体の80%以上が死亡する非常に毒性の強い感染症で水産業界に多大な被害を与えた。また、コイヘルペスの流行には季節性がある事が知られており、これは感染が起きる水温の範囲が決まっている為である。この特性を利用し、感染が確認された後に水温を感染が起きない様な水温に人工的に変化させ、流行を抑制する治療法が考案された。この治療法を評価し最適な治療スケジュールを決定する為に、水温と感染率の関係性の実験データ(Yuasa et al. 2008)をもとに養殖場内の鯉の集団での感染を記述する数理モデルを構築し、解析を行った。コイヘルペスの流行の季節変動性は感染から発病までの期間、発病から死亡または回復するまでの期間の長さが水温によって変わる事に起因する(Yuasa et al. 2008)。また、水温を人工的に変える治療法は場合により治療を行っていない時よりも被害が増大することも明らかになった。ここから、感染症抑制の為の環境要因のコントロールは計画的かつ正確に行われる必要があることが示唆された。
著者
金子 昌信
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

j-関数のマルコフ2次無理数における値のある種の連続性をファレイ分数の言葉で定式化した.j-関数の実二次点での値そのものについての数論的性質の解明には至らなかった.しかしマルコフ数のファレイ分数によるパラメトリゼーションを用いてマルコフ数のある種の新しい合同式を証明することが出来たほか,実二次数のcaliberについて,広義,狭義ともに,その偶奇を完全に決定できた.他には一変数モジュラー形式のフーリエ係数の合同,楕円曲線との関連などの結果を得た.
著者
小山内 康人 中野 伸彦 大和田 正明 サティッシュクマール エム 河上 哲生 角替 敏昭 角替 敏昭 足立 達朗 SAJEEV Krishnan JARGALAN Sereenen
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009-04-01

本研究では,アジア大陸の広範な地域で地質調査を展開し,大陸衝突帯深部地質について変成岩岩石学的・火成岩岩石学的解析を行うと同時に,最先端同位体年代測定を実施して,ユーラシア大陸極東部(アジア大陸)全域における衝突型造山帯形成に関わる大陸形成テクトニクスを明らかにした.また,アジア大陸形成過程と密接に関連するゴンドワナ超大陸の形成・分裂テクトニクスや,日本海形成以前のアジア大陸東縁部におけるテクトニクスについても考察した.5年間の研究成果は国内関連研究も含め51編の原著論文として学術誌に公表し,招待講演を含む多数の学会発表を行った.
著者
徳永 正二郎 FRIEDEN Jeff 池間 誠 ANDERSON Kym NOORDIN Sopi EATON Jonath WONG John 大野 健一 中本 悟 PAULEY Louis 中尾 茂夫 DEKLE Robert 高坂 章 UNGER Daniel 花崎 正晴 FRANKEL Jeff ARIFF Mohame PAULY Louis LINCOLN Edwa KIM Chang So 楊 秀吉 桜井 真
出版者
九州大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1993

本研究では、(1)日本、アジアNIEs、ASEAN、中国へと連鎖したアジア経済のダイナミックな発展とそれに平行して現実性を持ちはじめた太平洋両岸の地域経済圈形成(「北米自由貿易協定」を軸としたアメリカ大陸自由貿易圈形成並びに「東アジア経済協議体(East Asia Economic Caucus)」にみられるアジア経済圏形成)の動きがみられるが、それら両者はどのような相関性および相互作用を持っているか、(2)アジア地域経済において日本・アジアNIEs、ASEAN、中国を中心に相互依存の関係が深化拡大しているが、そのプロセスでアジア諸国、日本、米国において経済・通商政策に変化がみられるかどうか、また発展の程度や立場を異にする諸国経済の経済・通商・投資・金融政策相互の間にいかなる軋轢や収歛(convergence)がみられるか、(3)アジア及び北米における地域主義の台頭が日米の政治・経済関係にどのような影響を及ぼし、日米関係がいかなる方向に変容しつつあるか、という設問の上で、調査研究を進めてきた。この作業は、アジア経済の成長と日米関係の変容という二つの(複眼的)分析視角のもとで、ポスト冷戦期の世界経済秩序を展望することを意図している。初年度(1993年度)には、アジアと北米の地域主義に焦点を当て、その問題を軸に(1)地域経済の発展とアジア太平洋地域経済秩序、(2)アジア太平洋経済における日本と米国、(3)アジア太平洋地域経済の発展-課題と展望という3つのセッションに分かれて調査研究した(九州大学にてワークショップを開催し、Asian Economic Dynamism and New Asia-Pacific Economic Orderとして刊行)。次年度(1994年度)には、東南アジアにおける実態調査を行い、ポスト冷戦期という政治的経済的世界システムの再編過程で発生している通商・金融・援助等多岐にわたる日米間の経済的摩擦がアジアの成長とどのように関係しているか、またアジアにおける地域主義の実態について分析した(タイ王国チュラロンコン大学経済学部及び国際経済研究所の協力で、本プロジェクトの共同研究者とチュラロンコン大学、タマサート大学その他研究機関の研究者とが一堂に会してワークショップを開催した)。本年度(1995年度)の研究テーマは、初年度と次年度の研究成果を踏まえて、「アジアにおける経済成長、社会経済的変容及び地域主義」を日米双方の立場から調査研究した。この調査には、アジア金融市場及びアジア域内資金フローの研究に業績をあげている奥田英信(一橋大学講師)、ベトナムやラオスなどインドシナ半島の社会経済問題のエキスパートであるモンテス(Manuel F.Montes;ハワイ東西センター研究員)、日本研究のエキスパートであるモリソン(Charles Morrison;ハワイ東西センター)、韓国の対外経済研究の第一人者であるリ-(Lee H.Chun;ハワイ大学韓国研究所所長)及び米国における日本研究の先導者モチヅキ(Michael M.Mochizuki;ブルッキングズ研究所主任研究員)を研究協力者として招き、ハワイ東西センターでワークショップを開催した。これは、角度を変えてみれば、アジア地域の社会経済的発展を日米関係を通して調査研究することであり、アジア太平洋の新しい経済秩序を構成する二つのファクター(すなわち、「アジアの成長・社会経済の変容・地域主義」という古いシステムを破壊するファクターと「日米基軸」という伝統的ファクター)の相関性と相互作用について認識を深めることにつながった。1994年度及び1995年度の研究成果は、初年度同様公刊の予定である。
著者
関口 正司 清水 靖久 鏑木 政彦 木村 俊道 井柳 美紀 竹島 博之
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、今後の日本における市民型教養のあり方を探るために、日本、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカにおける<教養>の思想を歴史的に解明した。研究に際しては、思想を比較の視座から立体的に捉えることに留意するとともに、政治的教養という点を強く意識した。研究の結果、抽象的知識ばかりでなく実践的な行為や所作のあり方までを教養に取り入れようとする興味深い企てが、様々な歴史的文脈の中で息づいていたことが確認できた。
著者
金 龍燮
出版者
九州大学
雑誌
大学院教育学研究紀要 (ISSN:13451677)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.191-201, 2000

This study clarifies the concrete educational activities and achievement of the people with blindness. Inspite of the severe era situation called colony region under the Japan, Doo-Sung PARK did great contribution for the people with blindness by surrounding help, in Korea. The significance in education of the people with blindness were suggested as below: a)The about systematic education for the persons with blindness who were mainly relying on oral instructional education through the Korean Braille called Kunmoseion; b)Awareness and recognition of the persons with blindness m the society; c) Establishment of the educational methods for the persons with blindness. Therefore, it is not too much to say that his activities built up the base for the education of persons with blindness in the today's Korea.
著者
佐伯 修 佐久間 一浩 大本 亨 岩瀬 則夫 小林 真人 山本 稔 安藤 良文 高山 晴子 高瀬 将道 山本 卓宏 高田 敏恵 奥間 智弘
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

多様体間の可微分写像に現れる特異点を大域的観点から研究し,その特異点と多様体の微分位相幾何学的性質について種々の新しい知見を得た.たとえば,多くの位相的4次元多様体の上には無数の可微分構造があることが知られているが,そのうちで特異点が簡単な写像を許容する可微分構造は一意的であることが示された.またそうした大域的研究が特異点の局所的研究に役立つ例も発見した.こうして,写像の特異点や特異ファイバーと,多様体や写像の同境類の間の深い関係を明らかにし,多くの具体的成果を得た.
著者
神田 大輔 嶋田 睦 真柳 浩太 斉藤 貴士 井倉 真由美
出版者
九州大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2009-07-23

大きな運動性を残した相互作用をしている複合体から原子レベルの構造情報や動的情報を得るためには,解離会合平衡を適切な方法で会合側へシフトすることが必要である.平衡をシフトする技術として,共有結合を分子間に導入する方法(テザー係留技術)とリガンド内に共有結合を導入する方法(分子内架橋係留技術)の2つを開発した.また,結晶コンタクトがない空間をタンパク質を結晶格子内に創りだし,そこにタンパク質の一部分やリガンドを意図的に配置して動的情報を得るための新しい結晶解析方法の開発を行った.ミトコンドリアプレ配列受容体Tom20-プレ配列複合体とオリゴ糖転移酵素-基質ペプチド複合体の2つの系に適用した.
著者
白谷 正治 寺嶋 和夫 白藤 立 佐々木 浩一 伊藤 昌文 杤久保 文嘉 斧 高一 後藤 元信 永津 雅章 小松 正二郎 内田 諭 太田 貴之 古閑 一憲
出版者
九州大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2009-07-23

本取り纏め研究では、プラズマとナノ界面の相互作用ゆらぎに関する学術的成果を統合・発展させて、より汎用性のある学術大系に結びつけることを目的としている。計画研究代表者を研究分担者として、各計画研究における研究成果を取り纏めるとともに、領域内連携により表れた3つの研究項目に共通する基本原理を統合して体系化する。基本原理の体系化に際しては、すべての研究に関する議論を一度に行うと議論が発散する可能性があるため、ゆらぎ・多相界面・バイオというテーマを設定した個別の研究会を開催し研究分担者が成果を統合した後、シンポジウム等で領域全体での成果統合を行った。平成26年度に取りまとめた、平成21-25年度に新学術領域で得られた成果の概要は以下の様に要約される。これらの成果を成果報告書およびホームページで公開した。ゆらぎに関しては、超高精度トップダウンプロセスの確立(ゆらぎの制御)について、エッチングプラズマに関する実験とシミュレーションの研究グループが連携して、エッチング表面形状揺らぎの機構を解明した。ここでは、揺らぎ抑制法について、従来の物理量を一定にする方法から、物理量に制御した揺らぎを与えて抑制する方法へのパラダイムシフトを起こす事に成功した。また、高精度ボトムアッププロセスの確立(ゆらぎの利用)では、超臨界プラズマに関する実験とモデリングの研究グループの連携により、超臨界プラズマにおける密度ゆらぎ機構を解明し、従来法では得る事ができない高次ダイアモンドイドの合成に成功した。予想以上の顕著な成果として、気液プラズマに関する実験とモデリングの研究グループの連携により気液界面プラズマにおいてナノ界面が存在することを発見した(多相界面プラズマ)。また、高いインパクトを持つ成果として、バイオ応用プラズマ関連の研究グループの連携により、大気圧プラズマ反応系の世界標準を確立することに成功した。
著者
楠原 庸子
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

ギムネマシルベスタという植物に含まれるペプチドのグルマリンは、マウスの鼓索神経(CT:舌前方支配神経)の甘味応答を抑制する。当研究室の研究から、マウスの甘味受容経路にはグルマリン感受性(GS)と非感受性(GI)が存在しており、GS経路にはGustが関与していることが明らかとなっている。さらに、うま味物質に核酸のIMPを混ぜることによるうま味の相乗効果はGS経路を経ることが示唆されている。また、マウスのCTを挫滅させると、GI応答は3週目から、GS応答は4週目から再発現することが明らかとなっている。このことから、GS、GI経路の味細胞-味神経間連絡に関わるガイダンス分子の解析に挑む。野性型マウス(WT)にて様々な味刺激によるCT応答を記録した。続いてマウスのCT挫滅後1~5週目の1週ごとに、CT応答を記録した。うま味応答は3週目からうま味の相乗効果は4週目から検出され、グルマリン感受性応答の発現時期と一致した。Gタンパク質共役型受容体であるTIR1はTIR3と二量体をなすことでうま味を受容し、T1R2とT1R3の二量体は甘味を受容することが知られている。T1R1を遺伝的に欠損させたT1R1-KOマウス(KO)を用いて、様々な味刺激に対するCT応答を記録した。うま味の相乗効果はWTに比べてKOで大きく減少していた。さらに甘味に対するCT応答もWTに比べてKOマウスでは有意に減少した。このことからも、うま味の相乗効果はGS経路を経る可能性が示唆された。またKOマウスの単一味細胞での応答においても、うま味の相乗効果は減少していた。味細胞のSingle cell RT-PCRにおいて、T1R1、T1R2、T1R3が同一の細胞に発現していることがわかった。このことから、うま味の相乗効果と甘味の一部は細胞レベルでも同一のGS経路を経ている可能性が示唆された。
著者
南石 晃明 木南 章 伊東 正一 吉田 泰治 福田 晋 矢部 光保 堀田 和彦 前田 幸嗣 豊 智行 新開 章司 甲斐 諭 樋口 昭則 石井 博昭 松下 秀介 伊藤 健 亀屋 隆志 八木 洋憲 森高 正博 多田 稔 土田 志郎 後藤 一寿 佐藤 正衛
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

食料・農業・環境に関わる諸問題は,相互に密接に関連しており,その根底には「リスク」が深く関与している.このため,食料・農業・環境に関わる諸問題の解決には,「リスク」に対する理解が不可欠である.食料・農業・環境に潜むリスクには,どのようなものがあり,それらはどのように関連しており,さらにどのような対応が可能なのか?本研究では,学際的かつ国際的な視点からこれらの点について明らかにした.
著者
牧平 清超 二川 浩樹 里田 隆博 弓削 類 寺田 善博 篠原 義憲
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

抗NHA2モノクローナル抗体を用いて破骨細胞におけるNHA2の機能解析を行った。その結果、NHA2は未成熟な破骨細胞同士の融合に深く関与していることを見いだした。また、顎骨は咬合力をはじめとした様々な外的刺激を受けることから、メカニカルストレスを負荷した状況をシミュレートし、この刺激下での抗NHA2モノクローナル抗体の破骨細胞と骨芽細胞への影響について検討したが、結論に至るまでの十分なデータを得ることはできなかった
著者
錦織 慎治
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

本研究では,従来の歩行ロボットシステムでは致命的な問題である「転倒」の概念を排除した脚配置をもつ自律歩行ロボットシステムを対象としている.車輪移動型では探査困難であった月・惑星の不整地領域においても,脚移動型がもつメリットを最大限に生かすことができる.通常の脚配置と異なる特殊な形状としたことによって,従来型の歩行に代わる全く新しい移動形態の可能性がある.具体的には,従来のロボットでは姿勢角の大きな変動は転倒を誘発するために忌避されてきたのだが,これを胴体の移動に積極的に利用できる.こうした新たな移動形態として,昨年度に引き続き,動的な胴体回転を伴う移動形態について検討した.昨年度は,ロボットと土壌の間に生じる動的な効果を利用することで,ロボットの登坂能力が向上できる可能性があることを理論的に指摘していたが,本年度はこれを計算機シミュレーションにより実証し,月・惑星探査ローバに求められる不整地踏破性能の向上に役立つことを示した.この研究成果について「11th International Symposium on Artificial Intelligence,Robotics and Automation in Space(i-SAIRAS2012)」にて発表を行った.また,歩行ロボットシステムの自律化において,制御アルゴリズムの簡略化は,その信頼性を向上させるうえで極めて重要となる.そこで,転倒後も円滑な移動継続を可能とするために,転倒待機のための姿勢制御手法を提案した.この成果とこれまでに得られた成果をまとめて「第56回宇宙科学技術連合講演会」にて発表し,国内外の惑星探査ロボット研究者の方々に対して,本研究で扱ったシステムが,月・惑星の不整地探査ミッションにおいて,大きな利用価値があることを示した.その一方でこのシステムを月・惑星環境下で自律化するにあたっての課題を明らかにし,自律化の足場を固めた.