著者
周東 智 嶋脇 健
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

cADPR(1)Ca2+動員を担うセカンドメッセンジャーであるcADPR(1)は非常に不安定であるので、申請者が先に開発したcADPRの安定等価体である炭素環アナログcADPcR(cADPR,2)をプロトタイプとして、ADPR標的タンパク質同定のためのバイオロジカルツールの創出を目指した。バイオロジカルツールを創出する上での鍵化合物として4"α-アジドcADPcR(3)を設計し、その合成を達成した。さらに、3が望みの生物学的機能を有することを確認した。
著者
石川 博將 石川 博将 (1992) WENG George KREMPL Erhar STEIGMANN Da ELLYIN Ferna 佐々木 克彦 但野 茂 村上 澄男 野口 徹 STEIGMANN David F.
出版者
北海道大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1991

1 国際共同研究実施案の作成:研究分担者EIIyin教授のKrempl教授が平成3年8月に国際材料学会のため来日した機会をとらえ,第1回研究会を北海道大学で開催した。そして,本国際学術研究計画の研究内容や研究分担,研究交流日程等の綿密な打合せを行い,具体的実施案を作成した。2 複合材料の力学的特性に関するデータ収集と総括的な検討:平成3年12月に,カナダ・アルバータ大学で本国際学術研究の第2回研究会を開催した。従来からなされてきた複合材料の力学的データを集計・整理した。さらに,各共同研究者がこれまで行ってきた均質材料の弾塑性挙動,繰返し塑性挙動,破壊挙動,粘性挙動,疲労ダメージの累積,疲労挙動等の研究成果を報告し,それらの複合材料への適用性を討論した。そして,今後の共同研究方針を明確にした。3 複合材料の力学に関する先端研究状況の調査:平成3年12月にアメリカ合衆国・アトランタで開催されたアメリカ合衆国機械学会の冬季通常総会に,本研究組織の研究者全員が出席した。本会議に於て複合材料の力学に関する先端研究が多数報告された。各共同研究者は,研究発表すると共に,複合材料の非弾性力学に関し,多数の著名な研究者と討論及び情報交換を行った。そして,当該分野における今野の課題や動向を調査した。4 複合材料の巨視的力学特性の検討:本研究組織の各研究者がこれまで行ってきた均質材料の弾塑性挙動,繰返し塑性挙動,破壊挙動,粘性挙動,疲労ダメージの累積,疲労挙動等の手法を複合材料に適用したさまざまな実験や解析を行った。複合材料の巨視的力学的挙動という観点から,材料力学の体系を総合的に再検討した。5 微視的構造の力学的評価:複合材料特有のマトリックス材と補強材の相互作用を明らかにするために,微視的構造への弾塑性力学,粘塑性力学,破壊力学,損傷力学の適用を試みた。まず,複合材料の力学的挙動を微視的観点から,弾塑性・粘塑性力学により捕らえるために,マトリックス材と補強材の相互作用を,モデル実験等によりその特徴をより詳細に把握した。そして,弾塑性・粘塑性力学により,マトリックス材と補強材の相互作用を説明できる可能性を見いだした。さらに,複合材料の破壊・損傷のメカニズムを微視的に探るために,破壊力学・損傷力学の適用を試みた。マトリックス材と補強材の相互作用を破壊力学・損傷力学で十分解明できる可能性を見いだした。6 微視的構造の疲労評価:微視的構造に対する疲労特性を拡大モデル物験によって行った。微視的構造に対する疲労特性は,巨視的構造の疲労特性に類似することが明確となった。しかし,巨視的構造の疲労特性に比べ微視的構造の疲労特性にはばらつきが見られ,微視的構造の疲労特性に対する各構成材料の依存性を明確にし,疲労ダメージの累積則を適用するためには,実験データの統計的な処理が必要であると推察された。7 微視的力学特性と巨視的力学特性の統一化:上記の結果を踏まえて,巨視的力学的特性がどのような微視的構造に起因するか,また,微視的構造変化が巨視的力学特性にどのような影響を与えるかを検討した。微視的構造変化を弾塑性力学,粘塑性力学,破壊力学,損傷力学的観点からの解明により,微視的力学的特性と巨視的力学特性の統一化の可能性を見いだした。8 第3回研究会の実施及び共同研究成果の取りまとめ:各共同研究者が行った研究成果を持ち寄り,情報交換および研究討論のために,平成4年9月に北海道大学に於て第3回研究会を実施した。そして,共同研究の成果を取りまとめ,複合材料の破壊と強度評価に関する将来の展望を行った。また,同時期に関催された日本機械学会材料力学部門講演会インターナショナルセッションで本共同研究の成果を各研究者により発表し,多数の研究者と本成果について討論した。
著者
下澤 楯夫 西野 浩史 馬場 欣也 水波 誠 青沼 仁志
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

機械受容は、動物と外界との相互作用の「基本要素」であり、機械刺激の受容機構を抜きにして動物の進化・適応は語れない。従来、機械受容は「膜の張力によるイオンチャネルの開閉」といった「マクロで単純すぎる」図式でとらえられて来た。また、機械感覚の超高感度性の例として、ヒトやクサカゲロウの聴覚閾値での鼓膜の変位量が0.1オングストローム、つまり水素原子の直径の1/10に過ぎないことも、数多く示されてきた。しかし、変位で機械感度を議論するのは明らかに誤っている。感覚細胞は外界のエネルギーを情報エントロピーに変換する観測器であり、その性能はエネルギー感度で表現すべきである。エネルギーの授受無しの観測は「Maxwellの魔物」で代表される統計熱力学上の矛盾に行き着くから、いかなる感覚細胞も応答に際し刺激からエネルギーを受け取っている。コオロギの気流感覚細胞は、単一分子の常温における熱搖動ブラウン運動)エネルギーkBT(300°Kで4×10^<-21>[Joule])と同程度の刺激に反応してしまう。機械エネルギーが感覚細胞の反応に変換される仕組み、特にその初期過程は全く解明されていない。この未知の細胞機構を解明するため、ブラウン運動に近いレベルの微弱な機械刺激を気流感覚毛に与えたときの感覚細胞の膜電流応答の計測に、真正面から取り組んだ。長さ約1000μmのコオロギ気流感覚毛を根元から100μmで切断し、ピエゾ素子に取付けた電極を被せてナノメートル領域で動かし、気流感覚細胞の膜電流応答を計測した。長さ1000μmの気流感覚毛の先端は、ブラウン運動によって約14nm揺らいでいることは計測済みである。先端を切除した気流感覚毛を10-100nmの範囲で動かしたときの膜電流応答のエネルギーを計測し、刺激入力として与えた機械エネルギーと比べたところ、すでに10^6倍ほどのエネルギー増幅を受けていた。従って、機械受容器の初期過程は細胞膜にあるイオンチャンネルの開閉以前の分子機構にあることが明らかとなった。
著者
押野 武志 畑中 健二 土屋 忍 山崎 義光 野坂 昭雄 森岡 卓司 高橋 秀太郎 野口 哲也
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

日本の1960年代において、文学概念の再編が社会的・思想的・政治的な諸言説と重層的に干渉し合いながら、どのように行われたのかを総合的に究明した。純文学/大衆文学、カルチャー/サブカルチャー、文学/政治、事実/虚構といった1960年代の文学をめぐる新たな境界の生成を1930年代前後の諸言説と対照させながら、60年代の文学が何を構造的に反復していたのかという、戦前と戦後を貫く近代日本の知的言説の歴史的特質も明らかにした。
著者
佐々木 陽一 LAMPRECHT G. SYKES A.G. 馬越 啓介 市村 彰男 永澤 明 SYKES A.Geoffrey SAYSELL Dabi 阿部 正明 今村 平 LAMPRECHT Ge MCFARLANE Wi A.GEOFFREY S
出版者
北海道大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

本研究の目的は,レニウム錯体について,酸化状態の違いと配位子置換反応性の関連および金属間の相互作用と酸化還元反応性の関連を明らかにすることである。レニウムは周期表の中でも最も多くの酸化状態をとる元素であり,これらの反応性を調べるのに適している。本研究は,日本側で研究に適した新レニウム錯体の合成,英国のSykes教授の研究室でそれらの反応性の速度論的研究という大まかな役割分担で行なった。また,2年間に英国よりSaysell博士,南アフリカよりBotha博士がそれぞれ3ケ月間北海道大学を訪問,精力的に研究を行ない理想的な共同研究成果をあげた。Re(V)錯体のキレート環形成過程を,N,N,N,O型の4座キレート配位子およびN,N,O型の3座キレート配位子を用いて調べた。Re中心へのキレート環形成過程を,中間過程の化学種を単離,構造決定することにより明かに出来た。これにより高酸化数に伴うオキソ基の配位が多座配位子のキレート環形成過程に及ぼす効果を視覚的に明かに出来た。これは,置換活性な金属イオンでは不可能な成果であり,レニウム錯体以外にも広く適用できる重要な知見である。レニウム(III)六核錯体の特異な反応性が明かとなった。硫黄架橋レニウム(III)六核骨格,Re_6S_8は最近機能性物質や,生体内鉄硫黄クラスター骨格の基礎的な構造モデルとして,注目されつつあるものであるが,その基礎的な反応性はほとんど調べられていなかった。主にRe-Re間に多重結合をもつ複核錯体を新たに合成し,その構造や酸化還元反応性を明らかにした。本研究では,この化合物を,レニウム金属間結合を持つ典型的な化合物と捉え,配位子置換反応性と酸化還元反応性を調べた。その結果,異常に置換不活性であることと,これまでの見解に反し,酸化還元活性であることとが明かとなった。Re複核錯体ではその酸化数が,(III,IV)および(IV,IV)の二つの状態の錯体の構造解析により,両者のRe-Re距離の比較から,金属間結合に関わる結合軌道の性質を初めて明かにした。
著者
白取 祐司 仲真 紀子 川崎 英明 今井 猛嘉 高倉 新喜 田中 康雄 松村 良之 藤田 政博 森直 久 城下 裕二 内藤 大海
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

刑事裁判において法心理学は、法専門家(実務法曹)と司法に関わる市民とりわけ裁判員の間のコミュニケーションの実証分析、刑事司法に対する実務家、市民の意識分析による制度見直しへのデータ提供など、様々なかたちで貢献しうることを、実験や調査等を通して明らかにしてきた。また、子どもに対する心理学的観点からの面接法の研究を進め研修など実践段階までいたったほか、外国調査により、刑事司法における心理鑑定の制度化の可能性と必要性を示すことができた。
著者
佐竹 暁子 CHAVES L.F. LUISFERNANDO Chaves LUIS FERNANDO Chaves
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

防虫剤を練り込んだ合成樹脂を原料として糸を作りそれで織った蚊帳(insecticide treated net)の利用は、最近注目されマラリア感染を予防する目的で大きな効果を上げている。マラリアを媒介するハマダラカは主に夕方から夜にかけて活動するため、夜人々が蚊帳の中で寝ることができればハマダラカに刺されることもない。アフリカ西部におけるマラリア発症事例数が蚊帳導入後にどのように変化したかを示すデータをもとに、蚊帳利用における人々の意思決定に関するゲーム理論モデル「蚊帳ゲーム」を構築し分析した。蚊帳ゲームでは、各プレイヤーが「蚊帳をマラリア予防に用いる」戦略Tと「蚊帳を経済活動に転用する」戦略Fのいずれかを選択すると考え、戦略Tを選んだプレイヤーは自身のマラリア感染率を下げることができ(個人効果)、戦略Fを選んだプレイヤーは自身の労働生産性を上げることができる(転用効果)と仮定している。また、少なくとも一人のプレイヤーが戦略Tを選んでいるとき、蚊帳に塗布された殺虫剤の影響によりハマダラカの個体群密度が減少し、全プレイヤーのマラリア感染率が低下する(共同体効果)。共同体効果の強さは戦略Tを採るプレイヤーの人数に比例する。各プレイヤーの期待利得は、マラリア感染率と労働生産性から算出され、全プレイヤーめ戦略からなる組に応じて一意に定まるとした。蚊帳ゲームの解析から、自然状態におけるマラリア感染率が比較的低いとき、全プレイヤーが戦略FをとるAll-Fナッシュ均衡が成立し、比較的高いときには、全プレイヤーが戦略TをとるAll-Tナッシュ均衡が成立することが示された。また、自然状態におけるマラリア感染率が中程度のときには、戦略Tを採るプレイヤーと戦略Fを採るプレイヤーが混在するFree-riderナッシュ均衡が成立する。Free-riderナッシュ均衡では、戦略Fをもつプレイヤーが戦略Tをもつプレイヤーから供給される共同体効果に「ただ乗り」する関係Prasitologyに受理された。
著者
日下部 豊寿 佐藤 嘉晃
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究の目標は、加齢による変化を歯の移動を通して歯周組織を観察する事により明らかにすることである。第1段階として、咬合機能している歯としていない歯の歯髄腔内の違いを調べたところ、咬合機能が低下することにより、同じ歯の歯髄内においても部位によって微小血管腔、歯髄細胞の数に生じる変化量が異なり、特に髄角部における組織の活性の低下が生じており、歯冠部歯髄の組織の性状に差がある可能性が示唆された。さらに第2段階として、歯の移動時における歯槽骨の骨吸収について調べたところ、若齢に比べ老齢では骨吸収が少ないことが解り、また高血糖下における若齢と老齢の間では、特に骨吸収に違いは認められないことが解った。
著者
角皆 静男 渡邉 修一
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

大気中のCO_2などの温室効果気体の消長に果たす海面の役割の大きさを決める手法として、1.地球化学的収支、2.大気中濃度の解析、3.大気海洋界面における濃度差の解析、4.海水中濃度の時間的変動、経年変化の解析、5.海底堆積物に残された記録の解析による方法がある。そこで、1については、これまでのデータを再吟味し、主に1960年代に加えられたC-14の推移に注目して解析した。2については、海洋上をわたる大気に注目し、札幌近くの日本海沿岸に観測所を設け、日本海からの空気中のCO_2、O_2、H_2O、のOとHの同位体比の微細変動を解析した。3については、海水中のCO_2の逃散度を他の海洋炭酸系に関わる成分と同時に測定し、海洋表面水の平衡からのずれとそれの解消を支配している因子を明らかにした。また、CO_2そのものの交換速度定数を求め、交換量を求めた。泡の効果により、CO_2の交換速度はO_2の交換速度よりかなり大きかった。また、海水中のCH_4、N_2O、DMSも測定し、これらの逃散量を見積もった。4については、西部北太平洋ばかりでなく、東シナ海、噴火湾などの縁辺海や大陸棚域の炭酸系と時間変化の詳密な観測を行い、その構造を明らかにした。これには、水温、塩分、溶存酸素、栄養塩、全炭酸、pH、アルカリ度ばかりでなく、トレーサーのCFCs、トリチウム、C-14なども含まれる。その結果、太平洋水はもともとCO_2を吸収しやすい海であるが、沿岸域(大陸棚ポンプを提唱)や高緯度域から海洋に大量に送り込まれ、またSiが主導する生態系と太平洋中層水が働いて、大きな吸収量になることが明らかとなった。5については、炭酸塩をあまり含まない西部北太平洋の堆積物について、オパールなどを用いて氷期と間氷期間の差異を明らかにし、海水循環の違いから、炭素循環の違いを考察した。また、CO_2の吸収量に影響する生物ポンプの働きを海底での化学成分の挙動から明らかにした。
著者
角皆 潤 谷本 浩志 神田 譲太 野口 泉 小松 大祐
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、東アジア域では初となる一般水環境試料中に含まれるNO_3^-のΔ^<17>O組成定量を実現し、そのNO_3中に含まれる大気由来のNO_3^(NO_3^-_<atm>)の混合比のトレーサーとしてのΔ^<17>O組成の信頼性を検証するとともに、その有用性を実証することを目的としている。特に、全NO_3^-中に占めるNO_3_<atm> 混合比は、定常状態下では、総NO_3^-供給速度に対する大気からのNO_3^-_<atm>沈着速度の相対比に等しいので、これを活用する。まず北海道の利尻島において、長期に渡って湿性沈着試料を集めてNO_3_<atm>のΔ^<17>O組成の連続観測を成功させ、その年平均値(Δ^<17>O_<atm>)を見積もった。次に同島の森林域から流出する地下水試料中のNO_3について、Δ^<17>O値定量を実現し、Δ^<17>O_<atm> との比較から、大気から沈着した窒素が森林生態系によって浄化される過程を定量的に評価した。さらに摩周湖の湖水中に溶存するNO_3のΔ^<17>O組成の分布を定量し、大気から貧栄養の水環境下に沈着したNO_3^-_<atm>の挙動を定量化した。
著者
中川 書子
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

新しく開発された「硝酸の高感度窒素・三酸素同位体定量法」を使って、日本国内の陸水(降水、地下水、湖水)および周辺海洋域における水環境中の硝酸について、その窒素・三酸素同位体組成を実測し、硝酸の起源および挙動の解析を行った。
著者
佐木 成子 中島 そのみ 岸 玲子
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

妊娠中の喫煙曝露と化学物質に対する遺伝的感受性の個体差が胎児発育に関与することはいくつか報告されてきたが,出生後の神経発達・認知機能への影響についてはまだ十分な検証がされていないことから,妊娠23~35週に前向きコーホート研究に登録した妊婦を対象として,胎児期の喫煙曝露と母親の遺伝的感受性素因による交互作用が小児神経発達に及ぼす影響を検討した。外来異物と結合してチトクロムP450(CYP)などの発現誘導に関与しているアリル炭化水素受容体(AhR)やたばこ煙に含まれる化学物質である多環芳香族炭化水素類(PAHs),ニコチンやニトロソアミン類などの代謝,解毒に関与する酵素の遺伝子多型およびDNA修復に関与する酵素の遺伝子多型について解析したが,喫煙曝露による小児神経発達への遺伝-環境交互作用に有意な関連は認められなかった。
著者
佐藤 敏文 覚知 豊次 堺井 亮介
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、ハイパーブランチポリマーなどの新規な水溶性分岐状高分子を合成し、生成物の構造と粘度物性の相関関係を検討することで、新たな水系超潤滑システムの開発を目的とした。得られた高分子材料の水溶液は直鎖状高分子に比べ非常に低い粘性を示し、水系潤滑剤として有用であった。これらの高分子材料は水溶液中において絡み合いの少ない球状構造をとることで高潤滑性能を示すことを明らかにした。
著者
原 新太郎
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

これまでに、ジェランガムソフトゲル培養法によって東シベリア・タイガ林の林床土壌微生物群集が窒素個定能をもつこと、有機物層や比較的浅い土壌よりもやや深い30cm深度土壌の微生物群集が高い窒素固定能を持つ可能性が高いことを明らかにしていた。本年度は培養後の培地から抽出したDNAを16S rRNA遺伝子および窒素固定酵素の一部をコードするnifH遺伝子をターゲットとした変性剤濃度勾配ゲル電気泳動(DGGE)で解析し、土壌深度ごとの菌相の比較を行った。その結果、30cm土壌の培養微生物群集から特徴的なバンドを検出し、その塩基配列は既に分離した窒素固定細菌Burkholderia xenovoransの配列と高い相同性を示した。東シベリア・タイガ林の有機物層から分離したPseudomonas属細菌のうち数株はジェランガム平板上ではスウォーミングによるコロニー拡大を示すが、寒天平板上では小円上のコロニーを形成するにとどまる。ゲルマトリックスの違いで細菌の挙動が異なる原因物質の一つとして、寒天粉末中に含まれる5-hydroxymethylfuran-2-carboxylic acidおよびfuran-2-carboxylic acidを単離した。スウォーミング抑制活性の力価から、これらの物質が寒天平板培地とジェランガム平板培地で挙動が異なる原因の一部であり、極微量で細菌の挙動に影響を与えることを確認した。また、これらの化合物が、寒天平板培地に含まれる濃度で大腸菌のスウォーミングを抑制し、フィンランドの亜寒帯ツンドラ域土壌から分離された放線菌のコロニー形成に影響することを見出した。スウェーデン北部・山岳地帯のAbisko周辺(68°18'N,19°10'E)では、標高600m付近でカンバ林から亜寒帯ツンドラ域に遷移する。この森林限界付近では地表を覆う植生が2種類あり、ツツジ科植物などの低木が優占する植生はheath、草本植物が優占する植生はmeadowと呼ばれている。森林限界付近のカンバ林内と亜寒帯ツンドラ域それぞれのheathとmeadowで土壌を採取し、ジェランガムソフトゲル培地で培養してアセチレン還元試験に供したところ、いずれもmeadow土壌は高いアセチレン還元を示し、heath土壌はほとんど活性が検出されなかった。このことから、Abisko周辺の森林限界付近では、heathに生育するツツジ科植物が土壌窒素固定を制御している可能性が示唆された。
著者
藤巻 裕蔵
出版者
北海道大学
雑誌
北海道大学農学部邦文紀要 (ISSN:03675726)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.212-217, 1966-02-19
著者
シートン フィリップ
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

この研究は、日本人の戦争記憶/歴史認識における地方史の役割を明らかにした。戦争体験と集団記憶は国のレベルだけではなく、地方のレベルでも思い出され、語られている。本研究は北海道をケーススタディーにし、戦争記憶における出身地域の重要性を調査した。北海道には独自の歴史があり、それは道内メディアによって報道されている。日本人の歴史認識に関しては多くの研究がなされてきたが、本研究では特に英語圏でこれまで研究されてこなかった側面を明らかにした。
著者
白崎 伸隆
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では,精密質量分析を応用し,消毒処理におけるウイルス構造タンパク質の変性をアミノ酸レベルで捉えることにより,水系感染症ウイルスの不活化メカニズムを解明することを試みた.その結果,紫外線照射-過酸化水素処理において生じたヒドロキシルラジカルによるウイルス構造タンパク質の酸化が確認されたと共に,精密質量分析を応用することにより,酸化されたウイルス構造タンパク質由来ペプチドの箇所を特定することに成功した.
著者
西村 裕一
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の目的は、当時東大生であった穂積八束が明治15年の「主権論争」で論陣を張っていたことに着目し、「憲法学者」となってからの彼の議論に「明治15年の日本社会」が与えた影響を分析することにある。この点、穂積八束の憲法学を特徴づけるものと考えられてきた「国体」概念や国体政体二元論の形成過程を検討する中で、これらの議論が従来考えられていた以上に「主権論争」という磁場に強い影響を受けていたことが明らかになった。これにより、日本憲法学の創始者ともいえる穂積の憲法学について、従来の議論が十分な関心を払っていなかったと思われる「明治日本」からの影響の一端を明らかにできたのではないかと考えている。
著者
田口 正樹 小川 浩三 石部 雅亮 山田 欣吾 石川 武 石井 紫郎 村上 淳一
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

この共同研究では、「普遍的秩序」、「個別国家」、「地方」という三つのレベルのまとまりをとりあげて、それらにおける「我々」意識(共属意識)の生成・発展とそこで法が果たした役割を考察しようとした。その際、西洋古代から近代に至る展開を見通す通史的視座を保つこと、異なるレベルの間の相互作用にも注目すること、西洋と日本との間の比較によって両者の特徴を認識すること、などに特に注意が払われた。具体的成果のうちからいくつかを摘記すれば、西洋古代に関しては、古代ローマ国家における帝国法と属州法の関係が検討され、一方で「共通の祖国としてのローマ」観念の高揚と帝国法の地中海世界全体への普及が見られるものの、他方で地方・都市ごとの法の存続が広く想定され、帝国法自体の変質の可能性も含めて、複雑な相互関係が存することが示唆された。西洋中世に関しては、9,10世紀の皇帝権とオットー1世の帝国についてその性格が検討され、ドイツにおける共属意識が普遍的帝国の観念と不可分な形で成長するという現象の歴史的基礎が解明された。また中世ドイツにおける重要な法概念であるゲヴェーレに関して、13世紀前半のザクセンシュピーゲルにおけるその「原像」とその後の変容が確認され、広域に普及した法作品と地方・都市ごとの法との関係が考察された。西洋近世・近代に関しては、帝国国法論の代表的論者ピュッターの中世ドイツ国制史像が詳しく検討されて、皇帝権・教皇権という普遍的存在を不可欠の要素としつつ内部に多くの個別国家を併存させるという帝国国制像が確認され、普遍的秩序と国家・地方が癒合したドイツの国制とそこでの「我々」意識の特徴が明らかになった。最後に、日本に関しては、穂積陳重の比較法学と当時の英独の法学との関係が検討され、明治の代表的法学者が日本法を世界の法体系とその発展の中で、いかに位置づけようとしたかが、解明された。
著者
木村 隆志
出版者
北海道大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は、回折限界集光を実現可能な変形精度を有する硬X線用形状可変ミラーを開発することである。フィゾー型干渉計を用いた印加電圧フィードバックシステムを構築することにより、形状可変ミラーを数nmの精度で非球面形状へ変形させることに成功した。SPring-8において集光性能評価を行い、形状可変ミラーを深さの異なる非球面形状に変形させることによって、回折限界条件下で様々なサイズの集光X線ビームを形成可能であることを確認した。