著者
堀 龍一 小林 隆史 高原 勇 大澤 義明
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.1335-1340, 2017-10-25 (Released:2017-10-25)
参考文献数
8

本研究の第一の目的はクロフトンの微分方程式を適用して,扇形領域内に一様かつ独立して分布する二点間の直線距離の平均と分散を導出することにある.既存研究では円盤内や円周間でランダムに分布する二点間の平均距離の解析表示が求められているが,これを拡張した.加えて,二つの扇形間直線距離の平均値と標準偏差も解析的に導出した.第二の目的は,災害への備えが必要な我が国において,平時では循環バス,被災時では電源支援の役割を果たす燃料電池バスの移動施設としての効率性について論じることにある.理論的に導いた扇形平均距離の結果を用いて,固定場所からの派遣距離との比較などを通して,被災時における移動施設による電源供給の効率性を求めた.
著者
森 傑
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.45.3, pp.187-192, 2010-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
4

本研究は、北海道の過疎地域の郵便局を対象とし、郵便業務以外での地域貢献や地域交流といったボランティアサービスが民営化前後においてどのように変化しているのか、そのような取り組みへの郵政民営化の影響を郵便局側がどのように認識しているのかについて把握し、地域住民の利用実態と郵便局への期待と評価についても詳細に分析することで、郵便局が地域におけるコミュニケーションの接点としてどれほど人々の日常生活に浸透しているのかについて考察し、過疎地域のソーシャル・キャピタルの核としての郵便局の今後のあり方を探求するための基礎的知見を得ることを目的とした。その結果、郵便局員と地域住民が郵便サービスを授受するだけの関係にとどまらず日常の生活においても密接に交流を持っていること、郵便局が地域の公共資産として保持されることが期待されていること、郵便局のあり方は、他の公共施設と公共サービスとの関係の中で郵便局の徒歩圏域の立地特性が重要な意味を持っていること、が明らかとなった。
著者
中道 久美子 中村 文彦
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.867-872, 2014

南米コロンビアの中規模都市であるメデジン市では、所得格差とスラム街形成、自家用車やオートバイの増加といった都市交通問題を抱えていたが、約20年間で都市再生と都市交通システムの戦略的整備に取り組み、革新的な成長を遂げた。本論文では、メデジン市の現代都市交通システムの動向について、現地ヒアリング調査に基づいてとりまとめ、今後の都市交通戦略のあり方について示唆を得ることを目的とする。具体的には、高架鉄道、ロープウェイ、BRT、LRT、自転車シェアリング、エスカレータ等の現代的な都市交通システムに関して、現地自治体へのヒアリングや利用者へのインタビューを通して、動向をまとめるとともに、南米のその他の都市との体系的比較も行った。それらの結果から、機動力のある実働的な自治体組織、低費用かつ論理的に矛盾のない導入順序、市民が誇りを持つよう重視していることなどの特徴が見られ、途上国の交通戦略やわが国の地方都市の交通問題解決に際しての知見を得た。
著者
劉 暢 赤崎 弘平
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集
巻号頁・発行日
vol.40, pp.793-798, 2005

本研究は北京緑化隔離帯の計画及びその実現可能性に着目した。具体的には、計画策定の流れ、計画内容及び緑化隔離帯として指定された地域の実態を把握した。そして形状、計画内容、実現手法についてロンドン、東京のグリーンベルトとの比較により、北京緑化隔離帯の問題点及びその実現に向けて、ロンドンと東京の事例から参考すべき点を探り出す。本研究から得られた結論は以下の通りである。1、ロンドングリーンベルトと北京第二緑化隔離帯は「都市構造」のひとつであることに対して、ロンドンのグリーン・ガードル、東京の環状緑地、北京の第一緑化隔離帯は形状、位置から見れば「都市基盤施設」として位置づけることができ、道路、公園などと同じレベルの都市施設であり、レクリエーション機能が重要でる 2、北京では、「第一緑化隔離帯」は都市構造としてのグリーンベルトと認識されたため、レクリエーション機能が重視されず、林地の建設と農地・農村の保全が行われた。 3、しかし実際に建設された林地は景観・レクリエーション機能が果たせずに孤立し、農地・農村の保全は後追い的な関連法は効果がなく、市街地化及びスラム化が進行した。
著者
増山 篤
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.43.2, pp.41-49, 2008-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
8

都市計画で用いられるデータのうち、ポイントデータは少なからぬ割合を占める。また、ポイントの空間分布パターンを判別する代表的な分析方法としては、最近隣距離法と方格法がある。この論文は、最近隣距離法および方格法による判別結果が、一般的にどの程度まで一致し、相互に従属な関係にあるのか明らかにすることを目的とする。まず、第一に、二つの分析方法による判別結果が完全に一致するための条件を示す。第二に、モンテカルロシミュレーションによって、この条件が満たされることがあるかどうかを検討する。第三に、二つの分析方法による判別結果は、いくらかは相互に従属な関係にあるが、しばしば異なる判別結果を与えることを示す。第四に、二つの分析方法による判別結果が相互に従属である程度を計量化する指標を考え、この指標は非常に低いものであることを示す。最後に、この論文をまとめ、今後の課題を述べる。
著者
垣内 恵美子 奥山 忠裕 寺田 鮎美
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.44.3, pp.403-408, 2009-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
8

社会的便益を過小評価されがちな美術館活動について、その受益者及び社会的便益をある程度客観的に推計することにより、その社会的便益にふさわしい適切な支援のあり方を検討することを目的として、岡山県倉敷市にある大原美術館を事例として取り上げ、CVM(仮想評価法)を用いた市民調査を実施した。結果として、大原美術館が、近隣地域(倉敷市及び岡山市)の市民に与える総便益は年間約6億円と推計され、将来世代のためといった遺贈価値、他の人が利用しているからといった代位価値、誇りに思うといった威信価値、都市の魅力を高めるなどの非利用価値が大きいことがわかった。また、WTP(支払意志額)に影響する変数は、大学院レベルの学歴及び所得、大原美術館への総訪問回数となった。また半数を超える市民が支払意志を有することから地方自治体による一定程度の支援は正当性を有すると考えられるが、同時に、相対的に高いWTPを有する一部の市民が存在することから、別途これらの人々の支援を得るスキームを考えることも必要であろう。
著者
井上 芳恵 中山 徹
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.739-744, 2002-10-25 (Released:2017-11-07)
参考文献数
2

本研究は、大型店撤退の特徴を分析すること、及び大型店撤退への行政の対応策を把握することを目的とする。本研究より得られた結果は以下の通りである。1.半数以上の自治体で大型店の撤退が見られ、半数以上の事例では撤退により消費者の買物行動や周辺の小売業に影響を及ぼしている。大型店撤退後の跡地の利用状況は約3割はまだ未定である。2.大型店撤退に対する行政の対応策は今のところ情報収集が中心であり、法的な対応策はほとんど取られていない。
著者
小暮 哲理 松本 邦彦 澤木 昌典
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
日本都市計画学会関西支部研究発表会講演概要集 (ISSN:1348592X)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.109-112, 2017 (Released:2017-07-30)
参考文献数
5

本研究は、市街地再開発事業によって建設されたビル(再開発ビル)の空き床解消に向けた施策である公共施設の導入の改善を目的としている。市街地再開発事業が完了した地区において、竣工後に公共施設が導入された再開発ビルを対象とした。自治体や管理会社へのヒアリング調査結果から、公共施設導入によって施設利用者の満足度の向上やビル来館者の増加などの効果が得られたことが分かった。一方で、公共施設が導入されたことによって他の空き床に新しいテナントが入居するなどの波及的な効果が得られた事例は少なく、それらの事例では自治体・管理会社・ビル内民間店舗等の協力があることが分かった。
著者
五島 寧
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集
巻号頁・発行日
vol.33, pp.265-270, 1998

This study clarified about Shrine City Plan and HUYO Shinto Shrine in Huyo (PUYO; at present) under Japanese colonized era. Present PUYO city had been formed by Shrine City Plan. In The Plan, established urban district and historic site had not been considered, and entity of HUYO Shinto Shrine was the most important matter. The purposes of city planning in Korea of those days were "control of expanding suburbs" or "creation of industry base". The Plan was remodeling of established urban district. In Korean peninsula under Japanese rule, city planning was also enforced to express the rule order concretely.
著者
本間 裕大
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.763-768, 2009-10-25
参考文献数
17
被引用文献数
1

複数の施設を連続的に訪問する周回行動は、日常生活で頻繁に観察される。しかしながら、周回行動は施設を訪問する際の重要なスキームであるにも関わらず、それを施設の立地計画へと明示的に考慮した研究はあまり見受けられない。本研究では、複数の施設を訪問する周回行動を前提とした、集客施設のための最適立地問題を提案する。具体的には、利用者がランダム効用理論に基づく周回行動を行う前提の下、新規施設の集客数最大化問題を提案する。その上で、利用者の行動特性の変化が、最適立地点に如何なる影響を及ぼすか考察する。また、人々が周回行動を行う際は、異なるサービス種別の施設を訪問する場合も多い。この点に鑑み、複数のサービス種別を考慮した場合の、集客数最大化問題も提案する。本研究で得られる主たる知見は以下の通りである:(a)利用者が2ヶ所の施設を訪問する場合、新規施設は既存施設に隣接するよう立地するのが、多くの場合最適となる;(b)3ヶ所の施設を訪問する場合、新規施設の最適立地点は既存施設のWeber点付近となる;(c)複数のサービス種別を考慮し新規施設を立地する場合、施設規模に多寡によって適切な戦略は異なる。
著者
加嶋 章博
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.219-224, 2013-10-25 (Released:2013-10-25)
参考文献数
14

スペイン植民都市の空間構成には強い共通性が指摘されるが、スペイン植民地法であるインディアス法には、都市の具体的な計画尺度に関する法規範は意外に数少ない。しかし「都市計画」に言及した1573年の「フェリーペ2世の勅令」のように、都市核となる広場の計画に関して具体的な尺度を示した計画規範も見られる。本稿は、都市計画という用語が用いられることがなかったスペイン植民初期(16世紀)において、土地区画に関する植民地の規範に着目し、土地の区画に対する考え方がどのように規範化され、どのような尺度で都市計画が捉えられて行ったのかを明らかにしようとするものである。結果として、スペイン国家は都市の全体像を誘導することはなかったが、「整然とした(orden)」都市空間の秩序ある計画を早期から強く主張したことや土地区画の単位の統一化といった規範の整備がなされたことが読み取れた。また、140~150バラ程度の街区の区画が都市計画の具体的な尺度であった傾向が窺えた。こうしたことが、本国とは異なるスケールによるグリッド・パターンという植民都市の共通性を創出する要因となったことが示唆された。
著者
渡部 大輔 鳥海 重喜 田口 東
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.1341-1348, 2017-10-25 (Released:2017-10-25)
参考文献数
15

本研究では,東京オリンピック・メインスタジアムへの観戦客の入場に際し,新宿御苑を活用した動線計画の提案を行い,時間拡大ネットワークに基づいた徒歩流動モデルにより計画の妥当性について評価した.まず,既存研究や先行事例から動線計画と入場管理の調査を行った.そして,徒歩流動モデルとして,新宿駅の各路線のホームから御苑を経由し,メイン会場までの平面ネットワークを設定し,所要時間と待機時間をコストとして表現した時間拡大ネットワークを構築した上で,容量制約付き最小費用流問題により観戦客の配分を行うモデルを構築した.そして,本モデルにより,駅構内や御苑内に滞留する人数を把握することで,セキュリティチェックのゲート数やゲート通過時間等の影響を分析し,御苑内のセキュリティチェックに必要な設備や面積の検討を行った.その結果,今回想定した観戦客の移動需要(約25,000人)と条件設定に対して,円滑な入場を行うために必要なゲートの数と面積を見積もることができた.
著者
明石 達生
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.525-530, 2013-10-25 (Released:2013-10-25)
参考文献数
8

本稿は、通勤鉄道の混雑緩和という現象を題材に、東京大都市圏の1990年代から2010年に至る都市構造の大局的な変化を明らかにしたものである。通勤鉄道の最混雑区間の混雑率は、近年大部分の路線で200%を十分に下回っている。東京大都市圏の従業者の分布は、この20年間において、0-20km圏で約80万人減少し、20-40km圏で約100万人増加するという量で、都心部から郊外部へシフトした。この結果、周辺地域から特別区部への流入通勤人口が約30万人減少したが、通勤混雑の緩和にはそれ以上に鉄道輸送力の増強が寄与している。一方、東京都心部では、再開発により膨大な面積の事務所床供給が行われたが、事務所で働く従業者の人数は逆に減少した。従来、事務所床の増大は通勤交通の負荷を増大させると解釈されてきたが、この事実から、近年の事務所床の大量供給は、通勤ラッシュの悪化にはつながらず、大局的には従業者1人当たり床面積の大幅な拡大を意味している。
著者
金森 亮 森川 高行 倉内 慎也
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.45.3, pp.853-858, 2010-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
22

LRTは自動車依存からの脱却、環境負荷低減、中心市街地活性化、都市景観向上などの導入効果が期待されるが、客観的計測が困難な要素も多いことから、合意形成が難航することが多い。本研究では、統合型交通需要予測モデルを適用することで、LRT導入による交通状況変化に加えて、中心市街地活性化への貢献を定量的に把握する。名古屋市を対象とした複数のLRT計画を評価したところ、中心市街地内での自動車利用減少と自転車・徒歩による移動増加、来訪者の滞在時間や立ち寄り箇所数の増加が確認でき、LRT導入による中心市街地活性化の観点からも定量的指標を基に議論できることを示した。
著者
ダリオ パオルッチ マッテオ
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.529-534, 2008-10-15
参考文献数
29
被引用文献数
1 1

この論文は文化的景観保護の起源と、その時代ごとの文化的景観の価値の捉え方の違いについて研究したものである。時代を通じ、文化的景観の価値観は変化してきた。文化的景観保護の分析方法は、法律システムに基づいている。この論文では19世紀から現在に至るまでの文化景観保護のアプローチの変化を指摘している。19世紀の終わりから20世紀の中頃までの初期段階においては、中央政府による文化的景観保護を重視していた。20世紀後半からは、州政府による文化的景観保護を新規に設け、文化的景観保護は州政府の景観計画に関連づけられた。現在は美しい景観保護の拡大と社会へ認識させる運動の促進を、州政府と県が行ない、これによって中央政府による文化的景観保護の重要性は減少していきました。最後に、19世紀から文化的景観の価値は常に変化しつつ、景観価値を保護する主要機関も変化し、これによって文化的景観保護を実施するための地方の独自性も必要になったことを指摘している。
著者
村山 健二 石川 幹子
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.45.3, pp.403-408, 2010-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
40
被引用文献数
2

本論文は、海苔養殖で栄えた大森の地先海面利用を歴史的に分析することを通じ、地先海面の地域的な共同利用がどのように成立していたのかを「空間」・「人(組織)」・「法」の観点から明らかにする。その方法として、大森の地先海面の歴史を概観した後、さらに詳細に、漁家分布、漁場の位置、河岸の分布と使われ方、地先海面を共同利用するための組織、の分析を行った。結論として、大森の海苔養殖における地先海面利用では、利権の私的な独占に対し、共同性と持続性を目的とした利用システムの調整が、1.堀・河岸などのインターフェース空間の創出、2.漁業組合における公平性を旨とする分配の仕組みの導入、3.有限な資源を管理する法の運用等により、持続的に行われてきたことを明らかにした。
著者
宮脇 勝
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.421-426, 2009-10-25
参考文献数
5
被引用文献数
2

本論は、イタリアで2004年に公布され、2006年と2008年に改正された文化財と景観の新しい法律、ウルバーニ法典について、その景観の定義、権限、景観計画、景観許認可(景観アセスメント)の観点から論じている。ウルバーニ法典は、2000年のヨーロッパ・ランドスケープ国際条約における景観政策と2001年のイタリアの憲法改正に基づいて、新たに誕生した。このため、従来からのガラッソ法の景観計画からウルバーニ法典の景観計画へと移行が始まっている。本論の結論において、ウルバーニ法典がもたらす景観への取り組みの発展は、1)景観の定義による価値付け、2)景観財の特定、3)国と州政府の協力の下、自然景観、歴史的景観、そして現代景観の総合化した新しい景観計画の策定、4)景観マネジメントを実施するための、景観許認可制度(景観アセスメント)の仕組みが準備されたこと、特に、2008年の改正ウルバーニ法典による中央政府に景観の許認可の権限を強化した点を明らかにしている。
著者
栢木 まどか 伊藤 裕久
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
no.37, pp.517-522, 2002-10-15
被引用文献数
1 1

本研究では耐火建築助成を目的として東京市と民間の共同運営の形で実現した復興建築助成株式会社(以下助成会社)について、公的な建築助成機関の先駆的事例としての本会社の事業の具体像を解明することを目的とする。また会社設立の背景として、震災以前からの都市計画関連の法制度や、都市の住宅供給問題に対する公的な建築会社設立案から、実際の助成会社にまつわる提案までの経緯を明らかにしたい。更に、 2においては、復興期の建築の特徴的な事例として、助成会社が積極的に支援した共同建築について、特に代表例とされる九段下ビル(旧今川小路共同住宅)を取り上げて分析を行う。
著者
川崎 興太 大村 謙二郎
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.43.3, pp.271-276, 2008-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
23

本研究は、長期間未整備の都市計画道路をめぐる都市計画訴訟、具体的には都市計画制限に基づく建築不許可処分の取消訴訟及び都市計画制限に対する損失補償訴訟の判例について考察することを目的とするものである。都市計画の存立基盤は、原理的には、長期的安定性・継続性と可変性・柔軟性との緊張関係の上にありながらも、実際には建築自由の原則を尊重する観念の反対論理として、ひとたび都市計画決定を行って財産権に制限を課したならば、その後の都市計画の運用は慎重に行うべきだとの思考に固執するあまりに時間の観念が稀薄になり、いかに社会経済情勢や環境諸条件等が変化しようとも、既決のものは所与不変の事実として自明視され、適切に見直しが行われなかった場合が少なくなかったように思われる。これは、本質的には都市計画の効力が持続することについての実体的かつ手続的な合理性の問題だと考えられる。本研究では、こうした観点から、今後の都市計画道路の整備及び見直しを進める上での検討課題として、都市計画変更義務の的確な遂行と事業期間明示型都市計画制度の導入、都市計画基礎調査の内容の充実、都市計画提案制度の活用要件の拡充を提起している。
著者
川崎 興太
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.50-61, 2012-04-25 (Released:2012-04-25)
参考文献数
11
被引用文献数
1

本研究は、平成12年に創設された市町村指定の準都市計画区域と平成18年の法改正後における都道府県指定の準都市計画区域の実績を分析し、都道府県の準都市計画区域制度等に関する認識を明らかにした上で、九州北部3県による構造改革特区の提案とこれに対する国土交通省の回答をもとに準都市計画区域に関する法制度上の問題点について考察することを通じて、準都市計画区域の指定実績と法制度上の問題点に関する知見を得ることを目的とするものである。本研究を通じて、(1) 市町村指定の準都市計画区域は、4区域(4市町村)の実績にとどまったが、都道府県指定の準都市計画区域は大規模集客施設の立地制限を主たる目的とするものを中心として44区域(9道県)となっていること、(2) 都道府県は、少なからず「土地利用規制が課されるばかりで、都市計画事業が行われないことなどから、住民の理解を得ることが困難であること」や「用途や規模の違いにかかわらず接道義務規定等の集団規定が一律的に適用され、既存不適格建築物などが発生すること」などを準都市計画区域制度のデメリットとして認識していること、(3) 準都市計画区域に関する法制度上の問題点は、(1)都市計画区域外における原初的な都市的土地利用規制の不在、(2)市街地外において緩くなる都市的土地利用規制の論理構成、(3)都道府県の全域を対象とした都市計画に関する基本方針の欠如にあることが明らかになった。