著者
伊佐 迪子
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大学大学院紀要. 文学研究科篇 (ISSN:18833985)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.183-199, 2011-03-01

二条院讃岐は正確な実人生がこれまで解明されておらず、従って正確な年表も作成されてはいない。先行研究で提示されている二条院讃岐の生涯は、実人生からは程遠いものである。先稿では二条院讃岐の実人生前半期を解明したので、本稿とこれ以後は二条院讃岐の後半生の実人生を解明する。本妻として兼実家に入った三十三歳以後の人生は、詳細に解読した『玉葉』をもとに、当時の社会事情も考慮して実人生の解明を図り、二条院讃岐の正確な年表作成を意図している。解明された二条院讃岐の実人生には、流産により兼実の子を失った傷心の讃岐像が見えており、また病弱な兼実の傍で介護に明け暮れる日々を過ごしている姿も見えている。その一方で当時の歌人達との繋がりなども見出され、二条院讃岐の知られざる人生が明らかになるだろう。
著者
伊佐 迪子
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大学大学院紀要. 文学研究科篇 (ISSN:18833985)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.145-156, 2010-03-01

二条院讃岐の先行研究では、藤原重頼の系図に讃岐の名が見えるという理由で、その系図に讃岐を当てはめて讃岐の人生を推測し、更には讃岐の人生をも創出してきたようである。本稿では讃岐の前半生を系図以外の一次資料を出来る限り精査して、解明しようとするものである。既発表二編の拙稿で解明した讃岐の実人生に深く係っている藤原兼実に加えて、皇嘉門院も讃岐の実人生に大きな係わりを持っていたことが本稿で明らかになった。讃岐の前半生は高貴な人々の中にあって、二条天皇との宿縁を思わずにはいられない。本稿では兼実の青年期の動静を軸に、社会状況も十分考慮して考察を進めたので、讃岐の動静がより明確に把握出来たと思う。先行研究では讃岐の年表作成が出来ていなかったが、本稿により前半生の年表が可能な限り作成できたので、後半生を合わせたより完全な年表の作成を目指そうと思っている。
著者
伊佐 迪子
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大學大學院紀要 (ISSN:13442422)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.113-126, 2008-03-01

源家出身の二条院讃岐の歌には「出自」が大きく影響している。讃岐が歌を詠出する土壌について考察する必要から、伝記的・社会的背景の反映として讃岐歌を読み解く。若い頃の讃岐を「歌仙落書」が高く評価しているが、讃岐の人生は明らかではなかった。「玉葉」を詳細に検討した結果、かなり解明されたので伝記を背景に讃岐歌を読み解いていく。讃岐の生涯のうち、摂政・関白藤原兼実の秘書・「北政所」を勤めた社会的役割は大きい。摂政家の家経営の中枢にあって仕事に専念し、「沖の石の讃岐」として女流歌人の地位も確保しており、讃岐の果たした社会的役割と讃岐歌との関わりを考察する。讃岐は藤原兼実の支援を受けて、六十歳で歌壇に復帰した。「出自」「伝記的背景」「社会的背景」の三つの要素から、讃岐の詩的世界は構築されていると解釈する。
著者
青山 忠正
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大学総合研究所紀要 (ISSN:13405942)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.61-74, 2001-03-25
著者
熊谷 貴史
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大学総合研究所紀要 (ISSN:13405942)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.63-85, 2011-03-25

仏教には高僧らが神秘的な宗教体験によって仏・菩薩などの形姿を観じ、〈感得〉するという概念がある。またその感得により得た視覚的イメージを、彫刻や絵画で表したものを〈感得像〉という。宗教概念である〈感得〉と造形化された〈感得像〉が不可分の関係にあろうことは言を俟たないが、そこに内在する宗教的意義の解釈と、像に対する仏教美術としての芸術的評価は多くの場合別個に論じられ、宗教性と芸術性が結び付けられることは概して少ない。本稿の目的は〈感得〉の概念を大局的に捉え直すことにより、具現化された〈感得像〉の意義を再考することにある。すなわち〈感得〉とは規範を前提としない尊容の獲得であり、初発的性質が評価される事象と考えられる。その初発的なイメージを反映する〈感得像〉は、図像的要素のみでは解釈し得ない、神仏顕現の奇跡を具現化しようとする全体観における異相(威相)の表現によって、本来の意義が見出される可能性を指摘する。
著者
林 悠子
出版者
佛教大学
雑誌
社会福祉学部論集 (ISSN:13493922)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.77-94, 2011-03-01

本稿の目的は,保育の質において重要であるとされる「過程の質」は保育者にとってどのように経験されているのかを,保育記録の質的分析より明らかにすることである。筆者が保育者として記した保育記録の内容をKJ法を用いて分析した結果,保育者がその日の実践を振り返り書き残したことは8つのグループに分類でき,その特徴から保育者は子ども・保育者・職員・保護者との関係性を重視していることが明らかになった。グループ間の意味の連関からは,子どもの育ちへの願いを持った保育者が子どもと出会い,子どもの行為の意味を考え,次の関わりを展開する,保育者と子どもとの関わりの積み重ねの中に「過程の質」が見いだせることが考察できた。
著者
若尾 典子
出版者
佛教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007 (Released:2007-04-01)

男性あるいは女性加害者への介入プログラムは、ドメステック・バイオレンスの場合も児童虐待の場合も、ジェンダーに敏感な視点が必要である。なぜなら親密な暴力は、個人のジェンダー意識(ジェンダー・アイデンティティーと言い換えることもできる)に基づく行動の一つだからである。個人のジェンダー意識に基づく行動は多様であり、社会的に確立しているジェンダー意識を直接に反映することもあるが、反対の行動をとることもある。例えば、女性加害者は女性役割や母親役割に反して、暴力をふるう。それは、彼女の個人的ジェンダー意識が社会的ジェンダー意識にとらわれ、反発あるいは過剰な適応として、暴力行為にいたるからである。加害者への介入プログラムは、被害者支援の観点から、加害者の個人的ジェンダー意識を変化させることを重視して実行される必要がある。そのためには、家族支援の専門家としてソーシャル・ワーカーを児童虐待防止法に明確に位置付けることと、すべての関係者にジェンダーに敏感な視点から家族関係を把握する共通理解を確保することが、求められる。
著者
黒田 彰 後藤 昭雄 三木 雅博 山崎 誠 後藤 昭雄 三木 雅博 山崎 誠
出版者
佛教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006 (Released:2006-04-01)

本研究は、古代幼学の実態解明に向けて、孝子伝(図)、列女伝(図)、体腔か陽など、未解明の題材を取り上げ、発展的研究を目差したものである。中で、後述日中共同研究による和林格爾後漢壁画墓の未公開の孝子伝図、列女伝図を含む、全壁画の公開報告書の公刊や、太公家教の現存全本の校本と校訂本文の作成、注解などの公刊(『太公家教注解』、汲古書院)を中心とする、学際的特色をもった成果を齎すことが出来た。
著者
達富 洋二 森山 卓郎
出版者
佛教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010 (Released:2010-08-23)

本研究では、教室談話の記録を分析した。その結果、生活語レジス ターによる発話には,生活語レジスターによる発話には指標的な機能をもつ発話があるという 特徴があることが明らかになった。教師が子どもの発話を聞く時に、生活語レジスターによる発話にはこれらの特徴があることを理解したうえで、子どもの発話に関与していくことで、教 室談話が創造的なものになることが分かった。
著者
中田 智恵海
出版者
佛教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009 (Released:2009-04-01)

セルフヘルプグループ(以下SHG)の援助の特性として認知されている接近容易性や即応性がリーダーを疲弊させ、スムースな交代を困難にしている。後継者の育成にはメンバーのエンパワメントを諮る中でリーダーが育っていく。そのためにはピアサポート研修が必要であることが明らかとなり、ピアサポート研修のテキストを作成、改善しつつ、研修を重ねて一定の成果を得た。
著者
山本 健治
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大學大學院紀要 (ISSN:13442422)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.91-101, 2008-03-01

本研究では、青年期の精神的自立の課題について、職業観や勤労観、また親子関係を含む対人関係との関連から考察を試みた。方法としては、高校生を対象にこれらのことに関する意識調査を実施し、その結果について分析した。同時に「ひきこもりの心理特性」を測る調査を実施し、抽出されたそれぞれの因子と前述の職業観・勤労観及び対人関係との関係を回帰分析等を用いて精査した。その結果、ひきこもりの心理特性を持つ者は、学業から職業への移行について、さまざまな不安を抱えていることが明らかになった。対人関係においても、信頼できる人や、困ったことを相談できる人の存在に乏しく、信頼感に基づいた一体感を感じられないでいることがわかった。それらの要因を探るなかで、生来の個性とは別に、幼児期、児童期から連続する発達課題の問題として、この問題を捉え直すことが重要である。精神的自立ひきこもり心理特性職業観対人関係
著者
荒木 猛
出版者
佛教大学
雑誌
文学部論集 (ISSN:09189416)
巻号頁・発行日
vol.84, pp.69-87, 2000-03-01

明代に時行された「金瓶梅」には、うちに「水滸伝」の影響を色濃く残す「金瓶梅詞話」と、それにいろいろと手を加え作品としてより完成度の向上に務めた「新刻繍像批評金瓶梅」の両種の版本がある。この両種の版本にはさまざまな相違があるが、中でも、回目と標題詩の違いが顕著である。本稿は、この回目と標題詩にどのような違いがあるかを解明し、少なくとも、この両種の版本の編者は同一人物ではなかったであろうことを論じた。
著者
眞砂 照美
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大學大學院紀要 (ISSN:13442422)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.175-191, 2001-03-01

視覚障害をもつ人の学習は、一般に点字図書と録音図書を使用して行われるが、わが国では、そのほとんどがボランティアによって制作されており、その絶対量の不足とジャンルの偏りが指摘されている。視覚障害者の学習環境は十分に整備されているとは言い難い状況である。本稿は、音訳活動をボランティアとしての捉え方ではなく、生涯教育の視点から考察するところに特長がある。まず盲先覚者の学び方を取り上げ、読みという活動について整理し、さらに非文字情報の音訳化の実験を通して音訳活動の性格について検討した。その結果、音訳活動には、読み手側の学習経験や読む能力が大きく影響し、視覚障害者のための音訳活動が結果的に、音訳者自身にとっても新たな学習形態を創り出すことが明らかになった。