著者
今村 洋一 西村 幸夫
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.42.3, pp.427-432, 2007-10-25 (Released:2017-02-01)
参考文献数
5

本研究では、『国有財産地方審議会の審議経過』を用い、高度経済成長期前半における旧軍用地の転用と都市施設整備との関係を明らかにしている。旧軍用地の大部分は自衛隊用地や農地へと転用されたが、それでも5,081haという大量の旧軍用地が、工場、官公庁施設、公園、学校、公営住宅などに転用されることとなった。旧軍用地の都市的用途への転用には、高度経済成長下の都市化に伴う都市問題への対応という、変わりゆく都市の在り様に柔軟に対応するための予備資源としての役割と、戦後の制度改革や政策の実現に貢献するという、時代あるいは都市を変えてゆく推進装置としての役割の2側面があった。また、転用上の特徴としては、公的利用という基本的方向が見出せる一方で、地域や各施設に固有の条件との関係も見られた。
著者
大場 亨
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.45.3, pp.133-138, 2010-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
16

複数の候補地がある、住民にとって魅力度に相違がない施設を想定し、施設の増設または移転による、自宅から目的の施設までの時間短縮と移動経費の減少を貨幣評価する方法を本稿は定式化する。まず、ネットワークボロノイエリア図を用いて、同じ施設を選択する住民の領域を求める。次に、自宅から最寄りの施設までの最短経路距離の総計を定式化する。さらに、施設の新設または移転の前後のその比較から、移動時間短縮と移動経費減少の現在価値を予測する。河川に架かる橋梁が少数であるなどの場合にネットワークボロノイエリア図の領域界とボロノイ図の領域界が異なることがあることを示した上で事例分析を行い、直線距離による場合と経路距離による場合の便益評価の結果を比較する。
著者
住田 和則 渡辺 貴介 羽生 冬佳
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.355-360, 2001

This paper aims to find out the characteristics of UI-turn needs and countermeasures implemented by local government in Japan. Based on survey of interview news of UI-turn people and questionnaire survey local government, comparative analysis was conducted. Finding are as follows. 1) The UI-turn people are classified into four groups of the characteristics. 2) The local government that has implemented them in proportion to needs in very few. 3) They are not so much effective on increase and decrease of the incorporation population, when regional characteristics are made correspondent with them. 4) These are some mismatches betwwn UI-turn needs and countermeasures implemented by them.
著者
飯塚 智哉 畔柳 昭雄 菅原 遼
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.108-115, 2018-10-25 (Released:2018-10-25)
参考文献数
62

近年、我が国では想定外と揶揄される洪水被害が全国各地で頻発しており、国においてその抜本的な対策が講じられている。しかし、治水整備や文明の発達によって行政と住民の双方で危機意識の希薄化が進行しており、被害拡大に起因していることが指摘されている。その一方で、今日、言い伝え・災害伝承は今後の大規模災害に対して、効果を発揮し得る対策として再認識されつつあり、蓄積や検討の必要性を有すると考える。以上から、本研究では、古来からの洪水常襲地域に根付く言い伝え・災害伝承に着目し、自治体史や行政資料から地域特性・構成要素を把握し、その特徴を捉えた。その結果、(1)全国の洪水常襲地域では洪水発生前の言い伝え・災害伝承が多く語られ、日頃の準備に重点が置かれていた。(2)埼玉県では、言い伝え・災害伝承と地域特性に関連性がみられ、着目物体の変化を捉えることで言い伝え・災害伝承を語っていたことが明らかになった。
著者
古山 周太郎 和田 浩明
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.621-626, 2014-10-25 (Released:2014-10-25)
参考文献数
7
被引用文献数
3 2

本研究の目的は、実際に被災した山間地域を対象に、複数の集落における避難行動や災害対応の実態を把握することである。また、被災体験に基づく集落住民の防災意識をまとめている。研究対象地紀伊半島大水害で被災した五條市大塔町地区の集落とし、集落住民へのアンケート調査と、集落単位での防災地区懇談会で出された意見を分析した。その結果、被災地域の集落は、被災集落、避難集落、孤立集落、通常集落にわけられ、避難時には、行政や消防の支援の下、状況に対応しながら行動しており、避難しない集落でも、集落単位での安否確認や情報取得などに取り組んでおり、集落同士の協力関係もみられた。また、被災経験により災害に対する不安は高まり、早めの避難を意識する傾向がみられるが、孤立した経験をしていても自宅待機を望む住民もおり、体験の仕方によって防災意識に差が見られた。集落ごとの課題と対策においても、被災時の経験が影響しており、特に被災体験した集落では、直面した課題を現実的に捉えそれに対して実行的な対策を求めている。
著者
松浦 健治郎 巌佐 朋広 浦山 益郎
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.41.3, pp.917-922, 2006-10-25 (Released:2018-06-26)
参考文献数
24

本研究は、39道県庁所在都市を対象として、明治・大正期における官庁街の立地特性及び都市デザイン手法を明らかにするものである。明らかとなったのは、1)近世城下町都市では城郭地区内に官庁街が形成され、それ以外の都市では主要街路沿い又は主要街路沿いに位置する商業地区の裏手に形成されること、2)城郭地区立地型・主要街路沿い立地型で主要街路を活用した4つの都市デザイン手法がみられたこと、3)主要街路から直交する引き込み街路を活用した4つの都市デザイン手法が商業地区裏手立地型で多くみられたこと、4)主要街路又は引き込み街路のアイキャッチに官公庁施設を置く都市デザイン手法は官庁街の立地特性や都市の成立起源に関わりなく、明治・大正期に広く用いられた都市デザイン手法だったこと、である。
著者
清水 肇 中村 友美
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.1267-1274, 2018
被引用文献数
1

沖縄県読谷村のK集落は、第二次世界大戦末期の沖縄戦による破壊の後、軍事基地建設のための土地接収により強制的な移転を余儀なくされた。旧集落の物的環境の多くは失われたが、集落跡地への関係者の出入りが制約のもとで許されている。 歴史的資産の多くが消失あるいは改変された状況において、戦前に戦後にかけての集落の姿と暮らしに関わる地域の記憶の継承の方法を検討した。記憶の継承に有効な歴史的資産を抽出し、それらの特質を分析することにより、消失や改変を経た歴史的資産の特質に対応した記憶の継承の取り組みが必要であるという認識を得た。 K集落住民による旧集落跡地から現集落の範囲までを対象とする記憶継承活動が企画、実施され、活動を通じて記憶の継承活動の課題を検討した。物が消失して空白に見える場所の扱い、重層的な記憶の扱い、場所への関わりの継続、領域を示す資産の扱いが重要であることを示すことができた。
著者
竹内 啓 對間 昌宏 城所 哲夫 瀬田 史彦
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.172-178, 2018-10-25 (Released:2018-10-25)
参考文献数
24
被引用文献数
1

イノベーションを効率的に起こすには「フェース・トゥ・フェース」のコミュニケーションを通して知識を複数の主体間で共有することが不可欠であることから、イノベーションは地理的に集中する傾向にあるとこれまで論じられてきた。本研究は日本国内の特許データを用いて、共同発明者同士のネットワークの空間的分布を調べた。また、分野毎の比較も行うため、機械・情報通信の二分野で分析をした。結果、以下の点が示された。1)発明者同士のネットワークは地理的に集中しているが、その空間的傾向は分野間で異なる。2)発明者間の時間距離が小さいときに共同発明が進みやすいものの、そうした傾向は近年弱くなっている。3)ネットワークは都道府県境や経済産業局の管轄区域を越えて広がっている。以上を総合すると、将来イノベーション・ネットワークはより地理的に広い範囲に広がる可能性があり、都道府県や各地方をまたいだ政策の必要性が示唆される。
著者
村上 佳代 西山 徳明
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.1188-1195, 2015

フランスで誕生したエコミュージアム概念が、日本で独自に発展し、山口県萩市の「萩まちじゅう博物館」というエコミュージアム概念に基づいた文化資源マネジメントによる開発手法が確立した。独立行政法人国際協力機構によって全くコンテクストの違うヨルダンに技術移転された、エコミュージアム観光開発技術が、特に保守的なサルト市の地域社会において、エコミュージアムの「コア博物館/サテライト/ディスカバリー・トレイル」のシステムにより、来訪者に見せていきたいもの、見せたくないものの判断が地域側にあり、コントロールできる点、来訪者に地域の文化を尊重してもらうための仕掛けがある点においては適用できたと考える。このように、遺産の保護、地元に利益が還元される観光開発といった点において、エコミュージアム概念に普遍性があり、最適なシステムであると言えよう。しかしながら、ヨルダンと日本の社会構造が違う中で当然であるが、博物館として備えるべき機能を十分に持つことに関しては課題が残る。今後は、大学やサルトの歴史家との連携を強化し、サルトの地域住民自身が学芸員となれるような取り組みを行なっていくことによって解決していきたい。
著者
八尋 和郎 外井 哲志 梶田 佳孝
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.37-42, 2011

近年、都市に人を集める産業としてプロ野球観戦が注目されており、その特性を把握することは有益であると考えられる。本研究では、福岡ソフトバンクホークス(野球チーム)の観戦者に対するアンケート調査によって、観戦者の特徴と観戦者がもたらす経済効果を分析し、以下のことが明らかになった。(1)遠方からの来場者や、1人で来た来場者は消費単価が高い。(2)試合観戦前後に、来場者は福岡ドーム(野球場)以外の場所にも立ち寄っており、都市の賑わいに貢献をしている。(3)プロ野球観戦に直接関係がない産業にも大きな需要が創出されている。(4)交通費は集客に対して大きな影響を与えている。以上より、福岡ソフトバンクホークスは都市に無視できない大きな影響を与えていることが分かった。
著者
石山 慧 樋口 秀 中出 文平 松川 寿也
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.1001-1007, 2016-10-25 (Released:2016-10-25)
参考文献数
6

本研究は新潟県長岡市の旧長岡地域に残る、公有地上に立地するという独特の特徴を有する雁木および雁木通りの現状と雁木通りに係わる人々の雁木通りに対する意向を明らかにし、雁木通りの今後のあり方を検討することを目的とする。雁木通りと人々への調査の結果、長岡のまちなかには1503棟、総延長10,959mの雁木が存在した。また、雁木が設置された通り(雁木通り)は201本で、そのうち84本は設置率や連続性が高く、残すべき通りである。しかし、全体としては、雁木の老朽化や低未利用地による雁木の断続の問題を確認した。今後は、雁木通りを限定しながらも、存続を図ることが必要と考える。そのためには、長岡市民が雁木通りを長岡の財産と認識することが重要である。
著者
増井 徹 高岡 伸一 嘉名 光市 佐久間 康富
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.129-134, 2013
被引用文献数
1

本研究は大阪駅の南側に位置する約6haの計画地に、大阪駅前第1ビルから第4ビルまでの4棟の高層ビルを建設した大阪駅前市街地改造事業を対象に、1961年から20年以上に渡った事業の変遷を整理し、各計画段階で目指された空間像がどのように変容していったかを明らかにするものである。結論としては、当初は「類型の反復という美学」に基づく統一性の高い計画であったが、事業過程で高層化が重ねられ、仕上げも変更されるなど、低層部の当初方針は堅持されたものの、高層部の統一性は失われた。また当初の計画にはなかった広場的空間が変更によって加えられ、その重要性が増していった。そして低層部屋上への公開空地の設置などによって、階による明確な歩車分離という当初の方針が損なわれたといったことが明らかとなった。
著者
増井 徹 高岡 伸一 嘉名 光市 佐久間 康富
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.129-134, 2013-10-25 (Released:2013-10-25)
参考文献数
18
被引用文献数
1

本研究は大阪駅の南側に位置する約6haの計画地に、大阪駅前第1ビルから第4ビルまでの4棟の高層ビルを建設した大阪駅前市街地改造事業を対象に、1961年から20年以上に渡った事業の変遷を整理し、各計画段階で目指された空間像がどのように変容していったかを明らかにするものである。結論としては、当初は「類型の反復という美学」に基づく統一性の高い計画であったが、事業過程で高層化が重ねられ、仕上げも変更されるなど、低層部の当初方針は堅持されたものの、高層部の統一性は失われた。また当初の計画にはなかった広場的空間が変更によって加えられ、その重要性が増していった。そして低層部屋上への公開空地の設置などによって、階による明確な歩車分離という当初の方針が損なわれたといったことが明らかとなった。
著者
土久 菜穂 山本 明
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.321-326, 2013

本稿は、中世都市における山稜景観をケーススタディとして、フラクタル次元を援用した山稜景観の形態的特性の定量的な記述手法を提案し、その有用性を検証するものである。その結果、各都市の主要施設の立地特性に関する既知の諸事実について、山稜景観の形態的な側面から検証できた。さらに、主要施設を視点場とする山稜景観の形態的特性を、次の通り定量的に記述することができた。・平安京では、多くの稜線による複雑な遠景が一様にもたらされていたが、平坦な市街地中心部に立地する御所邸宅と、市街地縁辺部に立地する宗教施設からの山稜景観には差異があった。・中世平泉では、平安京的な遠景の山稜景観の土地に京文化が輸入されたことから、山を借景とする浄土空間が形成されていった。・谷戸地形を活かした中世鎌倉では、山稜を遠景として望むことが稀であり景観的な複雑さは乏しいが、幕府に庇護され山裾や谷戸周辺に立地する禅宗・新義律宗の寺院と、迫害され平地や海岸線周辺に立地する日蓮宗の寺院からの山稜景観には差異があった。
著者
田中 雄大 菅野 圭祐 佐藤 滋
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.305-312, 2016

本研究の目的は、山形県鶴岡市を対象として、城下域の取排水系統や、水路網の取水・分水・集水地点などの伝統的水系構造を解明し、景観構成との関係を明らかにすることである。本研究は以下の手順で行う。第一に、城下絵図や明治地籍絵図、現代の地番図などの地図資料の比較を基にArcGISを用いて藩政期における城下域の流路を復元する。第二に、微地形の分析や地図史料を用いて流水方向を特定し、地区ごとに記述する。第三に、各地区の記述に基づき、城下域全体の取排水系統を把握する。また、各系統が配水する地域における土地利用の特徴を考察する。第四に、城下域全体の取排水系統における、取水・分水・集水地点を特定し、各地点に確認される水路形態の特徴を把握する。第五に、水系上に確認される山当て景観と借景の分布実態を把握し、取排水系統の違いによる分布の差異や、取水・分水・集水地点との位置的関係を分析する。
著者
窪田 亜矢
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
no.39, pp.607-612, 2004-10-25
参考文献数
20
被引用文献数
1

2002年ホームレス自立支援法が成立した。自治体に実施計画が義務づけられるなか、東京都では自立構築システムのもとで緊急一時保護センターや自立支援センターなどが設けられた。センターの立地やデザイン、内容についてはまだお問題はあるし、ここまでの施策は就労を前提としていることがしばしば指摘されてきた。しかし民間借り上げ住宅も検討され、多様な選択肢が用意され初めている。新宿区では NPOや自治体のみならず地域住民や路上生活者自身が加わる検討協議会も立ち上げられた。事態は進展しつつある。今後は、予防まで含めた総合的な取り組みを進めること、路上生活者自身の主体的な取り組みの支援、居住の権利に基づきながら問題を政治化していくことが必要だ。
著者
鈴木 栄基
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.901-906, 2017

北海道総合開発計画の始動期に着目し、これまで明らかにされていなかった政府の事業と地方都市との関係について、吉田初三郎の鳥瞰図など当時の資料をもとに考察した。岩見沢市は、1952年着手の石狩川流域開発の契機ととらえ、積極的に活動し、博覧会の誘致など観光活動にも活用した。市長は、海外先進地を訪問し、参考となる情報と知識を積極的に吸収した。鳥瞰図は、市による近代都市計画の導入などの取り組みを知るうえで有用な資料であった。
著者
斎尾 直子 真藤 翔 石原 宏己
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.933-938, 2014-10-25 (Released:2014-10-25)
参考文献数
12
被引用文献数
4

近年、少子化に伴う18歳人口減少傾向とは逆行した大学数の増加、それによる大学全入時代への以降、そのような動きと並行して、大学教育やキャンパススタイルの多様化、2002年工場等制限法廃止以降の都心キャンパス整備拡大の動き等、大学経営の観点からキャンパスの新設・撤退と拡大・縮小の動きが活発におこなわれてきた。このことは、大学キャンパスが長年立地してきた自治体や、キャンパス周辺地域にとっては都市の衰退・再生に大きく影響する変革であり、その動向の特長と課題を把握しておくことは重要であると捉えられる。本研究は、首都圏に立地する全4年制大学382キャンパスを分析対象とし、過去30年間の新設・撤退の年代ごとの傾向・変化を把握。その動向を踏まえ、特に撤退事例に着目し、撤退後の跡地利用の実態及び課題抽出をおこなっていくことにより、今後の大学キャンパス立地・移転計画、大学と地域との連携施策のための基礎的知見を得ている。
著者
山本 幸 柿本 竜治 山田 文彦
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.45.3, pp.553-558, 2010-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
11
被引用文献数
1

本研究の目的は、筆者ら提案する災害リスクマネジメントのフレームの汎用性を検証することにある。山都町菅地区での山間地域の防災力向上への取り組みにPDCAサイクルに基づく災害リスクマネジメントのフレームを適用することで、8回に亘る継続的なWSと2回の避難訓練の運営を効率的に行うことが出来た。また、PDCAサイクルを巡回させることで、防災学習の取り組み内容を地域全体の防災から災害時要援護者の支援へとスムーズに発展させることが出来た。WSを通して、地域の災害リスクの認知、世帯カルテの整備、災害時要援護者の確認、地域のソーシャル・ネットワークの確認が行われ、災害時に地域や行政が特に配慮しておくべき世帯等が絞られた。避難訓練を通して、地域の防災連絡体制の強化と集落間の協力関係の強化が図られ、避難時間が40分短縮されるなどの効果が見られた。また、WSでの議論により、地域ニーズと地域特性に応じた雨量観測システムと安否確認システムが構築され、実装された。最後に、本取り組みを通じて、地域防災学習のWSを継続していくにあたっての留意点を明らかにした。
著者
中島 直人
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.42.3, pp.403-408, 2007-10-25 (Released:2017-02-01)
参考文献数
25

本論文は石川栄耀による都市計画の基盤理論の探求の特徴を把握することを目的としている。石川の主著書である『都市計画及び国土計画』は1941年に初版が出版された後、1951年に改定版、1954年に新訂版が出版された。先ず、初版出版に至るまでの過程の分析により、石川が都市計画の基盤理論構築のための都市学の確立を強く望んでいたことが明らかになった。石川は『都市計画及び国土計画』では、独自の基盤理論である「都市構成の理論」で都市計画を体系化してみせたのである。また、2度の改訂内容の分析からは、石川が「生態都市計画」と呼んだ新しい都市計画の姿を目指して、「都市構成の理論」に都市動態の理論を組み込もうとしていたことが明らかになった。こうした都市計画の基盤理論を探求する姿勢は、石川の同時代の誰よりも先進的であり、かつ現代的意義も有している。