著者
秦 正樹
出版者
京都府立大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

2019年度は,当初の研究計画にもとづいて,世論における政治的デマの受容傾向を明らかにする意識調査(サーベイ実験)を実施する予定であったが,以下の理由によって調査実施を遅らせることとなった.その理由は,昨年度に実施したサーベイ実験の結果にもとづいて,日本選挙学会で行った報告(秦正樹「「"普通の"日本人」ほど騙される?:政治的デマの受容メカニズムに関する実験研究」日本選挙学会,東北大学,2019年7月)でのディスカッションによるものである.当該ディスカッションでは,「普通の日本人」を測定する際の項目について,重要な視座を得た.とくに,社会心理学等で用いられている噂の受容に関する測定尺度を改めて整理したことで,より妥当性の高い研究とつなげられることとなった.また,これらの意見を反映した新たな調査については,事前の調査を2019年11月に実施しており,プリ調査の結果を踏まえたサーベイ実験を2020年3月までに行う予定であったが,今般の新型コロナ禍を踏まえたデマについて検討するべきであると考え,調査時期を延長することとした.加えて,前述の学会での報告ペーパーをもとに英語論文化を進めている.さらに,日本政治学会での報告(秦正樹・Song Jaehyun「争点を束ねれば「イデオロギー」になる?:サーベイ実験とテキスト分析の融合を通じて」日本政治学会,成蹊大学,2019年10月)でも,憲法改正に特化した有権者の態度形成に関して報告を行っており,こちらの論文は年報政治学2020-1に掲載予定である.
著者
中 純夫
出版者
京都府立大学
雑誌
京都府立大学学術報告. 人文・社会 (ISSN:13433946)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.125-157, 2008-12
被引用文献数
1
著者
畑 明美 南出 隆久 殿畑 操子
出版者
京都府立大学
雑誌
京都府立大学学術報告. 理学・生活科学 (ISSN:0075739X)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.37-48, 1990-11-19

In order to clarify changes in quality of manufactured goods in apple pie as affected by the thickness in bottom crust and the presence of hole in top and bottom crust were investigated. Pastry of pie was made flour (protein content 8.3% and 11.4% mixed 1 : 1/weight ratio) with salt-water and natural butter. Thereafter, two-crust was prepared with 0.3,0.4,0.5 and 0.6cm thickness in bottom crust and 0.2cm thickness in top crust with hole (1.5mm^2,80 pieces/pie), and baked for 13 minutes at a temperature of 200℃, filled 100g or 200g using apple preserve. The results obtained were summarized as follows : Although the formation of flakiness was more promoted at 0.6cm thickness than that of 0.3cm in bottom crust, however, these parts were not swelled fully, and became heavy total weight of pie. In the case of presence hole in top crust, evaporation of water in pie was accelerated, and good swelling was also recognized. In conclusion, it was indicated that general condition of excellent apple pie is 0.3cm thickness of bottom crust and make hole in top crust only.
著者
塚本 康浩
出版者
京都府立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

動物の発生・再生・腫瘍形成および記憶における細胞接着分子ギセリンの役割を個体レベルで追求した。ニワトリの皮膚移植再生モデルを確立し、移植片の定着にギセリンおよびそのリガンドが関与すること、さらにギセリンの投与が再生を促進することを見出した。さらに、ギセリンおよびそのリガンドが腫瘍(大腸癌およびリンパ腫)の転移を促進することを腫瘍移植実験において明らかにした。ギセリン欠損動物は、出生前に致死となることが判明した。
著者
笹川 滿廣
出版者
京都府立大学
雑誌
京都府立大學學術報告. 農學 (ISSN:00757373)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.29-36, 1967-10-15

スズメガ類幼蟲における密度依存的な多型現象については従来知見がなかったので, クチナシを加害するオオスカシバについて幼虫期の生息密度によって体色や発育にどのような影響をうけるかを検討したところ, 明らかに密度に依存した変異がみられた。すなわち, ふ化直後から集合状態で育った幼蟲は第2令期から体色が黒化し, 第4令期に入れば4つの色彩型に区別できる。通常野外で見られる全体淡緑色の幼虫は全幼虫期を通じて単独飼育した場合に多く現われ, 密度の増加につれて黒化程度が増大し, 特に全幼虫期間中集合飼育をすれば最高度の黒化をみた。しかも黒化は第1令期の幼虫密度によって決定される。全体暗褐色型幼虫の出現には低温も多少関与しているようであるが, 光の有無は黒化には全く影響を及ぼさない。また全体淡緑色型幼虫は黒化型に比べて非常に多量の食物を摂取し, 酸素消費量もはなはだ多い。幼虫密度の増加と共に死亡率は極度に高くなり, 蛹体重は有意に減少するが, 幼虫および蛹の発育日数, 頭幅そして幼虫体重(第5令期を除く)については本実験の生息密度間では有意差を認めなかった。以上の結果から, 単独生育をする淡緑色幼虫が生活により適応していると考えられる。
著者
松原 斎樹 下村 孝 藏澄 美仁 合掌 顕
出版者
京都府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究課題でいくつかの実験を行った結果,色彩,環境音,植物,視覚刺激としての窓の開閉状況などは,温冷感や寒-暑,涼-暖などの印象評価に影響を及ぼすことが,明らかにされた。色彩の影響に関しては,いずれの実験においても,暖色の呈示により、「暑い」側へ、寒色の呈示により、「寒い」側へ変化するというhue-heat仮説に合致した結果が得られた。特にカーテンを用いた実験では,周囲色彩が与える影響は室温に注目させた特異的尺度である「温冷感」よりも、室内のイメージを評定させた際の「涼暖感」や「寒暑感」等の非特異的な尺度に見られた。環境音として設定した「風鈴の音」は、高温の状態では,より「涼しい」,「快適な」側に感じる効果が見られたが,この効果は,特に色彩の影響が小さい、灰色呈示状態において、顕著である。植物の効果に関しては,マッサンギアナは夏に室内に置きたい植物であり、夏期の室温条件下にある室内に設置することで、グリーンアメニティの効果が期待できるが,ポトスは冬に室内に置きたい植物であり、夏期の室温条件下にある室内に設置しても、グリーンアメニティの効果は期待できない。カーテン・窓の開閉状況の映像の効果に関しては,温度の交互作用は「自然的な-人工的な」においてみられ,カーテンの開閉状況に対する評価は室温により異なると考えられる。以上の知見から,色彩,環境音,植物等を適切に利用することにより,寒暑,涼暖の感覚を変化させることの可能性が確認されたと言える。今後は,エネルギー削減の定量的な効果を明らかにすることが課題と考えられる。
著者
中野 幹夫 本杉 日野
出版者
京都府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

わが国では一般に,同じ果物でもより大きな果実が好まれるため,生産者は果実肥大に努める.しかし,果実の肥大を促すと,モモでは核割れを誘発し,生理落果や品質低下を招く.これまでに,1.核割れは果肉組織の発育に伴って生じた引張力が核を引き裂くことによって起こり,2.未熟な種皮は外気に晒されると大量のエチレンを急速に生成することから,3.果柄基部にまで及ぶ激しい核割れを生じた場合は,大気の流入によりエチレン生成が起こり,落果が誘導される恐れがあるが,4.通常の核割れではエチレン生成、はみられないが,成熟は促され,収穫期直前落果がやや多くなること,等を明らかにした.本研究では,果実発育に伴う果肉と核の物理的強度の変化を調査し.肥大促進した果実の特性を明らかにした.核の硬度は果実発育第1期から第3期に掛けて増し続けたが,核割れの起こる第2期には,弾性が小さく脆いため,外圧が加わると核は破壊され易く,果実肥大を促すとその特性が助長されることを明らかにした.果実基部から核内腔へ色素溶液を加圧注入して核割れ症状を人為的に起こしたところ,核の耐圧力は果実発育に伴って一増加し続けたが,肥大促進区の第2期の耐圧力は対照区のそれに比べ低く,また,果実径と耐圧力との間には負の相関が認められた.摘蕾を主体とした管理によって果実肥大の促進を図ったところ,商品として十分な大きさの果実が得られた.若干の核割れは発生したものの従来の摘果主体の管理に比べて,核割れの発生を大幅に減らすことが出来た.以上から,第2期初めに摘果するよりも,摘蕾や摘花によって細胞数の増加に努め,核の硬化が完了した第2期後期に摘果して肥大を促す方が得策であると判断した.なお,摘蕾を行うと奇形化した種子が増え,胚のうの核DNA量に異常が認められた.その原因究明と生理落果との関係を精査する必要がある.
著者
大場 修
出版者
京都府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本論は上海租界の都市形成過程を踏まえつつ、近代上海における日本人居住地の形成過程と空間的特徴を、英、米、中との国際関係の中で明らかにした。まず、1840年代から、イギリス人は、租界として開発された以前の上海に存在していた河川、村道を生かしながら、土地、道路を開発していたこと、及び下水道の建設過程を明確にした。次に、日本が独自の居留地を諦め、租界全域に渉る都市開発権を得た過程を辿った。日本は英米施設との立地関係、交通条件や地価等に応じた都市施設配置を進めたが、結果として上海の日本人居住地の確保は後回しにされた実態を明確にした。一方、日本人居住地では、英米が供給する里弄住宅を主体とする借家居住に終始したことを、租界外の北四川路地区の住宅遺構等の調査を通して示した。その住宅形式は洋風ではあったが、畳を持ち込む等の動向もそこに読み取った。
著者
菅山 謙正 渡辺 勉 高木 宏幸 五十嵐 海理 住吉 誠 前川 貴史
出版者
京都府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、英国を代表する言語学者Richard A.Hudsonが新たに開発し、改良を重ねているWG理論(New Word Grammar,NWG)の枠組みを把握し、その認知文法的、あるいは構文文法的影響を探ることであった。3年間に亘って予定していた研究計画に従い、これをほぼ遂行し、NWGの修正点、改良点を明らかにし、言語理論として有望であると結論付けた。研究成果は、論文としても公刊したが、2011年中にはKyoto Working Papers in English and General Linguistics Vol.1、『ハドスンの英文法』として開拓社よりそれぞれ、論文集、書籍として刊行する。
著者
笹川 満廣
出版者
京都府立大学
雑誌
西京大学学術報告. 農学 (ISSN:03709329)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.133-150, 1958-08-01
被引用文献数
1

ハモグリバエの雌外部生殖器官の構造についてはde Meijere (1838)はじめ2・3の簡単な報告が見られるが, Hendel (1931)以来分類学的記載には単に産卵鞘の大きさ並びに棘毛の有無等が扱われていたにすぎない。私はごく最近になつて種的標徴としてその重要性が認められてきた雄外部生殖器とともに雌の外部・内部生殖器の形態もまた非常に分類学的価値があることを見出した。ここにAgromyzinaeの日本産6属28種について調査した諸形態の比較とそれらの分化について述べる。概形 : 腹部第7環節はいわゆる産卵鞘となり, 以下の環節は通常その中にはまり込んでいる。第8環節の背・腹両面には多数の鋸歯が列生する, 後端にある一対の誘卵器は三角形ないしナイフ状を呈しかなり群又は種間変異に富むほか産卵習性と密接な関連性が見られる。第9環節は細長く, 背・腹板の形状や棘毛数は種々である。第10∿11環節は膜状, 尾毛は1節で多数の感覚毛を装う。内部器官は卵巣, 輸卵官, 受精嚢及び附属腺からなる。受精嚢は褐∿黒色, 球形ないし長卵形を呈し, 腹面にある管状受精嚢と共に近似種間の識別に有効である。Agromyza : 邦産12種(未記録5種を含む)は2群に大別され, yeptans群はrubi群より分化が進んでいないようである。前者の中で最も原始的と考えられるreptans亜群の誘卵器や腹面受精嚢の形態は非常に単純であり, 禾本科植物の葉に産卵する種類が属するヤノハモグリバエyanonis及びイネハモグリバエoryzae両亜群の誘卵器の内面には有毛突起を有する。また, この群のある種の受精嚢には他に見られない横じわがある。rubi群の誘卵器には他属と共通な鋸歯を生じ, 原始的なA. rubi以外の腹面受精嚢は非常に長く, 巻いているほか諸形質の分化の程度が高い。Japanagromyza : この新属は前小楯板棘毛の存在, 平均棍の色彩等によつてAgromyza及びMelanagromyza属とは容易に識別できるが, 雌内部生殖器官の形態にも特異なものが認められる。現在4種が属し, 第9背板はU字状を呈し, 受精嚢の表面には微棘を生じ, さらにduchesneae群の腹面受精嚢の尖端には双葉状の膨大部がある。Melanagromyza : 本属もAgromyza属と同様に誘卵器の形状によつてaeneiventris及びpulicaria両群に分けられ, かつそれは産卵習性に由来していることは興味深い。即ち, 前群には植物の茎内を潜孔する種類が属し, 種間の分化は余り顕著でない。これに反して後群のものは潜葉性で, 表皮内潜孔をするチヤハモグリバエM. theaeほかpulicaria, styricicolaの2種, Agromyza属に近い諸形質を示すyanoi, さらに特殊化したダイズメモグリバエを含んでいる。Carinagromyza, Ophiomyia及びTylomyza : Carinagromyza属の受精嚢は本亜科中最も小さく, 基部はらせん状に分裂する;Ophiomyia属の第9背板は中央部が狭わまり, 受精嚢の頸部は特に長い;Tylomyza属の受精嚢の基部は分裂しない。その他の形態はMelanagromyza属のそれと類似するようで, 既知邦産種が少いため詳しく論及できない。
著者
小沢 修司 山森 亮 平野 寛弥 堅田 香緒里 鎮目 真人 久保田 裕之 亀山 俊朗 小林 勇人 村上 慎司 村上 慎司
出版者
京都府立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009-04-01

本研究は、研究者と市民のネットワーク形成から生み出された議論を通じて、ベーシック・インカムに関する三つの目的を総合的に検討した。第一に、生存権・シティズンシップ・互酬性・公共性・フェミニズム思想といったベーシック・インカムの要求根拠を明らかした。第二に、ベーシック・インカムに関する政治的・財政的実現可能性を考察した。第三に、現行の年金や生活保護のような所得保障制度の問題点とベーシック・インカムにむけた改良の方向性を議論した。