著者
喜田 宏 YAMNIKOVA Sv 河岡 義裕 高田 礼人 岡崎 克則 SVETRANA Yam デメネフ V. ヤムニコバ S. ルボフ D.K. 伊藤 壽啓
出版者
北海道大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

平成7〜9年夏、カムチャッカ半島南端付近、ハバロフスク郊外のアムール河流域ならびにサハ自治共和国内のレナ河流域において水禽の糞便および湖沼水3,000検体を採取した。8年にはレナ河流域北緯63度30分のコベイスキー地区で採取した約900検体の水禽糞便からインフルエンザウイルスH4N6亜型19株、H4N9亜型1株、H11N1亜型1株、H11N6亜型2株、H11N9亜型8株を分離した。9年にはコベイスキー地区で採取した水禽糞便120検体およびヤク-ツク(北緯62度)で採取した鴨の糞便72検体からは各々H4N6亜型1株およびH3N8亜型5株が分離された。一方、レナ河流域北緯65度00分〜64度36分の四十諸鳥地域で採取した水禽糞便約1,400検体と湖沼水20検体からはウイルスが分離されなかった。カムチャッカ半島ならびにアムール河流域で採取した水禽糞便からインフルエンザウイルスは分離されなかった。以上の成績は、鴨の営巣湖沼がレナ河流域北緯63度付近に存在することを示唆する。平成8年と9年の10月に北海道宗谷地方において採取した480検体の水禽糞便材料からインフルエンザウイルスH1N1亜型、H5N3亜型、H5N4亜型、H6N1亜型、H6N7亜型、H8N1亜型、H8N3亜型、H9N2亜型ならびにH11N9亜型各1株を分離した。平成8年度および9年度にレナ河流域および北海道の水禽糞便から分離したインフルエンザウイルスのNP遺伝子の系統進化解析を実施した。その結果、調べた分離株すべてが新型インフルエンザウイルスの発生地である中国南部を含むアジア大陸に分布するウイルスの系統に属することが判明した。以上の成績は、新型インフルエンザウイルスの抗原亜型を予測するために、シベリアの水禽営巣地におけるインフルエンザウイルスの分布をさらに解明する必要があることを示している。
著者
八久保 晶弘 海原 拓哉 伊藤 陽一
出版者
北海道大学
雑誌
低温科学. 物理篇. 資料集 (ISSN:03853683)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.1-8, 1998-03
被引用文献数
2

1996-97年冬期の北海道大学低温科学研究所の裏庭でなされた積雪断面観測の結果を示した。毎月5,15,25日に積雪断面を用いた観測で, 1963-64年冬期以来続けられてる。観測項目は成層構造・雪質・密度・硬度・雪温・含水率・全水量・ラム硬度である。今冬の最大積雪深は2月22日に記録された83cmであり, 平年並みだった。その後は順調に融雪が進行し, 4月3日に消雪した。
著者
佐藤 晋介 立花 義裕 遠藤 辰雄
出版者
北海道大学
雑誌
低温科学. 物理篇 (ISSN:04393538)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.109-121, 1993-03

石狩川河口付近に設置した1台のドップラーレーダー観測から,大雪が降ったときの陸風の時間変化とエコーの形態の関係を調べた。観測された陸風の強さと厚さには明かな日変化が認められ,陸風は北海道内陸部の放射冷却によって生成される冷気流であることが確認された。この陸風が弱いまたは存在しない期間は,LモードまたはTモードの筋状エコーが見られ,陸風が発達すると帯状エコーが形成された。帯状エコーは陸風が強い時の方が発達し,陸風が発達すると帯状エコーが形成された。帯状エコーは陸風が強い時の方が発達し,陸風の厚さは最大1kmに達した。発達した帯状雲の成因は上空の強い寒気の侵入であると考えられ,それによって対流不安定な成層が形成されるのと同時に,陸風も強化される。そして,対流雲の発達過程には,不安定成層の存在と陸風と季節風の間に形成される下層収束が重要な役割を担っていると考えられる。
著者
曽野 裕夫
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的は、一般的な契約法理として、契約プロセス(契約の締結交渉から履行、さらに履行後の関係にかかわる一連の過程)における「交渉力濫用」を規制する民事法上の法理の可能性をさぐることにある。具体的には、3つの視点から検討を進めた。1 交渉力濫用規制の意味の明確化--民事規制と行政規制の同質性と異質性独占禁止法上の「優越的地位の濫用」規制は、行政による交渉力濫用規制である。この問題が、民事規制としてはどのように扱われるかを検討するための基礎作業として、コモンローにおける《既存義務の準則pre-existing duty rule》の沿革について検討を行い、民事規制の独自性についての試論をまとめた。2 交渉力濫用規制の理念的基盤となる契約法パラダイムの検討交渉力濫用の民事規制とは、当事者の私的秩序形成(private ordering)に国家法がいかに対峙すべきかという問題でもある。その観点から、private ordering論についての基礎的・比較法的考察としてUCC第2編にみられる契約法パラダイムの検討を行った。3 交渉力濫用法理の比較法的・法技術的検討(1)著作権ライセンス契約における著作権の譲渡、または、ライセンサー倒産時に生じうる、新たな著作権者による交渉力濫用に対応するための法制度のあり方を検討した。(2)売買契約において物的瑕疵のある商品が引渡された場合の、買主の救済過程において生じうる交渉力濫用(機会主義的行動)の規制について、CISG、UNIDROIT国際商事契約原則と日本法との比較法的考察を行った。(3)いわゆるADR法の制定に関連して、ADR係属中の時効完成を阻止するための法制度のありかたについて検討を行った。この成果は研究発表という形では公にできなかったが、パブリックコメントとして司法制度改革推進本部に提出した。
著者
田口 正樹
出版者
北海道大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

今年度は、前年度に収集した「ドイツ・スイス中世書庫カタログ」と「オーストリア書庫カタログ」の分析を継続するとともに、これらの史料集の刊行以後に公にされたデータやこれらがカバーしていない地域についても情報を収集し、あわせて考察を試みた。調査から浮かび上がった中世後期の学識法蔵書の姿は多様であり、一般的な言明は容易でないが、全体として見ると1450年ごろに変化が生じたように思われる。それ以前は、書庫の所在、蔵書の保有者、蔵書の内容などすべてにおいて教会的性格が顕著であり、法学文献の中心は教会法で、かなりの数見られるローマ法文献もそれと結びつく限りで現れる。蔵書目録の中には、金印勅書や助言学派の助言文献を教会法文献として分類する例もある。一方、1450年以後になると、いくつかの都市で都市参事会の書庫が確立しはじめるとともに、俗人の蔵書も知られるようになり、ローマ法文献の数も以前より増えてくる。またこの時期には、活版印刷術の発展ともおそらく関係して、都市や教会が新たに法学文献の入手を積極的に行う例がいくつか見られる。こうした動きは16世紀にも継続されていき、それまで学識法と最も縁遠かった下級貴族のもとでも、学識法文献が見いだされるに至るのである。以上の整理は、上記史料集がカバーする南・中ドイツだけでなく北ドイツでもおおよそ妥当するように思われる。一方、ドイツ以外の地域としてベルギーの状況と比較すると、ベルギーの方が、ローマ法文献がより早くから豊富に所在するように見えるが、この点はなお詳しい分析を要する。また、法学文献の利用状況を示す史料を余り多く見いだせなかったため、文献の所在とは別にその利用を詳しく解明することは課題として残った。

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出版者
北海道大学
雑誌
北大百年史
巻号頁・発行日
vol.通説, pp.1004-1070, 1982-07-25
著者
前野 紀一 原田 仁平 黒田 登志雄 鈴木 啓三 東 晃 菅 宏
出版者
北海道大学
雑誌
総合研究(B)
巻号頁・発行日
1989

氷は気候や生命を含む地球上の数多くの現象や過程に関与し、その中で重要不可欠な役割をしている。この様な氷に関して、これまで多数の調査、研究が行われてきたがその多くは個別の分野で発表され、相互の情報交換が乏しかった。本総合研究は、わが国の種々の研究機関で氷に関連した研究を進めている総勢27名の研究者が集まり、氷の構造と物性に関する総合的理解を得る目的で組織された。本年度は各研究分担者間で相互の研究交換を実施するとともに、11月14、15日の2日間北大低温科学研究所で「氷のシンポジウム」の集会を催し、分担者以外の多数の参加者も加えて密な情報交換を行なった。この研究集会の成果は121ペ-ジの報告書としてまとめられた。本年度の総合研究の中では、氷の微視的構造の問題として、プロトン配置の対称性、プロトン配置に関連しての相転移、この相転移の進行を促進するアルカリ添加物の効果およびその誘電的・熱的検証、等が議論された。また雪結晶の成長機構、過冷却水からの氷成長、および氷の内部融解も新らたな研究課題として重要視された。力学特性としては依然として未解決の問題が多い多結晶氷のクリ-プ、雪の破壊機構等が議論された。高圧氷に関してはダイヤモンドアンビルによるその場観察の方法、高圧水のスペクトル解析が取り上げられた。なお、南極やグリンランド氷床深部の氷に関する測定からは、地球環境問題や氷床流動ダイナミックスにおける氷研究の必要性が示された。地球外の氷の問題としては、木星や土星の氷衛星の特徴が明らかにされ、その詳しい解釈には氷の広い圧力、温度領域における物性の解明が必要であると結論された。生命科学に関連しては生体高分子の水和の問題が取り上げられ、特に蛋白質の不凍水の動的性質が調べられた。
著者
大泰司 紀之 増田 隆一 中郡 翔太郎 須藤 健二 太子 夕佳
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的である琉球列島ジュゴン復元対策として得た結論は;(1)沖縄島に常住する3~4頭について、詳しく調査を行ない、その保全対策を充実させる。(2)フィリピンルソン島北部の沿岸と島嶼についてフィリピンと共同調査・共同保全を行い、増加個体が八重山諸島に分散してくるのを待つ。しかしそれらによる個体群回復や分布復元の可能性は乏しいと言わざるをえない。(3)マレーシアなどのジュゴンが数百頭レベルで常住している地域において、捕獲個体による人工繁殖を行う。その成功を待って、西表島に佐渡のトキの場合のようにジュゴン保護センターを設置し、増やした個体を適地を選んで放す。
著者
中尾 欣四郎 MENGA Kiluki NDONTONI Zan 田上 龍一 冨永 裕之 知北 和久 ZANA Ndontoni KWETUENDA Menga Kuluki MENGA kuluki
出版者
北海道大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1991

東アフリカのリフト湖であるキブ湖とタンガニーカ湖はいずれも世界有数の深湖である。両湖の深水層の安定状態の差異は湖史の違いに左右されている。キブ湖は南緯2度,東経29度に位置し,多雨な赤道気候帯に属している。湖の流域は北方のニヤムラギラ,ニーラゴンゴ,ミケーノ,カリシンビ火山群の活動により,エドワード・キブ地溝の地穀構造単位が分断されている。現在,湖は南端からルジジ川によって流出し,約150km下流のタンガニーカ湖に注いでいる。キブ湖の形成は50〜100万年B.P.で,タンガニーカ湖の2,000万年B.P.に比べて,新しい地穀構造運動に寄因している。湖面積は2,376km^2,湖を含む流域面積7,300km^2で,最大水深485m,平均水深240mと落ち込みの激しい湖盆形状はリフト湖の特徴の一つである。然し,キブ湖は最終氷期が終わる約1万年前までは,湖水位は現在より300m低い水準にあったことが,湖底堆積物から明らかである。また,湖底から発生し,堆積物起源のCH_4ガスの^<14>C年代は約1万年前であり,湖の拡大期と一致している。湖は水温構造から見て熱帯湖であり,表水層の深度は60〜90mで,この下面で,22.8℃〜22.9℃まで低下した水温はこれ以深では,湖底までゆるやかに上昇し,450m水深で,26.0℃を示している。なお,表水層下の深水層水温は経年的変動は認められず,極めて安定したメロミクテック傾向を示している。湖の水質はC1^<-1>が30〜68ppmで、SO_4^<-2>は2〜10ppmと低濃度であるが,Alkalinity(CaCO_3)やHardness(K+Na)が深水層で著しく高濃度となる。例えば,Alkalinityは,表層水630ppmから,底層水で3,200ppmと著しく増加する。流入河川では,北方の溶岩帯から流入する河川水の593ppmを除いて,すべて53ppm以下の低濃度であることからみて,湖底より火山活動に伴って供給された塩類である。さらに,同湖底から二酸化炭素(CO_2)とメタン(CH_4)ガスが供給されている。ただ,両ガスともに,深水層の水圧下では不飽和状態にあり,溶解度は30%を越えない。なお,常圧下では2.19リットルの試水から4.05リットルの混合ガスが発泡した。混合ガスの存在比は,CO_2が74%,CH_4が18%を占める。
著者
渡辺 輝夫 藤井 義明 播磨屋 敏生 福田 正己 川村 信人 宇井 忠英
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本研究は1996年2月10日午前8時頃,国道229号線の豊浜トンネル古平側(西側)坑口上部の急崖が崩落し,バスの乗員,乗客と自家用車の運転手20名が圧死した事故に関係する斜面崩落とその災害に関する調査研究である.地質,地形,地球物理,凍結岩盤の物性,気象などに関する研究がまとめられた.すでに1996年9月14日に,豊浜トンネル崩落事故調査委員会が調査報告書を北海道開発局局長に提出しているため,本研究は,その報告内容をふまえ,1996年10月以降に実施した.研究は,復旧工事との関係で今後永久に観察出来なくなる崩落斜面下部の観察を最重点として行なわれた.岩盤表層の凍結深度の変化と気象の関係を岩盤の凍結前から観察することも重点的に行なった.さらに,岩盤崩落の機構に関する考察を深めた.その結果,岩盤下部の表面構造は上部とは違っていることを明らかに出来た.また,崩落面下部では火山レキの破断が特徴的に見られたが,岩石圧裂引張実験から,6MPaで破断することが明らかとなった.これは,岩石上部に少なくとも300mは累重しなければ破断が生じない圧力である.したがって,レキの破断は特殊に応力がかかるか,地質時代にさかのぼる長い時間の出来事であると考えられる.研究はハイアロクラスタイト中の火山岩の全岩化学組成やスメクタイトの鉱物組成も明らかにした.岩石の応力解析の研究は,崖の鉛直面では粘着力の失われたある長さ以上の初期不連続面が不安定に成長すること,水平面では2次連続面が生じ,自由面に達することを明らかにした.凍結一融解の実験は調査地域の気象が岩石の脆弱化を招くことを明らかにした.地質の研究は,地質構造に規制された地下水の浸透面と枝わかれパイプ状の流路と地下水圧が崩落面の形成に関係し,過去の落石も同様の経過で崩落したものと推測された.
著者
山本 徹
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

脳血行動態が信号強度に反映する測定手段であるファンクショナルMRI(f MRI)と近赤外分光測定(NIRS)を同時に行うことで、脳神経活動に伴う脳血行動態の解釈をより確実にすることを目的とた。まず、(1)微細な脳血行動態測定のための高空間分解能f MRIにおけるアーチファクトの低減を目指した。次いで(2)f MRIとNIRSの同時測定を行い、2つの異なる情報から脳血行動態の解釈を行った。(1) f MRI画像における熱的ノイズ強度を基に画像ノイズを評価する指標を確立した。この指標により、アーチファクトの主な要因として考えられる体動・拍動・呼吸などの生理的揺動の影響を定量的に評価した。その結果、撮像後の画像処理で行われる動きの補正は画像空間分解能が粗いと不十分であり、十分な補正を行うためには1mm×1mm程度の空間分解能が必要であることが判明した。さらに、呼吸による影響は大部分が呼吸に連動した頭部の動きであることがわかり、不随意的な体動と共に動きの補正処理によりそれらの影響が低減することが確認された。(2) MRI装置に複数のNIRS用プローブを装荷し同時測定を行い、手指対立運動による脳活性化を測定した。f MRIで描出されるBOLD効果を反映した領域はNIRSで測定されるデオキシヘモグロビン(deoxyHb)変化と対応している傾向が認められた。NIRS測定ではオキシヘモグロビンとdeoxyHbの変化はover compensation的変化を示す部位が顕著であったが、夫々の変化が現れる部位は多少ずれる傾向があり、動脈と静脈の分布の違いを反映している。さらに、脳神経活動に伴う脳血行動態のさらなる精密測定を行うためには、NIRSの3次元的把握(画像化)によりf MRIでの描出領域との対応解釈を進めていくことが求められる。
著者
神谷 忠孝
出版者
北海道大学
雑誌
北大百二十五年史
巻号頁・発行日
vol.論文・資料編, pp.241-264, 2003-02-21
出版者
北海道大学
雑誌
北大百年史
巻号頁・発行日
vol.通説, pp.339-403, 1982-07-25

第一節 改組とその進展; 第二節 教育・研究の体制と環境; 第三節 運営体制の模索