著者
宮脇 勝 梶原 千尋
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.115-120, 2007-10-25
参考文献数
8
被引用文献数
5

本論は、景観整備の価値を経済的な側面から明らかにする目的で、地価公示及び固定資産税路線価を用いたヘドニック・アプローチによって地価関数を推計している。対象地域として、景観条例や重要伝統的建造物群保存地区に着目し、長い間景観行政が行われてきた金沢市、倉敷市、萩市を取り上げて分析する。分析の結果は次のような概要となっている。1)金沢市全域について、景観規制に係わる要素として、近代的都市景観創出区域のみが説明変数として採用された。2)地区単位で推計した結果、金沢市内の異なる景観規制がかけられた複数地区の比較で、高度地区12m は、伝建地区とともに指定された場合にのみ地価を上昇させており、伝建地区の経済的効果を明らかにした。3)一方、 用途地域などの条件の異なる他都市の伝建地区との比較の結果、倉敷市と萩市の住居系及び商業系地域でプラスの効果が明らかにされている。
著者
高津 俊司 佐藤 馨一
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集
巻号頁・発行日
vol.39, pp.553-558, 2004

本研究は、開発者負担金による鉄道整備の事後評価を目的として、都市開発と一体的に整備が進められた臨海副都心線(りんかい線)を事例として、開発者負担金について開発者にアンケート調査を行い、開業後の輸送実績を元にして鉄道計画支援システム(GRAPE:GIS for Railway Project Evaluation)を用いて鉄道整備効果を分析し、開発者負担方式の評価と今後の課題を考察した。その結果、次のような知見が得られた。(1)事後アンケート調査によれば、鉄道に対する評価としては、広域、大量、高速などの特性を評価し、約8割の会社が「受益があるのである程度の負担はしかたない」と回答している。費用負担の額についても、計画時点より現時点の方が、「ほぼ妥当である」との回答が増加している。(2)りんかい線の整備による開発区域内の利用者便益(割引後 30年集計)を GREPEで推定すると、開発者の費用負担金の額を上回った。(3)これらの結果から、鉄道整備の財源方式として、請願駅方式で駅周辺の開発者からの負担金を徴収する方式は、一定程度の妥当性があると想定される。
著者
沼田 真一
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.438-444, 2015-10-25 (Released:2015-11-05)
参考文献数
13

本稿では、ナラティブ・アプローチを通してインタビュー映像を利用したワークショップを論じる。対象地は2011年東日本大震災で被災した岩手県田野畑村であり、ワークショップの参加者は田野畑村の村外で暮らす支援者である。このワークショップは参加者に田野畑村に関するインタビュー映像を見せ、村の魅力や課題、幸福像、未来像を意見交換するものである。ナラティブは「語りの内容」と「語る行為」の2つの意味を含意している。まず、ワークショップで使用された各インタビュー映像での「語りの内容」と「語る行為」の特徴を明らかにする。次に、ワークショップでの各テーマで意見交換された「語りの内容」を分析する。最後にワークショップの参加者アンケートを「語る行為」の結果として分析する。結論として、本ワークショップは、対象となる抽象的なテーマを整理し、参加者に対して新たな気づきと発見、および新しい話題や視点をもたらす手法として有効であることがわかった。
著者
岡 絵理子 藤井 崇史 鳴海 邦碩
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.43.3, pp.379-384, 2008-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
11
被引用文献数
1

日本をはじめアジア諸都市では、高層集合住宅の建設が急速に進んでいるが、その一方で、老朽化した中高層集合住宅のもたらす問題も大きい。そこで本研究では、住民の99%が集合住宅に住んでいる香港で、都市再生局が都市再生の一つの手法として用いている建物再生事業に注目し、その手法を理解した上で都市再生における効果を検証した。観察調査やヒアリング調査の結果、香港での集合住宅再生事業は、抜本的方策ではないが、地域の持続性、住宅市場の活性化、事業そのものの波及効果、地域を活気づける効果が期待でき、わが国の地区再生に対しても示唆する点があることが明らかとなった。
著者
五島 寧
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.40.3, pp.235-240, 2005-10-25 (Released:2017-07-01)
参考文献数
55

本研究は、京城市区改正と朝鮮神宮の関係について、官庁街と神社が補完関係にあり、植民地都市の基軸となる目抜き通りが両地区を結ぶように意識的に整備された、とする主張を検証した。街路や主要施設の建設経緯の分析を通して「都市軸」形成が体系的マスタープランに基づくと考えがたいことを示し、さらに鎮座地決定の時点では「都市軸」と参宮道路は接続されていないことを証明した。本研究では、京城で官庁施設と神社を結ぶ都市軸が意識的に整備されたとする主張は、植民地都市計画に対する過大評価の一種とする結論を得た。
著者
稲葉 佳之 厳 網林
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.44.3, pp.55-60, 2009-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
10

本研究は、都市近郊地域における農地利用の粗放化、つまり耕作放棄や駐車場・置場等への転用の発生について、20年間・5時期の時系列的変遷とそこから生じる空間パターンを解明することを目的とする。対象地域は神奈川県藤沢市西北部の市街化調整区域およそ737haとし、1/2500スケールで粗放地6種類、農地2種類、都市的土地利用2種類の土地利用図をGISで作成し、土地利用政策、農業政策、空間条件指標との関連を考察した。結果、20年間で全転換面積中の粗放地のシェアが拡大していること、粗放地を経由した都市的土地利用への転換が大きく減少し、粗放地が土地利用転換過程の一時的な利用形態ではなくなっている可能性があること、また、農用地区域、圃場整備などの農業政策は一部を除いて粗放地の発生を十分に抑制しない可能性があることが明らかとなった。
著者
野中 勝利
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.72-83, 2017

本研究は近代の和歌山城址において、風致を破壊する計画とそれに反対する取り組みの経過を明らかにすることを目的とする。風致の破壊とは濠の埋め立てや石垣の取り壊しのことである。1910年に軌道整備に伴う濠の埋め立てがあった。1914年に和歌山市による道路整備に伴う濠の埋め立て計画では、市議会や新聞に反対する意見が出された。結局、和歌山市長はその計画を撤回した。1915年には風致の破壊を伴う和歌山城址の公園改修が計画され、賛否の意見があった。最終的に和歌山県知事はそれを許可しなかった。1922年から1923年にかけて、再び濠の埋め立て計画が浮上し、一部の埋め立ては実施された。
著者
野中 勝利
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.72-83, 2017-04-25 (Released:2017-04-25)
参考文献数
109

本研究は近代の和歌山城址において、風致を破壊する計画とそれに反対する取り組みの経過を明らかにすることを目的とする。風致の破壊とは濠の埋め立てや石垣の取り壊しのことである。1910年に軌道整備に伴う濠の埋め立てがあった。1914年に和歌山市による道路整備に伴う濠の埋め立て計画では、市議会や新聞に反対する意見が出された。結局、和歌山市長はその計画を撤回した。1915年には風致の破壊を伴う和歌山城址の公園改修が計画され、賛否の意見があった。最終的に和歌山県知事はそれを許可しなかった。1922年から1923年にかけて、再び濠の埋め立て計画が浮上し、一部の埋め立ては実施された。
著者
鈴木 弘司 藤田 素弘
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集
巻号頁・発行日
vol.42, 2007

本研究では,改正道路交通法施行前後において駐車違反取締り重点地域・重点地域外の住民を対象としたアンケート調査を実施し,法改正により路上駐車に対する意識および行動がどのように変化したかを把握した.その結果,改正道交法は,高齢者や重点取締り地域の住民に高く評価されている一方で,短時間の路上駐車をするものや都心部への移動が業務目的であるものは,本法に対する評価が低いことが明らかとなった.交通行動の変化については,法改正に対する評価が低いものは交通行動を変化させず,都心部にあまりいかないものは自動車利用を控え,公共交通などへの手段変更を行うことが示された.さらに普段の路上駐車時間が短いもの,都心部移動目的が業務であるものは時間貸し駐車場を探す傾向にあり,駐車取締りを常に意識するものは慎重に路上駐車スペースを探すようになるなど,法改正前後の交通行動の変化とその要因が明らかとなった.さらに,利用者の評価および自宅周辺での路上駐車実態から,駐車違反取締り重点地域や時間帯の設定について更なる検討が必要であることがわかった.
著者
貞広 幸雄
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.44.3, pp.787-792, 2009-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
14

点分布は、都市における様々な施設や移動体などを表現する最も基本的なオブジェクトである。本論文は、点分布間の関係を分析する新しい手法を提案するものである。ここでは特に、離散空間上に分布する点に焦点を当て、その相互関係を扱う。一対の分布間の関係を定義することから始め、多数の分布間の相互関係を各種の指標、地図的表現、グラフ表現などによって記述し、分析を行う。提案した手法は学校の施設配置計画に適用し、その有効性を検証する。
著者
藤江 徹 吉田 長裕 鎗山 善理子
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
日本都市計画学会関西支部研究発表会講演概要集 (ISSN:1348592X)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.97-100, 2016 (Released:2017-05-31)
参考文献数
5

大阪市は自転車分担率は高いが、放置自転車問題など自転車へのマイナスイメージが強い。そこで、自転車に関心のある市民有志が集まり、利用者目線で自転車を使ったみちやまちづくりをポジティブに提案するために、参加型イベント「御堂筋サイクルピクニック」を2011年から10回開催している。「ちゃんと走ろう!」と「もっと自転車レーンを!」をアピールしながら、大阪のメインストリート・御堂筋を自転車走行するイベントである。ママチャリやロードバイク、タンデム自転車など様々な車種、約300人が10人ずつのグループに分かれ、一列になって車道を走る。本発表では、参加者アンケートの結果や車道におけるアピール走行の実践、提案づくりの内容を報告する。
著者
渡部 大輔
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.631-636, 2010-10-25
参考文献数
23
被引用文献数
1

本研究では、古代において国府と京を結んでいた七道駅路を中心として、古代物流ネットワークの形態解析と物流システムの移動利便性として移動距離や日数、運賃との関係について分析した。七道駅路ネットワークを構築した上で、本路・支路によって結ばれている国府の隣接グラフを構築した。そして、最小木と重複しない隣接グラフの辺は、地方と京をなるべく短い距離で結ぶように、放射・縦断方向に長い辺が構築されていることが明らかになった。七道駅路を用いた物流システムについて、運賃は距離と線形に比例する関係が見られ、往復日数の方が距離よりも運賃と比例関係が強いことが明らかになった。海上輸送は、陸上輸送と比べて、所要日数が少なく、運賃も大幅に低いことが明らかになった。このように、地形の起伏や広大な河川、海上輸送を含むかどうかが、移動に大きく影響していることが明らかになった。現在価値への換算すると、現代のトラック運賃と比べて、遠距離に行くほど差が広がっていることが明らかになった。このように、古代の物流においては、現代より日数、費用ともに大きくコストをかけて運ばれていたことが定量的に明らかになった。
著者
舛田 晃 真野 洋介
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.953-960, 2015-10-25 (Released:2015-11-05)
参考文献数
8

時代変化に伴い伝統的工芸品が衰退して行く中、産業従事者の取り組みが変化している。取り組みの変化に伴い産地における従事者の地域的役割も変化している。そこで、従事者による新たな取り組みが近年見られ始めている富山県高岡市を対象に、取り組みの発生経緯と、地域での展開プロセスを明らかにすることで、産地における従事者の新たな役割を示唆することを本研究の目的とする。従事者へのヒアリング調査をもとに、従事者組織である高岡伝統産業青年会及び従事者周辺組織の活動と個々の従事者の取り組みの変化の関係を分析することにより、新たな従事者の役割として以下の結論を得た。1)従事者の活動が対外的になることで、産地に交流人口を増加させる役割を担う可能性がある。2)従事者が異業種分野と結びつく流れと、個人の関わりを組織に反映する動きが見られることから、従事者組織が、業種の垣根を越えて産地の人々を結びつける役割を担える可能性がある。3)県外から移住した作家が生計を立てるため新たな従事者となる中で、安価な製作場所、住まいとして空き家を活用する動きがあり、新たな従事者は空き家活用の担い手としての役割があると考えられる。
著者
細田 真一 瀬田 史彦
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.18-27, 2017-04-25 (Released:2017-04-25)
参考文献数
34

本論文は柏市中心市街地において、民間主体により道路区域内広場の整備及び維持管理が実施された事例に対して、文献調査及びヒアリング調査によって、その整備から維持管理までの過程を明らかにし、成功要因を探るとともに民間主体によってどの程度計画の自由度が高まり、魅力的な公共空間の創造に繋がったかを検証するものである。成功要因としては、商店街連合代表理事のリーダーシップ、地元専門家を中心とした整備及び維持管理の体制づくり、行政内の第三者的立場のセクションの参画等が資金調達、行政協議の推進に大きく影響したことが明らかになった。民間主体によるメリットとしては公費が削減されたこと、計画内容に対する利用者の評価が概ね高いものであったことが明らかになった。またその一方で、整備段階における資金調達や民間同士の協議の不調等が課題として残った。今後は新たに設立されたエリアマネジメント組織による状況改善が望まれる。
著者
田中 由乃 神吉 紀世子
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.309-314, 2013-10-25 (Released:2013-10-25)
参考文献数
14
被引用文献数
3

戦後の都市周辺部におけるまとまった規模での住宅開発は世界各地で見られるが、現在開発から数十年が過ぎ住宅地の物理的老朽化が進んでいる。本研究の調査対象地であるチェコ共和国では社会主義体制下において都市周辺部の住宅開発が進んだが、その住宅開発地は現在でも多くの居住者の生活の基盤となっており、地域の状況に応じた生活環境の改善は重要な問題であるといえる。そこで本研究では、社会主義時代の住宅開発地再生に関わるプラハ市市役所と、プラハ11、13区役所の施策から、各地域の状況に応じた多様な施策がどこに生じ得るのかを明らかにする。 現地調査とヒアリング、公式文書による調査の結果、プラハ市市役所は2001年には社会主義時代の住宅開発地に対して環境再生のための調査事業を行い、全域的な事実資料をまとめていたことが分かった。また、プラハ11、13区では開発当時の地域独自のマスタープランが現在でも重要な意味を持っていること、11区役所が区主体の施策を行う一方で13区は市役所の土地利用計画に従うといった区レベルでの取り組みに違いがあることなどが分かり、これらが各地域の状況に応じた多様な施策につながると考えられる。
著者
羽鳥 剛史
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.991-996, 2012-10-25 (Released:2012-10-25)
参考文献数
11
被引用文献数
3

本研究では、地域コミュニティにおける「離脱」と「発言」という地域住民の持ち得る2つの行動手段に着目し、ハーシュマンの理論を基に、これらの行動手段の間の関連について実証的に検討することとした。さらに、地域住民の離脱を緩和し、発言を促進する機会として、地域経験に関する「記憶」の役割に着目し、地域経験に関わる記憶の想起が離脱と発言に及ぼす影響を検討することを目的とした。この目的の下、松山市在住の市民145名を対象に質問紙調査を用いた実験を行った。その結果、離脱と発言との間に相互代替的な関係が成立する可能性が示された。また、地域経験の記憶の想起が地域住民の発言傾向を促進する効果を持つ可能性が示された。最後に、本研究の知見が地域計画に示唆する点について検討した。
著者
西浦 定継 佐藤 栄治 大西 隆 木下 瑞夫
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.889-894, 2011-10-25 (Released:2011-11-01)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

タイは80年代から目覚ましい経済成長を遂げてきている。1997年にアジアの金融危機により一時停滞したものの2000年代に入ってアジアの生産拠点として再び成長軌道を歩んでいる。首都バンコクには、外資の工場立地を起爆剤として人、物が集中し、大きく変容してきている、本研究では、バンコク大都市圏について、1988年から2008年の20年間の都市変容を調査分析、考察した。調査対象としては、過去3年代の総合計画においてサブセンターとして計画されている地区を抽出し、そこに立地する商業業務機能をカウントし、1988年、98年、08年のデータを総合的に分析し、その相対的関係より考察した。従来からの集積地は規模が縮小し、拠点的な役割を担ってきた集積地は姿を消し、中規模程度の集積地が広く分散する構造に変わってきている。今後は、衰退する集積地の再開発などが課題となる。
著者
孫 立 大西 隆 城所 哲夫
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.469-474, 2011-10-25 (Released:2011-11-01)
参考文献数
5

21世紀に入り、1980年代後半から生まれてきた中国の特色的な低所得者地域である城中村に対する再開発事業が各地において次々と行われ始めた。本研究は現行の城中村再開発の政策・手法のモデルの解明、ケーススタディを通じて改造効果などを把握した上で、現行事業の到達点の解明に試みた。調査・分析の結果、再開発事業における制度改革(無形改造)は、形式的なものであり、名称上の変更に止まってしまい、福祉、社会保障などの実質的な問題の抜本的な解決には及ばなかった。物的再開発(有形改造)は、物的住環境の抜本的な改善を通じ、村民の生計維持・向上の問題を解決した。一方、低所得な借家人は住み続けることが困難となっており、社会的公平性や都市経済発展の鈍化等の問題をもたらす恐れがある。
著者
中島 直人
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.283-288, 2011-10-25 (Released:2011-11-01)
参考文献数
15

本研究の目的は、根岸情治の履歴と業績を明らかにすることを通して、「都市計画事業家」の実質的内容について考察を行うことである。根岸は幾つかの区画整理事業の現場を渡り歩きながら、区画整理実務を身につけ、キャリアを形成していったが、その仕事内容は単なる事務仕事に留まらず、各種の折衝、啓蒙宣伝、事業後の宅地の販売促進までを含む広いもので、創造性や根岸の人格が反映されたものであった。池袋駅東口地下街の建設においても、都市計画事業の民間代行による地下街建設という新しい試みに際し、事業の進展に応じて、政治的活動を含む柔軟な活動を展開した。こうした姿から浮かび上がる「都市計画事業家」の存在は、公的セクターによる強力な土地利用規制ではなく、民間の地権者の協同による事業に支えられた我が国の都市計画の特質と深く関係している。
著者
佐藤 貴大 円山 琢也
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.345-351, 2015-10-25 (Released:2015-10-25)
参考文献数
9
被引用文献数
1

2013年11月から12月に熊本都心部においてスマホ・アプリ型回遊調査を実施し,1083人の参加者を得た.データに含まれる膨大なGPSの軌跡情報を効率的に処理する方法が求められる.本研究は,カーネル密度図を利用して,簡易に回遊行動圏を推定する方法を提案する.GPS軌跡の95%のカーネル密度図を行動圏域と定義しているが,それは測位誤差に頑健となることも確認した.最後に,提案した行動圏の面積と回遊時間を比較し,評価指標としての違いや,政策含意を議論した.