著者
長野 和雄
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

強風沿海集落である祝島でのアンケート結果から、集落中央部では風が弱く昔からネリヘイ(石塀)やサシイタ(窓部に装備する防風板)が元々少ないこと、室面積の確保や瓦が飛ばないRC造の優位性からネリヘイを備える伝統住宅が減っていること等が示された。居住面では、ネリヘイ・葺土がある場合に夏でも涼しく、先の気候観測結果を裏付けていた。簾や葦簀の使用(機器によらない環境調節)、朝涼み・夕涼み(環境選択行為)などの暑熱耐暑行動がよく行われていたが、ヒヤリングでは最近は少なくなったと回答され、ネリヘイだけでなくこれらの調節行為も減る傾向にあることが示された。同じ強風沿海集落でも有明海北西岸には、寄棟屋根が鍵状に折れ曲がり、棟がコの字型に配されたクド造りが数多く残る。ほとんどの遺構で屋根谷部が北北東を向くが、気象観測データより夏季の卓越風向は概ね南、冬季は北西であり、むしろ北東から東に屋根谷を向けた方が防風性能は高いことが明らかとなった。一方、現存する22件の軒出・庇高を実測し、オモテへの日照到達距離を算出した結果、採光の観点からは北、次いで北北東に屋根谷を向けた場合が都合よく、北東まで東に振れると冬季の日照導入・夏季の日射遮蔽ともに悪化することが明らかとなった。すなわち、採光と耐風の両面から最もバランスの良い方位となっており、民家の巧みな気候適応性能が明らかになった。これらの室内での総合的快適性を評価するため、複数物理要素の複合影響実験により新たな等快適線図を作成した。すなわち、22名の被験者を寒冷および騒音に曝露した実験から、気温と騒音レベルから快適度を数量的に表す等値線図を寒冷側に拡張した。男女16名の被験者を光源照度・色温度、気温、周囲色彩の組合せ条件に曝露した実験から、色温度と照度の組合せによる快適範囲を新たに示した。
著者
横川 洋 CHEN T. CHEN Tinggui
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

宋敏、陳廷貴、劉麗軍という三人の著者で『中国土地制度の経済学的分析』と題した書籍が中国農業出版社より出版されることになっている。陳廷貴が「農地請負経営制度及び農地流動化」を担当し、中国西部地域における家族請負制、「30年不変」政策および請負農地経営権の譲渡に関する農家の意識並びにその形成要因について分析を行った。第一に、調査地域において、調査農家の農地所有権に対する意向は、多くの専業農家が農地私有制を希望しており、農地制度の現状とやや異なっているものの、農地経営権に視点を当ててみれば、家族請負制は農家の意識とあまり違和感のない農業経営制度である。第二に、専業農家、第一種兼業農家は、より長期の農地請負期間を望んでおり、また、農地に対する長期投資に意欲をもっている。それにもかかわらず、多くの農家は農地の割換え(調整)に強い懸念を持っており、それが農家の農地への長期投資意欲を消極的なものにしている面があることも見逃せない。したがって、政府は「30年不変」政策を着実に実施し、農家に安定かつ長期的な請負農地経営権を保証することが重要である。第三に、特に専業農家にとって農地は生産手段であるとともに生計維持手段でもある。家族人数と請負農地の配分とが大きく乖離することになれば、農地調整の必要が生じ、安定かつ長期的な請負農地経営権の実現にとっては障害となる。このため、農村において、別途、生活保障制度を充実させ、農地の社会保障的機能の側面を低下させていくことが必要である。最後に、一部の兼業農家は農地の貸付けを行い、一部の専業農家は農地の借入れを行っているものの、他産業の就業の不安定さや農産物価格の低迷などにより、これらの農地の貸付け・借入れは必ずしも定着していないことを指摘しなければならない。安定的な農外就業機会の創出が、請負農地経営権の譲渡促進及び農業経営規模の拡大のための必要条件になると考えられる。
著者
花村 昌樹 吉田 正章 金子 昌信
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

1。 混合モティーフ理論1. 体k上のうえの混合モティーフ層(mixed motivic sheaves)のなす三角圏(triangulated category)D(k)が構成された。論文1にまとめられた。これは、1980年代はじめ、Beilinson等に予想されていた理論である。混合モティーフ層はその応用もふくめ、大きく数学界で注目されている。2. 混合モティーフ層の圏D(k)がt-構造をもつための条件が論文2で考察された。高次Chowに対するMurre,Beilinson-Souleの予想からその条件がしたがうというのが結果である。t-構造の核を考えることにより、混合モティーフ層のアーベル圏の候補が得られる。3. 射影代数多様体にその勘合モティーフ(あるD(k)の対象)を対応させるこができることを示した(論文3)。D(k)の定義自体は非特異射影多様体を用いるが、cubical hyperresolutionという技法により、射影代数多様体を非特異なもので置き換えられることをつかう。4. 位相的層についての分解定理とは、代数多様体の間の固有写像による定数層の順象が交叉複体の直和に分解するという主張である(Beilinson-Bernstein-Deligneによる)。この類似定理を混合モティーフ層について定式化し、それをいくつかの特別な場合に証明し、その応用を見つけることが興味深いことである。この研究はその原理的解決がA.Cortiと論文4においてなされている。さらに実際にモデユラー多様体へ応用ができる形で米国のB.Gordon,オランダのJ.Murre両氏と共同研究が進行中である。2。代数多面体のscissors合同群の理論分担者の吉田正章氏と代表者の花村はツイストコホモロジーに対するホッジ理論の応用を研究し論文Hodge structures on tiwsted cohomology and twisted Riemann's inequality,Iにまとめた。ツイストコホモロジーを研究するのに、ホッジ理論が有用であることは興味深い。我々はこの結果を高次元の場合に拡張することを、研究目標にしている。
著者
坂本弘巳 長 哲二 斎藤 高志 小宮 勲 泉 隆
出版者
九州大学
雑誌
九州大学医療技術短期大学部紀要 (ISSN:02862484)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.47-50, 1996-03
被引用文献数
2

When linear accelerator exceeds 10MV, it produces photonuclear reaction, and generates continuous energy. Measuring devices are very few in number and determination of energy spectrum is very difficult. This paper is designed to show the result of survey made by bubble detectors.
著者
Ishikawa Hiroya Yoshihara Miyuki Baba Ai
出版者
九州大学
雑誌
九州大学農学部紀要 (ISSN:00236152)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.93-97, 2006-02
被引用文献数
3

The formation of zinc protoporphyrin ⅠⅩ (ZPP) with pork loin extract was determined by visible absorption and fluorecsent spectral analyses. After the aaerobic incubation ( in the dark at pH 5.5 and 30℃) of the extract with metmyoglobrin and ZnCl2, characteristic peaks in absorption and spectra were observed at 417,546, and 584 nm. In fluorescent spectrs, a peak was observed at 589nm. Formed amounts of ZPP estimated from the fluorescent intensity at 589 nm was 15.5 nmol/mL-pork extract. The difference in the formations was significantly facilitated by the use of ATP. Zin chelatase activity of loin extract was assayed with protoporphyrin ⅠⅩ and it was estimated as 42mU/mL-extract. The Fe-Zn substituting activity of the extract was assayed with myoglobrin as a substrate. Under the asasy conditions at pH5.5 and 40℃, ZPP was maekedly increased with increasing time by using oxymyoglobrin reduced with ascorbate, white little increase was observed with metmyoglobrin. The activity was estimated as 4.1mU/mL-extract with oxymyoglobrin. At pH5.5-7.0, higher activities were observed as lower pH.
著者
高木 節雄 土山 聡宏 中田 伸生 中島 孝一
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

粒子分散強化は金属材料の基本的な強化機構の一つであり、鉄鋼材料の場合、セメンタイトを代表とする炭化物が一般的に強化分散粒子として使用されている。一方、近年ではナノテクノロジーによる鉄鋼材料の高機能化研究が盛んに行われており、数nm~数十nm の非常に微細な分散粒子(ナノ分散粒子)を利用して鉄鋼材料の高強度化を図ろうとする試みがなされ、その一つとしてナノCu 粒子が注目されている。ただし、ナノCu 粒子分散鋼の優れた機械的性質は、単に分散粒子のサイズが微細であることだけでなく、「分散Cu 粒子自体が鉄基地に比べて十分軟質である」というCu 粒子の特徴によってもたらされている事実も示唆されている。今後、大きな降伏強度と加工硬化率を有し高強度・高延性を兼ね備えた材料を得るためには、炭化物とCu 粒子を同時に最適な状態で分散させ、それぞれの特長を融合させてやること(ハイブリッド化)が有効であると考えられる。そのような鉄鋼材料、「ハイブリッド鋼」の有効性を証明することを本研究の最大の目的とし研究を遂行した。その結果、様々なハイブリッド鋼(フェライト型ハイブリッド鋼、マルテンサイト型ハイブリッド鋼、パーライト型ハイブリッド鋼など)の創製に成功し、炭化物とCu 粒子の複合析出により鋼の強度-延性バランスが大幅に改善することが明らかとなった。さらに、炭化物とCu 粒子それぞれの分散状態を制御することにより鋼の降伏強度と加工硬化率を独立して任意にコントロールできる可能性が示唆された。
著者
諸隈 誠一 福嶋 恒太郎
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

妊娠中の母親の精神的ストレス、大気汚染などの外的環境、化学物質の移行といった胎児をとりまく環境が、胎児の脳機能の発達に影響を与え、さらには生後の発達障害や心の脆弱性に影響する可能性が示唆されている。本研究では、胎内環境が胎児の脳機能の発達に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。研究成果として、胎児の脳機能発達評価方法を確立した。また、行動発達と自律神経系機能との関連を明らかにした。さらに、大気汚染時期と妊娠合併症の関連が明らかとなりつつある。音環境に関する実験、ストレスに関してデータ解析を行っており、引き続き、胎児環境に関して複合的に検討を行っていく。
著者
上村 正康 木野 康志
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

下記の研究を行い、これらを「ミュオン触媒核融合」に関する国際シンポジウム(スイス、1998年7月)と「超強度ミュオンビームと21世紀のミュオン科学」ワークショップ(KEK筑波、1999年、3月)において発表した。1) ミューオン触媒核融合におけるミュオン付着率の新しい計算を実行した。dtμ分子内核融合dtμ→α+n+μ,(αμ)+nにおけるαμ初期付着率(ωs)について、従来の計算における3つの近似(sudden近似をとること、dtμチャネルとαnμチャネルとのexplicitな結合を切ること、αn間の角運動量l=2をl=0と近似すること)を止めたsophisticatedな3体計算を行った。しかし、結果は従来の初期付着率をやや増加させた(核力入りで、ωs=0.92%から0.94%へ)。2) 理研-ラザフォード研の共同になる超高強度ミューオンビームを用いる将来の実験で、ダブルミューオン分子が初めて発見される可能性がある。これに先駆けて、非断熱的4体計算により、ダブルミューオン水素分子のエネルギーレベルを予言した。xyμμ,x,y=p,d,tのすべての分子について計算を行った。3) ttμミューオン分子イオンのエネルギーレベルと分子内核融合率の計算をおこなった。また、t^3Heμ分子イオンのエネルギーレベルと崩壊幅の計算を行った。4) ミュオン分子を含む任意3体系の束縛状態を計算する汎用プログラムを作成し、九大計算センターのライブラリプログラムとして登録した。また、ミュオン触媒核融合に関するレビュー論文を書き、レビュー誌に出版した。
著者
鹿島 薫 那須 裕郎 奥村 晃史 本郷 一美 高村 弘毅 吉村 和久 小口 高 西秋 良宏 茅根 創 三宅 裕
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、これまで研究の遅れてきた中東および中央アジアにおける平野、盆地、湿地、湖沼などの陸地域における現地調査を行った。これらの地域では多数の遺跡が立地しており、それらを手がかりとして、最新の分析探査手法を用いながら、環境変動の実態を明らかとすることができた。そして地球環境が短期(10~100 年オーダー)で急激に変化してきたという事実とそれが遺跡立地に与えた影響を検証し、それらの結果から今後の地球環境の変動予測への応用を行った。
著者
吉田 寛
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、コンパートメントモデルにおける薬物動態に対する解析手法の開発を行った。手法の特色として、通常のTime domain(時間tの空間)上ではなく、ラプラス空間上で反応定数を決定する事が挙げられる。これにより、従来のTime domain上では、複雑だった式が、ラプラス空間上では、簡潔かつ厳密に表された。本手法は、特に、観測できない、あるいは、したくない時系列データが存在し、そのデータの代替として目的部位以外の参照部位を観測した場合に、有効である。更に、コンパートメントモデルと非線形な酵素反応が絡む系においても、上記の手法を適用した。その結果、定常状態を仮定した上でミカエリス・メンテン型に変形して解析する従来の方法では扱えないような非平衡系における解析が可能となった。この系は、過少決定系であって、本質的に素イデアル分解が必要になった。このように、本手法は、コンパートメントモデルには収まらない薬理動態の解析を押し広げるものである。実応用として、マウスのDox動態において、Dox・TetR蛍光イメージング技術に適用した。
著者
川野 哲也
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

数値モデルを用いて梅雨前線帯低気圧(BFD)の構造と発達過程を調査した。梅雨前線帯の特徴が東西で異なることに着目し,水蒸気が豊富な西部で発達する低気圧をW-BFD,傾圧性が相対的に大きな東部で発達する低気圧をE-BFDという2つのカテゴリーに分け,それぞれの発達過程を調査した。まず,各カテゴリーの典型事例の再現数値実験を行った。有効位置エネルギーの収支解析と潜熱加熱を除いた感度実験の結果は,BFD発達における潜熱加熱の重要性を明らかにした。特にW-BFD発達において潜熱加熱は決定的な役割を果たしていた。さらに,東西一様な環境場を用いた理想化数値実験によってこれらの発達過程の特徴が確認された。
著者
綿谷 安男 榎本 雅俊
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

大きなヒルベルト空間に含まれる小さい部分空間の相対的な位置関係を研究した。それもn個の部分空間の配置を考えた。重要なのは直和に分解できない直既約な配置である。n=1,2の時はすでに解けているが、有限次元に限れば、n=3,4の場合も完全に分類されている。しかし、無限次元だとn=3や4の場合すら未解決である。今回の研究はこの問題を線形作用素の研究との類似を考察するという新しいアイデアで攻略した。さらにquiver(有向グラフ)の頂点をヒルベルト空間に、辺を線形作用素に対応させるヒルベルト表現の理論を開始した。拡大ディンキン図形に対してその無限次元直既約ヒルベルト表現の存在を証明した。
著者
鄭 相鐵 今石 宣之
出版者
九州大学
雑誌
九州大学機能物質科学研究所報告 (ISSN:09143793)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.7-12, 1997-07-25

Low pressure metal organic chemical vapor deposition (LPMOCVD) of Li_2O solid thin films from Li(DPM) in nitrogen-oxygen or argon-oxygen atmosphere is experimentally investigated by using a small hot wall tubular type reactor. XRD and ESCA analyses revealed that Li_2CO_3 film grows in nitrogen-oxygen atmosphere and Li_2O grows in argon-oxygen atmosphere. The grown lithium oxide or carbonate reacts with silicon or silica base materials to produce silicates. The CVD model analysis by means of the well known micro trench method and Monte Carlo simulation was not fully successful, but set of data on gas phase reaction rate constant and surface reaction constant was obtained.
著者
江頭 伸昭 堤 国章 山本 将大
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、うつおよび糖尿病を考慮して、抗がん薬による末梢神経障害に対して予防および治療薬として有望な候補薬剤の探索を行った。その結果、抗うつ薬であるデュロキセチンや抗糖尿病薬であるエキセナチドが、抗がん薬であるオキサリプラチンによる末梢神経障害を改善することを見出した。さらに、胃潰瘍治療薬であるポラプレジンクが、抗がん薬であるパクリタキセルの抗腫瘍効果に影響せずに、パクリタキセルによる末梢神経障害を抑制することも明らかにした。
著者
今里 悟之
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究では、日本の村落空間における極小スケールの微細地名である、田畑一枚ごとの名称の実態を明らかにし、命名のパターンや一般的傾向を見出した。あわせて、そのようなパターンや傾向について、地域間の差異、集落間の差異、集落内部の世帯間の差異などを分析し、その差異を生み出す自然的・社会的条件について考察した。事例集落は長崎県平戸市の諸集落であり、比較の対象として滋賀県野洲市の3つの集落にも言及した。
著者
沖 真弥
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

マウスのES細胞を浮遊培養すると、胚様体という凝集塊を形成する。その後、三胚葉を形成し、様々な組織を形成するが、極めて無秩序に分化するため、人為的に分化を制御することは難しい。そこで胚様体の性質のばらつきを調べるために、in situ hybridization法で各種分化マーカの染色をおこなった。その結果、同一シャーレ内の胚様体間だけでなく、単一胚様体内の細胞間でも性質のばらつきが非常に大きいことが明らかになった。特に中胚葉マーカは、day 8の胚様体でも約半数しか発現しておらず、さらに単一胚様体内においても発現細胞の分布はまばらであり、マウス胚のようにクラスター化されていなかった。また、原条前方マーカの発現も同様のばらつきを示したので、中胚葉の運命決定も無秩序であることが示唆された。そこで中胚葉の運命決定を均一なものにするために、FGFシグナルに着目した。マウス初期発生において、中胚葉の運命決定はFGFシグナルの濃度に依存する。したがって化学合成阻害剤でFGFシグナルのレベルを均一化できるのではないかと考えた。まず阻害剤の選別のために、マウス胚を各種FGFシグナル阻害剤で全胚培養し、FGFシグナル標的遺伝子の発現を調べたところ、PD173074という阻害剤が最も特異的かつ効果的であった。また、この阻害剤で受精後6-7日のマウス胚を培養したところ、Fgf8やその受容体Fgfr1の欠損胚と同様、沿軸中胚葉や中軸中胚葉マーカの発現異常を示した。特に沿軸中胚葉マーカの発現は阻害剤の濃度依存的に低下した。以上の結果より、胚様体のFGFシグナルをコントロールするための阻害剤として、PD173074は最も有力な候補であり、マウス胚においてはFGFシグナルのレベルを時期特異的にコントロールできることが明らかになった。
著者
金子 邦彦
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

生きた顔はカメラで撮影され、脳反応は視覚誘発電位の電気信号として観測される.いずれも時間の経過とともに観測される時系列データである。本研究では、センサーから観測される時系列データの収集と蓄積と処理に関するプラットフォーム技術の創出に取り組んだ。その成果は次のようにまとめられる。・ Android オペレーティングシステムで時系列データ処理におけるバッファ管理の性能評価に取り組み、一定の成果を得た・顔画像の輝度分布,色相分布,周波数分布の統制については,既存の数多くあるアルゴリズムの目利きを行い,システムとして完成した.・視覚実験データモデルについては,日時を含むレコードデータをキーバリューデータモデルにマッピングする方法について検討を進めた
著者
坂元 一光
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

福岡県柳川地域のひな祭り行事の際、雛人形の両側にさげられる吊るし飾り「さげもん」(毬とちりめん細工)は、自作の贈答品としてだけでなく趣味の手芸品、土産品として一年を通して制作されている。近年、さげもんが観光資源に活用され、またその需要と供給の地域的流通システムが形成されることで、中高年女性を中心に様々な目的や技術をともなう制作活動がさらに活発化し、民俗技術の持続にもつながっていた。柳川のさげもんの民俗技術はその観光資源化と多様な制作グループの自主的活動を通じて、地域社会の活性と伝統の再創造および中高年期の女性の生活の質の向上に積極的な役割を果たしていることが明らかになった。
著者
山村 ひろみ
出版者
九州大学
雑誌
比較社会文化 : 九州大学大学院比較社会文化研究科紀要 (ISSN:13411659)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.39-56, 2006

Este ensayo tiene como objetivo hacer un estudio contrastivo de los comportamientos de las formas verbales del pasado en frances y en espanol, basandose en los datos hallados en tres obras cortas de Agatha Christie. Como resultado se destacan los siguientes puntos: (1) la funcion del "pasado del pasado" asignada al pqp. en frances no esta solo en senalar la anterioridad de una situacion a alguna otra situacion pasada sino tambien en denotar una situacion que tuvo lugar en el mundo NO-comentado. Es decir, el pqp. siempre tiene alguna relacion, aunque negativamente, con el "mundo comentado" basado fundamentalmente en el momento del habla. Esto se comprueba en el hecho de que el pqp. en fances aparezca con frecuecia en la transcion del "mundo narrado" al "mundo comentado" o del "mundo comentado" al "mundo narrado", (2) En cambio, el pqp. en espanol que aparece solo esporadicamente se refiere solo a una situacion que denota la anterioridad a alguna otra situacion concreta que, a su vez, es anterior al momento del habla, (3) la anterioridad que denota el ps. en espanol a otra situacion pasada esta basada en una relacion logica, o de causa - efecto que se encuentra entre las situaciones (o proposiciones) en cuestion.
著者
木下 威
出版者
九州大学
雑誌
法政研究 (ISSN:03872882)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.81-130, 1966-07-15