著者
藤吉 亮子 岡本 一将
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

レジスト材料の感度増加を目指すため、電子線とレーザーまたはXe光を同時または逐次的に照射する新規プロセスについて研究を行った。電子加速器からの電子線とNd:YAGレーザーを逐次的に照射する「パルスラジオリシス-レーザーフォトリシス法」による光吸収分光実験により、レジスト分子の電子線誘起中間体の光分解反応が起こることを明らかにした。さらに、電子線とXeランプの可視光域の同時照射を行い、レジスト感度が増加することを示し、本プロセスの有効性を明らかにした。
著者
岡田 宏明 池田 透 岸上 伸啓 宮岡 伯人 小谷 凱宣 岡田 淳子 黒田 信一郎
出版者
北海道大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1991

平成3年度から継続して、平成4年度にも2回の研究集会を札幌と網走で開催し、研究会は計4回を数えた。その間に、代表者をふくめて、研究分担者全員が、順次研究発表を行ったが、研究集会以外にも、北海道立北方民族博物館で毎年秋に開かれるシンポジウムにも、半数以上の研究分担者が参加し、研究発表や討論を通じて、情報や意見を交換する機会をもった。平素は、別々の研究機関に促し、それぞれ独立に調査研究に従事している代表者および分担者は、2年間に、かなりな程度までお互いの研究成果を知ることができ、このようにして得た広い視野に立って、最終的な研究報告をまとめる段階に到達した。研究報告書は10篇の論文から構成され、アイヌ文化に関するもの2篇、北西海岸インディアン2篇、イヌイト(エスキモー)1篇、サミ(ラップ)1篇、計7篇は文化人類学に視点をおくものである。その他に、東南アラスカの現地の人類学者による寄稿1篇が加えられている。その他の2篇は、言語学関係のもので、北欧のサミと、北東アジアのヘジェン語を主題としている。研究報告書には、シベリア関係の論文がほとんど掲載されていないが、平成4年5月に刊行された「北の人類学一環極北地域の文化と生態」(岡田、岡田編、アカデミア出版会」に代表者および分担者による8論文のうち、3篇はシベリア原住民に関するものである。平成4年度未に刊行される研究報告書は、上記の「北の人類学」と一対をなすものであり、両者を総合することによって、わが国の環極北文化の研究は確実に一歩前進したと見ることが可能であろう。論文に掲載されなかった資料やコピー等は、北海道大学と北海道立北方民族博物館に収集、保管し、今後の研究に役立てたいと考えている。
著者
宇山 智彦 平野 千果子 秋田 茂 前川 一郎 河西 晃祐 小沼 孝博 水谷 智 長縄 宣博 天野 尚樹 中山 大将
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-10-21

近代帝国の植民地および脱植民地化の歴史を、比較と関係性の視角から研究した。帝国権力と周縁・植民地社会を結ぶ媒介者・協力者の役割、植民地の知識人による近代化の試み、諸帝国の競存体制と植民地同士の関係、帝国・植民地における移民の位置づけ、帝国の暴力と反乱、第一次世界大戦とロシア革命のインパクト、脱植民地化をめぐる国際関係などを研究し、帝国論・植民地論の知見を現在の国際問題の分析にも応用した。全体として、帝国権力が国内外に作り出す格差構造と、植民地の被統治者の主体性の両方に目を配りながら、植民地史の多面性と今日的意義を明らかにした。
著者
福士 幸治
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

新規な遠隔位官能基導入化試薬の創製を進めたが、完成にはいたっていない。その過程で簡便なメソ体のcis-11,12-diamino-9,10-dihydro-9,10-ethanoanthraceneの大量合成法を確立した。このジアミンは、モノイミド化すると残ったアミノ基と縮合環化物を生成するがカルボン酸とはジアミドを与える。今後、ジアミドやアミドエステル誘導体を用い、試薬の開発を進める。
著者
Ishikawa Masao Takatsuka Toru Daibo Takaharu Shirasawa Kunio Aota Masaaki
出版者
北海道大学
雑誌
低温科学. 物理篇. 資料集 (ISSN:03853683)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.13-40, 2002-03

北海道大学流氷観測用レーダー網により北海道オホーツク海岸沖の2001年1月5日から同年4月29日までの毎日午前9時における流氷分布を観測した(第1図)。流氷分布図の作成は、レーダー画像処理装置を利用して以下の手順にしたがって行われた。(1)枝幸、紋別、網走、3局の各レーダー映像を画像処理装置のブラウン管面上で重ね合わせ、3局合成レーダー画像を作る。(2)波浪や雲からくる妨害信号を人手によって除去する。(3)氷縁や氷湖などを線でなぞり流氷域を明確にする。(4)地図画像上に重ね合わせ、流氷域に斜線を施して流氷分布図を完成させる。氷野内には大小無数の氷湖が存在する場合もあるが、作図に当たっては、氷縁と比較的巨大な氷湖に主眼をおいた。レーダー映像写真およびレーダー画像データは、流氷期間中3時間毎に保存されている。詳細な流氷分布の変化を追跡する場合には利用できる。また、1969年から2001年までに観測された流氷レーダーの範囲内の流氷量の変動を第2図に示す。毎日午前9時の流氷分布図から、レーダーの範囲(海域のみ)を100として流氷が占める割合(密接度、%)を流氷期間中積算した量をその年の「流氷量(%d)」と定義した。1989年より流氷量が顕著に減少している傾向が見られる。
著者
原 暉之 長谷川 毅 平井 友義 原 暉之
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1988

この研究の目的はロシア革命から第二次世界大戦にいたるまでのソ連の内政と外交に、軍事的要因がいかにかかわりあい、いかなる影響を与えたかを究明することにあり、具体的には、軍事的要因が、ロシア革命とボリシェヴィキ権力の樹立、内戦期における共産党独裁政権の確立、ネップ期の内政と外交、集団化と工業化によるスタ-リン体制の確立、反党派と軍の粛清、第二次世界大戦の開始にいたる歴史過程の中でいかなる重要性をもって具体的な政策過程に影響を与えたかを、軍事ドクトリンの変遷、軍事組織の変遷、党軍関係の進展という三つの視点から分析しようとするものであった。過去三年間にわたる共同研究は、これらの問題の解明にかなりの実績を挙げたといえる。まず第一に、この最終年度には、前年度に引続き、ソ連軍事関係の組織だった文献収集を継続した。また、「スタ-リン集団化と工業化の軍事的意義」「反党派と軍の粛清」について第一回の研究会を、「第二次世界大戦への準備」について第二回目の研究会を開き、現在、『軍事的要因からみたソ連社会主義の特質』と題する、今までの研究成果をまとめ、さらにこれまでパソコンに入力したソ連軍事関係の資料一覧を含んだ報告を刊行する準備が進められている。三年間にわたる研究の結果、内戦を通じて形成された赤軍は、「赤色司令官」と「軍事コミッサ-ル」という特色の制度を産み出し、それが、トロツキ-・フルンゼ論争を経て、常備軍の形成へと導かれ、主として軍事力の増強を第一優先順序においてなされた工業化を促すとともに、ソ連の社会主義の性格を、本質的には軍国化するに至った過程が明確にされた。即ち、軍事的要因は、ソ連の社会主義の性格になによりも増して決定的な役割を果たしたのであり、この結果をまとめた報告書は、この点で今後のソ連研究に大きな影響を与えることを信じている。
著者
平野 研
出版者
北海道大学
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.99-118, 2006-11-29

国際的支配-従属関係を非資本主義的帝国主義と資本主義的帝国主義とに分類して考察する。この概念を明らかにしながら,現在まで続く資本主義的帝国主義の起源を19世紀末ラテンアメリカにおける国民経済設立に求める。周辺が帝国に対して従属的で,かつ国内的には非資本主義的な経済外的強制力で統治する政治的機関として,従属的国民国家の確立することによって,非資本主義的帝国主義を脱却し,資本主義的帝国主義へと移行していった。そこでは支配-従属関係が隠蔽され,余剰収奪が強化されていく。初期資本主義的帝国主義では,周辺部の資本主義化による成長を押さえ込める程の経済的権力を中心部が有していなかったため,中心部は周辺部を非資本主義的生産関係に押しとどめておこうとした。これを再編非資本主義的低開発とする。グローバル資本主義段階に入ると資本主義的帝国主義は,周辺部における資本主義的生産関係の拡大を,帝国の資本蓄積へと結びつけることができるようになった。このような資本主義的帝国主義の変化は,低開発国の一部を資本主義的低開発として位置づけた。アジア,BRICs諸国などの成長はこのような流れから捉えられるべきである。
著者
津幡 笑
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

不正競争防止法により営業秘密として保護されるためには、(1)秘密管理性、(2)有用性、(3)非公知性の3つの要件を満たさなくてはならない。とりわけ注目すべき要件は「秘密管理性」であり、この点に関する企業の努力は大きな意味を持つ。具体的に、企業に望まれる営業秘密の管理水準はいかなるものであるべきかが問題となる。そこで、これまでの研究において、日本の裁判例を分析したところ、情報に接する者にとって秘密であることが認識可能であったか否かで判断する裁判例群があるほか(相対説)、近時、高度な絶対的な基準をとり、その一部を欠くだけで秘密管理性を否定する一連の裁判例(絶対説)がみられることが明らかになった。相対説、絶対説のいずれが妥当であろうか。この秘密管理性要件の問題については、日本ではまだ積極的な議論が行われていないため、本研究ではこの問題を考えるひとつの参考となる視座を提供しうる素材として、アメリカを中心とした諸外国の裁判例・学説の検討を行った。
著者
岸田 治
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

エゾサンショウウオの幼生はエゾアカガエルのオタマジャクシがいるときに、オタマを丸呑みしやすいよう大顎化する。一方でオタマジャクシはサンショウウオがいるときに丸呑みされないよう頭部を膨らませる。実験室及び野外での操作実験により、両者の対抗的な可塑性が2種の相互作用において拮抗した効果をもたらすことで、オタマジャクシの個体群動態を変えるとともに、互いの変態タイミングや形質選択に作用することで、群集を構成する他種の個体数や物質循環にまで影響することが明らかとなった。
著者
加藤 祐次 清水 孝一
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

散乱媒質中の蛍光体深さと厚さを同時に推定する簡便な手法を新たに開発した。本手法では、多波長複数配置光源群の励起光を用い、蛍光体の深さと厚さを同時推定する。この計測原理確率確立のため,数値解析および生体試料実験等において、蛍光体深さと厚さと蛍光強度比の関係を検証した。その結果、深さと厚さ推定が原理的に可能であり、また生体組織への適用性も確かめられた。最後に、生体模擬ファントムを用いて蛍光体の深さ厚さの同時推定を行った。推定された深さ情報から散乱により劣化した蛍光像を改善した。更に厚さ情報を加えて3次元再構成することで、蛍光体の3次元像の取得が可能であることを示し、提案手法の有用性を明らかにした。
著者
宮崎 悠
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本研究の目的は、政治における公共宗教の役割と、それが国民国家の台頭に与えた影響を明らかにする事にあった。研究の対象は、世紀転換期から戦間期までのポーランド(ポーランド会議王国~第二共和国)とした。その理由は、国民国家の枠組みが流動化する中で宗教が果たした役割の変遷が顕著に表れた時代・地域であったと考えられるからである。19世紀末から1939年までの僅か半世紀で、ポーランドは行政的・地理的分割状態から第一次大戦後の領土変更を経て主権国家として統一された。しかしその領域にはロシア系、ドイツ系、ユダヤ系をはじめ多くのマイノリティ集団が含まれ、宗教的にもカトリック、プロテスタント、東方正教、ユダイズムなどが重層的に存在していた。政治的ナショナリズムを標榜する各集団は、信仰というモチーフや教義をとりこみ、また同時に、宗教の側もナショナリズムと共にある事で生存を図った。現段階での成果として、前年度までに取り組んだテーマ「ポーランドにおけるシオニズムの析出」を深化させ、「世紀転換期ポーランド・シオニズムにおける空間概念」というタイトルの論考にまとめた(『東欧史研究』へ投稿、修正作業中)、また、空間概念の理論的整理を兼ねた書評「板橋拓己著『中欧の模索:ドイツ・ナショナリズムの一系譜』創文社、2010年」が『境界研究』第三号に掲載された。2012年10月には日本国際政治学会のパネル「宗教、国際政治、ナショナリズム」において報告を行い、近現代のポーランド社会においてカトリック教会が果たした役割を俯瞰すると同時に、同国出身のローマ法王ヨハネ・パウロ二世と「宗教間対話」の試みを取り上げ、「普遍教会」の代表たる宗教者が政治的アクターとして果たした役割を再検討した。同年11月には福岡=釜山で行われた国際会議BRIT2012において報告し、A.ハルトグラスの思想分析を元にシオニズムの多義性を論じた。
著者
伊東 学 赤澤 敏之 放生 憲博
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

超音波溶解析出法により市販多孔性バイオセラミックスを部分溶解後、材料表面にリン酸カルシウム微結晶を析出させ、骨形成蛋白質(rhBMP-2)の吸着徐放性を制御し、生体吸収性と骨誘導能に優れたリン酸カルシウム系セラミックスを開発した。バイオセラミックスの表面改質方法として、輸液中の超音波処理技術を確立し、その抗生物質(セファゾリン)吸着徐放性を解明した。組織誘導再生に適当な生体模倣性アパタイト/コラーゲン複合材料を合成し、良好な生体吸収性を立証した。臨床感染巣の新しい定量的評価法の確立には、8例の難治性脊椎感染患者に対して、FDG-PETCTによる感染重症度マッピングの作成を行った。
著者
渡部 重十
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

熱圏電離圏を飛翔するサウンディングロケットにより,熱圏電離圏内に人工的に中性大気雲とプラズマ雲を同時に発生させ,可視化することによって,その運動をモニターし,大気・プラズマ結合過程の本質を世界に先駆けて解明する.地球の大気・プラズマ雲だけでなく,太陽風と金星・火星・彗星の大気・プラズマ,イオトーラス,タイタン大気・プラズマ,恒星風と系外惑星大気・プラズマ等に内在する素過程の理解にも繋がり,本研究が,惑星大気・プラズマ研究に与えるインパクトは極めて高い.NASA/ワロップスのロケット発射場とJAXA/内の浦宇宙空間観測所で実施するロケット実験にリチウムガス放出機器を搭載し人工雲を生成する.地上の3観測点から人工雲の運動を観測する.人工雲の運動から,高度100km~300kmの大気密度・温度・風速を求める.本研究により,リチウムガス放出機器と狭帯域フィルターを用いた高感度カメラを開発し観測研究を実施した.
著者
上田 多門 FARGHALY Ahmed Sabry Abdel Hamid
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

CFRP接着補強されたRCスラブの静的押抜きせん断耐力に関し,H20年度の成果をさらに発展させることにより,以下のことを明らかにした.(1)既往のFRP-コンクリート界面用の付着モデルを改良したモデルを導入した3次元FEM解析により,本研究での供試体に既往の研究の供試体を加えた14体の押抜きせん断破壊結果を,その破壊モード,変形量,耐荷力のいずれにおいても,適切な精度で推定できる.(2)接着されたCFRP補強材の引張力の存在により,CFRP接着補強されていない場合より,スラブコンクリートの圧縮領域に作用する圧縮力が増加する.この増加により,押抜きせん断破壊する際の,圧縮領域に作用するせん断力方向力が増加し,耐力が増加することになる.(3)押抜きせん断耐力は,圧縮領域での抵抗成分を考慮するだけで,概ね推定できる.(4)圧縮領域の応力分布推定モデルを提示し,第3方向の応力の影響が小さいことを考慮し,簡便な2次元のモール円に基づく破壊則を適用することにより,押抜きせん断耐力算定マクロモデルを提案した.(5)上記の耐力算定モデルによれば,押抜きせん断破壊は,圧縮領域での引張破壊により生じる.(6)本研究での供試体に既往の研究の供試体を加えた14体の試験結果を,耐力算定モデルは精度よく推定できる(平均値が1.00,変動係数が10.2%).この結果は,日米(JSCEとACl)のRCスラブ用の式を拡張して適用した場合より,精度が良い(JSCE式:平均値が1.59,変動係数が25.0%,ACl式:平均値1.38,変動係数が19.9%).上記に加え,CFRP接着補強されたRCスラブの疲労試験を実施し,押抜きせん断の疲労性状として次のことを明らかにした.(7)補強されていないRCスラブより,疲労寿命が長い可能性がある.
著者
仲岡 雅裕 田中 法生 堀 正和 四ッ倉 典滋 宮下 和士 磯田 豊 野田 隆史 灘岡 和夫 山本 智子 浜口 昌巳
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、日本の温帯と冷温帯の沿岸生物群集を対象に、生産者と消費者の広域分散過程、および温度変化に伴う生産者と消費者の相互作用の変異を調べることにより、地球規模での環境変動に伴う沿岸生物群集の変化を理解し、沿岸資源生物および沿岸生態系の保全・管理に資することを目的とする。広域野外調査、リモートセンシング・GISを用いた長期変動解析、メタ群集決定構造の数理的解析、集団遺伝解析、野外操作実験を組み合わせたアプローチにより、沿岸生物群集の構成には、水温等の広域スケールの変動要因と、競争・捕食等の局所スケールの変動要因が複雑に関与していることが判明した。今後の気候変動に伴い、沿岸生物群集の動態は、植物-動物間相互作用の変化を通じて不安定化する可能性が高いことが予測された。
著者
樽本 英樹
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

21世紀においてグローバル化が進展するとともに、ポストナショナルな国際移民システムが生まれ発展してきた。移民システムにはどのような相違があるのか。どのような結果を生産するのか。諸国家、社会集団、移民などの関与したどのようなメカニズムで生じるのか。本研究は大きく見て2つのアプローチを採用した。第1に、西側諸国との比較をしつつ、日本や韓国といったアジア諸国を非西側諸国の例として探求に加えた。次に、ハマー=小井土=樽本モデルを導入して理論的に移民システムの発展を考察していった。本研究の結果、地球全土を視野に含めたポストナショナルな移民市民権研究への道筋が立てられることになった。
著者
宮武 公夫 桑山 敬巳 権 錫永
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、従来の博覧会研究が、展示されたモノや建築、権力・イデオロギー論からの演繹的研究、文化の政治学の側面に焦点を当てていたのに対し、20世紀初頭の博覧会における具体的なヒトの展示(経験や実践)に焦点を当てることで、近代への過渡期における国民国家、植民地主義、近代人類学、先住民アイデンティティの生成や変容に関して新たな視点を与えるものである。研究成果としては以下の通りである。宮武公夫の研究は、1904年セントルイス博覧会の人類学展示のために渡米した9名のアイヌに関する写真や工芸品という非文字資料に焦点を当て、20世紀初頭の異種混交的なセントルイス博覧会における人類学展示の姿を明らかにした。具体的には、国内と米国の7カ所の研究機関や個人の所蔵する、多様な撮影者によるアイヌ関係写真のほぼ全数を調査するとともに、博覧会で作成されたハイブリッドな工芸品などを明らかにした。また、これらをとおして、近代への過渡期における博覧会での、アイヌの人々の民族やエスニシティの領域を横断する実践と創造の姿を明らかにすることができた。また桑山敬巳の研究は、展示領域と外部世界の境界にあるギフトショップに注目し、各地のギフトショップにおけるキモノのギフトが生み出す「異民族イメージ」について明らかにした。また権錫永の研究は、植民地統治下に支配者側によって開催された特異な博覧会として、日本の朝鮮統治下の博覧会を対象にしている。この研究では、従来の研究が日本側資料に依拠しているのに対して、当時の朝鮮メディア資料や、近年の韓国における博覧会研究を参照しながら研究をおこない、植民地支配者側と批判する朝鮮メディアという対立する言説の検討と、実際に動員された朝鮮農民などの経済問題や博覧会体験の問題を明らかにし、植民地博覧会の複合的な姿を明らかにしている。
著者
相川 弘明
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

ハルナック不等式とは同一の中心をもつ大小の球を考えたとき,大きい球内での正値調和関数の小さい球内での値は中心の値の定数倍で比較されるという不等式である.有限個の球が半径に比例する十分大きい共通部分をもってつながっているものをハルナック連鎖という.ハルナック連鎖を構成する一つ一つの球にハルナック不等式を繰り返し用いることにより,ハルナック連鎖上の正調和関数の両端の値は比較可能なることをハルナック原理という.本研究ではハルナック連鎖の中に容量の小さな除外集合があっても,ハルナック原理が成立することを示し,その応用を与えた.