著者
常田 益代
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

ベネディクト会クリュニー大修道院とその娘修道院ムティエ・サン・ジャンはともにフランス革命の後破壊され、現存しない。わずかに残る扉口彫刻断片と柱頭はフランスと米国の諸美術館に分蔵されている。本研究の目的は次ぎの2点にある。1)第3次クリュニー西正面扉口彫刻とムティエの柱頭の彫刻様式を明らかにする。2)クリュニーとムティエの工房の関係を様式・考古学的観察にもとづき考察する。こうした研究目的を遂行するために、クリュニーについては、コナントによって発掘された彫刻断片(Pit II, Pit X)をオシエ美術館と附属保管所で調査した。またムティエについてはフォッグ美術館、ルーブル美術館、ディジョン考古学博物館、ブッシー・ル・グランなどで調査した。その結果、次の点が明らかになった。1.ムティエの彫刻様式は、説話柱頭においても葉飾り柱頭においても、第三次クリュニーの西正面扉口付近から出土した彫刻断片ともっとも近い様式を示す。2.ムティエの柱頭には複数の彫刻師の「手」が認められ、いづれの彫刻師もクリュニー西扉口の彫刻に関わっていた。両方の作業現場に関わった彫刻師が複数いることは、同じ工房の作であることを示唆している。3.ムティエの柱頭はその形状や彫刻技法、さらに史料からして、1130年前後と推察される。ムティエの制作年代の確立は第三次クリュニー西扉口彫刻の年代を示唆し、従来考えられていた1115年前後とする説の再考を要する。
著者
長田 義仁 グン 剣萍 安田 和則 八木 駿郎 山本 眞史 川端 和重
出版者
北海道大学
雑誌
学術創成研究費
巻号頁・発行日
2002

(I)ソフト&ウエット人工筋肉となるゲル基本素材の創成基本素材とする高分子ゲルにダブルネットワーク-(DN)構造を導入することで、圧縮強度、引張り強度が数メガパスカル(MPa)に達する超高強度ゲルの合成法を発見した。さらに、DNゲルの第一網目における数10nm〜数μmスケールのVoid構造を系統的に変化させることで、ゲルをBrittleからDuctile的な振る舞いまで系統的に制御することに成功した。DuctileのDNゲルがNecking現象を示し、20倍までも伸びることを発見した。この優れたゲル材料を人工関節軟骨へ応用するために、低摩擦性、高強度性を併せ持ったゲルの創製を図り、その結果、破壊強度数十メガパスカル、破壊エネルギーが1000J/cm^2以上、表面摩擦係数10^<-5>〜10^<-4>という従来にないゲルの創成に成功した。(II)ゲル基本素材の生体代替運動システムへの応用展開(I)で創製したゲルは固体素材では実現不可能な柔軟性と運動性、そして耐衝撃性を併せ持つ。このゲルを人工軟骨、人工半月板に応用するために、その耐摩耗性、生体内耐久性、および生体親和性を評価した。数種類のDNゲルは100万回、走行距離延べ50kmのPinonFlat型摩耗試験で、摩耗率10^<-8>〜10^<-7>mm^3/N・mに達する高い耐摩耗性を示し、これは超高密度ポリエチレン(摩耗率10^<-7>mm^3/N・m)を凌駕する結果であり、ゲルの特性としては驚異的なものである。DNゲルのBlock皮下埋め込み試験、ペレット筋内埋め込み試験を行い、数種ゲルの中、PAMPS/PDMAAmゲルが人工軟骨の素材に最も有望であることを明らかにした。さらに、PAMPS/PDMAAmゲル人工軟骨を試作し、関節内埋植試験を行った結果、関節内異物特性は低く、使用した人工軟骨研究用標準動物モデルでは、明らかな有害性は検出されなかった。さらに、PAMPS/PDMAAゲル人工軟骨を関節表面から数mmのギャップを作るように埋植すると、この表面である生体内局所(ln situ)に正常関節(硝子)軟骨を自然再生することが出来るという、これまでの世界の常識を覆す発見をした。
著者
[ぐん] 剣萍 角五 彰 黒川 孝幸 古川 英光 田中 良巳 安田 和則
出版者
北海道大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2006

生体は硬い骨格を除き、殆どが50-85wt%が水分で構成されている軟組織からできている。豊かな福祉社会の実現には生体軟組織と同等の機能を持ったソフト&ウェットマテリアルの創製が不可欠である。本研究は、含水高分子ゲルの構造を制御することによって、生体軟組織に匹敵する高靭性と高機能を有する様々なソフト&ウェットマテリアルの創製に成功した。これらの材料は、軟骨・腱、血管などの生体軟組織の代替材料として応用できる。
著者
土橋 宜典
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本年度は、ポイントモデルを用いた仮想物体の高精度輝度計算、空・雲の高速表示の研究を行った。さらに、画像だけでなく、音まで加えることで仮想空間のリアリティの向上を図った。それぞれについて、概要を述べる。・ポイントモデルによる仮想物体の表示本研究では、ポイントサンプルジオメトリのための相互反射計算法を開発した。サンプル点の集合で表現された3次元物体からメッシュを発生させることなく相互反射計算を行う。メッシュ構築の手間を軽減し、記憶容量の削減が実現できる。・空の高速表示空の色を忠実に表現するために,天空光の輝度計算を多重散乱まで考慮して行う必要があるが,この多重散乱の計算は非常に複雑であり,膨大な計算コストがかかってしまう.本研究では,光の多重散乱の計算を効率よく行う手法を開発した。大気を仮想的な層(サンプリングシェル)に分割し,それらの層上での微粒子による散乱光の輝度分布を散乱マップと呼ぶテクスチャとして扱うことで,グラフィクスハードウェアを効果的に使用した手法を開発した.・雲の高速表示流体シミュレーションなどで得られる雲密度のボリュームデータを可視化するためには、光源方向の光の減衰とおよび視点方向の光の減衰を考えなければならない.従来法では、ボリュームデータを光源方向と視点方向にそれぞれ垂直にスライスを取ることによって減衰の計算を行っていた.本稿ではシャドウ・ビュースライスという光源方向と視点方向間のスライスを取ることにより、二つの計算のプロセスを統合し、従来法よりも計算コストを削減した手法を提案する.・炎の音のシミュレーション本研究では、炎によって生じる音のシミュレーション手法を提案する。炎の音は流体中の渦の非定常運動が主原因であるため、流体解析結果から渦度分布の時間変化から計算する。
著者
猿渡 亜由未 (2008-2009) 猿渡 亜由来 (2007)
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

平成20年度までの研究により,水塊ジェットや実験室スケールの砕波ジェットが着水したときに放出される二次ジェットが水面下の三次元渦構造との相互作用を経由してフィンガー形状及び飛沫へと分裂するメカニズムについて明らかにしたと共に,砕波ジェットのボイド率(体積率)分布を,ジェットの着水条件から予測する為のモデルを構築した.このジェットのボイド率はジェット-壁体衝突時の圧力応答を決定する重要なファクターとなる.フィンガーのサイズや飛沫の生成量等を決定する砕波ジェットの着水条件は,沿岸域における波浪条件により規定され,生成した飛沫の陸域への飛散量や沿岸域における波浪条件は海上の気象条件に依存する.そこで本年度我々は,メソスケール数値気象モデルによる沿岸域気象場の再現を行うと共に,その時の砕波飛沫の生成,輸送,拡散過程の数値計算法の開発を行った.数値気象モデルとして用いたのは近年よく用いられているWeather Research and Forecasting(WRF)を用いた.本モデルにより大量の砕波飛沫が生成された2009年台風18号通過時の気象場の追算を行い,計算結果の沿岸域海上気象場(気圧,風速,風向等)を観測結果と比較し,その再現性を確認した.今後,気象モデルを波浪推算モデルとリンクさせれば,荒天時の波浪場の再現を行う事もできる.また,飛沫の飛散過程は,飛沫濃度の移流拡散方程式を解く事により求めた.沿岸域の飛沫濃度分布を現地観測した既往研究の結果と数値計算結果とを比較し,濃度分布の再現性を確認した.
著者
吉田 重光 石崎 明 土門 卓文 足利 雄一 井上 貴一朗 黒嶋 伸一郎 沢 禎彦
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

今回の研究では、口腔内および口腔以外のリンパ管を介した免疫機構を明らかにするため、免疫で重要な役割を果たす複数のタンパク質の研究を行いました。その結果、口腔内では部位によりリンパ管の果たす役割が異なる可能性を、また口腔以外では、いくつかのタンパク質が相互連携していることを明らかにしました。以上から、全身のリンパ管は、物質輸送だけではなく免疫機構にも関与することが分かりました。
著者
日吉 大輔
出版者
北海道大学
雑誌
哲学 (ISSN:02872560)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.右1-右19, 2005-07-17

In Posterior Analytics B1-10, Aristotle constructs theory of inquiry, which has two crucial theses: (a) "everything which is inquired is the inquiry into a middle term" and (b) "what it is and why it is are the same." These are concerned with definition and demonstration. Then I will show how the relation between (a) and (b) is, while he seems to put them as mutually dependent conceptions in the relevant context. I distinguish B1-10 into three phases: phase 1; practice of inquiry (B1-2), phase 2; traditional framework (B3-7), phase 3; his theory of inquiry (B8-10).These three phases, I think, reflect on the relation between (a) and (b), and provide us backgrounds of the construction of the theory. Especially, phase 2 maintains the balance of definition and demonstration in the beginning of B8 on the basis of a traditional concept; essence.
著者
飯田 順一郎 藤森 修 井上 農夫男 佐藤 嘉晃 金子 知生
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

1、機械的刺激に対する微小血管の即時的な応答性、特に血管内皮細胞と白血球との相互作用における加齢変化の解明。若齢、老齢のゴールデンハムスター頬袋の微小血管(毛細血管後細静脈)を生態顕微鏡下で上皮の上から加工した微小ガラス棒で刺激し観察した。すなわち持続的および間歇的(10分毎)な圧迫刺激を加え、生態顕微鏡下で白血球の血管外遊走の出現様相を経時的に評価すると同時に、組織定量学的に白血球の種類を同定した。その結果、若齢において持続的刺激において刺激部位直後の部位に多形核白血球、単球の血管内皮への接触・接着が有意に増加した。2、機械的刺激に対する微小血管の長期的な形態変化の加齢による変化の解明。マウス背部皮下の微小血管床を用いたdorsal skin chamber法を用い、若齢、老齢のハムスターの背部皮下組織に、持続的および間歇的(12時間毎)な圧迫刺激を加え、顕微鏡下で刺激開始から7日間、血管透過性亢進反応、毛細血管の太さの変化、および血管新生の様相を定量的に計測した。若齢においては持続的刺激において持続的に血管透過性が亢進した。間歇的刺激の5から7日後に血管新生が同一動物で観察され新たな血流が生じた。さらに毛細血管の直径は徐々に増加し7日目に2倍以上の太さに変化していることが観察された。3、口腔周囲組織の機能に関する加齢変化の基礎データの収集咬みしめることが全身の筋機能(握力)に与える影響をとりあげ基礎的なデータ収集を行った。その結果成人においては最大握力を発揮する場合に咬みしめる者(A)と歯を接触させないもの(B)の2群に分類できること、またAの方が筋力が高い傾向にあること、さらにAは咬みしめた時、Bは歯を接触させない時の方が高い筋力を発生することが明らかとなった。
著者
伊東 孝之
出版者
北海道大学
雑誌
スラヴ研究 (ISSN:05626579)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.135-190, 1978-03-25
著者
ディビッド ウルフ 秋田 茂 泉川 泰博 岩下 明裕 遠藤 乾 松本 はる香 横手 慎二 エルドリッジ ロバート ロバート エルドリッジ 金 成浩
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、歴史家と政治学者の連携のもと、冷戦期の北東アジア、特に日本側の役割と視点にたった多くの資料を収集・統合した。この4年の研究期間で研究メンバーは、ワークショップ、カンファレンスや様々な国際イベントにおいて、新たな資料と結論に基づく80回もの発表(半数が英語発表)を行い、約70もの論文・図書を執筆・刊行した。
著者
棟方 充 本間 行彦
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

卵白アルブミン(Ovalbumin,OA)皮下注および吸入感作ラットにOAを連続吸入させることにより、気道のリモデリングが形成されるか否かを検討し、以下の成績を得た.1.抗原濃度を0.1,1.0,5.0%とした1ヵ月間の慢性抗原暴露では、1.0,5.0%の群においてのみ、気道上皮及び気道壁の肥厚が形成された.2.今回のモデルで形成される気道のリモデリングは気道上皮および気道壁の肥厚に限られており、気道平滑筋の肥厚はいずれの群でも観察されなかった.3.気道上皮の肥厚は主に杯細胞の増生により生じていることが明かになった.4.In vivoでのメサコリン気道過敏症は気道上皮での杯細胞数と有意な相関を示し、気道過敏性形成における気道上皮リモデリングの重要性が明かになった.5.浸等圧ポンプによるβ2-刺激薬・副腎皮質ステロイド薬の投与では、β2-刺激薬連続投与により気道過敏性の更なる亢進が認められたが、気道形態にはいずれも有意な変化を及ぼさなかった.以上の結果から、気道のリモデリングは吸入抗原濃度が高いほど形成されやすいこと、気道上皮のリモデリングは平滑筋のリモデリングに先行する可能性があること、杯細胞増生を主体とする気道上皮のリモデリングは気道過敏性形成に重要であること、などが明かになった.
著者
谷岡 勇市郎 SUBESH Ghimire GHIMIRE Subesh
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

防災科学技術研究所(独)に蓄積された多くの地震のメカニズム解を用いて、東北及び北海道の下に太平洋プレートが沈み込んでいるプレート境界に沿って応力の地域的な分布を調査した。応力テンソルインバージョンにより各小プレート境界面の最大主応力軸を推定。その最大主応力軸とプレート境界の法線方向のなす角を推定する。このなす角は地震の破壊または断層の摩擦破壊に対して重要な指標となる。なす角ψが45°になる時に断層面でのせん断応力が最大になり、それはせん断応力が高いレベルでの断層破壊を示す。なす角ψが45°以上になることはせん断応力が低いレベルでの断層破壊を示す。つまり、プレート境界でのなす角ψの分布がプレート境界の固着域分布の把握に重要な情報を与えることが期待される。なす角ψが30°から45°となるプレート境界は比較的強いせん断強度を持つ場所と考えることができる。なす角ψの値と過去の巨大地震の分布の関係を調べると1958年択捉地震(M8.3)、1963年千島沖地震(M8.2)、1973年根室半島沖地震(M7.8)、2004年釧路沖地震(M7.6)、1968年十勝沖地震(M8.1)、2003年十勝沖地震(M8.0)の震源はなす角ψが30°から45°の場所に位置していることが分かる。つまりなす角ψの分布と巨大地震の震源分布から固着域と強い断層面が対応していることが明らかになった。2011年東北地方太平洋沖地震の震源に対しては上記の関係は成り立たないが、この地震で大きくすべった地域は震源からさらに海溝よりにあるとされており、その地域のプレート境界の応力は解析できていないため、関連性を明らかにすることは出来なかった。これらの結果は千島海溝沿い沈み込み帯での将来の巨大地震の固着域がプレート境界でのなす角ψの分布の変化をモニタリングすることで知ることができる可能性を示す非常に重要な研究成果である。
著者
藏田 伸雄 石原 孝二 新田 孝彦 杉山 滋郎 調 麻佐志 黒田 光太郎 柏葉 武秀
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究ではまず、科学技術に関するリスク-便益分析の方法について批判的に検討し、リスク論に社会的公平性を組み込む可能性について検討した。第二に、ナノテクノロジー、遺伝子組換え農作物等の科学技術倫理の諸問題をリスク評価とリスクコミュニケーションの観点から分析した。第三に、リスク論に関して理論的な研究を行った。さらにリスク論と民主主義的意思決定について検討した。第四に、技術者倫理教育の中にリスク評価の方法を導入することを試みた。まず費用便益分析に基づくリスク論は、懸念を伴う科学技術を正当化するための手段として用いられることがあることを、内分泌攪乱物質等を例として確認した。また研究分担者の黒田はナノテクノロジーの社会的意味に関する海外の資料の調査を行い、アスベスト被害との類似性等について検討した。また藏田は遺伝子組換え農作物に関わる倫理問題について検討し、科学外の要因が遺伝子組換え農作物に関する議論の中で重要な役割を果たすことを確認した。そしてリスク論に関する理論的研究として、まず予防原則の哲学的・倫理学的・社会的・政治的意味について検討し、その多面性を明らかにした。他に企業におけるリスク管理(内部統制)に関する調査も行った。リスク論に関する哲学的研究としては、確率論とベイズ主義の哲学的含意に関する研究と、リスク論の科学哲学的含意の検討、リスク下における合理的な意思決定に関する研究を行った。またリスク評価と民主主義的な意思決定に際して、参加型テクノロジーアセスメントや、双方向型のコミュニケーションによって、リスクに関する民主主義的決定モデルが可能となることを確認した。また技術者倫理教育に関して、研究分担者の間で情報交換を行い、上記の成果を技術者倫理教育に導入することを試みた。
著者
本間 研一 棚橋 祐典 西出 真也 仲村 朋子 山田 淑子 安田 円 首藤 美和子 山仲 勇二郎 橋本 聡子 徳丸 信子
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

生物時計の中枢である視交叉上核には多数の振動ニューロンが存在し、それらが相互同調して性質の異なる複数の領域振動体を形成している。領域振動体は視交叉上核の部位により役割が異なり、それらの相互作用によって活動期の長さが決まり、行動リズムの季節変動を作っている。一方、周期的制限給餌や覚醒剤の慢性投与で生じる生物時計の障害は、中枢時計と末梢時計との解離により生じ、行動リズムを駆動する末梢時計は中脳にあることが示唆された。
著者
尼岡 邦夫 矢部 衛
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

南半球のダルマガレイ科魚類の種の多様性とその分散の経路を明らかにする目的で、サンゴ海、オーストラリアやニュージーランド周辺海域から集められた約3,000個体の本科魚類を雌雄差、老幼差などを考慮して、コンピューターで分析し、分類学的研究を行い、次のような結果を得た。本海域には本科魚類はイトヒキガンゾウビラメTaeniopsetta属1種、ミツメダルマガレイGrammatobothus属1種、ホシダルマガレイBothus属2種、コウベダルマガレイGrossorhombus属1種、ヤリガレイLaeops属1種、ヒナダルマガレイJaponolaeops属1種、ヤツメダルマガレイTosarhombus属3種、ダルマガレイEngyprosopon属10種、イイジマダルマガレイPsettina属3種、ナガダルマガレイArnoglossus属10種、スミレガレイParabothus属3種およびセイテンビラメAsterorhombus属3種の12属39種分布している。そのうち、14種が未記載種であり、次の10種、Engyprosopon bellonaensis, E.septempes,E.rostratum,E.longipterum,E.raoulensis,Tosarhombus necaledonicus,T.longimanus,T.brevis,Parabothus filipesおよびArnoglossus micrommatusは新種として記載し公表された。他の未記載種は投稿中または投稿準備中である。Arnoglossus bleekeriおよびPsettina variegatusは原記載以後初めて記録され、T.ocellata,Bothus myriaster, C.kanekonis,L.kitaharae,J.dentatus,E.grandisquamus,E.xystrias,E.maldivensis,E.hureaui,Parabothus kiensis,P.coactatus,Psettina iijimae, P.variegatus,Arnoglossus macrolophusおよびA.tenuisの15種は南半球から初記録である。本研究で南半球の本科魚類相を初めて明らかにしたが、属レベルでは北半球のものと100%、種レベルでは約50%が共通し、本科魚類に関しては両半球間に明瞭な障壁は認められない。本科魚類は底生魚であるが、浮遊性仔魚によって分散することと関係している。
著者
高波 鐵夫 本谷 義信
出版者
北海道大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1998

札幌市の北部一帯で1834年石狩地震(M6.5)による液状化跡が発見されていることから、この地震で震度5以上の地域があったことは確実である.しかし札幌市が大都市になってから直下に地震が発生していない.しかし、札幌市で震源があるか、あると推定される地震で、札幌で有感になった地震は1900年から現在まで34回報告され、札幌市直下にも定常的な地震活動があると言える.しかし1950年以降は地震が少なくなるとともに地震の規模が小さくなる傾向がみられる.このように過去に大地震が発生した可能性のある札幌市で直下型地震を想定した都市災害のシミュレーションを行うことは十分に意義があり、今回は過去に発生した地震の震源分布や震源メカニズムから、地震の断層面および破壊過程を幾つか仮定し、かっての石狩地震相当が起きた場合の札幌市内各地での理論地震波形を計算した.また理論加速度波形から理論震度を推定した.その結果、地震メカニズムによって各地の震度分布に違いがみられた.さらに地盤特性に依存した震度分布の地域性が見い出されているので地盤特性を考慮した詳細な地震被害想定図を作成しておくことが大変重要であることが明らかになった.場所によっては理論震度以上に大きな揺れを生じる地域も想定され、この種の研究の重要性があらためて確認された.さらに現実に近い想定地震を求めるべく研究をすすめている最中である.
著者
中村 睦男 大石 眞 辻村 みよ子 高橋 和之 山元 一 岡田 信弘
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本共同研究は、欧州統合の下におかれたフランス現代憲法の総合的研究を、日本や他のヨーロッパ諸国との比較憲法的視野で行うものである。各参加者は、人・モノ・資本・情報のボーダーレス化の進展によって、従来の国民国家の枠組み、そして、人権保障と民主的な統治機構を目指して構築されてきた近現代の憲法学にもたらされた変容を考察した。具体的には、(1)フェデラシオンと主権という枠組みにおけるEUの内部構造、(2)欧州統合と憲法改正、(3)欧州統合下の意思形成と「国民主権」、(4)憲法54条手続きによる事例を中心としての、EC諸条約と憲法院、(5)EC法の優位と憲法の対応についてのフランス型とドイツ型の比較、(6)フランスの安全保障とEU、(7)フランス自治体憲法学における国際的影響、(8)D.Schnapperの所説におけるNationとCitoyennete、(9)「公的自由」から「基本権」へという、フランス憲法学における人権論の変容、(10)ジョスパン政権下の外国人法制、(11)フランスにおける男女平等、とりわけパリテを正当化する理論、(12)欧州統合の下でのフランスの言語政策、とりわけ『地域・少数言語に関するヨーロッパ憲章』批准問題、(13)多元的ライシテとヨーロッパ人権法の関係、(14)フランスにおけるコミュニケーションの自由の憲法上の位置、(15)フランス憲法における社会権の保障、(16)EUとフランスの社会保障、(17)EUによる規制(公衆衛生政策・営利広告規制)と人権、について考察し、グローバリゼーションの下でのあるべき憲法ないし立憲主義の構造について一定の見通しを得た。本研究成果報告書に掲載している研究報告の多くは、まだ中間報告の段階にある。研究論文としては、研究会での討論の結果を踏まえ、平成13年9月に完成する。その後、平成14年度科学研究費補助金(研究成果公開促進費)を申請し、1冊の著書として出版する(出版社の内諾を得ている)。
著者
皆川 純 SWINGLEY Wesley SWINGLEY Wesley Douglas
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

外国人特別研究員の帰国前倒しに伴い,実質研究機関は4-6月の3ヶ月となったため,主に前年度の成果のまとめが行われた.前年度プラシノ藻Ostreococcus tauriより初めて単離に成功した光化学系I超複合体のタンパク質組成は,光化学系I反応中心サブユニットに加え,緑色植物で光化学系I専用の集光アンテナとして機能するLHCIが確認された.さらに,高等植物で光化学系II専用の集光アンテナとして知られるモノマーLHCIIであるCP26/CP29も確認された.これらCP26/CP29は緑藻ではステート遷移機構により光条件により,光化学系I,光化学系IIの間を行き来することがわかっていたが,さらに祖先型のプラシノ藻では光化学系I専用のアンテナとして機能していることが明らかとなった.モノマーLHCIIはもともと光化学系I固有の集光アンテナであったが,植物の進化に伴い陸上での生育を支えるため,まずは光化学系IとIIの間を行き交い,やがて高等植物では,光化学系II固有に集光アンテナとなったと考えられる.また,プラシノ藻の光化学系の特徴として,陸上植物では普遍的に見られる赤外域での蛍光(レッドクロロフィル)が存在しないこともわかった.レッドクロロフィルの役割についてはまだ確立されていないが,植物が陸上で生存していくために励起エネルギーを保持しているものと考えられているが,プラシノ藻は,その必要がない光合成の型式を現在でも保存しているものと考えられる.
著者
菊池 勝弘 早坂 忠裕 梶川 正弘 桜井 兼市 遊馬 芳雄 上田 博 バジルド C.E. ベロツェルコフスキイ A スチュアート R.E. ムーア G.W.K. 佐藤 昇 バジルド C.
出版者
北海道大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

北極圏の水循環・エアロゾル等の物質循環,低温下での雪結晶の形成メカニズムの解明のために,スカンジナビア北極圏のスウェーデン・キルナのスウェーデン国立宇宙物理学研究所において,Xバンド鉛直ドップラーレーダー,レーザー・シ-ロメーター,マイクロ波放射計,全天日射・長波放射計,メソネット気象観測,エアロゾルサンプリング,それに,雪結晶の地上観測を1997年12月14日から1998年1月20日まで行った.観測期間を通して暖冬であったが,さまざまなタイプの降水現象を観測することができた.12月中は快晴時が多く,あまり降雪現象は観測されなかったが,1月に入ると休むことなく降雪が続き,強度は弱いが10分程度の強弱を持っ山岳性の降雪現象や,ノルウェー海を進行する低気圧に伴う背の高い降水エコーを持つ降雪現象を観測することができ,観測時間は600時間を超えた.これらのデータは現在解析中である.一方,マイクロ波放射計による水蒸気量および雲水量の観測から,以下のことが明らかになった.1)水蒸気量の鉛直積分値は,快晴時の0.4cmから降雪時の0.7cm,濃密雲粒付雪結晶や霰の降る時には,1.0cmに達し,幅広い変動を示した.2)雲水量(鉛直積分値)は,雲粒付雪結晶の時は0.01cm以上となり,霰の時には0.04cm程度まで増加した.また,降雪をもたらす擾乱のタイプにより大きく変動することが分かった.雪結晶の観測では偏光顕微鏡により35m/mフィルム95本,レプリカは500枚作成することができた.各種の低温型雪結晶の他,針状結晶から霰まで,ほとんどの結晶形を記録することができた.