著者
宇山 智彦 秋田 茂 山室 信一 川島 真 守川 知子 池田 嘉郎 古矢 旬 菅 英輝 粟屋 利江 秋葉 淳
出版者
北海道大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2008

近代ユーラシアの諸帝国を比較し、帝国権力と現地社会の非対称な相互作用、帝国間競争における小国や越境集団の役割、周縁・植民地の近代化、そして20 世紀の帝国崩壊と脱植民地化の多様な展開を論じた。現在の地域大国は半帝国・半国民国家的な性格を持ち、かつての帝国の遺産と記憶に大きな影響を受けている。情報の不完全性のもとでの権力と少数者集団の駆け引きを論じる帝国論の方法は、現在の大国・小国関係の分析にも役立つ。
著者
長谷川 英機 澤木 宣彦 小間 篤 岩見 基弘 菅野 卓雄 安田 幸夫
出版者
北海道大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1996

本研究の目的は、ナノ構造の原子スケール制御に対し、十分な研究実績をもつ班員の実績を活かして、「ナノ構造の表面・界面の制御と単電子トンネル障壁の最適化」の研究を担当し、室温動作の単電子デバイスや、新しい機能もつ単電子デバイスを、単体ないし小規模集積レベルで実現する要素デバイス技術およびプロセス技術を確立することにある。主要な成果として、まず、化合物半導体の2次元電子ガスに対する新しいインプレーンゲート、ラップゲート構造による単電子トランジスタについて、従来のスプリットゲート素子に比較して、動作温度の大幅な向上、動作機構の理解、1以上の電圧利得の達成、論理インバータ回路・BDDスイッチ回路などの小規模集積回路の試作と実証など、世界に先駆け大きな進歩がもたらされた。また、シリコン系については、プラズマプロセスで形成したシリコンドットにおける室温のクーロン階段の観測や、単電子トランジスタの動作確認、縦形トランジスタでの量子化コンダクタンスの観測、ホッピング伝導系でのクローンブロケッド現象の発見、非対称トンネル障壁構造を用いてデバイス特性を最適化する研究が推進された。さらに、シリコン系および化合物半導体系量子ドット構造を、表面・界面の原子配列と電子物性を評価・制御しつつ形成する手法について、大きな進展が認められた。また、「トンネル障壁」におけるトンネル時間やドット内の波束の運動の検討など、単電子過程を解明する基礎研究も進展した。
著者
杉本 太郎
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

平成20年度は、前年度までに確立した方法を用いて、新しい試料の分析に取り組んだ。新たに12頭確認され、合計37頭のアムールヒョウを識別した。しかし過去に確認されたが今回確認できなかった個体も多くいた。この要因として、サンプリングが不十分であったことも考えられるが、近年密猟者により殺された事例が報告されており、この密猟が要因であることも考えられる。また、ロシアと国境を接する中国へ移動した可能性も残されており、今後分布全域から糞を採集することが必要である。遺伝的多様性に関しては、過去に確認された対立遺伝子が検出されないなど、多様性が失われていることが示唆された。現在のような小個体群では避けられないことではあるが、動物園個体の導入の必要性を示す一つの重要な結果であるといえる。研究の総まとめとして、ウラジオストクにあるWWF極東支部において、Workshopを開催し、本研究の成果発表を行った。このWorkshopには、アムールヒョウの保全に関わるWWF、WCSなどの国際的なNGOや、現地のNGOの研究者達が多数参加した。これまで行われていた足跡調査では明らかにできない多くの生態的、遺伝的情報を提供することができ、たくさんの前向きなコメントを得ることができた。発表の後、今後の研究のあり方、本研究で示されたモニタリング方法の有効性について活発な議論が行われた。今後も継続して試料を採集することで一致し、さらに採集地域を拡大することも計画された。本研究で確立した手法が今後も活用されていくことが期待される。
著者
大島 慶一郎 江淵 直人 青木 茂 深町 康 豊田 威信 松村 義正 北出 裕二郎 舘山 一孝 二橋 創平 小野 数也 榎本 浩之 木村 詞明 田村 岳史
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2008

海洋中深層循環及びその変動を決めうる海氷生産量を、衛星データ等から見積もるアルゴリズムを開発し、そのグローバルマッピングを初めて行った。沿岸ポリニヤでの高海氷生産過程を長期係留観測から明らかにし、アルゴリズムの検証も行った。南極第2の高海氷生産域であることが示されたケープダンレー沖が未知の南極底層水生成域であることもつきとめた。南極海とオホーツク海では、海氷生産量の変動が底層水や中層水の変質とリンクしていることを明らかにし、中深層循環弱化の可能性を指摘した。
著者
松原 和純
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

ヘビにおける性染色体の分化過程を解明することを目的として、3 種のヘビ(インドニシキヘビ、シマヘビ、ハブ)において性染色体の構造比較を行った結果、インドニシキヘビのZW 染色体は分化の初期状態を保持してきたことや、シマヘビとハブの共通祖先においてW 染色体の矮小化が進んでいたことが示唆された。また、ヘビにおいて性分化関連遺伝子群の染色体上の位置を同定した結果、哺乳類において卵巣形成に関わるとされるβカテニン遺伝子が性染色体に位置することが明らかとなった。さらに、いくつかの性決定関連遺伝子の胎児期の性腺における発現パターンの雌雄差を調べた結果、産卵後10 日以前に性分化が開始することが明らかとなった。
著者
筒井 裕之 蒔田 直昌 絹川 真太郎 松井 裕 石森 直樹 畠山 鎮次
出版者
北海道大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2008

ミトコンドリアの生体維持機能は、ミトコンドリアDNA(mtDNA)によって動的に制御されている。近年、mtDNAの酸化損傷およびそれに起因する活性酸素の過剰産生が、種々の疾病の発症、さらには老化にも関与することがあきらかにされ、疾病発症の共通基盤としてのミトコンドリア機能不全が注目されている。本研究では、心血管ストレス応答におけるミトコンドリア転写因子およびミトコンドリア酸化ストレスの役割をあきらかにした。
著者
坪倉 誠
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

以下の6つの研究課題に取り組んだ.(1)簡易形状車体モデルを対象とした空力抵抗発生メカニズムの解明(2)吹き出し&吸い込み等の要素制御技術の数理モデル化(3)後ひき渦対の不安定性成長(4)簡易形状車体モデルを対象とした空力抵抗低減制御技術の提案(5)実走行状態における制御技術の効果検討(6)実車両形状モデルを対象とした戦略的空力抵抗低減制御技術の提案.簡易形状車体に対して,車両姿勢の動的変化を与えて,その空力応答特性を渦構造の非定常変化から明らかにした.この知見を実車セダン形状車体に適用し,抵抗や揚力の非定常変動と車両側面境界層や車体周りの渦構造を明らかにし,その抵抗抑制効果について考察した.
著者
小野里 雅彦
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

災害に見舞われた被災地の情報疎外を防ぎ地域防災力を強化することを目的に,現代版の火の見櫓と成りうる係留型情報気球システムInfoBalloonの研究開発を行った.扁平球形とピボット係留により風に対して安定な係留法を可能とし,InfoBalloonに搭載された監視カメラによる鳥轍映像システムを開発し,周辺の被災状況確認機能を実現した.さらにInfoBalloonを被災地での利用を目的に運用シナリオと安全ガイドラインを提示した.
著者
芥川 智行
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2003

16年度に、有機デバイスへの応用が可能な有機物等のナノ構造、特にナノドットやナノワイヤ構造等の低次元ナノ構造の構築を可能とした。17〜18年度では、ナノドット・ナノワイヤ・ナノリング・2次元ドメイン構造に至る種々の低次元ナノ構造を作製する技術を確立すると同時に、金ナノ粒子や有機半導体ナノドット構造と半導体ナノワイヤ構造が接合した集積化構造の作製に関する検討を行った。Langmuir-Blodgett (LB)法やスピンコート法に代表されるウエット法を用いて、分子の有する自己組織化を利用したナノデバイス構造の作製を試みた。研究対象として用いた分子系は、電気伝導性・超分子化学・界面化学の観点から設計した両親媒性マクロサイクリックbis-TTF分子である。ウエット法を用いて作製した様々な形態の低次元ナノ構造の集積化について検討した。直径13nmの金ナノ粒子とナノワイヤの集積化構造の作製について検討を行った結果、金ナノ粒子は、ナノワイヤの交差点上に配列し、Langmuir-Blodgett法を用いる事で金ナノ粒子の専有面積を自由に制御する事が可能となった。次に、ナノワイヤー金ナノ粒子複合構造から成るLB膜の電気伝導性に関する検討を行った。金ナノ粒子の専有面積の増加に伴い、電気抵抗の温度依存性に変化が見られた。金ナノ粒子の占有面積の増加に伴い、電気抵抗の温度依存性に変化が見られ、金ナノ粒子の基板上での占有面積が2次元パーコレーションの閾値を越えると、その電気伝導度の温度依存性に特異的な挙動が観測された。室温付近では、活性化エネルギーE_a=0.14eV程度のナノワイヤにより支配される半導体的な温度領域が観測されるのに対して、温度の低下に伴いより活性化エネルギーの小さなE_a=0.01eV及びE_a〜0eV程度の伝導領域が出現する事が明らかとなった。低温領域に於ける伝導は、金ナノ粒子間のホッピングとトンネリングによる伝導で支配されていると考えられる。ナノワイヤー金ナノ粒子集積化構造においては、基板面内で少なくとも3種類の伝導パスが存在し、低温においては金ナノ粒子間の量子伝導が出現していると考えられた。
著者
小泉 章夫 澤田 圭 平井 卓郎
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

緑化樹の耐風性を定量的に評価する方法について検討し,評価手順を提示した。樹冠にかかる風圧力を推定するために,屋外で風速と樹幹の曲げたわみを連続的に測定することで抗力係数を評価する方法を開発した。得られた抗力係数を用いて,風速から樹幹や根鉢に作用するモーメントを算出できる。樹幹の曲げ耐力を求めるために,不整な樹幹の断面係数を非破壊的に評価する手法を開発した。また,緑化樹の引き倒し試験を行って,胸高直径と根返りモーメントの回帰式を決定した。
著者
劉 愛群
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究では、日本の大学の中国語学習者を対象として、中国語教育においてはまだ例の少ないインプット処理理論を導入し、学習者の注意、気づきを促しつつ学習事項を定着させる新しい文法指導法の応用を検討した。具体的に、三種類の言語項目の習得における中間言語の変容に関して、理論的及び実証的な見地から検討を加えた。これらは、アスペクト助詞“過”、“把”構文及び副詞“就”と“才”の習得の考察と「インプット処理指導」の介入である。本研究では、中国語の習得研究と教授法の両者を同時に扱う研究分野を切り拓き、中国語学習者の認知的学習ストラテジーに対し、教室でどのような指導を行うべきかの提言を試みた。
著者
久住 一郎 伊藤 侯輝 豊巻 敦人 橋本 直樹
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

北海道内の精神科医療機関初診患者において初診患者(16-30歳)157名を対象に精神病発症高リスク状態(ARMS)患者の有病率を検討したところ、25名(15.9%)であった。統合失調症の病態に関係する生物学的マーカー(中間表現型)として、社会認知の基盤となるbiological motion(BM)知覚、自発的な意思に関わる遂行機能(スイッチング課題)、作業記憶過程(Sternberg課題)における事象関連同期が有用であることを見出した。
著者
家田 修 林 忠行 松里 公孝 月村 太郎 仙石 学
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

本研究では東欧(旧ソ連のロシア以外のヨーロッパ部分を含む)地域社会全般を射程に入れ、EU統合が及ぼす影響、そして逆にEU拡大がEUに与える影響について包括的な研究を組織した。その中でハンガリー地位法制定を契機として全欧州的な問題となった主権国家論争を取り上げ、欧州統合における主権国家と国民、そして少数民族問題という具体的な論題を巡る国際会議を、本研究計画の総決算という意味を込めて、2004年10月にハンガリーのブダペストで開催した。この会議には日欧米だけでなく、インドやトルコを含む世界12カ国から研究者が参集し、さらに欧州で民族問題を担当する実務専門家も招聘して議論を深めた。この会議は東欧の少数民族問題を理論的、包括的かつ具体的に論ずる貴重な機会であったため、OSCEなどの全欧州的な国際組織から多くの傍聴者が参集し、ハンガリーのマスメディアも大きく取り上げた。この会議では東欧における冷戦後の地域社会形成が国民形成、国家建設、少数民族共同体形成の三位一体として進行したこと、そして問題解決のためには従来のEU統合の枠を越えた新たな市民権概念(fuzzy citizenshipなど)、あるいは柔軟な国境という考え方(flexible border controlなど)、さらにはネオ・ミディーバリズムなどの複合的アイデンティティが必要とされる、などの具体的かつ新たな知見が示された。こうした国際的共同研究の成果の一部は既に本研究代表者を編著者とする英文著書The Hungarian Status Law : Nation building and/or Minority Protection, SRC, Hokkaido University, Slavic Eurasian Studies Series, No.4, 2004として刊行され、さらにThe Status Law Syndrome in Post-communist Eastern Europe, SRC, Hokkaido University, Slavic Eurasian Studies Series, 2005として新たな知見が国際的に発信される予定である。
著者
宮浦 憲夫 山本 靖典
出版者
北海道大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

イリジウム触媒を用いるC-H結合直接ホウ素化反応を開発した。また触媒的付加・カップリング反応に活性な新規有機トリオールボレート塩を開発し市販した。さらに新規不斉二座ホスホロアミダイト配位子(Me-BIPAM, N-Me-BIPAM)を開発し、ロジウムおよびルテニウム触媒を用いたアリールボロン酸の不斉付加反応を達成した。
著者
川合 由加
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

高山生態系では空間的に不均一な雪解けによって開花時期が異なる植物群集が非常に狭い地域に形成される。今回はこの雪解け時期の違いが作り出すフェノロジー構造の時間変化がマルハナバチを巡る植物間の競争に与える影響について景観スケールで評価することができた。また、これまで不明瞭であった高山生態系でのマルハナバチの活性動態についても、7~8月の約2ヶ月の間に出現カーストや活動数が大きく変動するといった強い季節性を持っていることを定量的に調べることができた。具体的には、開花時期が非常に早いエゾコザクラは主要訪花昆虫であるマルハナバチの季節活性を反映して雪解けの早い場所にある個体群では花粉制限が生じているが、雪解けの遅い場所の個体群では開花時期が重複する同群集内のツガザクラ類とマルハナバチを巡る競争が生じていた。一方で群集内での開花時期が中~後期のヨツバシオガマでは同群集内のツガザクラ類とは開花時期の重複を回避できているが、より雪解けの遅い群集のツガザクラ類とマルハナバチを巡る競争関係があった。本研究では、開花フェノロジーの時空間変化が訪花昆虫を巡る植物間競争に与える影響は種ごとに異なること、景観スケールで調べることで植物間の相互作用が群集内だけでなく群集間であることを明らかにすることができた。これは景観スケールでのフェノロジー構造が植物種間の競争関係を考えるのに重要であることを示している。
著者
竹内 繁樹 栗村 直 岡本 亮
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、独立した光子源間で良質な量子干渉をもつ単一光子源の実現と、光量子回路への応用を目指した。その結果、95.8%と世界最高レベルの2光子干渉性を実現した。また、入力された2光子の特定の偏光相関成分を抜き出す「量子もつれフィルター」、および2001年にKnillらの提案した線形光学量子計算の基本となる、「制御ノット光量子回路」の実現に成功した。また、擬似位相整合結晶における群速度分散の制御を目ざし、デバイスの作成ならびに評価を行った。
著者
栗原 堅三 庄司 隆行 柏柳 誠 松岡 一郎 桂木 能久
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

大豆由来のホスファチジン酸と牛乳由来のβラクトグロブリンからなるリポ蛋白質は、味細胞の微絨毛膜に結合し、苦味物質が受容サイトに結合することを妨害することにより、苦味を選択的に抑制することがわっかた。この苦味抑制剤を実用化するためには、安定性やコストの面で、蛋白質を使うことに問題があった。そこで、蛋白質を含まない苦味抑制剤の開発を試みた。ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、ホファチジルイノシトールなどに苦味抑制作用があったが、ホセファチジン酸の作用は、他のリン脂質よりはるかに強力であった。ホォスファチジン酸を苦味抑制剤として使用する場合、これを純品にする必要があるかどうかを検討した。ホスファチジン酸に他のリン脂質が共存した場合でも、その苦味抑制作用は妨害を受けなっかた。そこで、大豆レスチンから、ホスファチジン酸を高含量含む分画を作成し、苦味抑制効果を調べた。この結果、このレシチン分画は、各種の物質の苦味を十分抑制することがわかった。このレシチン分画を各種の薬物と混合し、苦味抑制効果を調べたところ、苦味を十分抑制することがわかった。また、このレシチン分画で、錠剤や顆粒剤をコートすると、苦味が効率的に抑制された。また、食品の苦味成分に対する苦味抑制効果を調べた。蛋白質加水分解物のあるものは、機能性食品として注目されているが、一般に強い苦味がある。レスチン分画は、蛋白質加水分解物の苦味を抑制した。ポリフェノールは、活性酸素の作用を抑制する物質として注目を集めているが、非常に強い渋味と苦味を有する。レシチン分画は、ポリフェノールの渋味と苦味を抑制することがわかった。チョコレートには、ポリフェノールが多量に含まれているが、その渋味と苦味のため、従来はこの含量を減少させていた。レシチン分画をチョコレートに入れると、ポリフェノールを高含量含んでいても、良好な味になる。
著者
アメングアル・プリエゴ マリア・オルガ (2010-2011) アメングルアル・プリエゴ マリア・オルガ (2009)
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

脳は自己免疫血栓性疾患である抗リン脂質抗体(APS)の重要な罹患臓器である。通常の動脈硬化性疾患と比べると、APSでは心筋梗塞に比べて脳梗塞が圧倒的に多い。APSの血栓形成機序は、APS患者に存在する抗リン脂質自己抗体が内皮細胞や単球を活性化して向血栓状態にすることと考えられている。本研究では、血管内皮細胞の臓器特異性について注目し、APSにおける脳梗塞の血栓形成機序を解明することによって同疾患の特異的治療法を開発すおること目的とした。本年は材料に、ヒトの脳、肺、皮膚の小血管内皮細胞を用いた。これらの培養細胞に抗リン脂質抗体(ホスファチジルセリン依存性抗プロトロンビン抗体:231D)を加えてインキュベートし、細胞からRNAを抽出してDNAアレイを用いてmRNA発現スクリーニングをおこなった。有意に発現が増加した遺伝子は、PLSCR4,Cenpk,Bhlhb5,Hmgn1,MAF,TNF,TRAF2,NOS3,RPs6ka6,IL-6、VCAM-1などがあった。しかし、これらの遺伝子発現に内皮細胞間の明らかな差はなく、脳由来微小血管内皮細胞に特異的な遺伝子発現上昇はみられなかった。検討した遺伝子発現のうち、抗プロトロンビン抗体によってもっとも有意に増強したのはNOS3(nitric oxide synthase 3)であった。NOS3の発現亢進は、患者由来のポリクローナル抗リン脂質抗体でも確認された。NOS3の遺伝子多型はアルツハイマー病や動脈硬化疾患と関連しており、脳血管障害の病態にNOS3がかかわる可能性がある。今回は抗リン脂質抗体によって誘導される脳血管内皮に特異的な分子は同定できなかったが、NOS3の活性をさらに検討することにより抗リン脂質抗体症候群に伴う脳血管障害のメカニズムを解明できる可能性を考えた。
著者
橋本 聡子 棚橋 祐輔 山仲 勇二郎
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

身体運動はヒト生物時計の同調因子かどうか、同調因子とすればその機序は何かを明らかにする目的で、時間隔離実験室において睡眠位相を強制的に8時間前進させる脱同調プロトコールを用いて検討した。健常男性成人を対象とし、自転車エルゴメーターによる身体運動を一日の一定時刻に休憩をはさんで2時間のトライアルを2回負荷して、概日時計(中枢時計)の支配を受ける血中メラトニンリズムや深部体温リズムと、末梢時計の支配を受けていると考えられる睡眠覚醒リズムを以下の条件下で同時測定した。その結果、約10ルックスの低照度下では、睡眠覚醒リズムの再同調は身体運動により促進されたが、血中メラトニンリズムは位相後退し、身体運動には影響されなかった。一方、約5,000ルックスの高照度下では、睡眠覚醒リズムは身体運動の有無にかかわらず再同調した。、また血中メラトニンリズムは位相前進したが完全には再同調せず、身体運動は位相前進に影響しなかった。以上の結果から、身体運動は睡眠覚醒リズムに同調促進効果をもつが、その効果は高照度下では隠蔽(マスキング)されることが示された。
著者
村上 尚史
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

系外惑星の直接観測を目指し,すばる望遠鏡のための8分割位相マスクコロナグラフの開発を行った。まず,8分割位相マスクコロナグラフの性能を最大限引き出すため,望遠鏡瞳変換レンズを製作した。また,フォトニック結晶技術を利用した1.6μm波長帯用8分割位相マスクを設計,製作した。フォトニック結晶マスクは,地上観測だけでなく,将来のスペース系外惑星探査計璽においても利用できると期待される。さらに,低次の光波面乱れを高精度に測定するための低次波面センサの開発を行った。