著者
増山 篤
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.210-220, 2015-10-25 (Released:2015-10-25)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

この論文では、青森県弘前市における通所介護および訪問介護サービスへのアクセシビリティを分析し、その結果の示唆するところを議論する。まず、2SFCA(two-step floating catchment area)法と呼ばれる方法におけるアクセシビリティ指標値の空間分布を求め、分析対象地域内のいくつかの場所においては、顕著にその値が低いことを示す。次に、2SFCA法におけるアクセシビリティ指標の値を求めた結果と、先行研究でも使われたアクセシビリティ指標の値を算出した結果とを比較する。そして、その比較結果から、2SFCA法とその他のアクセシビリティ指標とでは、どこをアクセシビリティに欠ける場所と判断するかが少なからず異なることを示す。また、一方で、介護サービスへのアクセシビリティという点で問題視されうる地区を適切に見出すのは、2SFCA法だと期待されることを論じる。最後に、ここでの分析結果が地域包括ケアシステムの理念の実現に向けて与える示唆について考察する。
著者
柿本 竜治 吉田 護
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.1086-1093, 2019-10-25 (Released:2019-11-06)
参考文献数
14

行政が災害への備えを如何に行っても広域に大規模な災害が発生した場合,行政の災害対応能力に限度があることは明らかであり,災害発生初期段階では,自助や共助による災害対応が必要であろう.したがって,地域の災害時の対応力を向上させることは不可欠である.そこで,本研究では,2016年熊本地震による影響の大きかった熊本市の自主防災組織を対象に,熊本地震前の自主防災組織の災害への備えや訓練の状況と熊本地震時の災害支援活動の状況をアンケート調査し,両者の関係を分析した.そして,自主防災組織の災害時の対応力が高った自主防災組織の特徴や特性を明らかにし,自主防災組織の災害時の対応力を向上させるための方策を探った.結果として,日頃の災害への備えが,災害時の対応力に繋がっており,地域による災害への備えの充実は不可欠であることを明らかにした.また,自主防災組織の災害への備えの取り組みに影響している要因を分析したところ,すべての取り組みにおいて,組織体制の整備が重要であることが示された.
著者
清水 肇 松島 啓信
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.1072-1078, 2019
被引用文献数
1

<p>沖縄における密集市街地は木造建物が比較的少ない一方で狭隘道路・通路が入り組んだ状態にあることが特徴である。本研究は那覇市の密集市街地を対象に、避難路の状況の改善可能性を検討したものである。緊急避難路利用協定、防災空地整備、緊急避難路形成型協調建て替えの3つの手法を設定し、手法を適用した状態を仮定して、避難路の幅員、避難路沿いの木造・非木造建物、二方向避難路の3つの指標で評価を行った。避難路の幅員、雛路沿いの木造・非木造建物の指標は各種手法の適用によって大きな改善は見込めないが、二方向避難路については改善の可能性があることが見出された。緊急避難路利用協定は避難路の状況を改善する潜在的な可能性があり、さらに3つの手法を組み合わせて適用することにより効果を高めるられる可能性がある。</p>
著者
今西 一男
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.829-834, 1999-10-25 (Released:2018-03-01)
参考文献数
26

THE PURPOSE OF THIS STUDY IS TO ANALYZE THE PLANNING PROCESS AND PROBLEM OF THE MULTI-LEVEL REPLOTTING IN LAND READJUSTMENT PROJECT FOR IMPROVEMENT OF THE DENSELY BUILT-UP AREA. ONLY FEW PRECEDENTS HAVE SO FAR BEEN MADE AT MULTI-LEVEL REPLOTTING. SO THIS STUDY IS INTENDED AS AN INVESTIGATION OF THE ACTUAL CONDITIONS OF THE MULTI-LEVEL REPLOTTING FROM CASE STUDY OF KACHIGAWA EKI-MAE AND KACHIGAWA EKI-MINAMIGUCHI, IN KASUGAI CITY, AICHI PREF. THE CONCLUSIONS OF THIS STUDY ARE AS FOLLOWS; (1) THE MULTI-LEVEL REPLOTTING HAS A EFFECT FOR THE MITIGATION OF DECREASE. (2) BUT THERE ARE SUBJECTS ABOUT IMPROVEMENT OF WHOLE THE DISTRICT.
著者
劉 冬晴 後藤 春彦 馬場 健誠
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.987-993, 2016-10-25 (Released:2016-10-25)
参考文献数
23
被引用文献数
1

1990年代後半から、急速な高層マンション建設により都心回帰が起こり、東京の都心部における新規住民流入が著しい。既存住民と新規住民の地域交流における問題は数多く指摘されており、近年は地縁の希薄化などにより町内会の重要性が再認識され始めている。このような背景を踏まえ、人口流入の多い高層マンション集積地において、町内会における新規住民と既存住民の関係性や交流に着目する必要性がある。本研究では、東京23区の主な高層マンション集積地に着目してその特徴を整理し、各町内会が運営する地域活動と既存住民と新規住民の交流の実態を把握する。また、既存住民と新規住民の活発な交流が多数行われている町内会を選定し、コミュニティ構築を促す取組みと体制を明らかにする。以上の2点から、高層マンション集積地における開発と町内会体制の関係性を整理することにより、今後の町内会運営への示唆とする。
著者
Choviwatana Palin 木内 俊克 岡 瑞起 橋本 康弘 小渕 祐介 隈 研吾
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.90-101, 2019-10-25 (Released:2019-10-28)
参考文献数
16

本研究では,近年のコミュニティサイクル事業で非接触式ICカードや携帯端末等を用いた認証決済システムが多く利用されていることに着眼し,GPSデータのみから自転車による回遊行動の実態を推定する指標策定を試みた.具体的には,1)迂回度,2)進行方向の変化度,3)滞在時間分布を表す移動速度の3指標を定義し,大局的な目的地経由のみでなく,GPSデータの特徴である面的で網羅的な特徴を生かした細かな回遊行動の連なりを可視化し,移動過程の部分ごとの移動の質についての評価を可能にする点で新規性のある指標を提示した.また,提案指標を用いた自転車利用者の傾向分析への応用例として,自転車利用者が感じる都市への関心度合いに関するアンケートを実施し,回遊特性指標を用いた自転車利用者のクラスタ分析結果とアンケート回答の照らし合わせ,回遊特性指標と都市への関心の関連性の分析の二例を示した.
著者
城所 哲夫 近藤 早映
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.791-797, 2016-10-25 (Released:2016-10-25)
参考文献数
13

本研究では、日本の地方都市の地域活性化の進め方と中心市街地の役割に関する考え方として、ライフスタイル産業仮説とクリエイティブ・タウン仮説から構成されるイノベーティブ・タウン仮説を提示した。イノベーティブ・タウン仮説の肝は、ライフスタイルを生かした地域の活性化と、そのベースとなるアイデアを喚起し、人と人をつなぐ場としての中心市街地の役割である。中心市街地活性化の好事例としてとり挙げられることの多い地方都市についてイノベーティブ・タウン仮説の適合性を検討したところ、中心市街地活性化事業の展開の仕方(行政主導型、協働型、民間主体型)の違いにより、そのアプローチの違いはみられるものの、全体として、イノベーティブ・タウン仮説に適合したかたちで中心市街地活性化事業が展開していることが確認できた。とくに「民間主体型」において、より直接的にライフスタイル産業の生成に結びつく活動が展開していることが指摘できる。一方、「行政主導型」「協働型」においては、ライフスタイルの彫琢、市民のネットワークの形成、魅力的なパブリックスペースの創出等の中長期的な目標が重視される傾向がある。
著者
吉川 勝秀
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.42.2, pp.62-71, 2007-10-25 (Released:2017-02-01)
参考文献数
12

流域の都市化が著しいアジア等の河川流域では,洪水による被害額も増大しており,治水対策が求められている.本論文では,治水の本質である土地利用の誘導・規制を含む総合的な治水対策について,低平地緩流河川流域である日本の中川・綾瀬川流域およびタイ国バンコク首都圏流域を取り上げ,都市計画的に考察した.この2つの流域での実践というトータルな評価(事後評価)により,今後急激な都市化を経験する他のアジア諸国における土地利用の誘導・規制を含む総合的な治水対策の有効性を示した.
著者
峯苫 俊之 十代田 朗 津々見 崇
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.43.3, pp.607-612, 2008-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
13

本研究は、軽井沢町の観光地・リゾートの成熟段階を対象としている。まず、研究の手法としては、「信濃毎日新聞」の記事を資料として、様々な論点別に論議を整理する。それを基に完成・安定段階の特徴を把握する。そして完成・安定段階後の将来像形成に関する知見を得ることを目的とする。分析結果として、1)完成・安定段階は、「観光スタイル」「別荘地・別荘所有者」「商店街」など論点・論調によって細かく時期区分することができる。2)別荘地・別荘所有者が論議を引き起こす要因となる。しかし一方で、戦前の別荘地を原点とした将来像を描くに至っている。
著者
飯田 克弘
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.421-426, 2000-10-25 (Released:2018-02-01)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

In this study, we first examine existing conditions of the 'Michi-no-Eki' rest areas by compiling conventional data and conducting a field survey. Secondly, we conduct an questionnaire targeting those who actually use the road and those who use the Michi-no-Eki in the area targeted for the case study. Then we study the responses of these people and their needs for taking rest based on the results. We also conduct Type II quantitative analysis of those who pass through the area, and ask whether these people take a break in the section, and whether they use the Michi-no-eki in the targeted area. Then, we examine the relationship between factors affecting resting at and using the Michi-no-Eki. Lastly, we examine the policy to maintain the station regarding fundamental facilities and service by compiling the data obtained from these studies.
著者
新井 洋史
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.337-342, 2011-10-25 (Released:2011-11-01)
参考文献数
11

ロシア東部は面積が広大で、かつ人口が希薄な地域である。ロシア連邦政府は、特定の地域や分野(運輸、エネルギーなど)を対象とした「戦略」や「連邦特定目的プログラム」といった政策文書を通じて、この地域の開発のための取組を進めている。本論文では、この地域の開発に関わる主な政策文書の性格や役割を検討し、これらの文書の体系を明らかにする。90年代半ば以降、「極東ザバイカル経済社会発展プログラム」がこの地域に関わる最も基幹的かつ包括的な文書であるとされてきたが、最新版の同プログラムでは主に地域レベルのプロジェクトを扱っている。他方、最近策定された他の政策文書においては、連邦的意義を持つインフラプロジェクトを提示することにより、地域の基本構造が描かれている。
著者
諸隈 紅花 窪田 亜矢
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.1189-1196, 2016-10-25 (Released:2016-10-25)
参考文献数
46
被引用文献数
1

本論文はニューヨーク市ブルックリン区のウオーターフロント沿いの、歴史的な造船所のブルックリン・ネイビーヤード(BNY)を取りあげ、歴史的工場群を店舗・住宅等の別の用途に転換することで場所を再生するのではなく、歴史的環境において当初の製造という機能を活かして市営の工業団地として再生する、従来の歴史的港湾の再開発とは異なるタイプの保全型再開発が実現した背景、実態の把握、再生の方法、歴史的環境保全と製造業維持という二つの政策の相関関係を明らかにする。研究の手法は文献調査、2回の現地調査、及び関係者へのインタビューを用いる。BNYが製造業の場として再生された背景には当初からの周囲のコミュニティへの雇用の場としての位置づけ、グローバル経済下における都市構造の変化による中小製造業の工業空間への需要の高まりと「製造業の維持」を推進する民間の団体の存在があった。運営をまかされたNPOは市からの資金援助が少ないなかで補助金や公的資金等の様々な資金源を活用して、再開発を実現した。歴史的環境保全と製造業の維持政策には明確な接点はないが、BNYにおいては両者が一定のメリットを享受することで均衡を保っている。
著者
岡田 忠夫 有田 智一 大村 謙二郎
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.45.3, pp.319-324, 2010-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
8

本研究は、大手町・丸の内・有楽町地区における新丸ノ内ビルディングの開発事例を対象として、公民間の協議における議論の分析を通じて、新たな公共貢献のあり方について検討することを目的とする。本研究で明らかになったことは、以下の点である。第一に、正規の都市計画手続き前の公民間の協議において、建物形態・導入用途機能・容積ボーナスなどの事業計画が確定しており、この段階の協議の重要性が明らかになった。第二に、事業者側からの、敷地外公共施設整備への貢献や、環境まちづくり支援機能や新規創業支援機能の導入など、多様な公共に貢献する内容が提案されている。第三に、こうした事業者からの提案の多様化に対応するために、行政においても容積率ボーナス対象とする範囲の多様化やプロジェクト評価方法の柔軟化が図られている。
著者
梅宮 路子 佐野 育実 岡崎 篤行
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.42.3, pp.337-342, 2007-10-25 (Released:2017-02-01)
参考文献数
13

都市計画道路の見直しに関しては、住民間の合意形成が問題であり、特に意見調整期内における合意形成の方法が重要である。村上市では近年話し合いの場が設けられ、住民代表者による委員会において合意が進んだが、住民全体の合意には至っていない。調査により、県が「16m拡幅は困難」であると公言したことが促進要因となり、道路の幅の議論に終始したこと、住民全体での合意形成システムがないことが阻害要因であることが分かった。また、目標都市像の議論ができないことが課題である。
著者
吉村 輝彦
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 = Papers on city planning (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.1033-1038, 2011-10-25
参考文献数
2

近年、まちづくりを進めていく上で、地域の中で、自分たちで意思決定を行い、自分たちで実行できるシステムを作っていくことの重要性が認識されてきている。行政中心の上意下達に基づく「統治(カバメント)」から「共治(ガバナンス)」を目指した多様な主体の重層的な連携、協働と共創によるまちづくりへの展開では、まちづくりの主体やマネジメントの仕組みが転換していく。ここでは、より対話と交流を基盤にしたまちづくりの展開のあり方が問われている。そんな中で、名古屋市の地域委員会制度による地域予算を決めていく取り組みは、対話や熟議に基づくまちづくりの展開やガバナンスの観点から注目される。地域委員会は、地域課題を解決するために、投票で選ばれた委員を中心に公開の場で話し合い、市の予算(税金)の一部の使途(配分)を決める「新しい住民自治の仕組み」として創設された。本研究では、地域委員会制度の実施プロセスの実態を踏まえ、地域委員会という場が、対話や熟議に基づくまちづくりを展開していく上で、どのような意義や課題があるのかについて考察する。
著者
嚴 先鏞 山村 拓巳 鈴木 勉
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.1442-1447, 2018-10-25 (Released:2018-10-25)
参考文献数
8
被引用文献数
1

近年,コンパクトシティ・プラス・ネットワーク型の都市構造における多様な都市サービス施設の集積が議論されているが,既存施設の分布の考慮が不十分であること,郊外での新規開発も進んでいることの問題が指摘されている.本研究では,国土交通省が誘導施設として挙げている機能を対象とし,商業施設の集積度に基づいた公共施設の空間的な関係についての近年の変化を明らかにすることを目的とする.第一に,施設数が少ない病院,図書館,行政サービス施設といった公共施設が,商業集積度の高い場所に立地する傾向がある.第二に,総合立地合致度がもともと大きい市町村では総合立地合致度が減少した市町村の割合が大きい一方で,総合立地合致度がもともと小さい市町村では,施設の数が少ないものの,増加した市町村が多く,公共施設の立地が商業集積地に立地する方向へ変化している傾向が見られる.第三に,施設種類別に立地合致度の変化を見ると,行政サービス施設,幼・保育所,図書館の場合は商業集積地に立地する傾向が強く,駅前の再開発などにより,図書館や市役所が商業集積度の非常に高い地点に移転したケースも見られるなど総合立地合致度の増加に寄与している.
著者
阿部 正太朗 藤井 聡
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.37-45, 2015-04-25 (Released:2015-04-25)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

自転車の放置駐輪は、社会的ジレンマ構造を内包し大きな社会問題となっている。京都市では放置駐輪に対して、駐輪場増設や撤去取締りなどに力を入れている。また、放置駐輪への警告看板を市内のいたるところに設置しているが、その内容は放置自転車の撤去に関する記載に留まり、看板自体も老朽化、陳腐化している。本研究では、心理学などの知見を援用しつつ、放置駐輪の抑制を目的としたポスターを設計した。そして、設計したポスターを、実際に放置駐輪多発地点に設置し、その効果の検証を試みた。その結果、自転車放置者が自転車の放置をためらう意識の活性化等が確認され、ポスター設置による放置駐輪抑制効果が示された。
著者
川井 千敬 阿部 大輔
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.1253-1258, 2018-10-25 (Released:2018-10-25)
参考文献数
14
被引用文献数
1 3

近年訪日外国人観光客の急激な増加を背景に宿泊ニーズが高まっている。それに伴い京都市では簡易宿所が急増している。本研究では京都市東山区を対象に簡易宿所の立地動向を明らかにし、その立地が地域に及ぼす影響を考察することを目的とする。立地の特徴は(1)これまで商業地域に立地してきた簡易宿所が近年住居地域に拡がりつつあること、(2)細街路に立地が展開されつつあること、(3)簡易宿所の増加が地価上昇の一因になっている可能性があること、などが挙げられる。また、簡易宿所の立地が及ぼす地域への影響については、(1)地域住民は路地空間への宿泊施設の立地に抵抗感を持っていること、(2)住民にとって必要な古くからある小商いなどが宿泊施設に転換されていること、および、住宅利用の減退の可能性があること、(3)簡易宿所の立地によって住民退去が惹起されていること、などがあげられる。
著者
有竹 久留美 真野 洋介 佐藤 滋
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.571-576, 2002-10-25 (Released:2017-11-07)
参考文献数
8

本研究は、東京都区部の不良住宅地区において、改良事業による住環境整備がどのよ うな目的で進められ、どのようなルールにより計画決定がなされたのか、また、どのような住まい方がなされてきたのかを明らかにすることを目的とする。本研究は以下のような方法により進めた。1)改良事業施行地区の従前環境の傾向を分類する。2)東京都で改良事業が行われた時期(1950_-_1985)における都市計画・住環境整備に関する法律・制度要綱や不良住宅地区の特性の変遷等から、どのような目的で事業を活用していたかを分析する。3)2章で浮かび上がった事業の目的に対して、実際に各地区の従前環境や不良住宅除却・改良住宅建設の経過、居住者の居住・合意の経過など、どのように事業が進められたのかを分析し、また、配置計画が決定された理由を考察する。4)改良住宅の建設後、長い年月を経て、どのような影響を住民に与えたか、また与えつつあるのかを明らかにする。
著者
山貫 崇之 澤木 昌典 鳴海 邦碩
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.1069-1074, 2000-10-25 (Released:2018-02-01)
参考文献数
6

Securing the public space on both quality and quantity is expected, but it is difficult to be prepared by the public sector because of the burden of maintenance management and the efficiency of size on the center of a city. The purpose of this study is making clear the role that is fulfilled to urban space. Therefore, we researched the constitution of the public space and the situation of stay and action of the people there. As a result, we found the actual condition of the public space opened by private enterprises and we clarified that the rule for using the public space and the balance between the management and the accessibility are needed.